道後温泉から車で約30分。愛媛県松山市のお隣・砥部町(とべちょう)は、歴史と伝統ある焼き物・砥部焼のふるさと。
町のあちこちに窯元やギャラリー、砥部焼の器で料理を提供する飲食店が点在し、散策が楽しい場所です。
砥部焼の制作体験ができる施設やギャラリー、カフェ、窯元など、砥部町の旅で訪れたいスポットをご紹介します。
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※本記事に掲載の情報は2024年3月時点のものです。諸事情により変更となる場合がありますので、お出かけの際は各公式サイト等で最新情報をご確認ください
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1. 砥部はどんな町?
砥部町は愛媛県の県庁所在地・松山市から南に約10kmの場所にあり、陶芸で有名です。
陶板でできた高さ約15mの陶街道夢タワー「愛伊砥(えいと)くん」や映画『未来へのかたち』(大森研一監督/2021年公開)のために制作された砥部焼聖火台モニュメントなど、町中で気軽に砥部焼のオブジェに出会える砥部は「アートの里」とも呼ばれています。
映画『未来へのかたち』のために制作された砥部焼の聖火台モニュメント(写真:砥部町)
重信川付近から広田エリアまでの約20kmの間に、陶芸に関するスポットが点在しているので、移動は車がおすすめ。大南・五本松・北川毛エリアに集中している窯元巡りには、レンタサイクルが便利です。
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砥部町の町並み(写真:砥部町)
2. 砥部の旅で立ち寄りたい場所:紹介スポット一覧MAP
ここからは砥部を訪れたらぜひ立ち寄っていただきたい、おすすめのスポットやカフェを詳しくご紹介していきます。
紹介するスポット一覧
【体験】砥部焼観光センター 炎の里(えんのさと)
炎の里の絵付け体験(写真提供:千山窯)
砥部町千足にある「砥部焼観光センター 炎の里」は、千山窯(せんざんがま)が運営する観光施設。千山窯は、伝統的な砥部焼らしい砥部焼に加え、現代の生活にマッチした新しいスタイルの作品も作る窯元です。
数色の色を使って行う「絵付け体験」では、約15種類の形から、ご自分の好みの器を選べます。「粘土工房」では、手びねりで好きなものを作ることができますよ。
「炎の里」では、砥部焼の製造工程の見学も可能。もちろん購入もできます。70軒以上の窯元の器が一挙集結するショップは、品ぞろえが豊富です。
左:制作中の職人さん 右:ショップに並ぶ器(写真提供:千山窯)
ほかに、季節のフルーツを使ったスイーツや本格和食ランチが人気のカフェ「Jutaro(ジュタロー)」や創作家具の店、コンビニも併設。駐車場も広々です。
砥部焼観光センター 炎の里
●住所:愛媛県砥部町千足359
●時間:9:00~17:00(体験受付16:00まで)
●定休:12月31日、1月1日
●公式サイト:砥部焼観光センター 炎の里
【大登り窯ほか】梅山窯(ばいざんがま)
1887(明治20)年に再築された9連室の大登り窯。砥部町内に保存されている唯一の大登り窯です。内部では昔の窯積みの状態を復元展示しています(写真提供:梅山窯)
大南エリアにある、砥部焼の窯元の中で現存最古かつ最大の「梅山窯」(梅野製陶所)。工場ではろくろや釉薬かけなどの制作風景を見学できます(団体は要予約)。また、敷地内には明治から昭和にかけて使われていた町指定文化財の大登り窯が保存されていて、そちらも見学できます。
同じく敷地内にある「古陶資料館」では、シカゴ博覧会で1等賞を受賞した「淡黄磁(たんおうじ)」や、輸出用の型絵染付茶碗「伊予ボウル」などの貴重な器を見学可能。
売店では、1点1点手作業で制作された各種器のほか、B級品をお得に購入することもできます。
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↓↓こちらの記事では砥部焼の海外輸出が盛んだった頃など、砥部焼の歴史について紹介しています。
砥部焼はどんな焼き物?|春・秋開催の「砥部焼まつり」の楽しみ方も
古陶を展示した資料館(写真提供:梅山窯)
梅山窯 売店・古陶資料館
●住所:愛媛県砥部町大南1441
●時間:8:00〜17:00
●定休:月・火曜(祝日の場合は翌平日休)、年末年始
●公式サイト:砥部焼 梅山窯
【カフェ】カフェ&ギャラリー もえぎの
抹茶のガトーショコラ。季節ごとに変わる食事メニューやスイーツメニューがいただけます(写真提供:カフェ&ギャラリー もえぎの)
砥部町の中心部を南に向かった川登陶石付近にある 「カフェ&ギャラリー もえぎの」。松前町(まさきちょう)にある梅乃瀬窯を営むオーナーが、2020年10月にオープンしたカフェ&ギャラリーです。
ギャラリーでは、オーナー自身も所属する女性作家集団「とべりて」メンバーの作品など、オーナーがセレクトした15窯元の砥部焼とガラス作家の作品を展示・販売。
カフェでは、砥部の山々を眺めながら、2種類からメインを選べる手作りの週替わりランチやオリジナルスイーツなどをいただけます。14:00以降は、コーヒーカップは40種類から、ティーカップは10種類から、お好みのものを選ぶことができますよ。
左上:自然光が差し込む美しい店内 右上:すこし屋松田窯さんが絵付けしたランプシェード 左下:梅乃瀬窯・佐賀しげみさんの作品 右下:きよし窯・山田ひろみさんさんの「彩り花」シリーズ。在庫状況は日によって異なります(写真提供:カフェ&ギャラリーもえぎの)
カフェ&ギャラリー もえぎの
●住所:愛媛県砥部町川登495
●時間:
3月~11月:11:00~17:00(L.O.16:30)
12~2月:11:00~16:00(L.O15:30)
●定休:火~木曜、年末年始
●公式Instagram:カフェ&ギャラリー もえぎの
【ギャラリー】砥部焼ギャラリー紫音
日常使いできる作家ものの器がずらり。お気に入りの品が見つかるはず(写真提供:砥部焼ギャラリー紫音)
五本松エリアの窯業団地「陶里ヶ丘」にある「砥部焼ギャラリー紫音」。店長がセレクトした、窯元約10軒の製品を扱うギャラリーです。
ウッディーな店内では、一般的に知られている砥部焼のイメージとは異なる、こけし柄や花柄など、ガーリーな柄の器も多く販売されています。子ども用の食器もあるほか、木のスプーンやお店オリジナルのガラス作家の製品も扱っています。
在庫はネットショップと共有なので、もし目当ての商品がある場合は、事前に在庫状況を確認してから出かけるのがおすすめです。
ギャラリー外観。年季の入った木の扉が素敵です(写真提供:砥部焼ギャラリー紫音)
砥部焼ギャラリー紫音
●住所:愛媛県砥部町五本松885-13
●時間:10:00~18:00
●定休:火曜、第3水曜
●公式サイト: 砥部焼ギャラリー紫音
【ギャラリー】器屋ひより
器屋ひよりで制作・販売している器の一例(写真提供:器屋ひより)
五本松エリア・茅葺き屋根の「村の駅五本松」に隣接する「器屋ひより」。ろくろ成形と絵付けを分業する女性二人による窯元で、2015年に開窯しました。
「器屋ひより」が目指すのは、「食器棚の一軍選手」。シンプルで余白があり、料理映えのする使い勝手のいい器を生み出しています。お二人とも子育て中ということもあり、赤ちゃんや子ども用の器も制作。丸茶碗は大・中・小・ちびサイズがあるので、家族みんなでおそろいの茶碗を使うこともできますよ。
2階にはギャラリーがあり、気に入った器を購入することもできます。
ナチュラルな雰囲気の店内(写真提供:器屋ひより)
器屋ひより
●住所:愛媛県砥部町五本松34
●時間:10:00〜16:00
●定休:不定休
●公式サイト:砥部焼 器屋ひより
【カフェ】酒蔵カフェ はつゆき
立派な梁が目を引く店内(写真提供:協和酒造)
大南エリアにある協和酒蔵2階の「酒蔵カフェ はつゆき」。江戸時代末期の建築をリノベーションした空間で、ゆったり軽食がいただけるカフェです。
メニューは、米麹だけで造った自然な甘みのノンアルコール甘酒のほか、甘酒と酒粕を使ったバウムクーヘンやチーズケーキなど、酒蔵ならではのものがいっぱい。
「とべりてプレートセット」は、「とべりて」メンバーが作った四角いお皿に、バウムクーヘンとチーズケーキが両方盛られた、スイーツ好きにはたまらない一品です。
とべりてプレート(写真提供:協和酒造)
ランチタイムには、砥部町にある「IPPO」のパンとサラダ、フルーツ、一口甘酒がセットになった「パンランチ」がおすすめ。
1階には、協和酒造が造る日本酒「初雪盃(はつゆきはい)」などの試飲もできる直売店や、酒造りで使われていた道具や砥部焼の盃・徳利を展示する資料館もあります。
酒蔵カフェ はつゆき
●住所:愛媛県砥部町大南400-2F
●時間:
11月~4月……11:00~15:30(L.O 15:00)
5月~10月……11:00~16:00(L.O 15:30)
※土日祝のみの営業
●定休:月~金曜(祝日の場合は営業)
●公式サイト:
酒蔵カフェ はつゆき|協和酒造株式会社
直売所 蔵元|協和酒造株式会社
【資料館】砥部むかしのくらし館
主屋に展示された夜着コレクション(写真提供:砥部むかしのくらし館)
大南エリアにある「砥部むかしのくらし館」は、旧梅野商会の主屋と蔵を利用した民俗資料館。もともとは一般公開されていないものでしたが、2021年、道路の拡大工事がきっかけで移動と改修が行われ、一般公開されました。2023年には主屋および蔵が国登録有形文化財に登録されています。
梅野商会とは、「梅山窯(ばいざんがま)」の商品の流通・販売をしていた会社です。「砥部むかしのくらし館」には、「梅山窯」の梅野家および姻戚関係がある豊島家所蔵の古民具が展示されています。
左上:砥部むかしのくらし館外観。手前が改修された主屋、右奥に少し見えるのが蔵 左下:主屋の展示 右:蔵の展示(写真提供:砥部むかしのくらし館)
主屋では、貴重な大正時代の「淡黄磁(たんおうじ)」などの砥部焼コレクションを見られるほか、日本屈指のコレクション数を誇る、着物の形をした掛け布団「夜着(よぎ)」を、広げて掛けた状態で展示。
蔵では、金箔の上に墨が塗られた、江戸時代中後期の「群鶴図屏風」以外に、木製の看板、お面、漆器類、枕、籠などのコレクションが見られます。
砥部むかしのくらし館
●住所:愛媛県砥部町大南701
●時間:10:00~16:00
※土・日曜のみの開館
●定休:月~金曜
●公式サイト:砥部むかしのくらし館
【ギャラリー&カフェ】Mshop(エムショップ)・Cafe stand tOt(カフェスタンドトット)
1階のMshop(写真提供:陶房遊)
大南エリアの砥部陶街道沿いにある陶房遊(とうぼうゆう)は、2003年に開窯し、現在は夫婦で作陶する窯元。使い手が毎日使えるようにと、さまざまな大きさ・形で日常使いの器を制作しています。
作業場の向かい側には直営販売店「Mshop」があり、その2階には金・土・日曜限定カフェ「Cafe stand tOt」があります。
「Cafe stand tOt」で使われるのは、すべて陶房遊で作られた器。実際に器に盛られた状態が見られるので、器を購入する際の参考になりますよ。
左:Cafe stand tOtの「トットのごはん膳」 右:カフェ内観(写真提供:陶房遊)
2週替わりのランチメニュー「トットのごはん膳」は、丸いお盆にご飯、汁物、メインのおかず、副菜2種、箸休めが配膳された、栄養と彩りのバランスがよく心と体に優しい一食。数量限定なので、食べたい方はお早めに。
カツサンドかエビカツサンドから選べる「パンランチ」は、テイクアウトも可能。フレンチトーストなど、季節のフルーツを使ったデザートもいただけます。
Mshop・Cafe stand tOt
●住所:愛媛県砥部町岩谷口237-3
●時間:
Mshop……10:30〜16:00
Cafe stand tOt……11:00〜15:30(ランチメニュー提供は11:00~13:30)
●定休:
Mshop……月曜、第一火曜
Cafe stand tOt……月〜木曜 ※臨時休業あり
※臨時休業あり
●公式サイト: 窯元 陶房遊
●公式Instagram:カフェスタンドトット
【体験】砥部町陶芸創作館
砥部町陶芸創作館での絵付け体験
大南エリアにある「砥部町陶芸創作館」では、砥部焼の絵付け体験と手びねりや電動ろくろによる成形体験が楽しめます。期間を空けて2回訪問できる方は、ご自分で成形した器の絵付け体験も楽しめますよ。
事前予約不要で体験できる絵付け体験。絵付け用の素焼きは約100種類と、バラエティが豊富。最低料金は300円からと、リーズナブルに体験できるのも魅力です。色は呉須1色で濃淡をつけて描きます。
ろくろは初心者レベルから上級者向けまで、3種類のコースからチョイスが可能です。
砥部町陶芸創作館
●住所:愛媛県砥部町五本松82
●時間:9:00~17:00(最終入場16:00)
●定休:木曜(祝日の場合は翌日休)、12月29日~翌年1月3日
●関連サイト: 砥部町陶芸創作館|砥部町
※編集部しらべ
【体験】砥部焼陶芸館
砥部焼陶芸館(写真提供:愛媛県観光物産協会)
40年以上前に窯元たちが出資してできた「砥部焼陶芸館」。とべ動物園の近くにあり、松山方面から向かうともっともアクセスが便利な体験施設です。
赤・青・緑の3色を使う「絵付け体験」、予約制の「手びねり体験」は、窯元が直接指導。館内では33の窯元の作品を展示・即売していて、陶芸館オリジナル商品も購入できます。春と秋に開催される「窯出し市」では、よりお得に砥部焼を購入できますよ。
2階には、日替わりメニューと週替わりのスパゲッティやカレーが食べられる人気カフェ「Zoo’s Kitchen(ずずキッチン)」もあります。
砥部焼陶芸館
●住所:愛媛県砥部町宮内83
●時間:9:00~17:00
●定休:水曜(祝日の場合は翌日休)、1月1日
●公式サイト:砥部焼陶芸館
※編集部しらべ
おわりに
伝統工芸のまちとして知られる砥部には、窯元が営業するカフェなど、新しいスポットもオープンしています。
松山や道後温泉からも意外と近いので、旅行の途中で立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
Text:柿生亜実
WEBライター。神奈川県出身。神奈川県出身。コンピューターメーカーに15年勤務した後、フリーライターに。旅行関連の執筆が得意。旅、ママチャリでのサイクリング、海外ドラマ・アート・音楽鑑賞が趣味。海外は22カ国、国内は30数都道府県に訪れた経験あり。図書館司書の資格を活かしたリサーチ力が武器。『さんたつ』公式サポーター。執筆業の傍ら、絵を描くことも。2007年にはノートで知られるイタリアの製紙会社・モレスキンによる旅行記コンペ「モレスキン・トラベルブック・コンペティション」にて優秀賞を受賞するなど、絵描きとしての実績もあり。
Edit:Erika Nagumo
Photo(特記ないもの):PIXTA