毎年10月16日から18日の3日間で開催される愛媛県新居浜市の「新居浜(にいはま)太鼓祭り」は高知のよさこい祭り、徳島の阿波踊りとともに「四国三大祭り」に数えられる一大行事。その起源は平安時代まで遡るといわれています。
華麗な装飾を施された巨大な太鼓台が市内を練り歩き、「かきくらべ」などの勇壮なパフォーマンスが行われ、毎年十数万人の観客でにぎわいます。
この記事では、新居浜太鼓祭りの由来や見どころ、人気の秘密、2024年の開催日程などを紹介します。
※この記事に掲載の情報は2023年9月の制作時点のものです。諸事情により変更となる場合があるため、お出かけの際はご自身で最新の情報をご確認ください
※2024年9月、一部情報を更新しました
新居浜市について
「新居浜」と書いて「にいはま」と読む新居浜市は、愛媛県の東部にあります。四国の中部にあり、四国の島の上部くびれのところに位置します。
北は瀬戸内海、南は四国山地に接していて、海と山両方の美しい景色がある街です。
また、江戸時代から昭和中期にかけて、稼働していた「別子銅山(べっしどうざん)」は、日本で2番目の銅生産料を誇り、新居浜は工業都市として発展してきました。
別子銅山跡地は「マイントピア別子」として道の駅になっているほか、別子銅山の歴史を伝える「別子銅山記念館」、日本の近代産業を育成した広瀬宰平(ひろせ さいへい)の旧邸で国の重要文化財である「広瀬歴史記念館(旧広瀬邸)」といった施設が産業遺産として残されています。
新居浜太鼓祭りの由来
太鼓祭りの中心は、豪華絢爛な「太鼓台」と、男衆による勇壮な技やパフォーマンス。
太鼓台はもともと、秋の豊穣に感謝して氏神に奉納する山車であり、平安時代から使われてきたようです。
この太鼓台が経済発展にともない、明治中期以降に大型化したことで祭りの中心となり、新居浜太鼓祭りとよばれるようになりました。現在は秋の豊穣に感謝しつつ、太鼓台の豪華さや鮮やかな技を競い合う祭りとして人気を博しています。
新居浜太鼓祭りの見どころを解説!
新居浜太鼓祭りは規模が大きいため、いくつかの会場で開催されます。龍や武者絵などを金糸で立体的に刺繍した「飾り幕」で飾られた太鼓台が、新居浜市街を練り歩く様子や差し上げなどのパフォーマンスは圧巻です。
かき夫(ふ)と呼ばれる男衆により、巨大な太鼓台が空高く舞揺れる様子は鳥肌が立つ迫力で躍動感にあふれ、観衆のどよめきが起こります。
躍動感あふれるパフォーマンス(写真:一般社団法人 愛媛県観光物産協会)
新居浜太鼓祭りは大きく4つの地区(「川西」「川東」「上部」「大生院」)に分かれてかきくらべなどが開催されるため、一度に全ての太鼓台(8つの小地区で所有台数は54台)の雄姿や演技を見ることはできません。
限られた時間内で祭りを最大限に堪能するために、見どころを紹介します。
「太鼓台」の大きさに注目
新居浜太鼓祭りの見どころといえば、やはり壮大華麗な太鼓台でしょう。太鼓台のおおよその大きさ・重さは、次の通り。
●高さ:5.4m
●幅 :3.4m
●長さ:12m
●重さ:2.5t
太鼓台は、12mほどの「かき棒」が4本設置された台の上に太鼓が載る構造です。
そのため、150人ものかき夫に加えて、かき棒の上に立って掛け声や笛でかき夫に動きを指示する指揮者、太鼓をたたく太鼓係などの補助人員も必要になります。
「太鼓台」の装飾に注目
太鼓台は「①天幕」「②くくり」「③房」で飾られ、「④飾り幕」で彩られます。
「①天幕」は太陽、「②くくり」は雲、「③房」は雨を表しており、太鼓台は五穀豊穣をもたらす自然の恵みを象徴する山車といえるでしょう。
「④飾り幕」は立体刺繍による金糸の龍などの装飾が施され、きらびやかで鬼気迫る迫力です。ちなみに飾り幕は上段から「ふとんじめ」「うわまく」「こうらんまく」と呼ばれます。
刺繍の主題は、次のようなものがあります。
●禽獣
龍や鷲、唐獅子、虎など。
●御殿
神社や寺院、城郭などの建築様式が混合した建物など。
●武者絵
中国や日本の神話、物語、浄瑠璃、歌舞伎など。
飾り幕の刺繍はとても華々しく、やはりその美しさを感じるには、間近で観覧するのがおすすめ。
日没後は、各地区の太鼓台がそれぞれの集合場所に集まりライトアップされる「夜太鼓」が見物でき、御花御礼口上や差し上げなどのイベントを楽しめます。
企業などからの寄付(御花)に対して御礼を述べる口上(御花御礼口上)は独特な言い回しが特徴的であり、差し上げのパフォーマンスは迫力満点です。
昼間とはまた雰囲気が違う夜太鼓(写真:一般社団法人 新居浜市観光物産協会)
新居浜太鼓祭りの見どころ「かきくらべ」とは?
「かきくらべ」とは、大きな太鼓台を持ち上げて、太鼓台同士の力や美しさを競う祭礼。
太鼓台は移動中、車輪が取り付けられられますが、この「かきくらべ」では約2.5トンの重さの太鼓台を人力で持ち上げます。
両手を伸ばして太鼓台を空高く担ぎ上げることを「差し上げ」と呼び、その美しさ、飾りの「房」の揺れ具合、そして担ぎ上げている時間など競います。
かきくらべの会場は、地区により異なり、複数の地区が合同で行う場合もあります。主要な会場は[こちら]にまとめています。
かきくらべは、住友化学工場前や一宮神社、天神浜通り、多喜浜駅前など様々な会場で開催されます。特に、かきくらべを見るのにおすすめしたい会場は「住友化学工場前」と「一宮(いっく)神社」の2箇所です。
「かきくらべ」の掛け声
かけくらべの時は、指揮者の掛け声と笛による指示で、太鼓係と150人のかき夫の息を合わせます。
掛け声は地区によって異なり、「チョーサージャー」「ソーリャ、ソーリャ」などの掛け声があります。「チョーサ」とは「太鼓」という意味。太鼓係が鳴らす太鼓は「ドン・デン・ドン、(空拍)」の四拍子が基本です。
一宮神社のかきくらべ(写真:一般社団法人 新居浜市観光物産協会)
山根グラウンドの「統一かきくらべ」
かきくらべの会場は複数あり、地区により異なります。その中でも、もっとも多くの太鼓台が集結するのが上部地区の「山根グラウンド」です。
山根グラウンドに集まる太鼓台の数は20台。新居浜太鼓祭りで最大のイベントであるため、一番の見どころとなります。
山根グラウンドで行われる統一かきくらべでは、太鼓台が寄せ合い一斉に差し上げる「寄せ太鼓」を披露することが特徴。そのため、山根グラウンドで行われる統一かきくらべは「統一寄せ」とも呼ばれます。
「寄せ太鼓」とは、複数の太鼓台が同時に差し上げを行うパフォーマンスですが、その様子はまさに圧巻。山根グラウンドでは、1回成功させるだけでも大変な「寄せ太鼓」を複数回実施し、さらに回転技も成功させる高い技術を観覧できます。例年、17日の午後の開催です。
山根グラウンドの寄せ太鼓(写真:一般社団法人 新居浜市観光物産協会)
山根グラウンドは、1928(昭和3)年に別子銅山の最高責任者である鷲尾勘解治(わしおかげじ)の指揮で、住友グループ企業の社員の奉仕作業によって建設された貴重な産業遺産です。2009(平成21)年には国の登録有形文化財に指定されています。
観覧席は、27段におよぶ石積みで作られた、全長170mの桟敷席。この観覧席からは太鼓台を見下ろせるため、寄せ太鼓の全容を観覧でき、その妙技を堪能できます。なお、とても人気の観覧席のため、席取りが大変です。
傾斜のある桟敷席からは会場の様子が一望できます(写真:一般社団法人 新居浜市観光物産協会)
《山根グラウンドの観覧情報》
●会場名
新居浜市山根市民グラウンド
●住所
愛媛県新居浜市角野新田町3-2822-9
●日時
2024年10月17日(木)
13:00〜17:00
●料金
無料
●観覧席について
2024年10月16日(水)18時~順次開放
●アクセス
①例年、JR[新居浜駅]〜[山根グラウンド]間で無料のシャトルバス運行
②JR[新居浜駅]の2番乗り場から「マイントピア別子行き」のバスに乗車。[山根市民グランド停留所]で下車(所要約12分)。
※時刻検索:時刻表・運賃検索|せとうちバス
③松山自動車道[新居浜IC]から車で10分
※時間帯により交通規制あり
●駐車場
国領川河川敷(臨時駐車場):1000台
●関連サイト
・上部地区統一寄せ|上部地区太鼓台
・新居浜市山根市民グラウンド
・新居浜太鼓まつり|新居浜市
その他のおすすめかきくらべ会場
①住友化学工場前
住友化学愛媛工場の入り口前には、川西地区の太鼓台が集結してかきくらべが行われるため、多くの観衆が集まる会場となります。
工場前の道路が歩行者天国となり、交差点内でかきくらべが行われ、観覧しやすく人気。例年、10月17日の夕方に開催されます。
②一宮神社(いっくじんじゃ)
新居浜市の中心部にある一宮神社でも川西地区のかきくらべが行われます。例年、10月18日の午後の開催です。
③一宮の杜ミュージアム
一宮神社の南参道に設けられる「一宮の杜ミュージアム」も人気の会場です。ひな壇状の有料観覧席でかきくらべを見ることができます。
2024年の一宮の杜ミュージアムでの開催情報&チケット購入は次の通り。
《一宮の杜ミュージアムの観覧情報》
●住所
愛媛県新居浜市一宮町1-8-2周辺
●日時
[10月17日(木)]10:30開演
[10月18日(金)]14:30開演
●料金
[前売り券]3000〜3500円
[当日券] 3500〜4000円
●チケット購入フォーム
・観覧チケット通販|一宮の杜ミュージアム
●チケット取扱先
【一宮の杜ミュージアム事務局】
住所:愛媛県新居浜市泉池町10-1銅夢キッチン内
TEL:0897-37-1123
【あかがねミュージアム】
住所:愛媛県新居浜市坂井町2-8-1
TEL:0897-31-0305
●公式サイト
一宮の杜ミュージアム
一宮の杜ミュージアムで担がれる太鼓台(写真:一般社団法人 新居浜市観光物産協会)
【新居浜太鼓祭り】人気の秘密
地元の人たちには、新居浜太鼓祭りを通して「自分たちが築いてきた太鼓台と磨きあげた技を通して祭りを楽しむ」という習慣が根付いています。
「盆/正月は帰らずとも、祭りには必ず参加する」という強い思い入れを持つ地元民が大半を占めるため、地元企業では祭り期間中は特別休暇を設定するほどの熱狂ぶりです。
この熱狂や盛り上がりがニュースや記事などを通して県外の人にも伝わり、観光客が集まるようになりました。人気の秘密は、地元の人々の熱量、太鼓台の豪華絢爛さ、差し上げや寄せ太鼓などの妙技を見て感じて、思わず心が揺さぶられるからでしょう。
新居浜太鼓祭りに参加する人々の姿
番外編「鉢合わせ」
新居浜太鼓祭りは、かつては日本三大喧嘩祭りと称されました。興奮が高まると「鉢合わせ」という太鼓台をぶつけ合うことがたびたびありました。
この鉢合わせによってけが人や死者が出たため、鉢合わせは禁止とされ、もし鉢合わせを行った場合は太鼓台の解体や次年度の祭りへの出場停止などの重い処分が下されます。
しかし、鉢合わせには至りませんが、太鼓台同士がにらみ合いをして小競り合いする「いざり」や小さな喧嘩の発生はよくあることです。2022年も乱闘騒ぎで10人が緊急搬送されたため、安全な運営が求められています。
観覧中に喧嘩が起こりそうになった場合は、太鼓台には近づかず速やかに安全な場所に避難してください。
2024年の日程・開催情報
新居浜太鼓祭りは通常、毎年10月16日から18日までの3日間で開催されます(一部地域は15日から17日)。2024年の日程も次の通りです。
日程
[大生院地区]
2024年10月15日(火)〜17日(木)
[その他の地区]
2024年10月16日(水)〜18日(金)
場所
愛媛県新居浜市内の沿岸寄りの各地区
・大生院地区
・川東地区
・川東西部地区
・川西地区
・船木地区
・角野地区
・泉川地区
・中萩地区
時間
太鼓台の運行時間は地区や日により異なります。詳細は、新居浜市公式サイトの「新居浜太鼓祭り」のページ内、「令和6年度主な運行予定」からご確認ください。
主なかきぐらべ会場と時間
●クスリのアオキ大生院店(フレッシュバリュー大生院店)
※夜太鼓
2024年10月16日(水)
18:00〜21:00
11台
●イオンモール新居浜
※夜太鼓
2024年10月16日(火)
18:00〜20:00
10台
●河川敷公園
2024年10月17日(木)
10:00〜12:30
15台
●山根グラウンド
2024年10月17日(木)
13:00〜17:00
20台
●多喜浜駅前
2024年10月17日(木)
17:20〜20:00
15台
●八旛神社
2024年10月18日(金)
14:10〜19:40
15台
●一宮神社(いっくじんじゃ)
2024年10月18日(金)
15:00〜18:00
12台
●住友化学工場前
2024年10月17日(木)
15:00〜16:30
12台
かきくらべ会場マップ
新浜市太鼓祭りの最寄り駅・最寄りIC
①JR予讃線[多喜浜駅]
②JR予讃線[新居浜駅]
③JR予讃線[中萩駅]
④松山自動車道[新居浜IC]
⑤松山自動車道[いよ西条IC]
関連サイト
・新居浜太鼓祭り|新居浜市
・特集 新居浜太鼓祭り|にいはま紀行
・上部地区統一寄せ|上部地区太鼓台
・一宮の杜ミュージアム
おわりに
2024年の新居浜太鼓祭りは平日開催となりそうですが、ぜひ休みを取って新居浜太鼓祭りを見に行ってみませんか?
昔から人々を魅了してやまない、華やかな太鼓台と熟練の技をぜひ体感してみてください。
Text:Yoshiyuki Nukada Edit:Sakura Takahashi/Erika Nagumo
Photo:PIXTA(特記ないもの)
参考:
新居浜太鼓祭り|一般社団法人 新居浜市観光物産協会/令和4年新居浜太鼓祭りについて|新居浜市公式webサイト/運行表(R.4)|新居浜市公式webサイト/太鼓台の運用と統制|新居浜市公式webサイト/新居浜太鼓祭り|新居浜市公式webサイト/太鼓台の歴史概説|新居浜市公式webサイト/守ろう貴重な産業遺産「山根グラウンド観覧|新居浜市公式webサイト/一宮の杜webサイト/一宮の杜ミュージアム|一宮の杜webサイト/チケット販売|一宮の杜webサイト/公益財団法人 新居浜市文化体育振興事業団webサイト/新居浜市公式webサイト/2019年運行予定|新居浜市公式webサイト/新たな登録有形文化財 (1) 山根競技場観覧席 |新居浜市公式webサイト/新居浜市役所 .@niihama_city .(2018年10月16日) . [【新居浜太鼓祭り日程表】 昨日から市内各地で新居浜太鼓祭りが始まりました!今日も朝から太鼓の音が聞こえています♪今年は天候にも恵まれそうです。事故のない平和な秋祭りにしましょう!!(秘書広報課)] Retrieved from <リンク先>/一宮神社|一般社団法人 愛媛県観光物産協会webサイト/太鼓祭り 暴力どう排除|読売新聞オンライン(2022年10月30日)(2023年9月5日閲覧)/まいぷれ 新居浜太鼓祭り特集新居浜太鼓祭り期間中の駐車場・交通機関