- 宇和島城の魅力7選
- 魅力1:重要文化財に指定された装飾の美しい天守
- 魅力2:天守とともに現存している建造物「上り(のぼり)立ち門」
- 魅力3:移築された「藩老桑折氏武家長屋門」
- 魅力4:時代により積み方が異なる石垣
- 魅力5:築城の天才・藤堂高虎が考案した五角形の堀
- 魅力6:自然豊かな登城ルート
- 魅力7:宇和島伊達氏の家紋が配された御城印
- 宇和島城の歴史
- 築城の時期は不明-戦国時代にはあった!
- 戦国武将・藤堂高虎による改修
- 宇和島伊達氏の始まりと伊達宗利による改築
- 宇和島城の基本情報・アクセス・駐車場情報
- 【宇和島といえば?】郷土料理や名産品
- 宇和島城周辺で行われている催し事
- 宇和島城の周辺観光情報
- まとめ
宇和島城は江戸時代から現存している「現存12天守」のひとつ。宇和島市の代表的な観光地となっており、全国から多くの人が足を運んでいます。とくに歴史好きの人には必見のスポット。宇和島城は藤堂高虎(とうどう たかとら)や伊達秀宗(だて ひでむね)とのつながりがあり、往時を思わせる見どころが随所にあります。
本記事では宇和島城の魅力や歴史、周辺の観光情報について詳しく紹介します。歴史について詳しくない方でもわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
TOP画像:(一社)愛媛県観光物産協会 提供
協力:宇和島市教育委員会/宇和島市観光物産協会
宇和島城の魅力7選
標高73mの山に天守が立っています
宇和島城は歴史的建造物としての魅力が多く詰まった観光スポットです。宇和島城の魅力を7つに分けて紹介します。
●魅力1:重要文化財に指定された装飾の美しい天守
●魅力2:天守とともに現存している建造物「上り(のぼり)立ち門」
●魅力3:移築された「藩老桑折氏武家長屋門」
●魅力4:時代により積み方が異なる石垣
●魅力5:築城の天才・藤堂高虎が考案した五角形の堀
●魅力6:自然豊かな登城ルート
●魅力7:宇和島伊達氏の家紋が配された御城印
魅力1:重要文化財に指定された装飾の美しい天守
宇和島城の天守には破風が多く見られます。逆に鉄砲を撃つための「狭間(さま)」や「石落(いしおとし)」はありません
現存している宇和島城は1666年に宇和島伊達氏の2代目宇和島藩主・伊達宗利(だて むねとし)が改修した天守。江戸時代に築城され、今もなお天守が残っている「現存12天守」のひとつで、国の重要文化財にも指定されています。
天守は3重3階の層塔型(※1)で、上の階層になるにつれて徐々に部屋の面積が狭くなる構造をしていることが特徴です。
壁には白い漆喰が塗られており、黒い屋根と白の壁のコントラストが見事。屋根には破風(※2)や懸魚(※3)が細かく装飾されており、建築美に優れた天守となっています。
※1 層塔型:天守の建築様式のひとつで、同じ形の建物を規則的に小さくしながら積み上げていくものを指します
※2 破風(はふ):屋根の三角に見える部分のこと
※3 懸魚(げぎょ):天守のほか神社や寺など日本建築に施される装飾の一種。屋根の破風部分に取り付けられる魚のような形の飾りのこと
魅力2:天守とともに現存している建造物「上り(のぼり)立ち門」
「上り立ち門」も江戸時代から現存する建造物で、宇和島市指定の文化財です
上り立ち門は宇和島城の南口にある登城口で、もともとは城の搦手筋(からめてすじ=裏通路のこと)にある門でした。災害や戦火などで宇和島城内のあらゆる建物が倒壊しましたが、天守と上り立ち門の2つは今もなお残っています。
上り立ち門は本柱と控柱の2本で屋根を支えている薬医門です。間口が3.64m、奥行き2.15mで現存する薬医門では最大級のものであると言われています。
また、木材が1430年~1530年以後に伐採された木材であることから、宇和島伊達氏以前の城主である藤堂高虎が建てた門だと考えられています。このことから、現存する中では最古の薬医門である可能性があります。
門の周辺には宇和島出身の裁判官「児島惟謙〔こじま これかた〕」の銅像もあります。児島惟謙は1891年に現在の滋賀県大津市で起きた、日本の警察官がロシア皇太子を斬りつけた「大津事件」の時に大審院長(現在の最高裁判所長官)を務めた人物です。その際、司法の独立を政府から守り抜いたことで「護法の神」として高い評価を得ました。
魅力3:移築された「藩老桑折氏武家長屋門」
「藩老桑折氏武家長屋門」も「上り立ち門」と同様、宇和島市指定の文化財です
藩老桑折氏武家長屋門は宇和島城の駐車場から一番近くに位置する門です。宇和島藩の家老である桑折(こおり)氏の屋敷にあった長屋門でしたが、現在の位置に移りました。
移築前は間口が35m、奥行き4.1mと非常に大きな建造物でしたが、移築後に間口15mと原型から短くなっています。
魅力4:時代により積み方が異なる石垣
宇和島城は築城・改修された時期によって石垣の積み方が異なり、城内ではさまざまな姿の石垣を見ることができます。
中でも以下の4カ所の石垣が特徴的なので、宇和島城に訪れた際はぜひ鑑賞してみてはいかがでしょうか。
●長門丸石垣(ながとまるいしがき)
17世紀後半に築かれ長い石材と短い石材を交互に積み重ねる「算木積み」が活用された石垣
●本丸石垣
2つの加工石材を用いて積み上げたものと、自然石を用いて積んだ「野面積み」がある石垣
●藤兵衛丸石垣(とうべえまるいしがき)
藤堂高虎が築城したと推定される、自然石を積み上げた「野面積み」の石垣。反りを持たない直線的な形状が特徴です。
藤兵衛丸石垣は宇和島城内で2番目に高い石垣です(写真提供:宇和島市)
●代右衛門丸石垣(だいえもんまるいしがき)
あらゆる時代の積まれ方で構成されている石垣です。
代右衛門丸で見られるさまざまな石垣。左上の高石垣は高さが15mあり、城内でもっとも高い石垣です(写真提供:宇和島市)
魅力5:築城の天才・藤堂高虎が考案した五角形の堀
五角形の堀のイメージ(写真:地理院地図)
現在は埋められているため見ることはできませんが、藤堂高虎によって築城されたときは空から見ると城郭が不等辺な五角形になっていました。
これは、城郭を攻めに来た敵が四角形だと思い込み一辺の攻撃が手薄になるよう、藤堂高虎があえて五角形に設計したものという伝説があります。一辺の攻撃が薄くなることで、敵の死角となり、そこから逃亡や出撃、物資の搬入などが可能になるとされています。
このように藤堂高虎がいかに築城に長けていたかがわかる城として、宇和島城は知られています。
魅力6:自然豊かな登城ルート
天守までの道のりはハイキング気分で楽しめます
宇和島城は緩やかな丘の上にあり、道中さまざまな植物が見つけられます。300年以上残っている木々や草木など自然鑑賞にもおすすめです。
歴史的建造物と自然が合わさり、まるで別世界に来たような雰囲気を味わえます。
また、天守からは宇和島市の街並みや山、海の絶景を一望できます。
魅力7:宇和島伊達氏の家紋が配された御城印
宇和島城では登城の記念として御城印を購入できます。天守で販売されており、1枚300円で購入が可能です。御城印には宇和島伊達氏の家紋の「宇和島笹」と呼ばれる、「竹に雀紋」が描かれています。
宇和島城を訪れた記念や御城印集めに購入してみてはいかがでしょうか?
宇和島城の歴史
宇和島城の歴史について、以下の2つが築城に関わる大きな出来事として知られています。
●戦国武将・藤堂高虎による改修
●宇和島伊達家の始まりと伊達宗利による改築
歴史を知ることでより宇和島城についてより深く楽しめるかもしれませんので、ぜひ参考にしてみてください。
築城の時期は不明-戦国時代にはあった!
築城の時期は不明ですが、戦国時代には城として存在しており、西園寺宣久(さいおんじ のぶひさ)や戸田勝隆(とだ かつたか)などが城主となり、藤堂高虎が城主になるまで次々と城主が変わりました。
また、戦国時代では地名が「宇和島」ではなく「板島」と呼ばれており、城の名前も「板島丸串城(いたじままるくしじょう)」という名前でした。
戦国武将・藤堂高虎による改修
戦国武将の藤堂高虎によって、宇和島城は本格的な城に改修されました。
藤堂高虎は徳川家康や豊臣秀吉に仕えたことのある武将。築城の名人と知られており、黒田孝高(くろだ よしたか)や加藤清正(かとう きよまさ)と並び「築城三名人」のひとりです。層塔型天守の考案者で、江戸城や大坂城の築城にも携わりました。
藤堂高虎は1595年に豊臣秀吉の直臣となった際、宇和郡(現・愛媛県西部)のうち7万石を与えられ、板島丸串城の城主となりました。
その6年後に板島丸串城を自分の居城として改修します。当時建設した天守は現存のものと異なり、大きな入母屋2層と1層の物見で構成されている望楼型の天守でした。
しかしその後、藤堂高虎は板島丸串城を去ります。1608年には今治城を居城とし、同年には伊勢の津藩主になりました。
宇和島伊達氏の始まりと伊達宗利による改築
藤堂高虎が去った後は宇和島伊達氏の時代に。
1614年、徳川家康が豊臣家を滅ぼすために起こした大坂冬の陣。その戦いで徳川についた伊達政宗(だて まさむね)と長男の伊達秀宗(だて ひでむね)は、参陣した功績として宇和郡の十万石を与えられ、秀宗が藩主となりました。
ここから宇和島伊達氏が始まり、明治時代まで城主を務めます。1666年に宇和島伊達氏の2代目宇和島藩主・宗利(むねとし)が城を改修し、現存している宇和島城となります。
宇和島城の基本情報・アクセス・駐車場情報
●住所 :愛媛県 宇和島市丸之内
●開館時間:
11月〜2月 6:00〜17:00 ※天守開館は9:00〜16:00
3月〜10月 6:00〜18:30 ※天守開館は9:00〜17:00
●休館 :無休
●入場料 :天守入場大人200円
●アクセス:
JR予讃線・予土線「宇和島」駅から徒歩約10分
●駐車場 :46台(1時間100円)
●公式サイト:宇和島城(宇和島市)
※2023年2月時点の情報です。
【宇和島といえば?】郷土料理や名産品
宇和島市には郷土料理や名産、民俗文化財なども多くあります。宇和島ならではの食文化や伝統をより深く味わいたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
宇和島鯛めし
船上での酒盛りの〆に食べていたのが宇和島鯛めしのはじまり(写真:宇和島市観光物産協会)
特製のタレに漬け込んだ鯛の刺身と薬味を混ぜ合わせ、ご飯の上にかけて食べるのが宇和島の鯛めし。愛媛県のほかの地域の鯛めしとは違うオリジナリティある料理となっています。宇和島鯛めしが食べられるお店や、おいしい食べ方は宇和島鯛めし協同組合のホームページで紹介されています。
鯛そうめん
錦糸卵やしいたけの含め煮、ネギものった鯛そうめんは見た目にも華やか(写真:宇和島市観光物産協会)
煮付けた鯛1匹とそうめんを一緒の皿に乗せ、鯛の出汁をたっぷりかけていただく郷土料理。地域によってはカラフルな5色そうめんを用いる場合もあります。
じゃこ天
酒の肴や食卓の一品にぴったりのじゃこ天は、お土産にも喜ばれます(写真:宇和島市観光物産協会)
じゃこ天は宇和島の郷土料理。宇和島は江戸時代からねりものの名産地として知られており、伝統的な味を楽しめます。宇和島のじゃこ天は、宇和海で獲れた新鮮なホタルジャコを使います。
さつま
焼いた魚のアラでとった出汁と麦味噌、刻んだみかんの皮がベストマッチ(写真:宇和島市観光物産協会)
愛媛の宇和島市を含む南伊予の郷土料理。焼いてほぐした白身魚と麦味噌を混ぜてすりつぶします。そこに出汁を加えて、あつあつの麦飯にかけていただきます。
宇和島真珠
美しい形・光沢の宇和島真珠(写真:宇和島市観光物産協会)
宇和島の入り組んだ海岸の静かな海で養殖される宇和島真珠は最高級品。海岸の形や急傾斜による水深の深さ、潮の流れなどにより、宇和島の海では加工せずとも美しい輝きを持つ真珠が育つのです。
宇和島闘牛
宇和島闘牛は牛と勢子(せこ=牛に寄り添い介助する人)の距離が近いのが特徴(写真:宇和島市観光物産協会)
宇和島では牛同士を戦わせる定期闘牛大会を、宇和島市営闘牛場で年に4回開催。体重1トン級の牛が激しくぶつかり合い、闘牛場は熱気に満ちます。
宇和島城周辺で行われている催し事
宇和島城周辺では毎年数々のお祭りが催されています。 以下に代表的な祭りを3つ記載していますので、お祭りが好きな方はぜひ見物してみては。
うわじま牛鬼(うしおに)まつり
2本の角が生えた頭に長い首、茶色の毛に覆われた「牛鬼」は迫力満点(写真:宇和島市観光物産協会)
「牛鬼」と呼ばれる全長5~6メートル、重さ300kg以上の山車が町なかを練り歩くお祭り。牛鬼は神輿の先導役として悪霊を祓い、神輿が通る道を清めます。まつりでは20体ほどの牛鬼が市内中心部を進みます。うわじま牛鬼まつり期間中は宇和島おどり大会、海上花火大会など、さまざまな催しも開催されますよ。
●開催日時:2023年7月22日〜24日
●公式サイト:うわじま牛鬼まつり
和霊大祭(7月23日・24日)
3体の神輿が、須賀川に建てられた1本の御神竹(ごしんちく)の周りに集まります(写真:宇和島市観光物産協会)
毎年7月23日、24日に開催される祭り。祭りの最終日に「走り込み」という特殊神事が行われ、祭りが最高潮を迎えます。
●開催日時:2023年7月23日・24日
●公式サイト:和霊神社 年間行事
八ツ鹿踊り(10月29日)
少年8人が踊り手を担う八ツ鹿踊り(写真:宇和島市観光物産協会)
宇和津彦神社の祭礼で、雄鹿役の7人と女鹿役の1人、合計8人の踊りが奉納されます。鹿踊りは東日本で広く見られますが、西日本で行っているのは愛媛県南予地方だけ。宇和津彦神社の八ツ鹿踊りは仙台地方のしし踊りに由来します。伊達氏が宇和島藩主を務めるようになってから伝えられ、以来400年以上受け継がれています。
●公式サイト:市指定 八ツ鹿踊り(宇和島市)
宇和島城の周辺観光情報
宇和島城以外の宇和島市の観光地についてまとめました。宇和島城以外にどこを観光しようか悩んでいる方はぜひご覧ください。
遊子水荷浦の段畑(ゆすみずがうら の だんばた)
遊子水荷浦の段畑。畑で育てられた男爵薯が収穫される春は収穫祭が行われます
急な斜面に石垣を積み上げて造られた畑。 国の重要文化的景観に登録されており、畑では毎年男爵薯(だんしゃくいも)が生産されています。
●住所:愛媛県宇和島市遊子水荷浦2323-3
●参考サイト:遊子水荷浦の段畑(うわじま観光ガイド)
天赦園(てんしゃえん)
園内には梅や藤、花菖蒲などが植わり、四季折々の花をつけます
宇和島伊達家7代藩主の宗紀が隠居の場所として作った庭園。 伊達政宗が隠居後詠んだ漢詩から天赦園と名付けました。
●住所:愛媛県宇和島市天赦公園
●参考サイト:天赦園(うわじま観光ガイド)
薬師谷渓谷
薬師谷渓谷の岩戸の滝(写真:いよ観ネット)
宇和島市街地から車で15分で行ける渓谷で、巨大な岩の合間に落ちる岩戸の滝や雪輪の滝など清流を感じることができるスポットとなっています。
●住所:愛媛県宇和島市薬師谷
●参考サイト:薬師谷渓谷(うわじま観光ガイド)
畦地梅太郎(あぜち うめたろう)記念美術館
「山男」シリーズの版画作品で知られる畦地梅太郎の世界にひたれます(写真:宇和島市観光物産協会)
宇和島市出身の画家・作家、畦地梅太郎の作品が約400点所蔵されている美術館です。ミュージアムショップでは畦地梅太郎の関連グッズも販売。また、道の駅みまが併設されており、宇和島市の名産品やお土産を購入できます。
●住所:愛媛県宇和島市三間町務田180-1
●参考サイト:畦地梅太郎記念美術館(いよ観ネット)
宇和島市立歴史資料館
国の登録有形文化財に指定されている貴重な建物。中も見学できます(写真:いよ観ネット)
1884年(明治17年)に宇和島警察署として建てられたものを改築した歴史資料館。当時の最先端の建設技術が使われており、 当時はまだ珍しかった西洋風の建設物であることから歴史的に価値があると考えられています。
●住所:愛媛県宇和島市住吉町2-4-36
●参考サイト:宇和島市立歴史資料館(いよ観ネット)
まとめ
宇和島城は戦術的に優れたお城で、歴史的にも非常に価値のある建造物です。歴史について詳しくない方でも自然散策として楽しむことができるため、宇和島や南伊予に観光する方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
text:Koki Noda edit:Erika Nagumo
photo:(特記ないもの)PIXTA
参考文献:『ビジュアル事典 日本の城』(三浦正幸監修/岩崎書店)、『これだけは知っておきたい 教科書に出てくる日本の城 西日本編』(これだけは知っておきたい 教科書に出てくる日本の城編集委員会/汐文社)、『城105!2巻』(日本城郭協会監修/フレーベル館)、各種パンフレット