鹿児島県指宿の名物「砂むし温泉」とは
「特急 指宿のたまて箱」に乗って指宿へ
地元民が教える!砂むし温泉スポット
1.休暇村指宿
2.山川砂むし温泉 砂湯里
3.砂むし温泉 指宿白水館
まとめ

鹿児島県の薩摩半島南部に位置する「指宿(いぶすき)市」は、砂に埋もれた状態で体を温める「砂むし温泉(砂風呂)」で知られています。およそ300年前から湯治客に愛されてきたといわれるユニークな温泉には、どのような秘密と効能があるのでしょうか?

今回は、鹿児島市と指宿市を結ぶ列車「特急 指宿のたまて箱」に乗車して、指宿へ。たくさんある砂蒸し風呂の中から、地元民がおすすめする砂むし温泉スポットにご案内します。ぜひ次の鹿児島観光のヒントにしてください。

鹿児島県指宿の名物「砂むし温泉」とは

砂むし温泉に入っている様子

体の芯からじっくり温まる砂むし温泉

300年以上の歴史を誇る砂むし温泉

鹿児島を代表する温泉地のひとつ、指宿市。普通の温泉はもちろん、ここならではの一風変わった温泉、「砂むし温泉(砂風呂)」を楽しめることでも全国的に有名です。砂むし温泉とは、文字通り砂を使った蒸し風呂のことで、湯治客が列になって砂に埋れている(=入浴している)風景はインパクト抜群です。

天然砂むし温泉の泉質はナトリウム塩化物泉であり、効用としては神経痛・リウマチ・腰痛・こわばり・不妊症・虚弱児・糖尿病・五十肩・膝関節痛・脳卒中後麻痺・骨折・冷え性・更年期障害等の痛み・胃腸病・冷え性を伴う疾患に効果があるとされています。

近年ではSNSでも注目されている砂むし温泉ですが、歴史は古く、およそ300年前の時代までさかのぼります。300年以上も昔から地元の地域の人や湯治客から愛されてきた秘密は、血液の循環促進や、大量の汗を流すことによる老廃物の排出といったデトックスの効能、炎症性・発痛性物質の洗い出しにより十分な酸素を供給し身体をリフレッシュさせるだけでなく、「砂に寝そべる」ことで得られるリラックス効果にもありそうです。

砂むし温泉看板

地元の人から観光客まで幅広く愛されている

砂蒸し温泉が指宿に根付いたワケは?

火山の多い日本では、全国いたるところに温泉があります。また四方を海で囲まれている関係で、海岸などの「砂」も豊富です。ではなぜ「温泉+砂」という組み合わせの砂むし温泉が、ここ指宿で有名になったのでしょうか?

残念ながら、300年前に砂むし温泉が始まった由来や、それが現在まで継承されてきた特別な理由は現在も不明です。少なくとも、砂浜の地下から豊富な温泉が湧き出す指宿では、「暖められた砂に浸かる(埋まる)」ことは誰でも楽しめる気軽な入浴方法だったに違いありません。

温泉熱で玉子やいもを蒸す

地下から湧き出す温泉熱は砂むし以外にも活用されている

砂むし温泉の入り方と注意点

砂むし温泉と一般の温泉は、入り方がまるきり違います。砂むし温泉を楽しく安全に楽しむためにも、きちんとした入り方や注意点を覚えておきましょう。

砂むし温泉の壁時計

砂むし温泉に入るときは「時間」に気をつけて

砂むし温泉では、受付で説明を聞いた後に、入浴客は専用の浴衣を着用して、砂の上に仰向けに寝転がります。それから係員がスコップなどで全身に砂をかけ、入浴客は砂から頭だけを出した状態になります。あとはサウナと同様、じっとしながら体がポカポカと温まるのを待つだけです。

このとき注意したいのは入浴時間。

個人差や体調にもよりますが、約10〜15分程度を目安にして砂から起き上がるのが一般的です。無理に長く入り続けると湯あたりを起こすほか、場合によっては低温やけどの危険もあります。いったん砂に埋れたあとは自己管理が基本なので、柱や壁に掛けられた時計を見ながらちょうどよいタイミングを見極めてください。

「特急 指宿のたまて箱」に乗って指宿へ

ツートンカラーの指宿のたまて箱

珍しい「縦」のツートンカラーが目を引く車両

「特急 指宿のたまて箱」とは?

指宿温泉を目指して鹿児島市から指宿市へと向かうなら、ぜひJR九州が誇る「特急 指宿のたまて箱」に乗車してみて。有名な工業デザイナー、水戸岡鋭治氏が手がけた車両は天然の木材を使った内装や遊び心あふれる仕掛けが満載で、1日3便の列車がすぐに予約で埋まってしまうほどの人気です。

「特急 指宿のたまて箱」のボディは白と黒のツートンです。上下ではなく左右のツートンカラーというのは、他の列車ではなかなかお目にかかれません。

ユニークなカラーの由来は、指宿とゆかりの深い「竜宮伝説」にちなんでいます。竜宮城から持ち帰った「たまて箱」の煙を浴び、浦島太郎の黒髪が白髪に変ったというエピソードから白と黒がイメージされたとのこと。

車両から吹き出す煙

ドアの上から煙が噴き出すサービスも…

「たまて箱」という名前のイメージ通り、各駅に列車が到着するとドアの上から白い煙(ミスト)が噴き出します。もちろん煙を浴びても白髪になることはないのでご安心を。

指宿のたまて箱のカウンター席

海側の景色を一望できるカウンター席

沿線の風景、特に海岸沿いの景観を楽しむために座席レイアウトが工夫されているのも、観光特急らしいポイント。海を見ながらゆったりくつろぎたいなら、カウンター席の予約は欠かせません。

書斎のようなソファーシート

ひとり旅にぴったりな落ち着きのあるソファーシート

車内には海や伝説に関連する本を収めた本棚と薩摩半島の民芸品などを収めたキャビネットがあり、さらにその間には座り心地の良いソファーシートも設置されています。まるで書斎のような落ち着いた雰囲気は、静かに旅を楽しみたい人にぴったり。海沿いを走る電車に揺られながら、のんびりと鹿児島の旅を満喫してください。

こども席

遊び心のある子供席

こじんまりしたカウンターの前には、子供サイズのシートも。親子連れにうれしい仕掛けです。

記念のスタンプ 記念乗車証にスタンプを押して旅の記念に

「特急 指宿のたまて箱」の車内では軽食やオリジナルグッズの車内販売が行われていますが、乗客全員が無料でもらえるお土産もあります。それがオリジナルの「記念乗車証」。表には列車のイラストが描かれ、裏はスタンプ台紙になっているので、車内に置かれているオリジナルスタンプを押して旅の記念にしましょう。

旅の気分を盛り上げてくれる、オリジナルの車内販売メニューも要チェック。車内で購入できる軽食・スイーツは、白黒ツートンの「いぶたまプリン」や「カメロンパン」など、どれも「特急 指宿のたまて箱」をイメージしたここでしか食べられないものばかり。車窓から見える錦江湾(きんこうわん)と桜島を眺めながら、旅のお供にぴったりなオリジナルメニューを楽しんでみてはいかがでしょうか。

「特急 指宿のたまて箱」はどの席も指定席のため、事前に指定席きっぷを購入する必要があります。金額などはこちらよりご確認ください。

地元民が教える!砂むし温泉スポット

ここからは、鹿児島県在住の地元ライターが教える指宿のおすすめ砂むし温泉(砂風呂)を3スポットの情報を紹介していきます。いずれも指宿駅から無料送迎バスが出ていたり、公共交通機関で直行できたりと好アクセス。砂むし温泉でたっぷり汗をかいた体にうれしい、天然温泉にも入れる施設もありますよ。ぜひチェックして、旅の参考にしてみてください。

1.休暇村指宿

指宿休暇村エントランス

広々とした休暇村指宿のエントランス

「休暇村指宿」は、指宿の自然や温泉を宿泊しながらでも楽しめるリゾート施設です。指宿駅からはタクシーもしくは路線バスに乗車し、約10分ほどで到着します。

休暇村の砂むし温泉

休暇村指宿の砂むし温泉は全天候型

休暇村指宿の砂むし温泉は、全天候に対応した室内型。雨でも快適に入浴できるため、天気が悪くなると立ち寄り入浴のお客さんが増えるそう。

同館の砂むし温泉は事前予約は受け付けていません。到着後、フロントで受け付けを済ませ、会場へと進みます。砂むし温泉を満喫したあとは、砂をある程度落とし、シャワーで汗を流すだけでなく、そのまま館内の温泉に入浴できるというのもうれしいポイントです。大浴場でリフレッシュしましょう。

休暇村の温泉

館内には貸し切りの半露天風呂も

砂むし温泉だけでなく、錦江湾を眺めながらたっぷりのお湯に浸かれる半露天風呂「癒湯(ゆゆ)」もおすすめ(有料)。目の前に広がる大きな窓からは、錦江湾のロケーションを一望できます。こちらは事前予約制です。

指宿休暇村の売店

指宿みやげ・鹿児島みやげが揃う売店

入浴の後は、芋焼酎や鹿児島の郷土菓子「かるかん」などが並ぶ売店もチェック。指宿ならではのお土産が見つかるかもしれません。

2.山川砂むし温泉 砂湯里

砂湯里外観

砂湯里は気軽に入れる「砂むし保養施設」

「山川砂むし温泉 砂湯里」は、30年以上にわたって愛されてきた砂むし専門の保養施設です。創業当初は地元の入浴客が多かったとのことですが、今では外国人旅行者の姿も珍しくありません。指宿駅から車で約15分、レストランや絶景の露天風呂を楽しめる「ヘルシーランド」の一角に位置しています。

指宿駅からヘルシーランドまでは鹿児島交通のバスで行くことができるほか、ヘルシーランド内でも露天風呂と砂むし温泉間で無料送迎バスが運行しているため、車がなくても快適にアクセスできます。

砂湯里の砂むし温泉

屋外型で開放感たっぷりの砂むし温泉

砂湯里で砂風呂に入る様子

スタッフが砂をかけてくれる

指宿の砂むしといえば、砂浜に並んで砂に浸かる(埋まる)イメージがありますが、砂湯里は、まさにイメージ通りの砂むし温泉です。

こちらの砂むし温泉は、伏見温泉という天然温泉の熱を利用して温めた砂を使っています。神経痛やリウマチをはじめ、貧血や冷え性、全身美容といった女性にうれしい効能も期待できる伏見温泉。細かい砂たちが体をびっしりと覆い、体の芯からじんわりと温めてくれます。

砂むし温泉からの景色

東シナ海の波が打ち寄せる絶好のロケーション

指宿の中心街から少し離れた「山川」という場所にあるため、砂湯里の眼の前には東シナ海からの波が打ち寄せてきます。波の音を聞きながら砂むしに浸かれば、ヒーリング効果もばっちり。

温泉の湯気で作る蒸し玉子とさつまいも

温泉の蒸気で火を通したタマゴやサツマイモを味わえる

砂湯里の入り口では、温泉の蒸気を利用してタマゴとサツマイモを蒸しています。値段はなんと、それぞれ50円という安さ。セルフ方式なので、横の箱にコインを入れたら好きなものを選んでいただきましょう。

3.砂むし温泉 指宿白水館

白水館エントランス

風格ある「指宿白水館」のエントランス

指宿駅からタクシーで7分、松と錦江湾に囲まれた自然豊かな高級旅館「指宿白水館」。日本庭園を思わせる広い敷地の中には、客室の建物に加えてブライダル施設、ミュージアムなども併設しています。

白水館の砂むし温泉

全天候型の砂むし温泉は大人数にも対応可能

同館で楽しめる砂むし温泉は、鮮やかな芝生の庭園やその先に広がる海を眺めながら楽しめる全天候型。定期的に砂の入れ替えを行なっているため、衛生面も安心です。ゆったりとした上質な空間に包まれながら砂むし温泉を楽しめば、心も体も癒されリフレッシュできるはず。

白水館「元禄風呂」

和の情緒があふれる「元禄風呂」

同館では、日帰りでの砂むし温泉のみの利用はできないため、外来利用をする場合は内湯「元禄風呂」とのセットでの受け付けとなります。

砂むし温泉と繋がっている「元禄風呂」は、江戸の温泉文化をイメージした約1,000坪の大浴場。江戸情緒を感じられる風呂の中では、江戸石榴風呂、樽風呂、窯風呂など、個性豊かなお風呂をゆっくり楽しめます。

白水館「焼酎道場」

湯上がりには芋焼酎の試飲もできる

温泉施設のすぐ下にある「焼酎道場」では、食事処で出される焼酎や売店で販売している焼酎を無料で試飲できます。実はここ指宿は、芋焼酎の原料となるサツマイモを琉球から持ち帰った人物・前田利右衛門の出身であるとされています。指宿と芋焼酎は切っても切れない関係。同館の「焼酎道場」で、「森伊蔵」などのプレミア焼酎を気軽に味わってみてはいかがでしょうか。

アクセスはタクシーのほか、無料送迎バスも運行しています。ぜひ併せてチェックしてみてくださいね。

ユニークな観光列車でユニークな温泉を楽しみに行こう

伝説をモチーフにした「特急 指宿のたまて箱」と、長い歴史とともに歩んできた「砂むし温泉」。どちらも指宿観光を楽しむのにぴったりです。観光で鹿児島県を訪れたなら、指宿までちょっと足を伸ばして日頃の疲れを癒やしてみませんか?