「鹿児島市電」は鹿児島を代表する交通手段のひとつ
交通局で「鹿児島市電」を深く知る
「鹿児島市電」に乗ってみよう
「鹿児島市電」のユニークな電車を紹介!
レトロな姿が人気!「かごでん」
貸し切り専用車両「CAFE TRAM KAGOSHIMA C6」
愛らしいデザインの「白くま黒ぶた電車 でんでん」
まとめ

鹿児島市の中心部を走る路面電車「鹿児島市電」は、誕生から100年以上に渡り市民や旅行者に愛されている交通機関。鹿児島市民にとっては身近な存在で、鹿児島に観光に行った際にはほとんどの人が一度は利用する公共交通機関のひとつです。なじみ深い存在ながら、一方で、市電を安全に運行するための整備の様子や、さまざまな役割や個性を持つ特別な電車たちについてはあまり知られていません。

今回は、鹿児島市交通局が一般向けに提供する「施設見学」を中心に、市電の魅力情報や楽しみ方について紹介します。

「鹿児島市電」は鹿児島を代表する交通手段のひとつ

街を走る鹿児島市電

鹿児島市内を走る市電

ラッシュ時の渋滞にもほとんど影響されず、早朝と深夜以外なら5〜7分間隔で運行している鹿児島市電。運賃は一回乗車あたり170円(小学生以下は80円)とリーズナブルに利用できます。

運行区間は「JR 鹿児島駅」と「JR 谷山駅」手前をまっすぐ結ぶ約40分のルートと、「JR 鹿児島中央駅」を経由する約30分のルートの2系統で、軌道(線路)の総延長は13.1km。3つのJR駅はどれも鹿児島市内の主要駅なので、鹿児島市を訪れる旅行者にも重宝されています。

運行時間は電停や行き先によって違いますが、利用者の多い「鹿児島中央駅前電停」では、朝の5:00台〜22:00台。夜は終電を逃さないよう注意が必要です。時刻表は鹿児島市交通局のホームページにて確認してくださいね。

100年以上の歴史を持つ「鹿児島市電」

1960年につくられた車両

1960年製造の現役車両(2両とも)

鹿児島に初めて路面電車が走ったのは1912年のこと。当初は「鹿児島電気軌道株式会社」という民間会社でしたが、鹿児島市が1928年に会社を買い取って「市営電車(市電)」となりました。

ちなみに現役の車両で最も古いものは1955年製、最新の車両は2019年製です。新旧合わせ、さまざまな形の車両が毎日元気に走り回っています。

最新型はバリアフリーで車内も広々としていますが、1955年〜1962年に製造された旧型車両も「丸っこいボディと丸目のヘッドランプ」が愛嬌たっぷりで人気がありますよ。

時代とともに変化する運行区間

運転区間表

運行ルートも時代とともに変化

現在はJR鹿児島駅とJR谷山駅手前の間を走る鹿児島市電ですが、以前はもっと長い距離を走っていました。マイカーの普及や国道の交通渋滞が増えたことをきっかけに、1985年に2路線(総延長6.1km)が廃止されたそうです。

一方で、路線を新設する動きもあります。現在検討されているのは、観光需要の大きい鹿児島港北埠頭エリア(ウォーターフロント)までの路線延長。もし実現すれば、生活の足・観光の足としてますます便利になりそうですね。

交通局で「鹿児島市電」を深く知る

鹿児島市電の基地

鹿児島市交通局の車両基地

「市民に開かれた交通局」を目指す鹿児島市交通局では、市電や市バスに関する「資料展示室」と電車整備工場の「施設見学」を無料で提供しています。路面電車関連のこういった施設は全国的にも珍しいそうで、県外の同業者が視察に訪れたり、インバウンド向けツアーのメニューに組み込まれたりすることもあるのだとか。

ここでは資料展示室と施設見学の見どころを簡単に紹介します。

鹿児島市電の司令塔「鹿児島市交通局」

鹿児島交通局の建物

鹿児島市交通局の建物

鹿児島市交通局があるのは、鹿児島中央駅から市電で約6分の上荒田町。「神田(交通局前)電停」を降りて横断歩道を渡ると入口があります。建物の1階には定期券やIC乗車券、一日乗車券、グッズなどの販売窓口や発券機、そして3階に「資料展示室」があります。見学する際はまず1階で手続きをしましょう。

■「資料展示室」で鹿児島市電の歴史を学ぼう
鹿児島市電の資料室

市電の歴史に触れる資料展示室

交通局3階の「資料展示室」には、鹿児島市電(と市バス)に関連した模型が展示されています。昔の車両に使われていたパーツや電停の看板、数十年前の紙の切符やパンフレット、開業から2015年まで使われてきた旧交通局のジオラマなど、どの展示物も現在では珍しいものばかり。

大きな窓の外には市電の電車整備工場があり、工場(基地)を発着する電車の様子を眺めることもできます。

窓の外に見える車両基地

ガラス窓越しに車両基地が見える

【資料展示室 基本情報】
住所:鹿児島市上荒田町37-20 鹿児島市交通局 局舎3F
電話:099-257-2111(総務課 庶務係)
開館時間:9:30~16:30
休館日:年末年始(12月31日~1月3日)
料金:無料
備考:月〜金曜は受付台帳への記入、入構許可が必要

珍しい車両に出会える「施設見学」

整備工場の内部

電車整備工場の内部
「施設見学」では、職員の解説付きで電車整備工場の内部を見学できます。こちらは資料展示室とは異なり事前予約が必要ですが、見学料金などはかかりません。施設見学の見どころは、車両整備の様子と、街中ではなかなか見かけない珍しい車両たちです。

案内役の増満さん

案内役の増満博文さん

電車整備工場を案内してくれるのは、電車事業課運輸係の増満博文さん。施設見学を実施する目的について「市電を身近に感じて、どんどん利用してほしい」と語ります。ソフトな語り口とベテランならではの豊富な知識を駆使した説明で、市電の魅力を深く知ることができます。

工場2階の見学通路

工場2階の見学通路

電車整備工場の様子は、主に2階の通路から見学します。整備中の車両や工作機械から十分な距離があるため作業の邪魔にならず、なにより安全! もちろん見晴らしも抜群です。

車輪を削っている様子

車輪を削っている様子

見学できる作業の内容は、主に車両の検査や整備などです。自動車の定期点検や車検のように、電車にも法律で決められた検査があるそう。工場の中では、ボディから切り離した台車を整備する様子や、鉄の車輪を工作機械で削る様子を真上から眺めることができます。

散水電車

夜間に活動する散水電車
珍しい車両に出会えるのも電車整備工場の魅力です。そのひとつが、6tの水タンクとスプリンクラーを搭載した「散水電車」。芝生を敷いた軌道(線路)に水を撒くのが仕事で、主に営業時間外の夜間に活動しています。鹿児島市内に住んでいても、普段はめったに見かけることのない車両です。

芝刈り電車

芝刈り電車

ほかの車両とは明らかに違うこちらの黄色い箱は、全国(全世界)でも珍しい「芝刈り電車」。文字通り軌道上の芝を刈るのが仕事で、散水電車に牽引されて走行します。こちらも活動は夜間なので、普段はめったにお目にかかれません。

ほかにも電車整備工場には、貸切専用のイベント電車や年に数日しか走行しない「花電車」などが格納されています。電車ファンでなくても、鹿児島観光の一部として訪れてみてはいかがでしょうか。

【施設見学 基本情報】
住所:鹿児島市上荒田町37-20
電話:099-257-2116(電車事業課 運輸係)
見学日時:火・木・金曜の 10:30~11:30 / 14:00~15:00
     (休日、12月29日から1月3日を除く)
定員:1回につき20人程度(要相談・先着順)
料金:無料
申込方法:電話、FAX、メールで見学希望日の2日前午前中までに申し込み
     ※前々日が休日のときはその直前の平日まで
     ※受付時間は月〜金曜8:30~17:00まで

「鹿児島市電」に乗ってみよう

鹿児島市交通局で市電について学んだら、実際に市電に乗ってみましょう。といっても、基本的に難しいことは何もありません。ここでは「これさえ覚えておけば大丈夫」という鹿児島市電を利用する上でのポイントをご紹介します。

まずひとつ目のポイントは「電停」です。

鹿児島市電電停

鹿児島市電の電停(停留所)

鹿児島市電の電停は一部を除き道路の中央にあり、乗る際には横断歩道を渡る必要があります。

電停はホームの幅が狭いため、電車から降りてくる人とすれ違う際は要注意。特にキャリーケースのように大きな荷物を持っているときは、ほかの利用客の邪魔にならないよう常に意識しておきましょう。

ふたつ目のポイントは「行き先の確認」です。

市電は1回乗車ごとに運賃を支払うシステムなので、うっかり目的地と反対方向の電車に乗ってしまわないよう確認しましょう。

路線図で目的地を確認

現在地と行き先をしっかり確認

なお、ほとんどの電停は上りと下りのホームが軌道(線路)を挟んで向かい合わせになっています。ホームを間違えたからといって、そのまま軌道を横断しないようにしてください。きちんと横断歩道を渡りましょう。

小銭の用意

小銭の準備を忘れずに!

最後のポイントは「支払方法」。

鹿児島市電には「Rapica(ラピカ)」という専用のIC乗車カードがありますが、一方で「Suica」「PASMO」などほかの電子マネーは使えません。旅行で鹿児島を訪れる場合はあらかじめ小銭を準備しておくか、交通局の窓口などで一日乗車券を購入しておいたほうが良いでしょう。もちろんRapicaを購入するのもおすすめです。

一日乗車券やRapicaを購入できる乗車券発売所は鹿児島市交通局のWEBサイトから確認してください。

「鹿児島市電」のユニークな電車を紹介!

鹿児島市電の車両は全部で58両。ここでは、それらの中でも特にユニークな車両をいくつか紹介していきます。

観光レトロ電車「かごでん」

かごでん外観

レトロな外観の新型車両「かごでん」

最初に紹介するのは、鹿児島市電運行100周年を記念して作られた「かごでん」です。車両のイメージは「大正時代から昭和30年代まで運行していた木製電車」。ボディだけでなく車内の壁や柱も木目ペイントが施されています。

かごでんの車内

車内もレトロな雰囲気

「かごでん」は一般の車両と違い、基本的に休日(土・日曜、祝日)に運行する観光向けの電車。10:00に鹿児島中央駅を出発し、約110分かけて軌道沿いの観光スポットを周遊します。ただし木曜と金曜には観光向けルートではなく、普通の市電として運行しているとのこと。

【かごでん 概要】
運行日:土・日曜、祝日
出発時間:10:00〜
所要時間:約110分
発着場所:鹿児島中央駅前電停
運賃:大人 340円 / 小学生以下 160円(一日乗車券も利用可)

イベント用貸切電車「CAFE TRAM KAGOSHIMA C6」

カフェトラムカゴシマC6

貸切専用の特別電車

「CAFE TRAM KAGOSHIMA C6(カフェトラムカゴシマC6)」は、貸切専用の特別車両です。ベースは1960年製の旧型車両ですが、外装のペイントに加えて車内のカウンターテーブルやカウンターチェアといった、バーのような特別装備が目を引きます。

市内を走りながらのパーティーや「焼酎イベント」「音楽イベント」に使われることが多いそうですが、なかには市内観光をゆったり楽しむために電車を借りる外国人観光客もいるそうです。

カフェトラムの内観

カウンターテーブルとカウンターチェアが特徴的

【CAFE TRAM KAGOSHIMA C6 概要】
運行日時:希望に合わせて調整
運行ルート:希望に合わせて調整
定員:24名
設備:カウンターテーブル、カウンターチェア、マイク、CDプレーヤー
料金:往復 26,800円 / 片道 13,400円(半数以上が小学生以下の場合は半額)

大学生がデザインした「白くま黒ぶた電車 でんでん」

しろくまの車両でんでん

「白くま」をイメージした「白くま黒ぶた電車 でんでん」

最後に紹介するのは「白くま黒ぶた電車 でんでん」。中身は普通の市電で、運行スケジュールも他の一般車両と変わりませんが、かわいらしいデザインが目を引く人気の電車です。

実はこのデザインを考案したのは市内の大学生たち。2011年に行われた「かごしままち巡り推進事業」という地域活性化事業の一環として企画されました。もともとは「鹿児島市平川動物公園」の「白くま」がモチーフでしたが、そこに鹿児島特産の「黒豚」をミックス。左右で違うデザインになったそうです。

でんでんの黒豚側

反対側は「黒豚」のイメージ

ちなみにこの「でんでん」、貸切電車としても利用できます(利用条件はカフェトラムカゴシマC6と同じ)。

鹿児島観光は「鹿児島市電」をぜひ利用してみて

100年以上も走り続けてきた鹿児島市の路面電車。正確な運行スケジュールや利用しやすい運賃、そしてユニークな車両は旅行者にとっても理想的です。鹿児島市を訪れる際は、ぜひ市電を積極的に利用してみてください。

もちろん時間があれば施設見学に参加したり、貸切電車を利用するのもおすすめ。それぞれのスタイルに合わせて鹿児島市電を楽しんでくださいね!