都内屈指の繁華街・六本木。バーやクラブなど煌びやかな夜の街というイメージだけでなく、アートやファッション、エンターテイメントなどさまざまな文化の中心地として発展してきた地域です。
そんな文化・芸術の発信地である六本木には、多くの美術館があることをご存知ですか? この記事では、六本木の個性豊かな5つの美術館を紹介します。
※本記事は2021年3月時点の情報を元に制作しています。諸事情により最新の状況と異なる場合があります
※2025年2月、一部情報を更新しました
六本木エリアの美術館・ギャラリーマップ
六本木エリアには数多くの美術館・ギャラリーが集まっています。扱っているジャンルも絵画、写真、彫刻など多種多様。
この記事では特に規模の大きな5つの美術館についてご紹介したいと思います。
【国立新美術館】国内最大級の大きさを誇る国立美術館
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国内最大級の広さを誇る六本木の「国立新美術館」
六本木に位置する国内最大級の国立美術館「国立新美術館」。地下1階から地上4階の敷地面積は、3万㎡にも及びます。美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、教育普及などを行い、アートセンターとしての役割を果たしているのです。
本来国立の美術館は、美術館自体が保有している作品を常設展示し、同時に企画展示を行うことが一般的ですが、国立新美術館は、コレクションを持たないギャラリータイプ。常設展示を行わず、公募展や企画展、展覧会のみを行う非常に珍しい美術館です。
国立新美術館の見どころは?
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美術館の南側は緑が広がる
国立新美術館の見どころは、第一に建築の美しさ。「森の中の美術館」をコンセプトに設計された建物の南側は緑が広がり、波のようにうねるガラスカーテンウォールが唯一無二の存在感を示しています。国立新美術館に隣接する青山公園をガラス越しに眺め、四季折々の表情を美術館から楽しめるのもポイントです。
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最上部がレストランになっている逆円錐型の立体物
円錐形の個性的なエントランスを進むと、高さ約21mの吹き抜けロビーに到着。内側から見るガラスの壁も迫力満点です。奥に進むと国立新美術館の名物、逆円錐型の巨大な立体物が見えてきます。最上部はカフェレストランになっており、宙に浮いているかのような感覚の中で食事やお茶が楽しめます。
国立新美術館のアートライブラリーへ
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美術専門の図書館も併設されている国立新美術館
国立新美術館はなんと美術専門の図書館を併設。「アートライブラリー(美術館3階)」と「アートライブラリー別館閲覧室(別館1階)」があり、誰でも利用することができます。
アートライブラリー(美術館3階)の「企画関連資料」コーナーでは、国立新美術館で開催中の企画展に関する所蔵資料を紹介。貸し出しは行ってはいませんが、無料で約10万冊にも及ぶ本が閲覧できます。写真撮影や携帯電話、飲食や鉛筆以外の筆記用具の使用は制限、禁止されているので注意が必要です。
2025年開催の主な企画展
リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s
【開催期間】2025年3月19日(水)~6月30日(月)
1920年代以降、ル・コルビュジエなどの建築家たちが、新技術を用いて機能的で快適な住まいを追求してきました。この展覧会では20世紀の住宅を、衛生、素材、窓などの7つの観点で検証。写真や図面、スケッチ、模型、家具などを通じて多角的に見ていきます。100年ほど前に始まった住まいへの試みは、現代の暮らしにも直結するもの。住まいの傑作を見ながら、今日の私たちの暮らしを考えるきっかけになるかもしれません。
日本の現代美術と世界 1989‒2010(仮称)
【開催期間】2025年9月3日(水)~12月8日(月)
国立新美術館と、香港の現代美術館「M+(エムプラス)」の共同企画展。1989年から2010年の約20年間における、日本の現代美術を再考します。1989年から2010年にかけては、冷戦終結からグローバル化が進み、政治・経済・文化・生活が大きく変化した時代。その時期を象徴する作品と、アートプロジェクトを軸に、日本人アーティスト・海外のアーティストを取り上げます。
国立新美術館の基本情報
●住所:東京都港区六本木7丁目22-2
●開館時間:10:00〜18:00
※毎週金・土曜は20:00まで
※最終入場は閉館30分前
●休館:毎週火曜(祝日の場合は翌平日休)/年末年始
●チケット料金:展覧会ごとに異なる
●アクセス:
①東京メトロ千代田線[乃木坂]駅青山霊園方面改札6出口より直結
②東京メトロ日比谷線[六本木]駅4a出口より徒歩約5分
③都営地下鉄大江戸線[六本木]駅7出口より徒歩約4分
●公式サイト:国立新美術館
【森美術館(mori art museum)】地上230mの高さに佇む美術館
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地上約230mと日本一高い展示空間である「森美術館」
六本木の中心に位置する「六本木ヒルズ森タワー」。そのビルの最上層である53階に佇むのが「森美術館(mori art museum)」です。その高さは地上約230mと、建物内の展示空間としては日本一高い場所。都心の超高層ビルのてっぺんに作られた美術館の魅力に迫ります。
森美術館ってどんなところ?
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森美術館は「文化都心」というコンセプトのもと構想された
森美術館は、六本木をあらゆる文化の発信地である「文化都心」にするというコンセプトのもと構想されました。文化の象徴となる美術館を六本木ヒルズの最上層に据えることで、文化都心を実現したのです。
森美術館は現代アートをメインにしたデザイン、ファッション、建築など多彩なジャンルの作品を独自の視点で紹介した展示を頻繁に行なっています。
森美術館の見どころは?
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入れ子の様にギャラリー空間を宙吊りにするというデザインが特徴的
六本木ヒルズ森タワー内の森美術館専用入り口の「ミュージアム・コーン」。中に入ると滑らかな螺旋階段から日本庭園が見えるのが特徴的。夜になると暖かな光が庭園を包みます。
また森美術館の設計は、数々の優れた美術館を生み出したリチャード・グラックマンが手掛けました。森タワー内部に、入れ子の様にギャラリー空間を宙吊りにするという特殊なデザインに挑戦。美術館としてだけではなく、建築物としても美しく見応えがあります。
2025年開催の主な展覧会
マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート
【開催期間】2025年2月13(木)~6月8日(日)
仮想空間と現実世界がつながり、AI(人工知能)が急速に発展する近年。しかしながらテクノロジーとアートはAI時代に入るより以前から常に併走してきました。この展覧会ではゲームエンジンやAI、VR(仮想現実)などを採用した現代アートを紹介。全く新しい美学や手法とともに、普遍的な死生観や倫理の問題などを掘り下げ、人類とテクノロジーの関係を考える機会を提供してくれます。
藤本壮介の建築:原初・未来・森
【開催期間】2025年7月2日(水)~11月9日(日)
世界で活躍する建築家・藤本壮介の初の大規模個展です。2000年の青森県立美術館設計競技案以降、国内外で多くのプロジェクトを手掛け高い評価を得ている藤本氏。本展では活動初期から現在のまでのプロジェクトを模型や図面、インスタレーションなどで紹介され、藤本建築のエッセンスが体感できます。
森美術館(mori art museum)の基本情報
●住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
●開館時間:
月・水〜日曜……10:00~22:00(最終入館21:30)
火曜……10:00~17:00(最終入館16:30)
※展覧会会期以外は閉館
●チケット料金:
《平日窓口》
一般……2000円
高校・大学生……1400円
中学生以下……無料
65歳以上……1700円
※オンライン割引あり
《土日祝窓口》
一般……2200円
高校・大学生……1500円
中学生以下……無料
65歳以上……1900円
※オンライン割引あり
●アクセス:
①都営地下鉄大江戸線[六本木]駅3出口より徒歩6分
②都営地下鉄大江戸線[麻布十番]駅7出口より徒歩9分
●公式サイト:森美術館
【森アーツセンターギャラリー】ポップカルチャー中心の美術館
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六本木ヒルズ森タワー52階展望台と同フロアに位置する「森アーツセンターギャラリー」
六本木ヒルズ森タワー52階展望台と同フロアに位置する「森アーツセンターギャラリー」。ひとつ上の階には森美術館があるため、森アーツセンターギャラリーと森美術館を一緒に観覧する人も多くいます。
森アーツセンターギャラリーの魅力とは?
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森アーツセンターギャラリーを手がけたリチャード・グラックマンの建築
森アーツセンターギャラリーの最大の特徴は、世界の名だたる美術館の貴重なコレクションの企画展だけでなく、漫画・アニメ作品、映画、ファッション、デザインまで、多彩な展覧会を開催していること。どんな展示物であっても企画内容に合わせ、六本木の森アーツセンターギャラリーは雰囲気を自由自在に変えることができます。
2025年開催の主な展覧会
ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
【開催期間】2025年1月25(土)~4月6日(日)
ブルックリン博物館の古代エジプトコレクションから約150点の名品が六本木に集結。彫刻、棺、ミイラなどを通じて、古代エジプト人の暮らしや文化を探求。エジプト考古学者・河江肖剰(かわえ ゆきのり)の案内で、従来のエジプト展で見過ごされてきた事実から最新の研究成果までを紹介します。
森アーツセンターギャラリーの基本情報
●住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
●開館時間:展覧会により異なる
●チケット料金:展覧会により異なる
●交通アクセス:
①都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口より徒歩6分
②都営地下鉄大江戸線「麻布十番駅」7出口より徒歩9分
●公式サイト:森アーツセンターギャラリー
【サントリー美術館】日本の美を発信する美術館
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六本木 東京ミッドタウンのサントリー美術館
ミュージアムメッセージ『美を結ぶ。美をひらく。』を掲げて活動を展開している「サントリー美術館」。1961年に飲料メーカーのサントリー社長・佐治敬三が『生活の中の美』を基本理念として丸の内に設立した美術館です。
2005年にサントリー東京支社がお台場に移転することに合わせて休館。2007年に防衛庁跡地を再開発し建築された、六本木の東京ミッドタウン内に移転開館しました。
サントリー美術館の見どころは?
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六本木 サントリー美術館
サントリー美術館の設計者は建築家の隈研吾氏。彼の建築の大きな特徴である木材などの自然素材を生かした見事な建築を、サントリー美術館で堪能することができます。
めざしたのは「都市の居間」としての居心地の良い美術館。館内は木と和紙を巧みに用い、和の素材ならではの自然のぬくもりと柔らかい光で優しい空間を実現。また、館内の随所で床材にウイスキーの樽材を再生利用しています。
2025年開催の主な展覧会
没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ
【開催期間】2025年2月15日(土)~4月13日(日)
エミール・ガレは、フランス北東部ロレーヌ地方の都市・ナンシーでガラス・陶磁器の家業を継ぎ、独自の芸術性を追求しました。パリで開催された万国博覧会での発表を通じて国際的な成功を収めましたが、その重圧もあり1904年に白血病で他界。没後120年を記念するこの展覧会では、パリとの関係に焦点を当て、ガラスや陶器など110点を展示し、その芸術世界を紹介します。
酒呑童子ビギンズ
【開催期間】2025年4月29日(火祝)~6月15日(日)
源頼光による酒呑童子退治の物語は14世紀以前に成立し、絵画や能などで表現されてきました。特に室町時代の画家・狩野元信(かのう もとのぶ)による「酒伝童子絵巻(しゅてんどうじ えまき)」は、江戸時代に数百もの模写を生み出した重要な作品です。展覧会では修理後のこの絵巻を公開します。
サントリー美術館基本情報
●住所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
●開館時間:10:00~18:00
※金曜は20:00まで
※最終入館は閉館30分前
●休館日:火曜/展示替期間/年末年始
●入館料:展覧会により異なる
●アクセス:
①都営地下鉄大江戸線[六本木]駅出口8より直結
②東京メトロ日比谷線[六本木]駅より地下通路にて直結
③東京メトロ千代田線[乃木坂]駅出口3より徒歩約3分
●公式サイト:サントリー美術館
【21_21DESIGN SIGHT】デザインへの理解と関心を育む場
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東京ミッドタウン内に位置する「21_21DESIGN SIGHT」
港区立檜町公園に続く緑地「ミッドタウン・ガーデン」の中に建てられた「21_21DESIGN SIGHT(トゥーワントゥーワンデザインサイト)」。広場に集まってきた人々が自然に中に入れるような場所にしたいという思いから、この敷地につくられました。
21_21DESIGN SIGHTの想い
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21_21 DESIGN SIGHTは「日常」をテーマにした展覧会を開催
21_21 DESIGN SIGHTは「日常」をテーマにした展覧会を中心にトークやワークショップなど行う美術館。特定の手法だけではなく、さまざまなプログラムを通じて訪れる人がデザインの楽しさに触れ、新鮮な驚きに満ちた体験をすることができるのです。
デザインは生活を楽しく、豊かにする。21_21 DESIGN SIGHTはこの文化としてのデザインを探す、発見する、つくっていく視点(sight)を備えた活動拠点にしようという想いが込められました。このデザインへの想いと提供された場によって、私たちの思考や行動の可能性を広げてくれます。
21_21DESIGN SIGHTの見どころは?
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一枚の鉄板を折り曲げたような屋根が特徴的
地上1階、地下1階の低層建築の21_21DESIGN SIGHT。設計を手掛けたのは建築家・安藤忠雄氏。巨大な一枚の板を真ん中で折り曲げて被せたような屋根が特徴的です。これは、三宅一生の服づくりのコンセプト「一枚の布」がヒントになっているそう。外観だけを見ると小さな建物のように感じますが、美術館の大部分は地中にあり、広々とした展示スペースが設けられています。
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夜の六本木 21_21DESIGN SIGHT
地上階にはGALLERY3とショップ、そして地下階にはGALLERY1&2。地上だけではなく地下階にも自然光がさしこむ様式になっており、心地良い造りとなっています。昼とはまた違った美しい光景を見せてくれる夜に訪れるのもおすすめです。
2025年開催の主な展覧会
ゴミうんち展
【開催期間】2024年9月27日(金)〜2025年2月16日(日)
「ゴミうんち展」は、グラフィックデザイナー。佐藤卓(さとう たく)氏と文化人類学者・竹村眞一(たけむら しんいち)氏をディレクターに迎え、自然界における循環の仕組みに着目します。通常見過ごされがちな「ゴミ」と「うんち」を「pooploop」という新しい視点で捉え直し、身近な環境から宇宙まで、循環する世界を考察し、実験を試みます。
ラーメンどんぶり展
【開催期間】2025年3月7日(金)〜6月15日(日)
「ラーメンどんぶり展」はグラフィックデザイナー・佐藤卓私とライター・橋本麻里(はしもと まり)氏がディレクターを務め、美濃焼のラーメンどんぶりに焦点を当てる展覧会。デザイナーやアーティストが手がけた40点のオリジナルラーメンどんぶりを展示するとともに、建築家・デザイナーが設計するラーメン屋台も紹介。日常におけるデザインの関わりを考察する機会を提供してくれます。
21_21DESIGN SIGHTの基本情報
●住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
●開館時間:10:00〜19:00(入場は18:30まで)
●休館日:火曜/展示替期間/年末年始
●料金:
一般……1400円
大学生……800円
高校生……500円
中学生以下……無料
●アクセス:都営大江戸線「六本木」駅・東京メトロ日比谷線「六本木」駅・千代田線「乃木坂」駅より徒歩約5分
●公式サイト:21_21DESIGN SIGHT
おわりに
アート、ファッション、エンターテイメントなどあらゆる文化の中心地・六本木。そんな文化都心にふさわしい個性豊かな美術館を5つ紹介しました。
それぞれに特徴があり、美術館そのものの建築も非常に魅力的な六本木の美術館。5つ全ての美術館が徒歩圏内にあるので、ぜひ六本木の美術館を制覇してみてはいかがでしょうか。