東京都、新宿駅から約1時間でいけるというアクセスの良さが魅力の「高尾山」。登山初心者でも気軽に登ることができる高尾山は、四季折々の自然豊かな景色を都内で楽しめると人気の観光スポットです。でも実は、空気の澄んでいる冬こそ、より絶景も楽しめる穴場のシーズンだってご存知でしたか?
今回は、筆者が実際に高尾山に登り、冬の高尾山の楽しみ方を紹介。自然の景色だけじゃなく、グルメやパワースポットなど、この時季だからこそ行ってみたくなる魅力が盛りだくさんです!
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【高尾山】初心者でも安心!世界一登山客の多い山
冬にしか見られない景色がある!東京の大自然「高尾山」へ
都内への訪日観光客をはじめ、年間約250万人が足を運ぶという「高尾山」。京王線新宿駅から特急電車に乗っておよそ1時間で到着する、都心からのアクセスが良好な自然あふれるスポットです。
高尾山中で見つけた小鳥
「山」というからには本格的な登山スポットかと思いきや、高尾山は登山道の傾斜もゆるやかで標高も599m(富士山は3,776m)と低め。ケーブルカーを使えば山頂まで40分程度で到着する、登山初心者にもおすすめできる山なんです。
山岳信仰の山である高尾山
今では「自然あふれるスポット」として人気な高尾山ですが、実は、江戸時代よりさかんに行われてきた山岳信仰の対象の山でもあります。真言宗智山派の三大本山のひとつである寺院「高尾山薬王院」が山頂近くに位置し、参詣に訪れる人も多くいます。
「天狗焼」をはじめとした天狗にまつわるグッズやお土産が多いのも、高尾山薬王院に由来するもの。御本尊である「飯縄大権現(いいづなだいごんげん)」のお供が天狗であり、人々を守る存在として古来信仰されてきた存在なのです。
薬王院に繋がる1号路の道のり
つまり、高尾山は都内からアクセス良好の自然豊かな山であり、山岳信仰の対象だったことから、パワースポットでもあるということ。ぜひとも一度は訪れておきたいスポットですよね。
冬の高尾山は絶景の季節
そんな高尾山ですが、観光客が集中して訪れるのは秋の行楽シーズンを中心とした春〜秋ごろ。気候も安定しており、登山には最適なシーズンです。ですが実は、空気が澄み、自然がより美しく見える冬も、高尾山に訪れるにはぴったりの時季。木々の葉が枯れ落ちているため、視界を遮るものもなく高尾山から都心の街並みを遠くまで眺めることができます。
続いて冬(12月~2月)における、たくさんの見所を紹介いたします。
12月のみどころ
12月上旬には紅葉の名残を見ることができ、下旬には氷華を見ることができます。また、冬至の時期には高尾山の山頂から神秘的な「ダイヤモンド富士」を見ることができます。そして、大晦日には多くの参拝客が訪れ賑わいます。(※大晦日のみケーブルカーが終日運転しています。)
高尾山から見ることができる「ダイヤモンド富士」
1月のみどころ
高尾山薬王院は初詣に人気の場所。初日の出は特に圧巻です。また「迎光祭」という新年を迎えるお祭りも開催されます。是非初詣に訪れてみてください!
2月のみどころ
最後に2月。2月3日には「薬王院節分会」が開催されます。前年に大活躍した人たちに幸を分けてもらうことを目的に行われます。
また、2月下旬ごろには梅の開花も始まり、春の訪れを感じることもできます。
冬の絶景を求めていざ、高尾山登頂を目指す
今回は、登山初心者の筆者が、高尾山登頂に挑戦してきました!その様子とともに、かかった時間やアクセス方法、装備、そしてルートなど、冬の高尾山登頂に必要な情報も一緒に紹介していきます。
10:20 京王線新宿駅から特急で高尾山口駅へ
特急または準特急で乗り換えなしで高尾山口駅まで
旅の始まりは、新宿駅から。京王線の特急を使えば、高尾山口駅までは約50分ほどで到着します。
登山に挑戦したのは1月の半ば。山道には雪が積もっていないようですので、軽装で向かうことにしました。動きやすいパンツスタイルに、履き慣れたスニーカー、両手が空くようにリュックを背負ったスタイル。
モダンな木造りの高尾山口駅
高尾山口駅に到着すると、高尾山頂を目指しに訪れている人たちの姿も多く見られました。ほとんどの人が私と同じ程度の服装です。
11:30 ケーブルカーが運行する清滝駅に到着
ケーブルカー / リフトの出発点「清滝駅」
高尾山口駅から徒歩約5分ほどで、ケーブルカーが運行している清滝駅に到着。ここからは、ケーブルカーに乗って約6分、標高472mに立つ高尾山駅へと向かっていきます。
駅の目の前には、大きな「高尾山薬王院」と書かれた石碑が。石碑の右側にのびる道は、薬王院へと続く参道でもあり、登山道の「1号路」です。
薬王院石碑の奥に続く1号路。ケーブルカーやリフトを使わない場合はここから歩いていく
1号路を進んでいくと、ケーブルカーの終着駅である高尾山駅にぶつかるため、初心者はケーブルカーを利用するのがおすすめです。ちなみに、1号路以外の登山道は、しっかりと舗装整備がされていない山道のため、スニーカーよりもトレッキングシューズなどすべりにくい靴を選ぶと安全です。
高尾山登山道マップ
高尾山へと続く登山道はさまざまあり、見られる景色や距離も異なります。自分に合った登山道を探すなら、ぜひこちらの記事もチェックしてみて。
ケーブルカーで高尾山駅へ
ケーブルカーは大人往復で950円(片道490円)。季節によって運行時間が異なるため、事前に【高尾山】初心者でも安心!世界一登山客の多い山で運行状況をチェックしておくのがベターです。
途中「日本一の急勾配」を誇る31度18分の傾斜を通り、あっという間に高尾山駅へ到着。ここから薬王院の本堂などを通る1号路を進み、山頂を目指していきましょう。
高尾山駅に到着
11:45 高尾山駅の景色を楽しみながら「高尾山さる園・野草園」へ
高尾山駅は、すでに標高472m。展望スペースからは、山と、奥へと広がる街の景色が楽しめます。この日は天気にも恵まれ、遠くまでよく見渡すことができました。
高尾山駅近く、展望スペースからの景色
さて、高尾山駅から歩いて約3分、最初の観光スポット「高尾山さる園・野草園」に到着です。1号路の道中に立つ高尾山さる園・野草園では、ニホンザルと高尾山周辺で自生する野草を見ることができます。大人430円の入園料を支払い、早速中へ入ってみましょう。
高尾山さる園・野草園
まず向かったのはさる園。73頭のニホンザルがのんびりと過ごしています。
「サルは寒いのには強いんです。今日は寒い上に日光も当たっていますから、みんなのんびりと日光浴をしながら過ごしていますね」と飼育員さん。ニホンザルにはそれぞれ名前があり、顔も全員異なるそう。素人目には全員同じに見えますが、もちろん飼育員さんは全員の区別がつくというから驚きです。サル同士の関係や性格まで教えもらえますよ。
さる園のニホンザルたち。天気が良くて気持ちよさそう
さる園では餌やり体験(1箱100円)も可能。暖かい日差しに包まれながら、のんびりサルと交流する時間も高尾山登山のひとつの醍醐味かもしれません。
さて、次は隣の野草園へ。300種以上が見られる野草園ですが、ほとんどは3月〜11月が見頃。ですが、中にはこの冬の時季にしか出会えない花も。
一年の一番最初に野草園で咲く花が、「セツブンソウ」。名前の通り、2月3日の節分の前後に花開きます。白く可憐な花が、土からわずか3cm付近で咲いていました。
セツブンソウ
次に開花を迎えるのは、セツブンソウの向かいに植えられた「フクジュソウ」。この日は芽が地中から覗き、まもなくツボミが膨らむというところ。黄色のかわいらしい花を咲かせます。
フクジュソウのつぼみ
普段自然に触れていないため、野草が見せる自然そのものの姿に感動しました。野草園のほとんどの花が咲いていないこの時季だからこそ、セツブンソウやフクジュソウといった小さな花を見つけた時の感動はひとしお。四季の移ろいを感じられました。
1号路を進み薬王院へ
さる園・野草園を後にし、次に目指すのは1号路山道に立つ「薬王院」。1号路はもともと修験道として多くの人が訪れる登山道のため、道が整備されていることはもちろん、薬王院本堂をはじめとしたパワースポットが点々としています。
ここからは、道中で見つけた薬王院にまつわるスポットと合わせてルートを紹介していきます。
蛸杉
蛸杉
さる園・野草園から徒歩約1分のところで出会う、巨大なスギの木。こちらは通称「蛸杉」と呼ばれる、根っこがタコの足のようにうねっているスギです。スギは常緑樹のため、冬でも葉が残り、青々とした姿を保っているのが印象的。
浄心門
浄心門
蛸杉を超え足を進めていくと、見えてきたのは「浄心門」。ここから先は薬王院の境内であり、聖域になります。一礼してくぐるのがいいでしょう。
神変堂
神変堂
浄心門を過ぎてすぐに見える小さな御堂は、「神変堂」と呼ばれるもの。無事に薬王院までたどり着けるよう、足腰心身の丈夫をお祈りしましょう。
六根清浄石ぐるま
六根清浄石ぐるま
高尾山内のさまざまな場所に点在しているこの「石車」。多くの人が「これはなんなんだろうね」と話しながら通り過ぎてましたが、これは目、鼻、耳、舌、心、体の6つの感覚器の汚れを払い、綺麗にしてくれる「六根清浄石ぐるま」です。
中央の石ぐるまを縦に回してお祈りします。その際は「懺悔 懺悔!六根清浄」と唱えながら回しましょう。高尾山内には全部で18カ所にこの小さな石ぐるま、薬王院境内に大きな「六根清浄大石ぐるま」があります。
境内の「六根清浄大石ぐるま」
男坂・女坂
男坂・女坂の分岐点
神変堂を過ぎると、ほどなくして道が二手に分かれます。左が「男坂」。右が「女坂」。今回は、体力にまだ余裕のある行きでは108段の石段が続く男坂を進み、帰りはゆるやかな傾斜の女坂をくだることにしました。
男坂に挑戦。煩悩の数と同じ108の石段をのぼる
108段なんとかのぼりきりましたが、脚はすでにパンパン。日頃の運動不足が悔やまれます。ここからは、女坂と合流するまで平坦な道が続きます。
しばらく歩くと、無事に女坂と合流。一息つける休憩処が立っています。ここまでくると気温は10℃を下回っているといえど、じんわりと汗もかいてきました。時折マフラーを外したり、髪を束ねたりして体温を調節。半袖で進んでいく外国人もちらほら見られました。
薬王院 山門
体力がまだ残っていたため、休憩処では休まず、歩みを進めます。ここからはなだらかな道が続くため、体への負担はほとんどありません。自然の景観を楽しむ余裕も。
休憩処からおよそ10分、厳かな雰囲気を感じられる門が見えてきました。これは、薬王院の「山門」。門には大きな四天王の像が立ちます。
薬王院の山門
山門をすぎるとさきほどの大石ぐるまと、その隣には高尾山に残る天狗伝説を象徴する2体の天狗像が。
<img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/thegate/2020/12/09/11/17/15/Tengu-statue-in-the-precincts (1) (1).jpg alt="2体の天狗像" />
今にも動き出しそうな天狗様の像
門をくぐればすぐに本堂…というわけではありません。ここから売店などが並ぶ境内の道を進んでいくと、その先、右手に階段と朱色の仁王門が見えます。
山頂へと続く道も、この階段を登った先に。この先に本堂が立つということで、改めて一礼をして階段を登ります。
朱色が美しい仁王門
薬王院 本堂
薬王院 本堂
ようやくお目見えしました。薬王院の本堂です。鮮やかな朱色の仁王門とは異なり、こちらは彩色がされていません。そのためか、長い歴史を経てきた荘厳さを感じられます。
本堂向かって左手に、本堂の裏に立つ「本社」、その先に立つ「奥の院」、そして山頂へと続く階段が設けられています。
階段を登り山頂を目指す
本堂に手を合わせお参りしたら、石段を登ってその先を目指していきましょう。
薬王院 本社
彩色がなされている薬王院 本社
御本尊の飯縄権現さまが祀られている本社に到着です。飯縄権現さまは、仏ではなく神様。薬王院では飯縄権現のほか、薬師如来や天狗を祀るなど、神仏習合スタイルの寺院です。通常は寺院では設けられない鳥居が立っていることなどからも、神仏習合であることがよくわかりますね。
高尾山山頂の看板
本社のさらに奥に立つ「奥の院 不動堂」を抜けたら、山頂までは残り約15分!
基本的にゆるやかな傾斜が続きますが、後半は勾配のきついところも。日陰の部分は雪が残っている場所もありますので、足元に十分に注意しながら登っていきます。
雪が残っている場所も
13:30 山頂に到着!
高尾山駅をスタートしてから1時間45分、ようやく山頂にたどり着きました。
高尾山山頂に到着!
高尾山さる園・野草園に立ち寄ったほか、薬王院でしっかりとお参りをしたため、到着までに時間はかかったものの体はそんなに疲れていません。それでも、山頂に到着した時の達成感はひとしおです。
山頂は広場のようになっていて、記念撮影をしたり、景色を楽しんだりとのんびり過ごせます。
その一角には、高尾山の植物や動物についての展示、登山コースなどを紹介している「高尾山ビジターセンター」があります。高尾山に自生している野草などを観察するツアーも開催し、山のプロ監修のもと、安全に高尾山の自然に触れることができるスポットです。
高尾山ビジターセンター
高尾山に生息する動植物の展示が見られる
さて、今回の目的は冬の高尾山を楽しむこと。やはり一番は、山頂からの絶景でしょう。
木々の葉はすでに枯れ落ちているため、目の前を遮るものなく遠くまで一望できます。スカイツリーなど都内のランドマークが見えることも。空気が澄んでおり、遠くまで見渡すことができます。
高尾山山頂から見える絶景
さらに、この時季にしか楽しめない雪を被った富士山の姿も、山頂から望めるんです。高尾山山頂の清らかな空気も楽しみながら、ぜひ絶景を堪能してみて。
山の奥にみえる富士山
絶景と山の空気をこころゆくまで楽しんだら、一気に下山していきます。帰りは予定通り、女坂を通り、あっという間に高尾山駅へ。高尾山駅までの下山時間は20分ほどでした。
冷えた体もあたたまる!冬のおすすめ高尾山グルメ
高尾山内に点在する休憩所などでは、さまざまなグルメが楽しめます。山頂までの道のりでいただくのはもちろん、帰りに登頂した自分へのご褒美で絶品グルメたちをいただくのもおすすめ。最後に、冬にぜひともいただきたいグルメを3つ紹介します。
高尾山といえばこれ!「とろろそば」
多くの休憩処で提供しているのが、高尾山名物「とろろそば」。料金は平均1,000円〜でいただけます。
今回、高尾山駅すぐに立つ「十一丁目茶屋」で「とろろ山菜そば」をいただきました。
「十一丁目茶屋」。店内の飲食スペースのほか、露店でお土産購入もできる
こちらでは店内のテーブル席のほか、標高472mから見える絶景を望みながら食事ができるテラス席も設けています。テラス席は崖ぎりぎりのところに立っており、目の前は一切視界を遮るものがない絶景。天気の良い日は、ぜひテラス席でそばをいただいてみてください。
絶景を楽しみながらいただく「とろろ山菜そば(1,200円)」
太めで食べ応えのあるそば
高尾山名物「三福だんご」
通年楽しめる高尾山名物のひとつ「三福だんご」。高尾山口駅すぐの路面店や、高尾山駅隣のそば処「高尾山スミカ 蕎麦処」、男坂・女坂の合流地点に立つ休憩処「ごまどころ 権現茶屋」などで購入できます。
高尾山口駅で購入できる「三福だんご(350円)」
三福とは、「大福」「幸福」「裕福」のこと。福を宿しぼってりとした3つのだんごは、もっちりと食べ応えがあります。目の前で炭火で焼き上げ、熱々の状態でいただけます。冷えた体をあたため、お腹もしっかり満たしてくれる一品。
「ごまどころ 権現茶屋」のごまだんご。ごまの香りが食欲を誘う
お土産にもぴったり「天狗焼」
高尾山駅の横に立つ土産屋「天狗屋」で購入できる「天狗焼」は、お土産にもぴったりの高尾山名物。高尾山の天狗にちなみ、天狗を模した薄皮に、黒豆あんが詰まっています。
「天狗屋」隣の天狗焼購入場所には長い列が
この日は平日だというのに、多くの人が天狗焼を購入するために列を作っていました。
高尾山名物「天狗焼(150円)」
30分ほど待って、ようやく購入。焼き立ての天狗焼は、食感も味も絶品!皮は外がパリッと軽く、中はもちもち。黒豆あんは黒豆が形を残してごろごろと入っており、やさしい甘さです。皮のほんのりとした塩気と合わさり、まったくくどくありません。
中には黒豆あんがぎっしり
なかには登山前にお土産用に予約をして、帰りに受け取るという人も。購入した当日中が賞味期限のため、買い過ぎには注意しましょう。
絶景もお参りもグルメも楽しめる冬の高尾山
冬にしか見られない絶景、冬こそ食べたい体があたたまるグルメ、そして、パワースポット薬王院への参詣。登山客がほかの季節よりも減る冬は、高尾山登山に最適な季節でした。
標高599mといえども、そこから見える景色は日々の喧騒を忘れさせてくれるのに十分な絶景。ぜひ癒しを求めに、元気をチャージしに、冬の高尾山に足を運んでみてはいかがでしょうか。