都心のビル群もいいけれど、たまには自然豊かな場所に行ってのんびりしたい。そんな時に、遠出しなくても美しい自然に触れられる場所が東京にもあるんです。
世田谷区・等々力にある「等々力渓谷(とどろきけいこく)」は、23区唯一の渓谷。渋谷から20分ほどの立地にも関わらず、東京にいることを忘れてしまいそうな豊かな自然があふれています。
今回はそんな知られざる都会のオアシス、等々力渓谷を実際に訪れて、その魅力を探ってきました。
※この記事に掲載の情報は2018年7月時点のものです。諸事情により変更となる場合があるため、お出かけの際はご自身で最新の情報をご確認ください
※2023年7月6日、等々力渓谷公園内にて倒木が発生した影響で、遊歩道は通行止めとなっています。2024年7月現在、等々力渓谷公園内で立ち入り可能なのは、等々力不動尊と日本庭園の周辺のみです。詳しくは世田谷区のHP内、等々力渓谷公園のページをご確認ください
東京のオアシス「等々力渓谷」はどんなところ?
緑に囲まれた等々力渓谷
「等々力渓谷」と書いて「とどろきけいこく」と読みます。世田谷区の南端に位置する自然公園で、延長は1kmほど。渋谷から約20分ほどで最寄駅に到着します。
東京都内唯一の渓谷
東京都にも「渓谷」は数多く存在しますが、その多くは奥多摩エリアにあります。東京23区内にある渓谷は等々力渓谷だけです。
等々力渓谷の中心には川が流れていて、川に沿う形で遊歩道が整備されています。訪れた人は遊歩道を散策したり、休み処で休憩したりして、森林浴を楽しみます。
東京都の指定する「名勝」のひとつ
「名勝」として名高い等々力渓谷
多摩川の支流・谷沢川(やざわがわ)が、武蔵野台地の南端を侵食してできたのが、等々力渓谷。名前の由来は、渓谷内にある「不動の滝」の水の落ちる音が轟くように響いていたことだと言われています。
1933(昭和8)年に多摩川風致地区に指定され、1961(昭和36)年〜1964(昭和39)年にかけて整備が行われた後、1974(昭和49)年に世田谷区等々力渓谷公園として開園しました。
1999(平成11)年には東京都文化財保護条例による「名勝」の文化財指定を受け、現在も「等々力渓谷保存会」の人々の力によって美しい環境が保たれています。
谷沢川では鴨が泳いでいる姿を見ることも
等々力渓谷への行き方
最寄り駅・最寄りバス停
●最寄り駅:東急大井町線の[等々力駅]
●最寄りバス停:
①東急バス[等々力商店街バス停]
②東急バス[野毛公園前バス停]
③東急バス[不動下バス停]
等々力渓谷の入り口はどこにある?
等々力渓谷の入り口は複数あり、どこから出入りしてもOKです。
※2023年7月6日、等々力渓谷公園内にて倒木が発生した影響で、半分の出入り口が利用不可となっています。2024年7月時点で利用可能なのは、公園南部、以下マップでいうところの出入り口4・6・7・8番のみです。
駅から等々力渓谷入口まで
駅から等々力渓谷に向かう場合、もっとも近い出入り口はゴルフ橋の脇。
等々力駅を出たら、成城石井等々力店のほうへ進み、そのまま成城石井の角を曲がります。右手に下へ降りる階段が現れるので、そこが等々力渓谷の入り口です。
※2024年7月現在、倒木の影響による通行止めで、こちらの入り口は利用不可となっています
等々力渓谷の入り口
等々力渓谷周辺の駐車場情報
【等々力不動尊駐車場】
●駐車可能台数:およそ20台
●利用可能時間:9:00~16:00
●住所:東京都世田谷区等々力1丁目22-47
●公式サイト:等々力不動尊
【NPC24H等々力第3パーキング】
●住所:東京都世田谷区等々力3-12
●駐車可能台数:17台
●利用可能時間:24時間
●公式サイト:NPC24H等々力第3パーキング
等々力渓谷の楽しみ方
暑い日に涼む
避暑地としても人気な等々力渓谷
等々力渓谷が位置するのは、街中から約10m低い武蔵野台地。谷を覆う木々が日差しを和らげるため、夏場の気温は等々力駅周辺と比べて平均で3℃、大きい時で5〜6℃も低くなります。
等々力駅から階段を使って等々力渓谷へと下りると、全くの別世界。幹線道路の環状8号線近くにありますが、自動車の音はほとんど聞こえてこないため、涼しい空気の中で川のせせらぎや小鳥のさえずりに耳を澄ますことができます。
湧水を探す・飲む
等々力渓谷には約30箇所以上の湧き水が発生し、一部は窪地に集まって湿地を形成しています。渓谷内には湧き水を汲める場所もあり、持ち帰り用のペットボトルに水を汲み入れる地元の人の姿も。渓谷の湧き水は、平成15年(2003年)に「東京の名湧水57選」に選定されました。
植物を観察してみる
渓谷内にはケヤキ、シラカシ、コナラ、ヤマザクラなどが自然植生し、湧き水が流れる水辺にはシダなど湿性植物の群落も。植物図鑑を見ながら、どれがどの植物か調べてみるのも楽しいかもしれません。
等々力渓谷を歩いてみた
等々力駅から等々力渓谷に下り、等々力不動尊や日本庭園を巡ってみたので、その様子をレポートします。
等々力渓谷入り口
等々力駅の南口を出てまっすぐ歩くと、等々力渓谷の案内表示があるので、案内の通りに進みます。しばらく歩くと、等々力渓谷の入り口に到着。階段を降りて、谷間を流れる谷沢川に進みましょう。
等々力渓谷入り口入ってすぐの光景
ゴルフ橋
ゴルフ橋
渓谷に入ってまず目に飛び込むのは、木々の緑の中で一際目立つ真っ赤な「ゴルフ橋」。
ゴルフ橋という名前は、昭和の初め頃、旧下野毛に約8haの広大なゴルフ場があったことに由来しています。現在の橋は1961(昭和36)年に架けられたアーチ鋼橋で、それ以前は木橋でした。
ゴルフ橋の下をくぐって、しばらく川沿いを遊歩道を歩いていきます。木々の隙間から差し込む日光が心地よいです。
川沿いの道には少し狭くなっている場所も。雨の後などは滑りやすくなっているので、歩く際は足元に注意しましょう。
川面には落ち葉が浮かぶ
筆者が訪れたのは11月の末。落ち葉に彩られた川面が日光でキラキラと輝く様子が秋を感じさせます。
等々力渓谷三号横穴
散策路を下流に進み玉沢橋(環状8号線)をくぐり、川に架けられた橋を渡ると階段が現れます。階段を登った先、渓谷の東側崖面にあるのが「等々力渓谷三号横穴」。
この横穴は「横穴墓」と呼ばれており、古墳時代末期から奈良時代の頃に作られたお墓。古墳の横に穴を掘り、遺体を納める玄室への通路(羨道)を作りつけた石積みの墓室です。
等々力渓谷三号横穴
等々力渓谷の横穴墓からは須恵器の平瓶(ひらべ)、横瓶(よこべ)、刀子(とうす)、金銅製耳環などが出土しており、その副葬品の豊富さから、被葬者たちは当時の等々力周辺を治めていた有力者であると推定されています。
稚児大師堂
しばらく歩いていくと景色はどんどんジャングルのように。
等々力渓谷 稚児大師堂
やがて目に飛び込んできた小さなお堂。ここに鎮座しているのは、弘法大師が幼い頃の姿をかたどった「稚児大師像」。手を合わせる稚児大師は可愛らしくもどこか威厳を感じさせる佇まいです。
お参りすると学業成就のご利益があるんだとか。
利剣の橋&不動の滝
等々力渓谷 利剣の橋
稚児大師堂をあとにしてさらに歩いていくと、「利剣の橋」と呼ばれる立派な橋が見えてきました。
等々力渓谷 不動の滝
橋を渡ると現れるのが、等々力の地名の由来ともなった「不動の滝」。崖から流れ出る二筋の湧き水は数千年に渡り休みなく流れ落ちています。
龍の口から水が流れる
かつては水量が現在よりも多く、神聖な滝行場として滝に打たれて行をする人々が全国各地から訪れていました。
滝の上をよく見ると、不動明王の像がこちらを見つめています。「不動の滝」の名にふさわしい厳かな雰囲気が漂います。
不動の滝はパワースポットとしても知られているため、写真を撮って待ち受けにすればご利益があるかも?
不動の滝の稲荷堂
滝の横には不動様を祀った稲荷堂があります。二つの仏像は弘法大師と観音様をかたどったもの。
等々力不動尊
不動の滝を拝み、険しい階段でさらに上へと登っていくと、等々力渓谷の最奥部、等々力不動尊に到着です。
階段を登った先にまず現れるのは等々力不動尊の手水舎(ちょうずや)。ここからは真下の渓谷を覆う秋の紅葉を一望することができます。ちょうど日光が当たってキラキラと輝く紅葉は神々しさも感じられます。
境内を染める黄色いイチョウの落ち葉も秋を感じさせてくれます。
等々力不動尊本殿
手水舎を抜けるとついに等々力不動尊の本殿に。開創は平安時代末の1100年頃。真言宗中興の興教大師が夢でお告げを受け、そのお告げに従いお不動様を背負って東国へ向かったところ、夢と同じ渓谷が目の前に現れ開山したという逸話が残っています。
本尊は金剛界大日如来で、正式名称は「滝轟山明王院(りゅうごうざんみょうおういん)」といいます。不動尊とは、現世にご利益をもたらしてくれる仏様のこと。厄除けや学業成就、立身出世などあらゆる願い事を叶えてくれる存在として、人々に親しまれています。
等々力不動尊の見晴らし台 写真は夏のようす
本堂の横にある見晴らし台からは、等々力渓谷を一望することができます。筆者が訪れた秋は一面に広がる紅葉の景色を楽しむことができました。
等々力不動尊は秋の紅葉だけでなく、桜の名所としても有名。3月下旬〜4月上旬になると、ソメイヨシノやウコンザクラ、シダレザクラなど約100本の桜が咲き誇ります。
日本庭園・書院
等々力渓谷 日本庭園の入り口
等々力渓谷の散策はもう少し続きます。最後の見どころは素敵な日本庭園。等々力不動尊から階段を降りて渓谷に戻り、さらに奥へと進みます。
1973年(昭和48年)に作られた等々力渓谷の日本庭園
立派なもんを苦釣姿を表すのは池、流れ、石畳の階段園路など、崖の地形や自然環境を巧みに活かした庭園。1973年(昭和48年)に作られたもので、当時のままの姿で保存されています。
日本庭園で楽しめる紅葉も、等々力不動尊に劣らない美しさ。静かな風に揺られる草木を眺めていると、ゆったりと落ち着いた気分にさせてくれます。
等々力渓谷 日本庭園の竹林
日本庭園には、東京ではあまり見られない大きな竹林もあり、圧倒されますよ。
日々の喧騒を離れた癒しのひと時を、都会にいながら味わえるのは嬉しいところ。入り口からもっとも遠いところにある日本庭園ですが、ぜひ足を運んで欲しいスポットです。
等々力渓谷 書院
庭から高さ10mほどの崖を登りきったところには書院があります。セルフサービスで日本茶をいただくことができるので、ゆっくり腰を下ろして庭園を楽しみたい人にはおすすめ。
さらに書院建物の奥には日当たりの良い芝生広場も。渓谷散歩の休憩や、晴れた日にはピクニックをするのにもおすすめの場所です。
等々力渓谷周辺のランチ・カフェ
渓谷の散歩の合間には、休憩や食事もしたいですよね。最後は、そんな時におすすめの食事処を紹介します。
(時間等、掲載の情報は2023年1月のものです。)
雪月花
等々力渓谷内、不動の滝のすぐそばに位置する甘味処「雪月花」。
雪月花 外観
お座敷とテラス合わせて40席ある店内では、あんみつや土日祝限定の葛餅など、疲れた体に染み渡る甘味が頂けます。春にはところてん、夏にはかき氷、冬には甘酒やおしるこなど、季節ごとにメニューも変わるので、いつ訪れても楽しめます。
【雪月花 基本情報】
●住所:東京都世田谷区等々力1-22-47
●時間(春夏):11:00~16:30(平日)、10:00~16:30(土日祝)
●時間(秋冬):11:00~16:00(平日)、10:30~16:00(土日祝)
●定休:12月第3月曜~3月中旬は土日祝日および節分のみの営業
●アクセス:東急大井町線 等々力駅より徒歩(約7分)
OTTO
等々力渓谷と環状8号線が交差するところに位置する「OTTO」。等々力渓谷沿いにあるイタリアンレストランです。
突然現れる看板に、「渓谷内にレストランが?」と驚く人がいるかもしれませんが、知る人ぞ知る人気店です。
等々力渓谷内のOTTOの看板
店内はクリーム色を基調とした内観で、窓際の席からは等々力渓谷を臨むことも。緑を眺めながらイタリアンを頂くことができます。人気メニューは、ガス釜を使って焼き上げた自家製ピザ。クリスピータイプなので、具材の食感がしっかりと感じられます。土日のランチタイムは混み合うので、オープン後すぐに訪れるのがおすすめですよ。
【OTTO 基本情報】
●住所:東京都世田谷区野毛1-17-11 等々力渓谷スカイマンションB1F
●時間(平日):
ランチ 11:00〜14:00(14:30ラストオーダー)
ディナー 17:30〜20:00(21:30ラストオーダー)
●時間(土日祝):
ランチ 11:00〜14:30(15:00ラストオーダー)
ディナー 17:30〜20:30(21:30ラストオーダー)
●定休:年中無休
●公式サイト:OTTO
等々力渓谷のベストシーズンはいつ?
等々力渓谷のベストシーズンは夏と秋でしょう。
夏には豊かな緑と川を楽しむことができる都会のオアシス。多くの木々がもたらす木陰で、自然の風を感じることができ暑さから逃れるための避暑地として訪れる人も多いです。
そして秋になると、その緑は美しい紅に変化し紅葉シーズンの到来です。上記で紹介した等々力不動尊には紅葉を十分に楽しめる日本庭園が隣接し、そこから見下ろす崖下の紅葉は都内とは思えない自然の景色を映し出します。
紅葉の見頃は正確に予想することは難しいですが、毎年11月〜12月ごろと言われています。夏に訪れるのも良いですが、秋に都内の紅葉を求めて来るのも良いかもしれません。
等々力不動尊から見た紅葉
おわりに
豊かな自然に触れられる等々力渓谷は東京にいることを一瞬忘れてしまう場所。季節によって違った姿を見ることができるので、何度訪れても楽しめるはず。ゆっくりと自然に癒されながら、等々力渓谷を散策してみてはいかがでしょうか。