1995年、「合掌造り」と呼ばれる家屋が数多く残されていることから世界遺産に登録された、富山県の「越中五箇山(えっちゅうごかやま)」。五箇山は、 40の小さい集落の総称。その中で、「相倉(あいのくら)」と「菅沼(すがぬま)」の2つの集落が世界文化遺産に登録されています。その日本らしい風景を一目見ようと多くの観光客が訪れるスポットです。
今回は、五箇山の合掌造りについて、さらに相倉集落と菅沼集落についてまとめていきます。
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世界遺産越中五箇山の合掌造りとは
富山県の西、南砺(なんと)市に位置する「五箇山」。五箇山とは40ほどの小さな集落の総称のことです。そのうち、世界遺産に登録されているのが相倉と菅沼の2つの集落。世界遺産のほかに指定重要文化財の建造物があったり、自然豊かな景色が広がっていたりとたくさんの見どころがあります。
越中五箇山の合掌造りの歴史
越中五箇山の合掌造り
1585年に加賀藩前田家の領地となった五箇山。山がちな地形から、江戸時代中期、五箇山では、蚕を育てて繭を取る養蚕業や、和紙製造、火縄銃の火薬の原料となる硝石である塩硝(えんしょう)作りが活発でした。そして、製品で得た金銭を加賀藩に納めていました。
製造に適したスペースを確保するために、天井の高い合掌造りに発展したと考えられています。1階は、塩硝作りや住居、2階は保温を求められる養蚕業に使用された住居兼工場でした。
五箇山の塩硝は「加賀塩硝(かがえんしょう)」と呼ばれ、五箇山全戸で製造に携わる一大産業となりました。火薬の原料・塩硝の需要が高まった影響で、最盛期には約20tにも達するほど。質量ともに全国随一であったといわれています。
そして、加賀藩から流刑地として定められていた五箇山。廃藩となるまでの約200年間に、150名を超える流刑人が金沢から送られていたそうです。
藩政改革の中心として「改作法」で農民の金銀貸借など一切禁じていた加賀藩。五箇山住民には商人を通じ、借銀・貸米・貸塩が認められていました。加賀藩から塩硝や藩用の和紙の生産地として生産者の生活を保障され、流刑地としても特別な配慮があったとされています。
世界遺産としての越中五箇山
越中五箇山の相倉集落
1995年、ドイツのベルリンで開催されたユネスコの第19回世界遺産委員会において、岐阜県の白川郷(しらかわごう)、とともに、五箇山の相倉と菅沼の3つの集落が世界文化遺産に登録されました。
日本において、世界遺産としては6番目、世界文化遺産としては4番目の登録です。
登録された理由としては、歴史上の時代を示す優れた建造物や景観であること、伝統的な集落や土地利用が見られることなどが挙げられています。
山間の気候に適合するため、昔の人々の様々な工夫が凝らされている合掌造り。世界遺産に登録された理由も納得です。
白川郷と五箇山の違いとは?
緑の田んぼと白川郷
岐阜県北部、大野郡白川村に位置する「白川郷(しらかわごう)」は、五箇山と同様に合掌造りの建物が世界遺産に登録されている場所です。
五箇山と白川郷の距離はわずか20km、車で約30分の距離に位置していることから、気候も似ており、同じ合掌造りが残っている状態。五箇山と白川郷に違いをご紹介します。
知名度・規模
合掌造りの家屋は白川郷と五箇山地方に限定して見られる民家の形態で、最大時だと約1,850棟ありました。戦後の経済発展と生活の近代化の中で、その数が急激に減少。現在では白川郷、五箇山あわせて200棟以下となり、貴重な文化財となっています。
白川郷との最大の違いは、その知名度。白川郷の萩町集落には、60棟もの合掌造り集落が現存しています。規模が大きいので知名度も高く、メディアからも多く取り上げられているため世界中から多くの観光客の人が訪れます。
支配
合掌造りが多く造られた江戸時代末期の白川郷は、幕府の天領地。五箇山は、加賀藩の統治下にありました。塩硝を作ることができる環境にあった五箇山では、加賀藩の命令により、秘密裏に地下などで塩硝の製造が行われてました。
集落の雰囲気
白川郷は、店や人が多く、観光地ならではの賑やかな雰囲気に対し、静かで素朴な雰囲気が特徴の五箇山。落ち着いた農村の雰囲気を味わいたい方には、五箇山がおすすめです。
合掌造りの建築様式
入り口
白川郷では屋根の斜面側が入り口なのに対し、五箇山では玄関が正面にある家屋が多いのが特徴です。
屋根
建築様式にも違いが見られます。湿気が多く重たい雪が降る五箇山では、白川郷よりも傾斜が少し急で、雪を落としやすい急な屋根となっています。
茅葺きの刈り方
屋根の茅葺きの端が、少し丸く刈られているのが五箇山の特徴。白川郷では、きっちり揃えて作られています。刈り方が”武士(江戸幕府)の力強さ”を表す白川郷に対し、五箇山は"加賀藩の上品なしなやかさ"が表れているという話もあります。
合掌造りの内装
加賀藩の手厚い保護を受けながら発展した五箇山。重厚感あふれる豪華な内装が特徴です。鍋の高さを自在に調節できる「自在鍵(じざいかぎ)」がある囲炉裏というのも、五箇山ならではの特徴。
世界文化遺産に登録!相倉集落と菅沼集落の2つの集落
世界文化遺産に登録された相倉・菅沼集落の観光スポットをご紹介。
相倉集落
越中五箇山の相倉合掌造り
相倉集落は、23棟の合掌造りの家屋が現存している集落。江戸時代後期から明治時代にかけて建設され、現在も住居として生活が営まれています。
相倉民族館
相倉民俗館
相倉集落には、集落の生活の様子を学ぶことができる「相倉民俗館」があります。相倉民俗館では、昔ながらの生活用具が展示されていたり、実際に階段を登り屋根の内部構造を見ることもできるので、合掌造りの家屋についての理解を深められます。
他にも、「五箇山和紙漉き体験館」では、かつて合掌造りの家屋で行われていた、和紙製造のための紙漉きを実際に体験することができます。和紙製品や小物類なども売られているので、日本らしい小物を手に入れたい時はオススメです。
原始合掌造り
江戸時代後期に建てられ、相倉集落の合掌造り家屋の原型になったとされています。かつては、相倉集落に点在していた原始合掌造りですが、現存するのは1棟のみです。
菅沼集落
菅沼集落
菅沼集落には9棟の合掌造りの家屋があり、土蔵などの歴史的な建造物が保存されています。相倉集落に比べ観光客も少ないので、こじんまりした合掌造り集落の原風景を、思う存分楽しむことができるのが魅力です。
五箇山民俗館
五箇山民俗館
集落内には、山村生活の知恵を生かした生活品約200点が展示されている「五箇山民俗館」や、江戸時代に五箇山で栄えた産業である塩硝作りの道具や製造工程が展示されている「塩硝の館」があります。歴史ある五箇山の暮らしを体験してみてくださいね。
五箇山の国指定重要文化財(建造物)
五箇山では、国指定重要文化財が四つ登録されています。その中から合掌造りの民家「村上家」「岩瀬家」「羽馬家住宅」をご紹介。
村上家
五箇山の歴史や文化、生活について理解を深めることができる「村上家」。約350年前の江戸時代初期に建てられた合掌造りの民家です。昔の合掌造りの建築様式を現在に伝える貴重な建造物として、国の重要文化財に登録されています。内部見学が可能です。
岩瀬家
約300年前に建設された5階建ての合掌造り民家「岩瀬家」。五箇山と白川郷で最大の規模を誇っています。国の重要文化財に登録されました。建物の内部は見学可能。五箇山の合掌造りについて詳しく学べることもポイントです。
羽馬家住宅
箇山に位置する「羽馬(はば)家住宅」。改造が少なく、初期の合掌造りをそのまま現在に残している貴重な建造物として国の重要文化財に指定されています。内部は公開されていないため、外観のみ見学可能です。
相倉展望台で合掌集落を一望しよう
相倉展望台から見た五箇山の合掌造り
五箇山の合掌造り集落を一望できるのが、「相倉展望台」。晴れている日には、富山県、岐阜県、石川県、福井県にまたがる白山連峰(はくさんれんぽう)を望むこともできますよ。合掌造りの集落だけを写真に収めてもいいですし、白山連峰も一緒に写しても素敵な写真が撮れること間違いなしです。
相倉展望台へは、駐車場の横の小道から坂を歩いて登って約10分で行くことができます。散策する場合は、歩きやすい格好で行ってくださいね。
四季折々で美しい五箇山
豊かな自然が見せる四季折々の景色が美しい五箇山。一度訪れるだけでなく、季節を変えて美しい景観を楽しむのもおすすめです。
春の五箇山
春の五箇山
初春はまだ少し雪が残っていますが、桜が咲き誇り、日本らしい風情ある景色を楽しめます。雪と桜を同時に楽しめるのも五箇山の気候ならではです。
夏の五箇山
春の五箇山
爽やかな夏には、ひまわりやコスモスが咲き、五箇山を明るく彩ります。猛暑に疲れたら、涼しげな五箇山に癒されに行くのがオススメです。
ライトアップされた五箇山の合掌造り
夜はライトアップも行われているので、昼間とは違った合掌造りの雰囲気を楽しめます。
秋の五箇山
秋の五箇山
秋は五箇山周辺のの山々が赤や黄色に色づき始めます。10月下旬から11月上旬が紅葉真っ盛りなので、紅葉を狙って訪れるのもいいですね。
冬の五箇山
冬の五箇山
12月上旬から本格的に五箇山に冬が訪れます。積雪は多い時だと2mにもなるので、防寒対策をしっかりとして、車で訪れる方はタイヤをスタットレスタイヤに替えるなどして注意して訪れましょう。
冬の夜の五箇山
夜になると雪と合掌造りのあかりで幻想的な雰囲気を楽しめますよ。
五箇山へのアクセス
五箇山へは、北陸新幹線で新高岡駅を利用します。新高岡駅から車に乗り、高速道路を経由して約1時間で行くことができます。相倉集落と菅沼集落は車で約15分離れているので、車で行くのがオススメです。
公共交通機関で行く場合は、高岡市内から「世界遺産バス」というバスが出ており、五箇山をバスで巡ることができます。
世界遺産越中五箇山へ
いかがでしたか。世界遺産にも登録されている越中五箇山に行き、その和やかな風景や自然に癒されてみてはいかがでしょうか。
時間がある方は、同じく世界遺産に登録されている白川郷にも行って、合掌造りの特徴を比較してみるのもオススメです。四季折々の農村風景が美しい五箇山で、特別な1日を過ごしてくださいね。