日本を代表する100の滝として選定された「日本の滝百選」。このうち3カ所は静岡にあることをご存知でしょうか。
南アルプスや富士山を有する静岡は、昔から水源が豊富。現在も多くの川が県内を流れており、断崖絶壁から流れ落ちるダイナミックな滝が多数あります。
しかし「滝同士の違いがわからない」「興味はあるがどの滝から訪れるべきか迷う」「穴場の滝を見つけたい」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、有名どころから穴場まで静岡の滝を13カ所ご紹介。滝行ができるスポットや、観光ついでに行けるスポットなど、さまざまな切り口を用意したので、ぜひ旅行を計画する際の参考にしてくださいね。
※掲載情報は2024年3月末時点のものです。荒天や災害によって、山道が通行止めや立ち入り禁止になることもあるため、訪れる際には必ずご自身で目的地周辺の最新情報をご確認ください
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「静岡には滝がたくさんあって、どの滝から訪れるべきか迷う……。」そんな方のために、まずは静岡県のなかでも王道スポットの滝を3つ紹介します。
どれも日本の滝百選に選ばれた滝なので、その見応えはお墨付きです。とにかく滝巡りをメインに旅行がしたいという方は、ぜひ参考にしてくださいね。
（富士宮市）白糸の滝・音止の滝
写真左が音止の滝、音止の滝より右側は白糸の滝（写真提供：静岡県観光協会）
富士宮市には日本の滝百選に選ばれた白糸の滝・音止の滝があります。
白糸の滝は、高さ20m・幅150mの絶壁から無数の滝が流れ落ちる伏流瀑。白糸を垂らしたような美しさがあり、水がアーチを描く幻想的な景色がこれまでに多くの人を魅了してきました。
古くから富士山信仰における修行の場として知られ、富士山の構成資産の一つとして世界遺産にも選ばれています。
音止の滝は高さ25mの絶壁から轟音をとどろかせる勇壮な直瀑（ちょくばく・一直線に落下する滝）です。
白糸の滝のすぐそばにあるため、撮影の際には二つの滝を1枚の写真におさめる方が多いようです。
横幅のある滝の全貌が一望できる展望スペースがあるのもうれしいですね。
白糸の滝・音止の滝
●住所：富士宮市上井出273-1
●サイト：白糸の滝・音止の滝
●アクセス：
（白糸の滝まで）JR身延線［富士宮駅］から富士急静岡バス（猪の頭行き）バス停［白糸の滝］下車
（最寄り駐車場まで）新東名道［富士IC］から車で約35分
（伊豆市）浄蓮の滝
近くにはワサビ田があり、浄蓮の滝観光センターでは「わさびソフトクリーム」を味わうことができます
伊豆市にある浄蓮（じょうれん）の滝も、日本の滝百選に選ばれた名瀑。
滝自体は高さ25m幅7mあり、周辺の地形は約1万7000年前の噴火で流れた溶岩流で作られました。
柱状になった玄武岩が、滝をより美しく見せる景観を作り出しています。滝の周囲には、国内でも珍しいシダ植物「ハイコモチシダ」が群生し、自然豊かな風景を楽しめます。
また、滝の入り口にはドライブイン「浄蓮の滝観光センター」が。店内にはレストランやお土産コーナーもあるので、滝見の前後にゆっくり休憩することもできますよ。
イノシシを使ったメニューも提供しているので、ジビエを食べてみたい人にもおすすめです。
浄蓮の滝
●住所：静岡県伊豆市湯ヶ島892-14
●サイト：浄蓮の滝
●アクセス：
（浄蓮の滝まで）伊豆箱根鉄道［修善寺駅］から東海バス（河津行きまたは昭和の森会館行き）バス停［浄蓮の滝］下車
（最寄り駐車場まで）東名道［沼津IC］から車で約90分
（静岡市）安部の大滝
滝壺近くでは水しぶきを浴びられるのも魅力。梅ヶ島温泉郷はワサビ栽培発祥の地として有名です
安倍の大滝は落差約90m幅約4mもある大滝で、日本の滝百選地の一つです。滝は静岡市を流れる安倍川の源流域に位置します。
梅ヶ島温泉からの遊歩道を約1時間ほど歩くと、迫力のある滝の流れを体感できます。滝に至る遊歩道には二つの吊り橋があり、スリリングな体験を味わえますよ。ただし高い所が苦手な方は要注意。
滝のふもとには、1700年の歴史を持つ梅ヶ島温泉郷があります。濃い温泉と呼ばれるほど優れた泉質を持っており、往復2時間以上かけて滝を見に行った疲れを癒してくれます。
【安部の大滝】
●住所：静岡市葵区梅ケ島
●サイト：安部の大滝
●アクセス：
（最寄り駐車場まで）JR東海道本線［静岡駅］からしずてつジャストライン（梅ヶ島温泉行き）バス停［梅ヶ島温泉］下車
（最寄り駐車場まで）新東名道［新静岡IC］から車で約45分
【静岡の滝】穴場：大自然を独り占め
静岡の滝のなかでも穴場スポットとして、おすすめの場所を2カ所紹介します。ここから紹介するのは、静岡の滝のなかでも比較的観光客が少ないスポットです。
滝はもちろんキャンプや紅葉など、滝と一緒に楽しめるポイントについても紹介しています。絶景を静かに楽しみたいという方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。
（富士市）大棚の滝
大棚の滝
須津川渓谷のなかにある大棚の滝は、落差21mの大きな直瀑（ちょくばく・一直線に落下する滝）です。
川に架かる橋からの眺めも絶景で、春の新緑、秋の紅葉を満喫できます。付近には「須津山休養林キャンプ場」もあるため、大自然の中でのんびりと過ごしたい方にもおすすめです。
さらには、滝や渓谷の風景を望みながらのバンジージャンプを体験できるスポットも。スリルを感じるアクティビティに興味のある方はぜひ試してみてくださいね。
大棚の滝
●住所：静岡県富士市比奈
●サイト：大棚の滝
●アクセス：
（須津川渓谷まで）岳南鉄道［須津駅］から徒歩130分
（須津川渓谷まで）東名道［富士IC］から車で約35分
（裾野市）不動の滝
不動の滝
裾野市にある不動の滝は、偕楽園（かいらくえん）という自然豊かな公園の敷地内にあります。
神奈川と静岡にまたがる火山地帯・箱根外輪山から流れる不動の滝は、高さ10mほどでやや大人しい印象。滝のそばには不動尊を祀ったお堂があります。
園内には広々とした芝生の広場や座って休憩できる東屋があり、ピクニックなどのレジャーにおすすめ。春にはお花見も楽しめます。
ジャングルジムやブランコといった遊具も配されており、家族連れでゆったりと過ごせます。
滝のほかにも、季節の花々や豊かな自然を楽しむことができる偕楽園は、休日のお出かけ先にぴったりです。
不動の滝
●住所：静岡県裾野市茶畑665
●サイト：偕楽園（不動の滝）
●アクセス：
（偕楽園まで）JR御殿場線［裾野駅］から徒歩15分
（偕楽園まで）東名道［沼津IC］から車で約15分
【静岡の滝】滝行体験：心静かなひととき
ここからは、滝を訪れた際に滝行体験ができるスポットを紹介していきます。
滝行は個人ではなかなかできない貴重な体験。「せっかく滝を訪れるなら滝行に挑戦してみたい」という方も多いのではないでしょうか。
静岡には主に二つの滝行可能な滝があります。申込制で気軽に体験できますが、どちらも寺社の境内にある滝なので、真摯な態度で臨みましょう。
（袋井市）るりの滝
滝の名前は、本尊である薬師如来の住まい「瑠璃光浄土」に由来
袋井市の「るりの滝」は「油山寺（ゆさんじ）」の境内にあります。油山寺は701（大宝元）年に開山された真言宗の寺院で、名前は寺が位置する山から昔油が湧き出ていたことに由来します。
油山寺は「目にご利益があるお寺」として親しまれてきました。というのも、るりの滝には、孝謙天皇が病を患った際、この滝の水で眼を洗ったところ完治したという伝説が残っているのです。
予約をすれば、るりの滝での滝行体験が可能です。所要時間は30分〜1時間ほど。自然のなかで冷たい水に打たれながら、自分自身と向き合う時間をつくってみてはいかがでしょうか。予約は下記フォームのほか、電話・FAX・メールから。
【るりの滝】
●住所：静岡県袋井市村松1番地
●サイト：るりの滝
●滝行申し込みフォーム：油山寺｜体験修行のご案内
●アクセス：
（油山寺まで）JR東海道本線［袋井駅］からタクシーで10分
（油山寺まで）東名道［袋井IC］から車で約15分
（長泉町）つるべ落としの滝
つるべ落としの滝
桃沢川源流の滝である「つるべ落としの滝」は、火山活動によって形成された美しい滝。
つるべ落としの滝を境内に有する愛鷹山水（あしたかさんすい）神社は自然環境保全地域に指定されており、古くから敷地を流れる川にサンショウウオが生息することで知られています。
滝の周辺は溶岩が冷え固まる過程でできた板状の割れ目「板状節理」が見事に発達しており、地質学的にも興味深いスポットです。
つるべ落としの滝では、予約制で滝行の体験ができます。瞑想や写経、唱題行などの4つの修行を組み合わせて体験できるので、ぜひ山中の澄んだ空気の中で自分を見つめ直してみましょう。予約は下記フォームから。
【つるべ落としの滝】
●住所：静岡県駿東郡長泉町東野
●サイト：つるべ落としの滝
●滝行申し込みフォーム：愛鷹山水神社｜お問い合わせ / 体験予約フォーム
●アクセス：
（愛鷹山水神社まで）JR東海道本線［三島駅］からタクシーで40分
（愛鷹山水神社まで）東名道［沼津IC］から車で約20分
【静岡の滝】観光ついでに立ち寄りたい
県内に多くの滝を有する静岡。有名な観光地やレジャースポットの周辺に滝があることも少なくありません。
ここからは、観光ついでに立ち寄れる滝スポットを紹介します。旅行を計画するなかで、行程と体力に余裕がある場合はぜひ滝に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
（伊豆市）萬城の滝
萬城の滝
静岡県伊豆市にある「萬城の滝（ばんじょうのたき）」は、地蔵堂川の上流に位置する高さ20m、幅6mの滝です。滝のすぐそばまで行けるので、水しぶきを浴びながら大自然のパワーを感じられます。
滝の周辺には東屋もあるので、腰掛けてゆっくりと滝を眺めることができます。「千年木」と呼ばれる古いケヤキの木やピクニック広場、水遊びができる親水地などがあり、家族連れのお出かけ先としてもおすすめです。
夏には上流でキャニオニング体験できるのもポイント。岩肌を滑る自然のウォータースライダーがスリル満点と、人気を集めています。
付近にはキャンプ施設「RECAMP中伊豆」も整備されているので、アウトドアを満喫したいという方はぜひ訪れてみてくださいね。
【萬城の滝】
●住所：静岡県伊豆市地蔵堂776−1
●サイト：萬城の滝
●アクセス：
（萬城の滝まで）伊豆箱根鉄道［修善寺駅］から東海バス（筏場行き）バス停［地蔵堂］下車、徒歩15分
（最寄りの駐車場まで）伊豆スカイライン［冷川IC］から車で約13分
（伊豆市）旭滝
旭滝
静岡県伊豆市にある「旭滝」は、高さ105mの迫力ある分岐瀑（途中でいくつかの流れに別れて落下する滝）で、朝日を受けて輝く姿から名付けられました。
伊豆半島ジオパークのジオサイトに指定されており、溶岩が冷えて固まる過程でできる美しい柱状節理（ちゅうじょうせつり・五角形や六角形の柱状の割れ目）の断面を、水が流れ落ちる独特の景観が有名です。
旭滝のそばには、かつて瀧源寺（りゅうげんじ）という普化宗の寺院がありました。瀧源寺は、尺八の名曲「瀧落之曲（たきおとしのきょく）」が作られた場所でもあります。
12月上旬〜中旬にかけて見られる紅葉のなかの旭滝も美しいものです。旭滝が流れ落ちる姿や音色は、昔から多くの人々を魅了してきました。ぜひご自身で現地を訪れ、その歴史や風景の一端に触れてみてはいかがでしょうか。
【旭滝】
●住所：静岡県伊豆市大平
●サイト：旭滝
●アクセス：
（旭滝まで）伊豆箱根鉄道［修善寺駅］から東海バス（湯ヶ島行き・昭和の森会館行き・天城峠経由河津駅/柿木大野行き）バス停［旭滝口］下車、徒歩3分
（最寄りの駐車場まで）伊豆スカイライン［大平IC］から車で約3分
（河津町）大滝
河津町の大滝
河津町の「大滝（おおだる）」は河津七滝（かわづななだる）という7つある滝のうちの一つ。大滝は落差30m、幅7mと、河津七滝のなかで最大級の迫力を誇る滝です。
全長850mの遊歩道を1時間ほど歩くと、エメラルドグリーンの滝壺と豪快な水音が美しい景観にたどり着きます。
足腰に自身がないという方は、付近の温泉施設「天城荘」利用がおすすめ。大滝を目の前に望む露天風呂やテントサウナで、日頃の疲れをリフレッシュできるでしょう。
夏には温泉プールも出現するので、家族連れでのお出かけ先にいかがでしょうか。
【大滝】
●住所：静岡県賀茂郡河津町梨本
●サイト：大滝
●アクセス：
（最寄りの駐車場まで）伊豆急行線［河津駅］から東海バス（河津七滝温泉行き）バス停［河津七滝温泉］下車
（最寄りの駐車場まで）東名道［沼津IC］から車で約1時間20分
（富士宮市）陣馬の滝
澄んだ水が美しい陣馬の滝
静岡が誇る名峰・富士山のふもとにある「陣馬の滝」は、源頼朝が歴史的にも有名な「富士の巻狩り（集団での狩猟）」の際、付近に陣を張ったことから名付けられました。
五斗目木川にかかる滝で、富士山麓のきれいな湧水を眺められます。毎年8月には地元有志による「陣馬の滝まつり」が開催されており、多くの人でにぎわいます。
滝壺以外は浅いため、夏場は子どもからお年寄りまで水遊びが楽しめるのもうれしいポイント。夏休みのお出かけ先にいかがでしょうか。
【陣馬の滝】
●住所：静岡県富士宮市猪之頭
●サイト：陣馬の滝
●アクセス：
（陣馬の滝まで）JR身延線［富士宮駅］から富士急静岡バス（猪の頭行き）バス停［陣馬の滝入口］下車、徒歩5分
（最寄りの駐車場まで）東名道［富士IC］から車で約1時間
（小山町）まぼろしの滝
山肌を流れるまぼろしの滝
静岡県小山町にある「まぼろしの滝」は、例年4月下旬から6月上旬に突如現れる滝です。
富士山の雪解け水によって滝が形成されるため、日によって現れる場所が変わったり姿が違ったりすることから、まぼろしの滝と呼ばれています。
天候や気温の状況によって見られない日もあるため、訪れる際は事前の情報収集が必要です。
富士山の登山口の一つ「須走口五合目」から歩いて20分程度のところで見られます。足腰に自信のある方は、登山ついでに探してみてくださいね。
【まぼろしの滝】
●住所：静岡県駿東郡小山町用沢72-2
●サイト：まぼろしの滝
●アクセス：
（最寄りの駐車場まで）JR御殿場線［御殿場駅］から富士急行バス（須走口五合目行き）バス停［須走口五合目］下車、徒歩5分
（最寄りの駐車場まで）東名道［御殿場IC］から車で約1時間
（静岡市）赤水の滝
展望台から滝全体の姿を眺められます
静岡市にある「赤水の滝」は、梅ヶ島温泉に向かう県道29号線沿いにある落差50mの段瀑（だんばく・階層をつくって落下する滝）です。
赤水の滝は1707（宝永4）年の大地震と洪水による大谷崩れの際に形成されました。崩壊した山肌から流れ出た褐色の濁流が滝となって落下する光景が名前の由来となっています。
秋になると紅葉が美しく滝を彩ります。11月中旬にはライトアップイベントも開催され、幻想的な雰囲気を楽しめますよ。
【赤水の滝】
●住所：静岡県静岡市葵区梅ケ島
●サイト：赤水の滝
●アクセス：
（最寄り駐車場まで）JR東海道本線［静岡駅］からしずてつジャストライン（梅ヶ島温泉行き）バス停［赤水の滝］下車
（最寄り駐車場まで）新東名道［新静岡IC］から車で約45分
おわりに
静岡には滝の名所が多く存在します。キャンプや紅葉と一緒に滝を楽しめるスポットや、大自然のなかで滝行体験ができるスポットなどさまざまです。
日本の滝百選に選ばれた王道の滝にも足を運んでみましょう。流れ落ちる滝の勢いや滝壺から跳ねる水しぶきを、ぜひご自身で体感してみてください。
Text：野田昂暉 Edit：Sakura Takahashi
Photo：PIXTA（特記ないもの）
参考：各市町村／施設公式サイト
