高知県土佐湾ホエールウォッチングでクジラ遭遇率90%を誇る理由は?
いざ、出航!ホエールウォッチング体験レポート
ガイドに聞く、ホエールウォッチングの魅力
高知ホエールウォッチング宇佐の参加方法
まとめ

クジラやイルカが泳いでいる姿を目前で見られる「ホエールウォッチング」。それを目的に世界各地を旅行する人もいるというほど、人気の観光アクティビティです。

千葉県や沖縄県など、日本には太平洋側を中心にホエールウォッチングスポットがいくつかありますが、高知県でも90%の遭遇率を誇るホエールウォッチングが開催されていることをご存知ですか?

今回は、高知県土佐湾でのホエールウォッチングの魅力を乗船レポートともに紹介します。

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川・湖沼

高知県土佐湾ホエールウォッチングでクジラ遭遇率90%誇る理由は?

高知県土佐湾で開催されるホエールウォッチングは、クジラ遭遇率なんと90%。日本全国を探しても、ここまで高いクジラ遭遇率を誇るホエールウォッチングスポットはありません。

その理由は、土佐湾を流れる水温の暖かさにあります。高知県を囲む土佐湾は、東は室戸岬から西は足摺岬まで、黒潮の流れる場所。温かな水温を好むクジラの棲みかにぴったりなのです。

高知県土佐湾を棲み処にしている「ニタリクジラ」

そして、高知県土佐湾を棲み処としているのがニタリクジラ。穏やかな性格と優雅に泳ぐ姿から、「海の貴婦人」とも呼ばれています。体長は12~15mで、世界最大のシロナガスクジラと同じナガスクジラ科。

上あごにある3本の線が特徴です。ホエールウォッチングで出会えれば、その大きさに驚くはず。穏やかな性格からか船が近づいてもあまり警戒しません。

潮を上げるニタリクジラ

潮を上げるニタリクジラ(画像提供:高知ホエールウォッチング宇佐)

ホエールウォッチングの出航数が多く、海水温が上がってくる8月後半から9月にかけて高い確率で出会えます。

ニタリクジラを対象としたホエールウォッチングは世界でも珍しく、日本では高知だけ。通常は沖を回遊することが多いニタリクジラですが、高知県土佐湾には数十頭が棲みついていることが確認されているそう。

ベテラン漁師が案内

高いクジラ遭遇率を誇る理由のひとつは、海とクジラの習性を知り尽くしたベテラン漁師が案内してくれるから。今回参加した「高知ホエールウォッチング宇佐」では漁船が使われ、船長は現役の漁師のみなさんが務めます。

ホエールウォッチング協会の旗

現役漁師が船長をつとめる

ホエールウォッチング参加人数によって船の出航数が変わり、多いときは6隻で出航することも。当日漁に出ている仲間の漁師や、ホエールウォッチングをする他の船と目撃情報を連絡しあって船を進めていくため、出航数が多いシーズン中や土日ほど遭遇率は高まるそうです。

イルカの大群に感動

イルカの群れ

船の周りに現れたイルカの群れ(画像提供:高知ホエールウォッチング宇佐)

大海原を悠々と泳ぐクジラはもちろん見応え抜群ですが、船を進めていく間に数十頭の大群で現れるイルカたちに出会えることもしばしば。高知県土佐湾に多く生息する体長2~2.5mほどのハセイルカは、ニタリクジラに次いで発見率が高いそうです。

ハセイルカの他に、少し大型のハンドウイルカやハナゴンドウといったイルカの仲間も観ることができます。野性のイルカたちは、まるで遊びに誘っているかのように、船のスピードに合わせて一緒に泳いでくれることもあります。

いざ、出航!ホエールウォッチング体験レポート

それでは、実際に「高知ホエールウォッチング宇佐」の船に乗りクジラに会いに行きましょう。

朝8時前、大きなクジラのモニュメントが立つ「宇佐しおかぜ公園」に到着。施設内に入ると、船長のご家族をはじめ地元の皆さんが温かく迎えてくれます。受付けや人数調整などもありますので、出航予定の20分前には着くようにしましょう。船酔いしやすいという人は酔い止めを飲むのもお忘れなく。

しおかぜ公園

宇佐しおかぜ公園

桟橋を渡って船へ乗り込みます。ライフジャケットを着たら、いよいよホエールウォッチングへ出航です。

本日のホエールウォッチングの船長

この日の船長は「第八正純丸」の松村敏勝さん。普段はイワシ漁を行っている土佐湾を知り尽くしたベテラン漁師です。船長の親戚だというボランティアガイドの女性と、息の合ったコンビプレーでクジラやイルカを探します。

ホエールウォッチング船長

この日乗船したホエールウォッチング「第八正純丸」船長の松村敏勝さん

高知ホエールウォッチング宇佐には6隻の船と、数名のボランティアガイドがいます。ガイドが乗らないこともありますが、船長やガイドからは船を進めている間、クジラや地元に関する貴重なお話が聞けます。

沿岸ではイルカに会えることも

出航して20分ほど経ったころ、ガイドさんが物見台に上り、双眼鏡で海の様子を確認しはじめます。

クジラを探すガイド

「このあたりでイルカがいることもあるんですよ」とガイドさん

日によってはこのくらいの沿岸でイルカに出会えることもあるということで、浮かんだり沈んだりしている「黒い物体」がないか、目を凝らします。

私たちの船はイルカには会えませんでしたが、9時発の船は5頭のバンドウイルカに会えたそう。イルカたちのかわいい鳴き声も聞けるようです。

目的地まで約2時間、ゆったりとした船旅

広がる海と空

360度広がる空と海

目指すは「黒潮牧場」という、海上に目印として浮かぶ大型ブイ(浮標)。カツオやマグロなどの回遊魚が大型の漂流物に集まるという習性を利用して設置されています。クジラもここに現れることが多いということです。

到着までは出航からおよそ2時間ほど。気持ちのいい潮風を受けて、四方に広がる大海原を眺めながらゆったりと過ごします。ガイドさんの案内で海上に目をやると、モジャコ(ブリの稚魚)の目印となる藻が浮かんでいたり、トビウオやオミズナギドリが現れたり、さまざまな海の生物たちに出会えます。

「黒潮牧場」到着、ついにニタリクジラと遭遇!

ブイ黒潮20号

海上に浮かぶブイ「黒潮牧場20号」

到着したのは、高知市の南方約53kmの海上にあるブイ「黒潮牧場20号」。船長の村松さんが周辺の漁師仲間に声をかけます。「今日は見ていない」という返答があったと思ったら、「いた!」の声。ニタリクジラです。

みんながいっせいに船首に集まり、「あそこだ!」と指差したりカメラを構えたり、船内がわっと盛り上がります。

悠々と泳ぐニタリクジラ

ニタリクジラに遭遇

ニタリクジラは背中をチラッと覗かせたあと、すぐに海中へ。

潜ったときの背中の丸まり方や、クジラの泳いだあとに水面にできるリングを参考にして、次にどこに浮かんでくるか検討をつけます。潜る時間にも個体差があるという説明を聞いて、だんだん浮上のタイミングがわかってきた参加者たち。みんなで一丸となり、「あっちだ!」と声をかけると、船長がググっと舵を切る。漁船ならでは小回りの良さを活かして、クジラとの追いかけっこが始まります。

クジラを探す参加者たち

声を掛け合いながらクジラの次の浮上ポイントを探す

この日のニタリクジラはとても人懐っこく、グルグルと回って白いお腹を見せてくれたり、船の真下を泳いだり。船長のベテランの勘で浮上ポイントに何度も近づくことができ、参加者は大満足。

10回ほど顔を出しては潜ってを繰り返し、1時間近く追いかけっこをしたあと、姿が見えなくなりました。

白いお腹を見せるニタリクジラ

お腹を見せる人懐っこさ

目の前にニタリクジラが現れたときは、「海には本当にクジラがいるんだ!」という当たり前のことに感動しました。それまで各々に過ごしていた参加者が、クジラを探すために一丸となり、船内にチームワークが生まれるのも醍醐味のひとつ。こんなにも人を惹きつける野性のクジラ。世界各国のホエールウォッチングを巡る人がいるというのも頷けます。

帰りもイルカなどを探しながら2時間かけて帰港。朝から5時間ほどの船旅でした。

出発前は「5時間は少し長いかな」と思っていましたが、優雅で楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。一緒に乗船した子供たちも飽きることなく、クジラに興奮したり、船から出る引き波を楽しんだり。家族連れにもおすすめしたいアクティビティです。

海を眺める子供

船に乗る非日常体験に子供も大満足

ガイドに聞く、ホエールウォッチングの魅力

高知ホエールウォッチング宇佐には4人のボランティアガイドがいます。うち2人は高知県在住、2人は県外出身。カメラが趣味だったり船長の親戚だったりと、それぞれの思いを持ってホエールウォッチングガイドを務めているそうです。

ガイドの双眼鏡

ホエールウォッチングガイド専用の双眼鏡を持ってクジラを探す

帰路、この日ホエールウォッチングガイドをしてくれた女性にお話を伺いました。

――ホエールウォッチングガイドはいつからされているんですか

5年前からです。最初はお客さんとして乗ったんですが、いきなりイルカの群れと遭遇して、とても感動したんです。船長は親戚ですし、ほかの船も同級生が乗っていたりしていて、地元に貢献したいという思いもあってホエールウォッチングガイドを続けています。

――ガイドから見たホエールウォッチングの魅力はなんでしょう

クジラやイルカなど、自然の生き物と出会えるのはもちろん素晴らしい体験になると思います。それに加えて、ゆっくりと船の上で過ごす時間が個人的には大好きです。悩みごとも忘れて広い海を眺めていると、心も広くなったように感じます。

――ホエールウォッチングのおすすめの時期を教えてください

8月から9月にかけては土佐湾近海の海水温が上昇し、餌場を求めて東シナ海から上がってくるクジラやイルカが増えますね。8月は夏休みで混んでいますが、出航数も多いので遭遇率は上がります。9月前半も予約が取りやすくておすすめですよ。

――外国の方がホエールウォッチングに参加するときのポイントはありますか

外国の方は「右」「左」といった日本語を覚えておくといいかもしれません。クジラが浮かんできたときに船長がとっさに方向を叫ぶのですが、違う方向を見ていて見逃してしまう方がいるんですよ。

クジラを探す船長

船長とガイドの合図を聞き逃さないように

英語での通訳はありませんが、アジアやヨーロッパなど、各国からホエールウォッチングに参加される方も皆さん楽しまれています。人数によってその日の出航が決まるので、事前に問合せをお願いします。

高知ホエールウォッチング宇佐の参加方法

高知ホエールウォッチング宇佐の参加方法や当日の流れなどは、ホームページに詳しく掲載されています。予約合計人数が6名以上揃わなかったり、天候が悪かったりする場合は欠航となるため、事前に問合せてから参加しましょう。

ホエールウォッチング受付場所

高知ホエールウォッチング宇佐受付所には写真やお土産も

高知ホエールウォッチング宇佐の集合場所は「宇佐しおかぜ公園」内にあります。大きな親子クジラのモニュメントが目印。高知龍馬空港からレンタカーで来る参加者も多いようです。

【高知ホエールウォッチング宇佐 基本情報】
開催期間:5月1日~10月31日まで(要確認)
料金:大人(中学生以上) 7,000円 / 小学生 4,000円 / 幼児(3歳以上)3,000円
出航時間:8:00〜 / 13:00〜(時期により異なる)
所要時間:約5時間
集合場所:高知県土佐市宇佐町橋田浜 宇佐しおかぜ公園
アクセス:JR高知駅からバス約60分
     JR朝倉駅からバス約30分
     高知道土佐ICから車で約20分
申し込み方法:公式HP「高知ホエールウォッチング宇佐」

自然の生き物に間近で触れられる貴重なホエールウォッチング体験

思いのほか人懐っこいクジラに、船の引き波と遊ぶイルカ。360度に広がる空と海を見ながら過ごすホエールウォッチングの時間は飽きることがありません。

地元の皆さんで運営しているアットホームな雰囲気や、一緒に乗船する参加者たちとの会話も楽しく、きっと思い出に残る旅になると思います。特別な一日を過ごしに、ぜひ高知県土佐湾でホエールウォッチングに参加してみてください。