新鮮野菜・果物やローカルフードが並ぶ街路市。高知県高知市では、1690年から300年以上続く「日曜市」が毎週開かれています。
高知城が見える追手筋(おうてすじ)という大通りに、400店を超えるお店が約1kmにわたって並ぶ日曜市。これは、街路市としては日本一の長さで、 日曜市開催時には片側2車線の道路の片側が閉鎖され、歩行者手天国に変わります。
この記事では、高知県出身のライターが実際に日曜市を歩きながら、楽しみ方やおすすめグルメ・雑貨をレクチャーします。
※この記事に掲載の情報は2019年9月時点のものです。諸事情により変更となる場合があるため、お出かけの際はご自身で最新の情報をご確認ください
※2024年7月、一部情報を更新しました
【高知の日曜市いろは】最初に知りたいこと
地元住民と観光客とで毎週にぎわう日曜市
いつ開かれる? 何時から何時まで?
日曜市が開かれるのは、毎週日曜の朝から夕方まで。時間は夏季と冬季で変わります。
●開催日:毎週日曜
●時間:
4月〜9月……5:00〜18:00
10月〜3月……5:30〜17:00
●休み:
①1月1日・2日
②8月10日〜12日(よさこい祭り期間中)
どこで開かれる?
日曜市が開かれる「追手筋」はこのあたり。紫で色をつけた部分にお店が並びます。
どんなものが買える?
日曜市に並ぶのは、新鮮な朝採れ野菜や、手作りのお惣菜、干物などの海産物加工品など。また、植木や花、土佐刃物などの生活雑貨も購入できます。坂本龍馬グッズなどのお土産品も手に入ります。ちなみに、日曜市ではミニチュアの路面電車も売っていますが、これは日曜市でしか売られていないそうです。
龍馬グッズも手に入れられる
雨が降ったら?
日曜市は雨が降っても開催されます。ただし、台風など荒天の場合は中止。ちなみに、出店するかどうかは各お店の判断になるので、天気によってはお休みとなるお店もあります。
アクセスと駐車場
●アクセス
日曜市の最寄駅は、とさでん交通(路面電車)の[蓮池町通駅(電停)]。降りたらすぐの場所です。路面電車を使う場合、一日乗車券を購入しておけば、市場を楽しんだあとの観光にも便利です。
JR[高知駅]からも歩いて10分ほどでアクセスできます。高知駅前の観光情報発信館「とさてらす」で、観光客向けの無料レンタサイクルを利用することもできます。
●駐車場
高知市中心部には、大小複数の有料駐車場があります。
高知県のホームページで公開されている高知市中心部駐車場マップのうち、50台以上が停められる駐車場は次の通りです。
①高知公園駐車場
②タイムズひろめ市場
③APパーキング高知
④パーキング24追手筋店
⑤柳町スカイパーキング
⑥OKパーキング
⑦セントラルパーキング
⑧松井パーキング
⑨K'Sパーキング
⑩高知駅前パーキング
⑪白洋パーキング
⑫畑山ビル駐車場
⑬タイムズトーエイパーキング
⑭天神橋パーキング
⑮おクルマパークダイセイ新堀第1
⑯パーキング24廿代町店
⑰おクルマパークダイセイ高知駅南口
⑱県庁前通り地下駐車場
⑲高知市中央公園地下駐車場
⑳はりまや地下駐車場
㉑高知市文化プラザかるぽーと駐車場
地元民的日曜市の歩き方
東西約1kmにわたって続く日曜市。どこからスタートしても楽しめますが、東西のお店の特徴やポイントを知っておくとより楽しめますよ。
午前中がおすすめ!
日曜市の終了時間は夕方ですが、売れ行きや天気によって早じまいするお店もあったり、人気の惣菜は昼前に売り切れることもあります。なので、日曜市に訪問するタイミングとしては、午前中がおすすめです。
東西の特徴
西側に高知城を眺めながら散策
東から日曜市1丁目、日曜市2丁目と続き、高知城に向かって歩いていった西端は6丁目になります。野菜などの農作物はどのエリアでも見られますが、それ以外にちょっとした違いがあります。
●東側(蓮池町通駅側)に多いもの
・お惣菜
●中央に多いもの
・食べ歩きに適したフード類
●西側(高知城側)に多いもの
・植木屋や花
・土佐刃物などの生活雑貨
このほか、日曜市のガイドブックや観光客向けの冊子やフリーペーパーが並んでいるブースもあります。
高知県は温暖な気候を活かして園芸もさかん
往路でチェック、復路で買い物
どのエリアも賑わっている日曜市ですが、高知駅から来た場合は東端からスタート。
新鮮な野菜や魚、手作りの菓子や惣菜のお店が延々と続きます。時間があれば、往路では店員さんとの会話を楽しんだり値段を比較したりしながら、何を買うかチェックし、復路で購入するのがおすすめです。ただし田舎寿司などの人気の惣菜は早めに売り切れるので、見つけたら買っておきましょう。
中央付近は店の数も多く、芋天やアイスクリンなど食べ歩きに適したお店もあるので、休憩しながらぜひ西端まで進んでみてください。西端の6丁目には、土佐刃物や骨董品、盆栽や花など、お土産を探すのにぴったりのお店が並んでいます。
マイバッグを持っていこう
いろいろと買い物をしているうちに、いつの間にか両手が買い物袋でいっぱいになることも。マイバッグを持参して、快適に買い物を楽しみましょう。
せっかくなので、坂本龍馬や鳴子(高知県のお祭り「よさこい」に使う道具)があしらわれた高知らしい袋を購入していけば、気分もさらに盛り上がるかも。宅配便のブースもあるので、宿泊先などに送ることもできます。
お店の人との会話を楽しむ
有機栽培野菜店のご夫婦と笑顔で野菜の話を
日曜市の魅力のひとつは、お店の人との会話。毎週ほぼ同じ位置に出店するので、ご近所さんも仲良しです。ちょっと店を離れるときはお隣さんが代わりにお会計してくれたり、買い物している間に子どもをあやしてくれたり。日曜市で高知県民の温かな人柄に触れてみてください。
朝食やおやつに! 日曜市のおすすめグルメ
400軒以上のお店が並ぶ日曜市。散策だけでも十分に楽しめますが、せっかくですから地元でも人気のお店やローカルフードは試しておきたいところ。長い道のりのなかお腹が空いたら立ち寄るのにぴったりなお店や、朝ごはんにちょうどいいお店を少しだけ紹介します。
芋の天ぷら
次々にできあがる揚げたて天ぷら
揚げたての芋の天ぷらで人気の「大平商店」は、地元の人ならみんなが知っているほどの有名店。
いつも行列ができていますが、店員のみなさんが手際よく揚げていくのでそれほど待たずに購入できます。スナックのようにカリっとした歯ごたえの衣に、ほくほくと甘いお芋。一度食べたらやみつきに。
大平商店は日曜市だけでなく、木曜市にも出店しています。毎年7月後半から9月前半までは休業しているのでご注意を。
焼き鳥
香ばしい焼き鳥の匂いにお腹が空いてくる
「大平商店」の向かいにある焼き鳥屋も日曜市名物のひとつ。市の中ほどにあるので、ゆっくり日曜市を散策しているとちょうど小腹が空いてくる頃に出会えるお店です。ぜひ、芋天と焼き鳥を買ってひと休みしてみてはいかがでしょうか。
こちらの焼き鳥屋は木曜市にも出店しているので、曜日が合わない場合やスムーズに購入したい人はそちらもおすすめです。
山のお寿司、田舎寿司
田舎寿司(イメージ)
こちらもぜひ試してほしい、高知の郷土料理「田舎寿司」。たけのこやこんにゃく、しいたけにみょうがなど、寿司ネタがすべて山のものでできているお寿司です。
寿司酢にはみかんやゆずを使ったお酢が使われており、ゴマやショウガの風味も効いてさっぱりとしています。
お店ごとに味付けやネタに特徴があり、土佐の家庭の味が楽しめます。最近はいろいろなメディアで紹介されたこともあり早く売り切れる店が多いので、見かけたら購入することをおすすめします。
新鮮野菜と魚
店主との会話を楽しみながら、高知県産の野菜を手に入れよう
高知と言えばなんといっても新鮮野菜と魚。冷やしトマトやきゅうりはその場でも食べられますよ。魚は干物などに加工されているため保存が効くのもうれしいポイント。高知名産ちりめんじゃこは、おやつやおつまみにもぴったりです。
気になる商品があれば、ぜひお店の人に話かけてみてください。「これは何ていう野菜?」「どう調理して食べるの?」と聞けば、あたたかい土佐弁で気さくに返してくれますよ。最近は、英語で案内を書いているお店も増えてきています。
冷やしあめ・アイスクリン
ショウガと水あめで作る「冷やしあめ」
暑い時期なら外せないのが、高知県名物の「アイスクリン」。コーンに乗っていますがアイスクリームではなく、シャーベットに近い食感のアイスです。甘くてさっぱりしているので、ちょっと疲れたころに食べてみては。日曜市以外にも、海岸沿いの道路やお祭りなどでも販売しています。
疲れを癒す甘いものといえば、「冷やしあめ」もおすすめです。関西と中国・四国の一部以外はあまり知られていないようですが、水あめを溶かしてショウガの絞り汁を入れた飲み物です。冬場はお湯で溶いた「あめゆ」でも楽しめます。ショウガを入れるかはお好みでどうぞ。
お土産に! 日曜市のおすすめ雑貨
農産物が有名な高知県ですが、実は和紙や竹細工、金細工などの工芸品も良質なものがたくさんあります。日曜市にも6丁目を中心にクラフト雑貨が並んでいるので覗いてみてください。お土産にもぴったりですよ。
土佐打ち刃物
切れ味と耐久性の高さを誇る「土佐打ち刃物」
400年の歴史を持つ土佐の伝統工芸、打ち刃物。一般的には鍛造から刃付け、仕上げまでを職人が一貫して行うため、自由度が高く「自由鍛造」とも呼ばれています。値段も比較的安価で普段使いの刃物です。
鯨漁も行われていた高知ならではの「くじらナイフ」もお土産として人気。愛らしいフォルムはもちろん、刃先が丸く安全に考慮されているため、小さな子供のファーストナイフとしても最適です。
竹細工
美しい竹細工の鍋敷き
県全体の80%以上が森林という高知県では、さまざまな木材加工品が作られています。森林組合のブースで定期的に出店する「Forest」では竹を使った製品を扱っています。細かい細工を施したコースターや鍋敷き、スマホスタンドなど、さまざまなアイデア商品は見ていて飽きません。なかでも漢字をかたどったマグネットはお土産にぴったり。「旅」「愛」「働」といった文字が人気のようです。
和小物
着物布でできた小物が人気
手作り和小物のお店は、普段使いのものを求めて地元住民が買いにくるのはもちろん、外国人観光客に人気です。お店の方に伺うと、「和柄の布でできた小袋や人形などは外国からのお客さんに喜ばれます。最近では中国からのお客さんが多いですね」とのこと。
そのほかにも、金物や骨董品など、彫り出しもの雑貨店もたくさんあるので、気になるお店は覗いてみましょう。
一緒に楽しみたい周辺スポット
高知の中心街で開催されている市なので、周辺にもお勧めの観光スポットがたくさんあります。ぜひあわせて立ち寄ってみてください。
高知城
土佐藩・初代藩主の山内一豊が築城した南海の名城です。日本で唯一、天守と本丸御殿の両方が現存するお城で、天守など15の建造物が重要文化財に指定されています。日本三大夜城のひとつでもあり、夜のライトアップも人気。
●住所:高知県高知市丸ノ内1-2-1
●公式サイト:高知城
ひろめ市場
土佐の味覚やお土産店などが約60店集まった、雨でも安心の屋根付き商店街です。市場の至る所にテーブルと椅子が置かれているので、好きなものを持ち寄って、みんなでわいわい食べるのがおすすめです。
●住所:高知県高知市帯屋町2-3-1
●公式サイト:ひろめ市場
桂浜水族館
景勝・桂浜の浜辺に建つ、ローカル色あふれる小さな水族館です。土佐湾に生息する魚を中心に、トド・アシカ・ペンギン・カワウソなどさまざまな生き物を飼育展示しています。思わず笑ってしまうユニークなPOPや、ツッコミどころ満載のお魚解説板も大人気。
●住所:高知県高知市浦戸778桂浜公園内
●公式サイト:桂浜水族館
高知県立牧野植物園
日本人として初めて国内の植物に学名をつけた世界的植物学者・牧野富太郎博士の業績を伝える植物園です。高知市内、桜やツツジの仲間の名所「五台山」にあり、園内の3000種類以上の植物が四季を彩ります。
●住所:高知県高知市五台山4200-6
●公式サイト:高知県立牧野植物園
日曜以外も開催! 生活に根付く高知の「市」
日曜市は高知市が認めた公設の街路市ですが、実は火曜・木曜・金曜にも県庁周辺で市が開催されています。
また、公設以外の市も各地で開かれ、最近では高知県立池公園の土曜市「高知オーガニックマーケット」も人気が出てきています。
日曜市の出店者のなかには、ほかの曜市と掛け持ちしている人も多く、「日曜」を逃してしまったらぜひ、ほかの市場を訪れてみてください。
火曜市
●場所:高知県高知市上町4丁目・5丁目
●長さ:約250m
●店数:約20店
●開催日:毎週火曜(1月1日・2日は休み)
●時間:6:00頃〜15:00頃
木曜市
●場所:高知県高知市 高知県庁前
●長さ:約200m
●店数:約70店
●開催日:毎週木曜(1月1日・2日は休み)
●時間:6:00頃〜15:00頃
金曜市
●場所:高知県高知市愛宕町1丁目
●長さ:約150m
●店数:約20店
●開催日:毎週金曜(1月1日・2日は休み)
●時間:6:00頃〜15:00頃
高知オーガニックマーケット
●場所:高知県高知市 高知県立池公園
●開催日:毎週土曜
●時間:8:00〜14:00(7・8月は13:00まで)
●公式Instagram:高知オーガニックマーケット
ここで「市」に関する小話をひとつ。県内を旅行していると無人の産地直売所によく出会いますが、高知ではこれを「良心市」と呼びます。無人店舗のため代金支払いは購入者の「良心」にゆだねられるから、というのが名前の由来だそうです。
おわりに
「南国土佐」の名の通り、温暖で冬の日照時間も長い高知県。四国山地から平場、そして沿岸部へと変化に富んだ豊かな自然のもと、さまざまな農産物が育てられています。
そんな南国土佐の日曜市に並ぶのは、新鮮な朝採れ野菜や手作りのお惣菜など。約1kmにおよぶ長さだけでなく、どことなく異国情緒漂う南国的な雰囲気や、気さくなお店のみなさんと楽しむ会話も醍醐味です。
往復およそ2.5kmにおよぶ日曜市を歩き終えるころには、きっと心地よい疲れと満足感を感じていることでしょう。
高知駅からのアクセスもいいので、ぜひ高知に行くたびに訪れて、春夏秋冬それぞれの旬を味わってみてください。