高知城は現存12天守のなかでも、天守と本丸御殿が現存する日本で唯一のお城です。
約400年あまりの歴史を持つ高知城は、天守ほか15棟が国の重要文化財に指定されており、歴史的な遺構です。城を守るための仕掛けや野面積みの石垣など、城内外に見どころがたくさん。
周辺スポットやイベントも目白押し。イベントでは「よさこい祭り」のほか、高知城で開催される季節ごとのナイトイベントも見どころのひとつです。高知城周辺のおすすめ観光スポットも後半でご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
協力:高知城管理事務所/高知市観光協会
高知城の見どころ9選
見どころ① 天守と本丸御殿
奥:高知城天守、手前:本丸御殿
高知城は歴史背景や文化財的価値などから、日本100名城に選ばれたお城です。
日本にある天守のうち、江戸時代またはそれ以前に建築されて現代まで保存されているものを「現存12天守」といい、高知城もそのひとつです。
現存12天守のなかでも、天守と本丸御殿がどちらも現存しているのは高知城だけ。廃城令や自然災害、太平洋戦争などを乗り越えて、「南海道(※1)随一の名城」と呼ばれる優美な姿を今に残しています。
高知城跡は国の史跡にも指定されており、大変価値のあるお城といえるでしょう。
※1 南海道(なんかいどう):古い日本の地方行政区分のひとつ。四国、淡路島、紀伊(現在の和歌山県)をまとめてこう呼んだ
見どころ② 天守のほか15棟の重要文化財
国の重要文化財のひとつ・黒鉄門(くろがねもん)
現存する天守のほかに、建物では本丸御殿(懐徳館)と納戸蔵(なんどくら)、櫓(やぐら)や門6棟、狭間塀6棟の合計15棟が国の重要文化財になっています。
以前は国宝指定されていましたが、文化財保護法の成立によって1950年(昭和25年)に重要文化財に格付けされました。
見どころ③ 城を守る仕掛けの数々
城を守る仕掛けは、高知城が軍事拠点であったことを感じられる貴重な遺構です。
石落とし
石垣の直下まで攻めてきた敵に対しての仕掛け。真下からのぼってくる敵に石や熱湯などを落としたり、弓や鉄砲、やりで攻撃したりできるようになっています。1階には取っ手のついた床板があり、床下は非常時の貯蔵庫にもなります。
忍び返し
高知城の「忍び返し」
天守北東側の石落としには「忍び返し」と呼ばれる両刃の鉄剣が取り付けてあり、石垣をのぼってくる敵を威嚇して、撃退するための仕掛けです。高知城の「忍び返し」は全国で唯一、現存するものだそう。
横矢掛り
城内の各所で見られる、カギ状に曲がる石垣をいいます。死角をなくしてどこからでも、弓矢を敵に浴びせられるようにするための仕掛けです。
矢狭間(やざま)
矢狭間が設けられた塀
壁面や塀に開けられた丸・三角・四角の小窓のような仕掛けで、城の内側から外側をうかがい弓矢で敵を攻撃するためのものです。高知城の6つの矢狭間塀は、重要文化財に指定されています。
物見窓
敵の動きを監視するため鉄砲狭間(てっぽうさま)とは別に、土塀に設けられた横長のすき間のことをいいます。内側からは外がよく見えますが、外側からは見えにくいのが特徴です。物見窓も高知城にのみ現存する貴重な遺構だそう。
からくり門(詰門)
詰門は1階が塩蔵、2階が家臣の詰所となっていました
詰門は本丸と二ノ丸をつなぐ櫓門で、門内に侵入した敵が簡単に通り抜けしにくいよう、筋違いのからくり門になっています。詰門も現存する重要文化財のひとつです。
見どころ④ 天守からの眺望と青銅製の鯱(しゃちほこ)
天守最上階から見た鯱
天守からは城下の街並みを360度眺めることが可能です。望楼を一周できる廻縁(まわりえん)があるため、遮るものがなにもない天守からの眺めを城主になった気分で味わえるでしょう。
また、天守から見下ろした下重の入母屋破風(※2)には青銅製の鯱が4カ所にあり、間近で見ることができます。鯱といえば多くの城では天守の一番上にのっているため、高知城のように間近で見られるのはとても貴重です。
※2 入母屋破風(いりもやはふ):天守側面の三角に見える部分を「破風」と呼ぶが、入母屋破風も破風の一種。三角屋根(切妻屋根)の側面(妻側)の装飾を入母屋破風と呼ぶ
見どころ⑤ 自然石をそのまま積み上げた野面積みの石垣
天守と天守台の石垣
野面積みは自然石を加工せずにそのまま積み上げたもの。そのため荒々しい印象ですが、実はとても頑丈な石垣です。
高知城の石垣は近江(現在の滋賀県)の石工技術者集団である穴太衆(あのうしゅう)によって築かれたものです。雨が多い土地柄、崩れにくく排水にもすぐれた野面積みが高知城内で多く採用されました。
野面積みのほかにも防衛上で重要な位置にある黒鉄門には、敵がのぼりにくく攻め込みにくいよう「打込みハギ」と呼ばれる手法が用いられています。石を欠いて加工したすき間のない石垣は、見た目にも美しく必見です。
また、矢狭間塀の石垣の中には、「ケ」や「シ」といった字が刻まれた石があります。文字の理由は定かではありませんが、どの石をどこに積むか分かるように掘ったのではないかという説もあります。
見どころ⑥ 高知県ならではの排水設備
高知城の「石樋(いしどい)」。高知城は築城の際も水との戦いでした
高知県は日本でも特に雨が多い地域なので、大量の雨水が石垣を流れてしまうと目詰まりをおこし石垣にゆるみが生じてしまいます。そのため、城の排水が石垣に直接あたるのを避けるように、石垣から飛び出した「石樋」という排水設備が設けられています。
高知城内には16カ所が確認されており、本丸の石樋は現役だそう。三ノ丸で発掘された水路と石樋は、いつでも構造を観察できるようになっています。
見どころ⑦ ひとつの画角に収まる追手門と天守
奥:天守、手前:追手門
追手門と天守がどちらも現存している城は、全国でも高知城・弘前城・丸亀城の3カ所だけですが、そのなかでも追手門と天守を1枚の写真に納められるのは高知城だけ。
追手門をくぐる前にまずは記念写真を1枚。 また、高知城歴史博物館の展望ロビーからも、天守と追手門のツーショット写真が撮影できます。
見どころ⑧ 日本三大夜城に指定されたライトアップ
ライトアップされた高知城
高知城では毎日、日没後から22時まで天守と追手門をライトアップしており、暗闇に天守の白漆喰の壁が美しく浮かび上がります。
大阪城、新潟県の高田城と並び高知城は「日本三大夜城」のひとつ。昼間とは異なる姿で多くの人を魅了する夜の城として知られています。
季節ごとにイベントを行なっているので、季節に応じたライトアップを楽しめるのも特徴です。
春には「高知城花回廊」で桜のライトアップ、「夏の夜のお城まつり」では風鈴・カラーキャンドルとお城のライトアップのコラボレーション。「秋の夜のお城まつり」では紅葉と蝋燭の灯りによる幻想的な光景を、「冬のお城まつり」では本丸や二ノ丸のイルミネーションなどが楽しめます。
毎年冬には特別なライトアップイベントも開催。デジタルテクノロジーを使って空間演出を行う「ネイキッド」や「チームラボ」といった企業とのコラボレーション企画も過去に開催されました。
見どころ⑨ 土佐柏がデザインされた御城印
山内氏の家紋・土佐柏。ブナ科の樹木である柏の葉がモチーフです
高知城の御城印は山内一豊(まやうち かずとよ)以降、16代続いた土佐藩主・山内氏の家紋「土佐柏(とさかしわ)」がデザインされています。
土佐柏は、土佐藩初代藩主・山内一豊の父である盛豊(もろとよ)が戦で柏木を家紋入りの旗の代わりに掲げ、武功を挙げて以来、家紋になったと伝えられています。戦が終わったころには柏の葉がほとんどなくなり3枚しか残っていなかったことから、3枚の柏の葉が家紋になったそうです。
土佐柏がデザインされた御城印は、高知城入り口の入場券売り場にて販売しているので、ぜひ登城の記念に購入してはいかがでしょうか。
高知城の歴史
1分解説-高知城のあらまし
高知城のある場所には、もともと南北朝時代に築かれた「大高坂城(おおたかさじょう)」がありました。戦国時代には長宗我部元親(ちょうそかべ もとちか)が城を築きましたが治水に難儀して城下町を作れず、3年ほどで浦戸(=桂浜のあたり)に移ったと言われています。
その後時が経ち、江戸時代のはじめ、関ヶ原の合戦後の1601(慶長6)年。徳川家康から土佐一国を拝領した山内一豊が10年がかりで高知城を築城。一豊が高知城を築いてから、1871年(明治4)年の廃藩置県に至るまでの270年間、山内家は16代にわたって城主を務めました。その間、大火事で天守などを焼失するも再建を果たし、これが現代まで続いています。
現在は「高知公園」の一部として天守ほか城郭が残されています。
高知城を築城した山内一豊の像。高知公園内にあります
「高知城」名前の由来
1601年(慶長6年)に関ヶ原の戦いの功績により、土佐藩24万石の藩主となった山内一豊は、新たな拠点を築くため大高坂山に築城を開始しました。
土地が河川に挟まれていたため築城の過程で地名を「河内山(こうちやま)」に改めましたが、たびたび水害に悩まされたことから「高智山(こうちやま)」と再び改称。これがのちに「高知」となり、現在の地名や高知城の名前の由来になったといわれています。
名手による築城、ポイントは治水
現在の高知市上空。南北を川に挟まれているのが分かります(画像:地理院地図)
山内一豊が高知城の築城を計画していた大高坂山は、地盤もゆるく、低地のため大雨のたびに近くの川が氾濫する難しい土地でした。一豊は考えた末、治水と築城の名手といわれる百々越前守安行(どどえちぜんのかみ やすゆき)を総責任者に任命し、10年がかりで高知城を築くとともに城下町を完成させます。
工事は川の治水・本丸の盛り土からはじまり、本丸と二ノ丸の完成までに2年、三ノ丸が完成しほぼすべての城郭が整うころには城主は2代藩主・忠義(ただよし)に移っていました。
城下町で起きた大火で焼失
1727年(享保12年)におきた城下町の大火により、高知城は追手門を残し、天守をはじめとする建造物のほとんどを焼失。城下町の3600軒の家も焼けてしまったそうです。
再建にかかった期間は25年
大火から2年後の1729年(享保14年)には深尾帯刀(ふかお たてわき)を責任者に任命して、城郭の再建工事が着工されました。1746年(延享3年)には本丸の再建に着手し、1749年(寛延2年)に現在の天守が完成。
着工から25年目の1753年(宝暦3年)にようやく三ノ丸が完成し、ほぼすべての建造物が再建されました。
高知公園として再整備
明治維新によって廃城となってからは、本丸と追手門以外のすべての建造物が取り壊され、公園として再整備されました。そして1874年(明治7年)8月に一般開放されます。園内には山内一豊や妻の千代、板垣退助の銅像などを設置。季節の花木なども植えられており、現在では町なかのオアシスとして親しまれています。
国宝から重要文化財へ
残存する天守ほか9棟(建物・門・塀など)が1934年(昭和9年)に国宝指定されました。
しかし、国の制度改正による文化財保護法の成立によって、1950年(昭和25年)に重要文化財に格付けされました。
公園となっている高知城跡全域も国の史跡として登録されています。
基本情報・アクセス・駐車場情報
●住所 :高知県高知市丸ノ内1-2−1
●開館時間:9:00~17:00 (最終入館16:30)
●休館 :12月26日〜1月1日
●入場料 :420円
●アクセス:
①JR土讃線「四国」駅バスターミナルからとさでん交通のバスに乗車。「高知城前」下車すぐ
②JR土讃線「四国」駅から路面電車に乗車。「はりまや橋」駅で乗り換え「高知城前」下車すぐ
●駐車場 :普通車65台(高知公園駐車場)※7:30~18:30
●公式サイト:高知城
※2023年1月時点の情報です。
高知城周辺のイベント情報
南国土佐皿鉢祭(3月)
かつおのたたき、刺身、煮物などを大皿に盛り付けるのが「皿鉢料理」です(出典:農林水産省Webサイト うちの郷土料理/皿鉢料理)
大橋通り商店街とひろめ市場前広場で、毎年3月上旬に行われる土佐の「おきゃく」と連携したイベントです。
土佐独特の食文化である皿鉢料理(さわちりょうり)の伝統を受け継ぎ、調理技術の向上を目的として、皿鉢料理・豪快な活造り・高知の食材を使った中華西洋料理などを展示しています。
●関連サイト:高知市観光協会
高知城花回廊(4月)
高知城花回廊で桜とともにライトアップされた天守(写真提供:[公社]高知市観光協会)
「和で綴る花と灯り」をコンセプトとした、春の高知城を彩るイベントです。追手門から高知城天守までのメイン通路を生け花の大作や和の装飾で飾り付け、夜には灯篭や木々のライトアップで出迎えてくれます。
●関連サイト:高知市観光協会
よさこい祭り(8月)
200ほどのチームが出演し高知市内は熱気に包まれます(写真提供:[公社]高知市観光協会)
毎年8月9日から12日の4日間にわたって開催される、土佐の夏の風物詩。
よさこい鳴子踊りは鳴子を持った踊り子たちが、高知の民謡「よさこい節」にあわせて街を踊り歩く活気のあるお祭りです。
●公式サイト:南国土佐・高知 よさこい祭り
高知市納涼花火大会(8月)
鏡川河畔から打ち上げられる花火(写真提供:[公社]高知市観光協会)
よさこい祭りの初日に開催され、高低差のある4カ所から約4000発の花火が打ち上げられる花火大会です。間近で打ち上がる大迫力の花火が土佐の夏の夜空を彩ります。
●関連サイト:高知市観光協会
プロジェクションマッピング(毎年冬)
高知城の冬の楽しみはナイトイベント。2022年度は「牧野富太郎と植物を愛した画家たち」をテーマに、映像・音・ひかりで高知城を彩る光のイベント「Art+高知城 ひかりの花図鑑」が開催されました。
2021年から2022年の冬には「NAKED FLOWERS-高知城-」を開催。クリエイティブカンパニー・NAKED.INCによる、ひかり・音・香りの体験型アートイベントでした。
2019年から2020年の冬に開催されたのは「チームラボ高知城光の祭」。チームラボのデジタル技術によって、日本三大夜城の高知城を光のアート空間に変えました。
高知城と一緒に楽しみたい周辺スポット
高知城歴史博物館
長きにわたり土佐藩主を勤めた山内家伝来の資料を数多く所蔵する高知城歴史博物館
土佐藩や高知県ゆかりの貴重な歴史資料を約6万7千点収蔵・展示し、季節ごとに多彩な企画展や催し物を開催。博物館3階にある展望ロビーからは迫力のある高知城と追手門、山内一豊像が一望できます。
●住所:高知県高知市追手筋2-7-5
●公式サイト:高知県立 高知城歴史博物館
ひろめ市場
ひろめ市場でぜひいただきたいのが「カツオのたたき」
土佐藩家老であった深尾弘人蕃顕(ふかおひろめ しげあき)の屋敷跡付近にある市場です。市場内には飲食店や居酒屋、お土産物屋などが軒を連ね、いたる所にテーブルや椅子が置かれているので好きなものを購入して持ち寄って食べることができます。
●住所:高知県高知市帯屋町2-3-1
●公式サイト:ひろめ市場
はりまや橋
朱色の欄干が特徴のはりまや橋
よさこい節にも歌われているはりまや橋は、堀川をはさんだ「播磨屋(はりまや)」と「櫃屋(ひつや)」が商売のために私設した橋が由来といわれています。周囲には路面電車が走り、橋の東側に設置されたからくり時計からはよさこい節にあわせて高知県の名所などが登場します。
●住所:高知県高知市はりまや町1丁目
●関連サイト:はりまや橋
桂浜
高知市随一の景勝地・桂浜。奥に見える社は大海津見神(おおわたつみのかみ)を祀っています
高知県を代表する景勝地のひとつで、弓状の海岸と緑の松林、紺碧の海が見事に調和した美しい景色が魅力のスポットです。土佐が生んだ幕末の英雄・坂本龍馬の銅像や坂本龍馬記念館があるほか、夜は月の名所としても知られています。2023年3月には新たに商業施設「桂浜 海のテラス」がグランドオープン。
●関連サイト:桂浜
土佐の日曜市
300年以上の歴史を持つ日曜市は、高知城の追手門から1キロメートルにわたり約400店の露店が並ぶ街路市です。新鮮な野菜や果物、海産物、日用品などが売られており、観光客だけではなく地元の人からも生活市として愛されています。
●公式サイト:土佐の日曜市(街路市)
まとめ
高知城の見どころや歴史、周辺スポットについてご紹介しました。
高知城の歴史は古く、重要文化財の天守や本丸御殿など、見ておきたいポイントが盛りだくさん。高知城周辺ではよさこい祭りや土佐の日曜市が開催されるなど、イベントもチェックしておきたいですね。見どころ満載の高知城へ、ぜひ観光に訪れてみてはいかがでしょうか。
Text:Satsuki Kobayashi Edit:Erika Nagumo
Photo(特記ないもの):PIXTA/写真AC
参考文献:『ビジュアル事典 日本の城』(三浦正幸 監修/岩崎書店)、『城! 105 2巻』(日本城郭協会 監修/フレーベル館)、『これだけは知っておきたい 教科書に出てくる日本の城 西日本編』(これだけは知っておきたい教科書に出てくる日本の城編集委員会/汐文社)、各種パンフレット