村の約95%が森林という豊かな自然の中にある、人口1,300人ほどの小さな村「高知県北川村」。都会での喧騒を忘れ、癒しのひと時を過ごすことができる北川村に、「モネの庭」マルモッタンは存在します。
印象派を代表する画家クロード・モネの絵画の世界を堪能することができる「モネの庭」。園内にある3つの庭の中でも、モネの作品『睡蓮』をイメージした水の庭は特に人気のエリアとなっています。
今回は、日本にいながらまるでフランスさながらの景色が楽しめる「モネの庭」の魅力やおすすめの訪問タイミングを、モネの生涯や代表作と合わせて紹介していきます。
モネの庭とは
モネの代表作の一つ『睡蓮』の世界を楽しむことができる「水の庭」
高知県東部の北川村に位置する「モネの庭」マルモッタン。親日家でもあった印象派の巨匠クロード・モネが生涯の半分を過ごした、フランス・ジヴェルニーにある〈モネの庭〉を再現した庭として2,000年に開園しました。
ここは「モネの庭」を名乗ることを許された世界で唯一の場所。モネが、自身の庭で咲かせることを夢見た青い睡蓮を見ることができるモネの庭は、北川村を代表する観光地となっています。
モネがこよなく愛した庭の風景は、「水の庭」「花の庭」「ボルディゲラの庭」の3つのエリアで表現されており、その再現度の高さから、園内を散策していると本当にジヴェルニーにいるかのような錯覚を覚えます。
★ちなみに、岐阜県関市にもクロード・モネの絵画を連想させる池があります。
クロード・モネについて
クロード・モネの生涯
クロード・モネの肖像画
「印象派」という言葉の由来になった作品を描いたことに加えて、とことん「光」にこだわった画家として知られるクロード・モネ。
1840年にパリの比較的裕福な家庭に生まれたモネは、19歳のときにパリに出て本格的に絵を学び始めます。
カミーユ・ピサロやオーギュスト・ルノアール、ジャン・フランソワ・ミレーなど数多くの画家たちとの出会いを重ね、1865年にサロンに出品した油絵が入選。しかし、その後は落選が続き、当時画家としてやっていくためにはサロンで評価されることが必須条件だったため、経済的に苦しい生活が続きました。
その後、1874年にパリで開かれた芸術家の共同出資会社による第1回展覧会を経て、1890年代には画家として認められるように。そして、国家が作品を買い上げるほどの巨匠となりましたが、裕福になっても慢心することなく、モネの代名詞とも言える「睡蓮」の連作に取り組むなど、86歳で生涯を閉じるまでひたすら創作に打ち込み続けました。
クロード・モネの代表作
自然に対して自分が感じた感覚をそのまま表現することに重点を置いていたために、展覧会で酷評を受けるなど紆余曲折な画家人生を送ったクロード・モネ。そんな彼の代表作をいくつか紹介していきます。
『アルジャントゥイユのモネの家の庭(ダリアの咲く庭)』1873年
モネの作品『アルジャントゥイユのモネの家の庭(ダリアの咲く庭)』
1871年末にアルジャントゥイユでモネが初めて借りた家の庭を描いた作品。画面中央から左側に描かれる赤色、桃色、黄色、白色など多様な色彩を奏でるダリアの美しさが印象的な一枚です。
「モネの庭」マルモッタンでは、7月初旬から8月下旬にかけて見頃を迎える色鮮やかなダリアの美しさを楽しむことができます。
『散歩、日傘をさす女性』1875年
モネの作品『散歩、日傘をさす女性』
クロード・モネの代表作の一つ『散歩、日傘をさす女性』。アルジャントゥイユの草原に立ち日傘をさす女性は当時の妻であるカミーユ・ドンシューを、傍らにたたずむ男の子は当時5歳だった長男ジャンをモデルに描かれた作品です。
『ボルディゲーラ』1884年
モネの作品『ボルディゲーラ』
モネが43歳の時にルノワールと旅した地中海のボルディゲラ。その光と色彩に魅了され、興奮とともに描きあげた30点以上の作品の中の一つ。
原色の瑞々しく美しい色彩で描かれたこの作品は、評論家たちに高く評価され、モネの名声がますます高まる要因となったそう。
この作品の世界観は、あとで紹介する北川村「モネの庭」マルモッタンの「ボルディゲラの庭」で楽しむことができます。
モネの人生でも重要な出来事であったボルディゲラへの旅を体験してみてはいかがでしょうか。
『睡蓮』1914-1917年
モネの作品『睡蓮』
モネが晩年期に手がけた最も有名な連作『睡蓮』。ジヴェルニーの自宅兼アトリエに造園した庭園の池に浮かぶ色とりどりの睡蓮を鮮やかに描いた作品です。
睡蓮の鮮やかな薄紅色や黄色と、池の深い蒼色のコントラストはどこか神秘的な雰囲気を感じることができます。
北川村「モネの庭」マルモッタンの「水の庭」では、モネが何枚にもわたり描いた色とりどりの睡蓮が咲き乱れる池で、モネの描いた世界観に触れることができます。
モネの庭の見どころとおすすめ訪問タイミング
モネの庭は「花の庭」「水の庭」「ボルディゲラの庭」の3つのエリアで構成されています。どれもコンセプトが異なり、それぞれの庭でモネの絵画の世界を堪能することができます。
花の庭
色とりどりの花々が咲き乱れる「花の庭」
入り口を入って左手に進むと目の前に広がるのが「花の庭」。色とりどりの花たちが咲き乱れる様子は画家のパレットを彷彿とさせます。
春夏秋冬いつ訪れてもその時々で季節の花々を楽しむことができます。訪れるタイミングは見たい花の見頃や開花時期に合わせて決めるのがおすすめ。「花の庭」の一番人気である薔薇は5月中旬から6月初旬、チューリップは3月中旬から4月中旬が見頃となっています。
また、展望デッキからの眺めも魅力の一つ。「水の庭」や「ボルディゲラの庭」の雰囲気とはうってかわって、カラフルな花々が咲き乱れるメルヘンな庭全体の景色を楽しむことができます。モネの作品にも登場する薔薇のアーチをバックにシャッターを切れば、絵画のような一枚が撮れること間違いなしです。
水の庭
モネが憧れた青い睡蓮
モネの作品の中で最も有名な絵画といえば『睡蓮』を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
そんな『睡蓮』で描かれた風景を楽しむことができるのが「水の庭」です。水の庭の見どころはなんといっても「青い睡蓮」。
モネが夢見た「青い睡蓮」は熱帯性睡蓮のため夏でも涼しいフランスのジヴェルニーでは気候が合わず、温室を建ててまで栽培にチャレンジしたものの咲かせることができなかった品種です。温暖な気候の高知県北川村では、毎年6月下旬頃から青い睡蓮が咲き始め、10月下旬頃まで目にすることができます。
睡蓮は午後になるとだんだんと花が閉じてしまうため、午前中に訪れるのがおすすめ。最盛期を迎える8月中旬には、池全体に色とりどりの睡蓮がまるで宝石のように浮かび、訪れる人を絵画の世界へといざないます。
また、太鼓橋と薔薇アーチといった日本文化と西欧文化の融合も「モネの庭」の特徴の一つ。親日家であったクロード・モネならではの感性に触れることができます。
ボルディゲラの庭
地中海の草木が生い茂る「ボルディゲラの庭」
地中海の光と色彩、モネが感動した風景を楽しむことができるのが「ボルディゲラの庭」。ボルディゲラの庭はもともと「光の庭」という名称で親しまれていましたが、2020年の20周年を記念して新しい庭「ボルディゲラの庭」として生まれ変わりました。
北川村の起伏に富んだ地形を利用し、ヤシやオリーヴなどの地中海付近で見られるトロピカルな植栽と、ツツジや柚子などの高知の植栽を合わせたユニークな雰囲気が一番の魅力。ツツジの見頃である4月から5月、柚子が小さな白い花を咲かせる5月から6月に訪れるのがおすすめです。
また、「水の庭」の睡蓮とはまた違う雰囲気を持つ睡蓮をより近くで見ることができるので、写真映えスポットとして絶好の場所です。
モネの庭のイベント
「モネの庭」マルモッタンでは、1年を通して様々なイベントが開催されています。中でもおすすめのイベントをいくつか紹介します。
モネのナイトキャンバス
ライトアップされた紅葉と水面
「水の庭」と「ボルディゲラの庭」の水辺や紅葉のライトアップを楽しめる夜のイベント「モネのナイトキャンバス」。太陽の光に照らされて美しく輝く水面とはまた違ったロマンチックな雰囲気を楽しめるのが、このイベントの最大の魅力。
時間と共に移りゆく光を描いたモネの作品『睡蓮の池、夕暮れ』の世界に触れることができるのは、17時以降に開催される特別な夜のイベントだけです。
《光のフェスタinモネの庭》は、2021年より「モネのナイトキャンバス」に名称変更。シーズンごとにライトアップのテーマカラーやオブジェが変わる新たなスタイルのイベントとしてスタートしました。
【モネのナイトキャンバス 開催情報】
開催期間:2021年10月2日(土)〜12月12日(日)の土・日・祝のみ
●1stシーズン
期間:10月2日〜10月24日 テーマ:「エメラルドグリーンと夜咲き睡蓮」
●2ndシーズン
期間:10月30日〜11月20日 テーマ:「コバルトブルーとハーブの世界」
●Finalシーズン
期間:11月21日〜12月12日 テーマ:「シャンパンゴールドと紅葉の情景」
開催時間:17時〜20時30分(最終入園 20時)
会場:「水の庭」「ボルディゲラの庭」
入場料:大人1,500円、小中学生500円、未就学無料
《チューリップ,チューリップ》
春に見頃を迎える色鮮やかなチューリップ
春のオープンイベント《チューリップ,チューリップ》。このイベントではモネの作品『サッセンハイムのチューリップ畑』をイメージした“チューリップの丘”が登場します。
モネ特有の筆跡をなぞるように植えられた約3万本のアイスチューリップは必見。北川村の澄みきった青い空と色鮮やかなチューリップが織りなす風景は思わず写真に収めたくなる美しさです。
カメラやスマートフォンを片手に春のモネの庭を楽しんでみてはいかがでしょうか。
キャンドルナイト
キャンドル
「水の庭」にキャンドルを浮かべて幻想的な風景を楽しむイベント「キャンドルナイト」。ゆったりと沈みゆく夕陽と夜咲きスイレンの美しいコラボレーションを楽しむことができます。
ガーデニング教室
ガーデニング
高知市の「イオンモール高知」にて出張開催されるモネの庭のガーデニング教室。クロード・モネの精神を受け継いだ、モネの庭の庭園管理責任者である川上裕から色彩バランスなどの表現方法を学ぶことができます。
必要な持ち物もなく、気軽に寄せ植えの体験をすることができるので、「モネの庭」と合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。
モネの庭のおすすめ園内施設
園内を一通り散策して疲れたら、モネの世界観に触れることができるカフェやギャラリー・ショップがおすすめです。
カフェ「モネの家」
本場フランスのモネの家
のどかな山の景色を眺めながら食事を楽しむことができるカフェ「モネの家」。ここからは「花の庭」や北川村の山々が一望できます。
「モネの家」の一番の魅力はなんといっても地元の新鮮食材をふんだんに使った料理の数々。また、庭づくりだけでなく料理にも情熱を傾け、様々な創作料理を作ったと言われるモネのレシピを活かしたメニューを楽しむこともできます。
落ち着いた雰囲気の店内で北川村の豊かな自然と美味しい料理を堪能しながらゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
ギャラリー・ショップ
ジヴェルニーのモネのアトリエと家をモチーフにデザインされたギャラリー・ショップ
ジヴェルニーのモネのアトリエと家をモチーフにした「ギャラリー・ショップ」。館内のギャラリースペースでは、モネの絵画のレプリカやモネの暮らしの一部を垣間見ることができる展示品、ガーデニングに関する書籍などを自由に見ることができます。
また、絵画や美術館巡りが好きな方にぜひ訪れて欲しいのが「ショップスペース」。モネ関連のポストカードやミュージアムグッズなど、モネの庭オリジナルグッズが揃っているので、お土産や来園の記念としてお気に入りのものを探してみてはいかがでしょうか。
モネの庭の開園時間・料金案内
開園時間
開園時間:9:00〜17:00(最終入園16:30)
休園日:6月〜10月の第1水曜日、12月1日〜2月末日
入園料
一般:1,000円
小中学生:500円
小学生未満:無料
※入園料のお支払いにはクレジットカードは利用できません。
モネの庭へのアクセス
交通アクセス:(1)JR高知駅から車で約90分
(2)高知自動車道・南国ICから車で約70分
(3)高知龍馬空港から車で約60分
(4)土佐くろしお鉄道・奈半利駅からバスで約10分
住所:〒781-6441 高知県安芸郡北川村野友甲1100番地
電話番号:0887-32-1233
駐車場:園内無料駐車場あり(約100台収容)
公式サイト:北川村「モネの庭」マルモッタン
「モネの庭」は高知県北川村が誇る絶景スポット
今回は北川村「モネの庭」マルモッタンについて紹介しました。
まるで絵画の中に入ったかのような感覚を味わえる「モネの庭」で、美しくもどこか儚いモネの世界観に触れてみてはいかがでしょうか。