臼杵市が誇る老舗「後藤製菓」
後藤製菓が誇る銘菓「臼杵煎餅」とは
創業100年を迎えた後藤製菓の新たな取り組み
まとめ

大分県の東海岸に位置する臼杵市(うすきし)には、岩壁を掘って作られた磨崖仏(まがいぶつ)の「臼杵石仏(うすきせきぶつ)」という国宝があります。その臼杵石仏のすぐ隣に店舗を構えている「後藤製菓」が、今回紹介する銘菓を作るお店。臼杵石仏観光のお土産にぴったりな「臼杵煎餅」を作る、老舗です。

臼杵石仏とともに時代を歩んできた後藤製菓は、2019年に創業100年を迎えました。新しい菓子店が続々と開店する中、後藤製菓はどのようにして100年の歴史を歩んできたのか。臼杵煎餅はもちろん、お土産にも人気の高い臼杵市名産の「有機生姜」を用いた取り組みとともに紹介します。

臼杵市が誇る老舗「後藤製菓」

臼杵の街並み

臼杵の町並み(写真提供:臼杵市おもてなし観光課)

大分県臼杵市は、国宝である「臼杵石仏」のほかにも、桜で有名な臼杵城跡や、古くから続く醤油・味噌造りなどでも有名です。観光スポットとしては「二王座」というエリアも人気。着物が似合う、城下町の風情を残す町並みが楽しめます。

現在、臼杵城跡は臼杵公園として整備されており、春には約800本の桜が楽しめる「臼杵城址桜まつり」が開催されます。

臼杵石仏

国宝「臼杵石仏」(写真提供:臼杵市おもてなし観光課)

臼杵市内から内陸に車を約10分走らせたところに、国宝に指定された臼杵石仏は位置しています。

平安時代後期から鎌倉時代にかけて岩壁に彫刻された臼杵石仏は、その規模・数量・質の高さにおいて、日本を代表する石仏群。磨崖仏としては全国初、彫刻としては九州初の国宝指定を受けました(1995年6月)。

石仏群は全部で61体あり、それぞれ「ホキ石仏第一群」「ホキ石仏第二群」「古園石仏(ふるぞのせきぶつ)」「山王山石仏」の4群に分けられています。この名前は地名によって名付けられたもので、特に有名なものが写真の「古園石仏」です。

後藤製菓の外観

後藤製菓の外観

そして今回紹介するのが、臼杵石仏の横に立つ和菓子店の「後藤製菓」です。後藤製菓は銘菓「臼杵煎餅」を作り続け、昨年の2019年に創業100年目を迎えた老舗。

近年では新しいブランドを立ち上げたり、新食材を使って商品開発をしたりと、創業100年を経てもなお努力を続ける製菓店としても知られています。

後藤製菓の店内

店内の様子

店内にはさまざまな商品がずらり。商品購入のほか、煎餅を焼いている様子、生姜シロップを塗っている様子などの見学もできますし、焼きたての煎餅の試食も可能です。

店内には販売所のほか、菓子生産工場や菓子作りが体験できる体験教室も備えています。

後藤製菓が誇る銘菓「臼杵煎餅」とは

臼杵煎餅

臼杵煎餅詰め合わせ(1,620円 / 27枚入り)(写真提供:後藤製菓)

後藤製菓の代表である銘菓は、「臼杵煎餅」。江戸時代、参勤交代の携行食として作られたのが始まりです。小麦粉を焼いて薄く曲がった煎餅に、ハケで丁寧に生姜糖(しょうがシロップ)を塗るという、伝統的な方法で製造されています。

臼杵煎餅製造工程

臼杵煎餅の製造工程(写真提供:後藤製菓)

煎餅の模様は、臼杵市の地名の由来でもある、「臼(うす)」の木目を表しているのだそう。

臼杵煎餅を手塗りする様子

煎餅を手塗りしていく様子(写真提供:後藤製菓)

また、包装袋には臼杵石仏の代名詞となっている「古園石仏大日如来像(ふるぞのせきぶつだいにちにょらいぞう)」が印刷、販売されています。

臼杵煎餅のパッケージ

臼杵石仏が印刷されたパッケージが目印

後藤製菓では臼杵煎餅が作られる様子を見学できる

工場見学の様子

臼杵煎餅の製造工程は見学可能

後藤製菓店内に入ってすぐ左側には、臼杵煎餅を手塗りしている作業工程を見ることができる見学コースがあります(所要時間は5~10分程)。

後藤製菓では昔からの作り方を守り、今でも一つ一つ、手作業で製造しています。

約100℃にもなる蜜を一瞬で塗りあげていく様子は、長年作られてきた銘菓の伝統を感じられます。うまくハケ目を出すには繊細さが必要。熟練スタッフによって受け継がれている伝統製法は必見です。

見学の途中では焼きたての臼杵煎餅の試食もできます。できたてホヤホヤの煎餅の香りもぜひ楽しんでみてください。
※工場見学は平日の営業時間内のみ。製造の稼動状況によっては見学できない場合も

臼杵煎餅手塗り体験

手塗り体験の様子

3日前までの事前予約が必要ですが、臼杵煎餅の手塗り体験のワークショップも実施しています。自分で挑戦することで、より難しさが分かるはず。ぜひ挑戦してみてください。

【ワークショップ 概要】
開催時間:11:00〜 / 14:00〜
所要時間:約15~30分
参加費:550円 / 1名
参加可能人数:1〜30名
後藤製菓公式WEBサイト
※31名以上の場合は応相談
※20名以上の参加の場合時間の前後あり

創業100年を迎えた後藤製菓の新たな取り組み

臼杵石仏のすぐ横にお店を構え、銘菓「臼杵煎餅」を作り続けてきた後藤製菓。2019年に記念すべき創業100年を迎え、気持ちを新たに、さまざまな取り組みに挑戦しているのです。後藤製菓がますます好きになるその取り組みの一部を紹介していきます。

新ブランド「IKUSU ATIO(イクス・アティオ)」をスタート

新ブランド「イクス・アティオ」

新ブランド「IKUSU ATIO(イクス・アティオ)」の商品

臼杵石仏とともに時代をあゆみ、2019年に創業100年を迎えた後藤製菓。老舗の味を守り続けるだけではなく、100年という節目に合わせ、新たな試みとしてさまざまな菓子を生み出しています。

そのひとつが、後藤製菓の創業100周年記念ブランドとして2019年に発表された新ブランド、「IKUSU ATIO(イクス・アティオ)」です。

「情報や流通は『世界→東京→大分→臼杵』という流れが主でしたが、臼杵の地で、臼杵の素材を使用したこだわりの商品を作り、『ここ臼杵から、大分、さらに世界に向けて発信していく』という気持ちが込めて生み出したのが『イクス・アティオ』です。

この名称は、大分 臼杵(OITA USUKI)を逆から読ませることで、そのコンセプトを体現しています」と後藤専務は話します。

百寿ひとひら

イクス・アティオから登場した新商品「百寿ひとひら」

新ブランドの取り組みで誕生した商品のひとつには、臼杵煎餅を小さなサイズにアレンジした「百寿ひとひら」という商品があります。「今までの100年、これからの100年も変わらずに、一枚一枚丁寧に手掛けていく」という気持ちを込めて名付けられました。

そのほかにも、臼杵市産の生姜やかぼすを使用したり、今までになかった「きなこ味」を使ってみたりと、さまざまな味わいを掛け算してイクス・アティオの新商品は作られています。

地元・臼杵産の有機生姜を世に広めたい!

後藤製菓では、臼杵で有機生姜を生産する農家さんを後押ししたいという思いのもと、臼杵産の有機生姜を積極的に使用しています。

臼杵市の農家さんの写真

臼杵市の有機生姜を作る農家さん(写真提供:後藤製菓)

昔はショウガの一大生産地だった臼杵市ですが、時代と共に農家の数も減り、生産量も激減してきていました。しかし近年、市をあげて「有機農業」に力を入れ始めたのをきっかけに、有機生姜の生産農家も現れています。

有機ショウガの商品

生姜のオーガニック商品

イクス・アティオの商品としては「百寿ひとひら」はもちろんのこと、オーガニックシロップやジンジャーパウダーなども大人気。全原材料は有機認証品、味の監修は、「シニア野菜ソムリエ」兼「アスリートフードマイスター」の1級資格を持つ坂本君枝さんに依頼するというこだわりようです。

有機生姜・かぼす・はちみつで作られたオーガニックシロップ(864円)は、冬にはお湯で、夏には炭酸水などで約5倍に希釈していただくのがおすすめ。体がぽかぽかと温まる、優しい味わいのジンジャードリンクが完成します。

ジンジャーパウダー(540円 / 15g)は、有機生姜を手軽に使えるようにと、細かくパウダー状に粉砕して作られています。飲み物や料理に振りかけるだけで、手軽にショウガの香りと辛味を加えることができる優れもの。こちらも臼杵市のお土産にぴったりですね。

クラウドファンディングの取り組み

2019年8月、後藤製菓は101年目を迎えた新しい挑戦として、全国的に「臼杵煎餅の次なる変化」のアイデアを募集するという取り組みも実践。そして、集まったアイデアの中から一番ニーズの高かった「チョコレート×臼杵煎餅」の開発に挑戦したのです。

クラウドファンディングで資金を募ったところ、目標金額を大きく上回る177%を達成。見事新商品「「う♡(うすき)チョコクランチ」と、冬季限定の商品が誕生することとなりました。いかに後藤製菓が人々に愛されているかがうかがえますね。

クラウドファンディングで生まれた商品

クラウドファンディングで生まれた新商品

「百寿ひとひら」に有機チョコレートをコーティングした冬季限定商品(写真左上)と、クラッシュした臼杵煎餅を使った新商品「う♡チョコクランチ」は、後藤製菓の新しい人気商品です。

チョコレートをまとった臼杵煎餅

チョコとのコラボ(864円 / 8枚入り)(写真提供:後藤製菓)

百寿ひとひらの新商品は、臼杵市出身であり大分県を代表するショコラティエである赤峰 将隆(あかみね まさたか)さんが監修しています。

こだわりは、「チョコレート・生姜・煎餅のバランス」。有機チョコレートと有機生姜の香り、そして昔ながらの煎餅の味と食感が絶妙なバランスで合わさり、今までになかった新感覚のおいしさです。原材料にもこだわり、有機チョコレートを100%使用しています。

今回のクラウドファンディングで生まれた、百寿ひとひらのチョコレート味は2020年2月より一般販売されていますので、できたてホヤホヤの新商品を試してみてください!

また、もうひとつの新商品「う♡チョコクランチ」でこだわったのは、「臼杵煎餅ならではの味と食感が上手くチョコレートと交わること」。そのためには臼杵煎餅の割り方がとても重要で、試行錯誤の結果、機械でなく、すべて手作業で煎餅を割ることになったそうです。「う♡チョコクランチ」は2020年11月上旬から販売予定です(時期が前後する可能性あり)。

子どもからお年寄りまで、幅広い年代に愛される後藤製菓

後藤製菓では、柔らかい煎餅に小倉餡・抹茶餡・ブルーベリージャムなどをサンドして作られる「うすきせんべい・生さんど」や、小さな子どもたちにも手に取ってもらいやすいよう、ゆるキャラ「ほっとさん(臼杵市観光PRキャラクター)」の焼き印を押した「臼杵せんべいサブレ」など多彩なお菓子を作っています。

臼杵石仏と共に、長年地元で愛されてきた後藤製菓。大分県や臼杵市を訪れた際には、ぜひ後藤製菓のお菓子を手に取ってみてください。100年前から受け継がれた変わらない味、そして新しい試みによるユニークなお菓子から、後藤製菓のこだわりや思いを感じてみてはいかがでしょうか。