昼間とは違う、煌びやかな街の景色は心をうきうきさせます。「100万ドルの夜景」「光の絨毯」などと表現される夜景スポットは、一度見てみたいですよね。
日本には、特に夜景が美しい場所・都市が「日本三大夜景」に認定されています。ここでは「新日本三大夜景」「日本新三大夜景」「日本三大夜景」にそれぞれどこが選ばれているのか? それぞれの違いは何か? 選ばれている場所の特徴は何か? を解説していきます。
日本三大夜景には3種類ある
3種類の日本三大夜景一覧マップ
①新日本三大夜景
左から「笛吹川フルーツ公園」「若草山」「皿倉山」の夜景
【選定団体は?】
「新日本三大夜景」を選定したのは、夜景愛好家による団体「夜景倶楽部」の有志。選定にあたっては「新日本三大夜景・夜景100選事務局」という事務局を立ち上げています。「新日本三大夜景」が発表されたのは2003年のことでした。
【選定基準は?】
新日本三大夜景・夜景100選事務局は、一般の人でも気軽に行けるような場所であることを選定基準としています。
・一定規模以上の観光地あるいは都市の近くにあること
・道程がある程度整備されていること
【選ばれた3カ所はどこ?】
●笛吹川フルーツ公園(山梨県山梨市)
●若草山(奈良県奈良市)
●皿倉山(福岡県北九州市八幡東区)
②日本新三大夜景(日本新三大夜景都市)
左から「北九州市」「札幌市」「長崎市」の夜景
【選定団体は?】
「日本新三大夜景」を選定したのは、「一般社団法人 夜景観光コンベンション・ビューロー」。日本夜景遺産の認定や、夜景観光に関する普及活動を行う非営利法人です。
「日本新三大夜景」は正式名称を「日本新三大夜景都市」といい、2015年10月に〝新しい日本の夜景ブランド〟として創設されました。通常3年に1度ランキングを更新しており、これまで4都市が「日本新三大夜景」に選ばれてきました。
【選定基準は?】
「日本新三大夜景」の選定方法は投票式です。全国の6000名以上いる夜景観光士が、各々の基準で「日本新三大夜景都市にふさわしい都市」を選び、ポイントを投票します。投票されたポイントを集計し、10位〜1位までランキング化。上位3都市が「日本新三大夜景」に決定します。
【選ばれた3カ所はどこ?】
①2015年(第1回)
●第1位:長崎市
●第2位:札幌市
●第3位:神戸市
②2018年(第2回)
●第1位:長崎市
●第2位:札幌市
●第3位:北九州市
③2022年(第3回)
●第1位:北九州市
●第2位:札幌市
●第3位:長崎市
③日本三大夜景
左から「函館山」「摩耶山」「稲佐山」の夜景
【選定団体は?】【選定基準は?】
「日本三大夜景」は、日本中の代表的な夜景のうち、特に有名な場所を選んだものです。しかしながら誰がいつ、どのような基準で選んだのか、詳細が不明です。
一説によれば1950年〜60年代の高度経済成長期に、旅行会社が発表したという説もありますが、出典が明らかではありませんでした。
ただ、3カ所には共通点があります。「山上にあること」「ロープウェイが整備されておりアクセスがよいこと」「港町であること」の3つです。また、いずれも日米修好通商条約により開港になった6つの港(下田・函館・神奈川・長崎・新潟・兵庫)に含まれます。
港町からの発展を遂げ、多くの人が行き来するようになった都市が選ばれているようですね。
【選ばれた3カ所はどこ?】
●函館山(北海道函館市)
●摩耶山(兵庫県神戸市)
●稲佐山(長崎県長崎市)
3種類の〝日本三大夜景〟の違い
各〝日本三大夜景〟の特徴を紹介してきましたが、それぞれの違いや共通点を整理すると、次のようなことが挙げられます。
【違い】
●それぞれ発表している団体が違う(日本三大夜景は発表者不明)
●「新日本三大夜景」は明確な基準をもとに選ばれている
●「日本新三大夜景」は明確な基準がなく、投票式で選ばれている
●「日本新三大夜景」はおよそ3年に1度更新される
【共通点】
●選ばれている場所はいずれも一般の人が訪れやすい観光地である
●どの〝日本三大夜景〟にも、九州の都市が1カ所以上選ばれている
【番外編】世界新三大夜景
「日本新三大夜景」の発表団体と同じ「一般社団法人 夜景観光コンベンション・ビューロー」が選定する〝三大夜景〟に「世界三大夜景」があります。
これは日本国内のみならず、世界中から魅力ある夜景が見られる都市を選ぼうというもので、2012年に発表されました。こちらは投票制ではなく、11項目の基準に沿って認定委員会が選定します。2021年には約10年ぶりに再認定が行われました。
【選ばれた3カ所はどこ?】
①2012年(第1回)
●香港
●モナコ
●長崎
②2021年(第2回)
●モナコ
●長崎市
●上海
新日本三大夜景:それぞれの場所の特徴
笛吹川フルーツ公園(山梨県山梨市)
笛吹川フルーツ公園からの夜景
笛吹川フルーツ公園は、山梨県山梨市にある、フルーツについて学べる場所。公園内には果樹園があるほか、旬のフルーツが買えるショップ、子どもたちが身体を思い切り動かせる「わんぱくドーム」「アクアアスレチック」などが揃います。
夜になると、甲府盆地やドーム型レストラン「星屑レストラン ガイア」がライトアップされ、美しい夜景が広がります。とてもロマンチックな夜景なので「恋人の聖地」としても知られていますよ。
【笛吹川フルーツ公園の基本情報】
●住所:山梨県山梨市江曽原1488
●駐車場:あり
●公式サイト:笛吹川フルーツ公園
若草山(奈良県奈良市)
若草山からの夜景
奈良県奈良市、奈良公園の近くにある芝生に覆われた山です。毎年1月には「山焼き」が行われることで知られます。山頂には5世紀ごろに作られたとされる、史跡鷲塚古墳も点在。
山頂からは、奈良市街や東大寺の大仏殿、さらには遠くの生駒山などを一望でき、日が落ちると街の明かりが美しく輝きます。視界を遮るものがなく、パノラマビューを存分に楽しむことができるでしょう。
【若草山の基本情報】
●住所:奈良県奈良市雑司町469
●駐車場:あり
●公式サイト:奈良公園
皿倉山(福岡県北九州)
皿倉山からの夜景
北九州市の皿倉山は、標高622mの低山です。山頂まで「皿倉山ケーブルカー・スロープカー」で登ることができ、アクセスは抜群。
ゆっくりと登りながら、眼下に広がる北九州市の夜景を眺めることができます。山頂から見ることのできる、門司港や小倉市街、関門海峡など歴史ある街の景色は、夜には「100億ドルの夜景」と呼ばれるほど。
展望レストラン「天宮-TEN・KYU-」で夜景を見ながらの食事もおすすめですよ。
【皿倉山の基本情報】
●住所:福岡県北九州市八幡東区尾倉1481-1
●駐車場:山頂付近になし
●公式サイト:皿倉山ケーブルカー&スロープカー
日本新三大夜景(2022年版):それぞれの都市の特徴
第1位 北九州市:工場夜景×都市夜景
力強い工場夜景が特徴の北九州の夜景
2022年の投票で1位となったのは福岡県北九州市の夜景。沿岸部の工場と、都市部の夜景の両方を楽しむことができるエリアとなっています。
自然も豊富でイベントも多く開催されるなどさまざまな要素が入り混じり、楽しみ方の幅が広がっていることが評価のポイントになったそうです。「皿倉山」「門司港レトロ展望室」など夜景観賞スポットも点在しています。
北九州市の夜景スポット・イベント
①門司港レトロ展望室(もじこうレトロてんぼうしつ)
レトロ感満載の建物がある門司港レトロ展望室
地上103mに位置する「門司港レトロ展望室」。眼下には明治・大正時代に国際貿易港として栄えた門司港があり、文字通りレトロな雰囲気を残しています。奥に目をやると都市部の煌めきが見え、時代の混ざり合いを味わうことができます。
冬にはイルミネーションが開催され、水面に色とりどりのライトが映り込む景色はまさに絶景。展望室にはカフェも併設されているため、ゆったりと過ごしたい人にもおすすめです。
②工場夜景クルーズ
独特の存在感と美しさを放つ工場夜景
北九州の夜景といえばなんといっても「工場夜景」。近年の「工場夜景ブーム」により、注目度が高まっているエリアです。
北九州の工場夜景はとにかくダイナミック。製鉄所やプラント群などイメージ通りの工業地帯が夜の中に浮かび上がります。関門汽船が「夜景鑑賞定期クルーズ」を運行しており、より近くで工場の迫力を感じながら無機質な美しさに浸ることができます。
③小倉イルミネーション
環境にも配慮されている小倉イルミネーション
北九州の冬を代表するイベントである「小倉イルミネーション」。次世代を担う子供の夢と感動を育むという目的で開催されている光のショーです。
都心部の各エリアではさまざまなイルミネーションが開催。テーマの一つを「エコ」と設定し、環境やヒトに優しいイルミネーションを展開しています。
第2位 札幌市:夜景スポット&イルミネーション多数
光り輝く夜の札幌市街
2022年の投票で2位となったのは北海道札幌市の夜景です。北海道の夜景といえば函館や小樽を思い浮かべる方も多いと思いますが「日本新三大夜景」のランキングでは札幌が北海道エリアを制することとなりました。
札幌が上位に食い込んだ理由は「藻岩山(もいわやま)」「さっぽろテレビ塔」「JRタワー」など多くの夜景スポットが点在しているからだそう。
イルミネーションの先駆けともいわれる「さっぽろホワイトイルミネーション」や「さっぽろ雪まつり」など冬の夜を彩るイベントも多く開催されているのもポイントです。
札幌市の夜景スポット・イベント
①藻岩山(もいわやま)
藻岩山からの夜景は宝石箱のような美しさ
標高563mを誇る「藻岩山(もいわやま)」。札幌の街並みを一望できる絶景スポットです。眼下には石狩平野が広がります。
麓(ふもと)から中腹まではロープウェイ、中腹から山頂まではケーブルカー「もーりすカー」で移動できるため、足腰に自信がない人も訪れやすくなっています。
また「日本百名月」として認定登録された地でもあるため、雲の少ない夜に浮かぶ月と夜景のコンビネーションはうっとりするほど幻想的。全国の夜景ファンからも絶大な支持を得ている眺望です。
②さっぽろテレビ塔
さっぽろテレビ塔から見た札幌大通公園
1956年に建てられた高さ約147mの札幌のランドマーク。地上約90m地点にある展望台からは「札幌大通公園」の夜景を楽しむことができます。奥までまっすぐ伸びる大通りは、都市部ならではの秩序だった美しさがあります。
③JRタワー
札幌の夜景をすぐ近くで堪能できるJRタワー
札幌駅直結の「JRタワー」。アクセスの良さから札幌の夜景価値を高めることに貢献しました。街の中心にあるため、360度の夜景を楽しめます。
④さっぽろホワイトイルミネーション
日本三大イルミネーションにも認定されているさっぽろホワイトイルミネーション
毎年11月から札幌大通公園にて開催される大規模なイルミネーションイベント。クリスマスや北海道の自然をイメージしたオブジェが立ち並び、通りを彩ります。毎年新しい演出が加わるため、何度訪れても新鮮。
⑤さっぽろ雪まつり
ライトアップされている巨大な雪の城
札幌の風物詩ともいえる「さっぽろ雪まつり」は1950年に始まりました。
開催地である札幌大通公園には迫力のある巨大な雪像がいくつも並び、多くの観光客を魅了します。雪像は毎年異なるものが製作されます。
飲食ブースではラーメンやジンギスカンなどの北海道名物、海鮮、温かいスープなどが楽しめます。開催時期の札幌は極寒。あったかグルメが染みます。
第3位 長崎市:歴史ある街・建物とライトアップ
日本一の夜景と評される長崎の夜景
長崎の夜景の中心となっているのが「鶴の港」と呼ばれる長崎港。港の周りを山が取り囲むようにそびえ立ち、すり鉢状と表現される地形が特徴的な地域です。
この地形の恩恵を受けて稲佐山、鍋冠山、グラバー園などさまざまな夜景スポットが点在。夜景に関するイベントも多く、街全体にロマンティックな雰囲気があります。
長崎市の夜景スポット・イベント
①鍋冠山(なべかんむりやま)
鍋冠山の夜景
稲佐山と並ぶほどの絶景スポットです。特に、長崎港にクルーズ客船が停泊する夜は圧巻。訪れる際は、事前にクルーズ客船の停泊があるかチェックしておくのがおすすめです。
クルーズ客船の停泊スケジュールは長崎港の公式サイトから確認できます。
②グラバー園
ライトアップされる旧グラバー住宅。邸宅前の丸い花壇は絶好の撮影スポット
「旧グラバー住宅」をはじめ、明治時代の歴史的建築物6棟を移転復元した「グラバー園」。美しい建物やライトアップ、自然と街並みを一度に楽しめます。
グラバー園の名前にもなっている「旧グラバー住宅」はスコットランド出身のトーマス・ブレーク・グラバーの邸宅だった建物。日本の建築と西洋の建築が織り混ざったデザインは必見です。
夜には園内がライトアップされ、12月には「グラバーズナイトイルミネーション」も開催されます。
グラバー園から見る長崎の夜景
グラバー園内屈指の夜景スポットは「旧三菱第2ドックハウス」。2階のベランダからは稲佐山なども見渡すことができます。
③長崎ランタンフェスティバル
巨大なオブジェに圧倒される長崎ランタンフェスティバル
長崎の冬の風物詩ともいえる「長崎ランタンフェスティバル」。中国の旧正月を祝う「春節祭」を起源とする一大イベントです。
各会場には大型のオブジェが設置されます。新地中華街では10mを超えるものも。「龍踊り」「中国雑技」など中国らしいイベントも開催され賑わいます。
ランタンが照らす街は、異国情緒があり非日常的。この時期だけの絶景です。
日本三大夜景:それぞれの場所の特徴
函館山(北海道函館市)
函館山からの夜景
函館山(はこだてやま)からの夜景は「100万ドルの夜景」の異名でおなじみ。函館湾を中心に広がる街の光景は、まるで一枚の絵画のようです。
函館山の眺望は「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」でも、3つ星として紹介されるほど。市内中心部からロープウェイを利用し、約3分で山頂までたどり着けます。
山頂の展望台にはショップやレストランなどもあり、ゆったりと時間を過ごせます。
【函館山ロープウェイの基本情報】
●住所:北海道函館市元町19-7(山麓駅)
●駐車場:あり
●公式サイト:函館山ロープウェイ
摩耶山(兵庫県神戸市)
摩耶山の掬星台からの夜景
摩耶山は、神戸市を代表する夜景スポットとして多くの観光客が訪れます。
摩耶山(まやさん)は六甲山地の中央にある標高702mの山。まやビューライン(ケーブルカー・ロープウェー)を乗り継ぐことで、約10分程度で山頂にたどり着くことができます。
摩耶山にある「掬星台(きくせいだい)」からは、神戸市内の高層ビル群、大阪湾、さらには関西空港までの絶景を一望できますよ。
夜景の他に、カフェ・ショップの「摩耶ビューテラス」や「摩耶自然公園」、「摩耶山天上寺」など見どころ満載。日中もハイキングや参拝などが楽しめ、1日中過ごせるスポットです。
【摩耶山掬星台の基本情報】
●住所:神戸市灘区摩耶山町2-2
●駐車場:あり
●公式サイト:摩耶ビューライン
稲佐山(長崎県長崎市)
稲佐山からの夜景
長崎県長崎市にある標高333mの山。こちらも「1000万ドルの夜景」として有名です。
市街地が湾に囲まれた独特の地形をしており、夜になると海岸線が光で縁取られます。工場夜景と市街地の夜景が同時に見られるのも稲佐山の特徴。スロープカーや、ロープウェイで一気に山頂まで登ることが可能です。
レストラン「ITADAKI」や緑豊かな「稲佐山公園」、公園内にある「猿舎」や「鹿放牧場」など、周囲には観光が楽しめるスポットが多数点在します。
【稲佐山公園の基本情報】
●住所:長崎県長崎市淵町407-6
●駐車場:あり
●公式サイト:稲佐山公園
おわりに
今回は日本三大夜景とおすすめスポットについて紹介しました。エリアごとにさまざまな特徴と魅力がある夜景。あなたがいつも何気なく通る街でも遠くから見ると息を呑むような美しさを放っているかも。
全国各地の夜景を回って自分にとっての特別な景色を探してみてはいかがでしょうか。
Text:編集部
Photo(特記ないもの):PIXTA