富良野線はラベンダーなどに代表される絶景が楽しめる路線として知られていますが、美瑛を境に性格が変化する興味深い路線でもあります。今回はそんな富良野線の旅をご紹介します。
TOP画像:美瑛の丘を走る富良野線(2016年)
※本記事に掲載の列車時刻、その他記載の情報は2024年4月時点のものです。また写真は2024年3月以前に撮影されたものです。最新の状況と異なる場合がありますので、お出かけの際はご自身で最新情報をご確認ください
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富良野線はどんな鉄道路線?:路線図と概要
富良野線は、おおよそ北海道の真ん中にある富良野市と、北海道第2の都市・旭川市を結ぶ全長約55kmの路線です。
富良野から途中の美瑛までは日中おおむね2時間に1本程度の運行頻度です。美瑛から先、旭川までは同じく1時間に1本程度の本数が確保されています。
また、観光シーズンには一部の区間で速度を落として運転する観光列車「富良野・美瑛ノロッコ号」が運転されます。
富良野線の経路とおもな停車駅
1. へその街・富良野のこと
冬はスノーリゾート、夏はラベンダーをはじめとした花々など、その自然を活かした観光地として知られる富良野市。周囲を山々に囲まれ、東には十勝岳を主峰とした十勝岳連峰が、西には一部が富良野スキー場となっている富良野西岳などが望めます。郊外にある麓郷(ろくごう)はドラマ『北の国から』(1981〜1982年)の舞台となったことで有名です。
北海道のほぼ中心に位置していることから「へそのまち」として知られています。毎年7月下旬には参加者がお腹に図腹(ずばら)と呼ばれる顔を描き、街を練り歩き踊るユニークな真夏のお祭り「北海へそ踊り」が開催されるほか、地元の菓子店・菓子司 新谷では「へそのおまんぢう」が販売されています。
左上:ドラマ『北の国から』ゆかりのスポット「五郎の石の家・最初の家」 左下:富良野スキー場 右:富良野駅にある「北海へそ踊り」がモチーフのモニュメント
2. 富良野駅周辺①|乗車前にフラノマルシェへ
そんな富良野で列車に乗る前に立ち寄りたいのが、富良野駅から徒歩10分ほどの市街地にある「フラノマルシェ」です。
ここでは土産物店や農産物の直売所、パン屋やカフェ、食堂などが軒を連ね、地元の素材を活かした加工品や土産物、各店舗こだわりの逸品を購入したり、味わうことができます。列車に乗る前の腹ごしらえにはピッタリの場所です。
フラノマルシェ外観
3. 富良野駅周辺②|富良野線の旅に出発
富良野線での普通列車に使用される車両は新型のH100形という車両です。H100形車両の中には1両だけ、富良野線沿線の美しい風景を描いたラッピング車両があります。こうした車両に乗れると気分が上がりますね。
富良野線の多くの列車は1~2両編成での運転です。繁忙期(特に夏季、ラベンダーが咲く時期)を除けば大変な混雑に見舞われることは少ないですが、確実に座ってゆっくりと景色を楽しみたい方は、早めに駅で列車を待つのがよさそうです。
今回の旅では11:42に出発する列車に乗りましょう。
富良野駅に停車する旭川行きの列車(写真:筆者)
富良野駅を出発した列車はすぐに、並走する根室本線と分かれ、富良野川を渡り、進路を北から北東へと向けます。線路の周りには水田や畑などが広がり、右手には十勝岳連峰が、左手にも丘陵地帯が見えるのどかな風景の中を走ります。
運転日であれば、11:53発の富良野・美瑛ノロッコ2号を利用するのもおすすめです。富良野・美瑛ノロッコ号の運転日・時刻はこちらのページで確認できます。
富良野周辺、鏡のような水田(写真:なかふらのギャラリーより)
4. 中富良野駅周辺|スキー場に広がる花畑
富良野駅を出て約10分、列車は中富良野駅に到着します。駅から歩いて10分ほどの場所にあるのが「中富良野北星スキー場」です。このスキー場、夏には「なかふらの北星山ラベンダー園」となり、美しい花々を楽しむことができるのです。
斜面には花畑が広がり、その中心には大きく花文字で「なかふらの」と描かれ、町のシンボルにもなっています。園内にはスキー場であることを活かしたリフトがあり、それを利用すれば山の上からも花畑の景色を見ることができます。
もちろん、この景色は山の麓を横切る富良野線の車窓からも眺めることができます。旭川行きの列車であれば、中富良野駅発車後すぐに左車窓に見ることができます。
夏のなかふらの北星山ラベンダー園
5. ラベンダー畑駅|季節限定で出現する駅
ラベンダー畑駅は中富良野駅と上富良野駅の間に、6月中旬から8月中旬までの毎日と、8月中旬~9月中旬までの土日祝に設置される臨時駅です。駅から歩いて7~8分のところにラベンダーで有名な「ファーム富田」があり、そちらへ向かう際の最寄り駅となっています。駅の営業期間中は、ノロッコ号が停車します(2023年は一部期間で普通列車も停車)。
駅周辺は田園風景が広がるのどかな場所ですが、ラベンダーなどの花々が咲き誇る時期になると観光客で溢れかえり、それ以外のシーズンとは全く違った様相を呈します。駅の営業期間外になるとホームや柵に使用する板やパイプが撤収され、線路脇の駅があったスペースはがらんとした空間が残されます。
ラベンダー畑駅
夏のファーム富田。色とりどりの花がじゅうたんのように咲きます
6. 上富良野〜美瑛駅間|名物〝すり鉢坂〟
上富良野駅を出ると、美瑛駅までの区間で列車はちょっとした山越えに挑みます。
車窓もそれまでの平坦な田園風景とは異なり、起伏にとんだ丘陵地が目立つようになります。こうした丘陵地では、富良野駅~上富良野駅にかけての沿線で見られた水田は姿を消し、畑地が広がります。所々に防風林などの木々が立っており、こうした景観は実にこの区間ならではの車窓風景といえるでしょう。
車内から見た畑の風景。美馬牛〜美瑛駅間(写真:筆者)
また、美馬牛(びばうし)駅を出発してからすぐ、線路がS字カーブを描いた先の直線区間は「すり鉢坂」になっています。前面展望が楽しめる運転席すぐ後ろのスペースに立ち、前方を見ると、周辺の地形の起伏がいかに激しいかを実感できるでしょう。これも富良野線ならではの車窓の楽しみのひとつとなります。
12:25、列車は美瑛駅に到着します(富良野・美瑛ノロッコ2号は12:51着)。
高低差のあるすり鉢状の地形を走る富良野線
7. 美瑛駅周辺①|自転車で絶景スポット巡り
広さ15ヘクタールの敷地に数十種類の花が咲く展望花畑「色彩の丘」、幻想的な風景を誇る「白金青い池」、CMに登場した木など絶景スポットの数々、そして白金温泉……。
美瑛町には多くの観光スポットがあります。こうした町内の観光スポットを巡るのにおすすめなのが自転車です。駅周辺には自転車の貸し出しを行っている店舗が複数あります。
自転車を利用することで、線路から離れた場所や車を利用したドライブでは見落としてしまうような、観光スポットや絶景を楽しむことができるでしょう。
美瑛駅の隣には道の駅びえい「丘のくら」があり、こちらでは美瑛産の農畜産物や加工品、ソフトクリームの販売が行われています。列車の待ち時間に訪れるのにちょうど良い場所となっています。
美瑛の立ち寄りスポットいろいろ。左上:色彩の丘 左下:ケンとメリーの木 右上:白金青い池 右下:道の駅びえい「丘のくら」
8. 美瑛駅周辺②|美瑛のB級グルメを満喫
美瑛でぜひ味わいたいのが「美瑛カレーうどん」です。
美瑛産の小麦を使ったうどん麺や美瑛産の肉・野菜を使ったカレールウを用いること、セットで美瑛産の牛乳を提供することなどのルールがあります。
町内5つのお店で提供されており、どのお店でも価格は1200円以下とリーズナブルなのも嬉しいところ。これを食べるだけで美瑛の食の魅力を感じられるでしょう。詳しくは美瑛カレーうどん研究会HPで。
また、町内にある「洋食とcafeじゅんぺい」発祥の「ジュンドック」も美瑛・旭川地区を代表するB級グルメです。こちらはタレをからめたカツやエビフライなどをご飯で包んだスティック状の洋風おにぎり。洋食とcafeじゅんぺいではテイクアウトもできるので移動中や小腹が減ったときに食べるのにピッタリです。
美瑛カレーうどんの一例
9. 美瑛駅〜旭川駅間|徐々に市街地の風景へ
美瑛での観光を済ませたあとは、美瑛駅を16:28に出発する列車で終点・旭川駅へと向かいます。美瑛駅から旭川駅までは30分ほど。
ここから先は旭川近郊へと足を踏み入れることから、列車の運行頻度が1時間に1本ほどになるとともに、乗客の数も目に見えて増えます。富良野・美瑛観光のハイシーズンであっても、旭川に近づくにつれ、車内には地元客が増えていきます。
美瑛駅を出た列車は再び畑や水田が広がる田園風景の中を走ります。途中の千代ヶ丘駅は旭川空港の最寄り駅。タイミングが合えば車窓から離着陸する飛行機を見ることができるかもしれません。
とはいっても千代ヶ丘駅から空港までは歩けば1時間近くかかってしまうため、旭川空港へのアクセスは旭川市内などからバスを利用するのがいいでしょう。
西聖和駅周辺の風景。このあたりはまだのどかな風景
西御料(にしごりょう)駅周辺からはいよいよ住宅地が広がりはじめ、旭川の市街地へと入っていきます。並走する国道237号沿いにはロードサイド店が見え始め、各駅間距離がこれまでより短くなります。ここまでくると観光路線としての姿はほぼ見えなくなります。
旭川駅のひとつ手前、神楽岡(かぐらおか)駅を過ぎると、左手には緑豊かな景色が広がります。ここは神楽岡公園といい、園に隣接してキャンプ村や上川神社がある憩いの場となっています。
さらに忠別(ちゅうべつ)川を渡ると左前方に近代的な駅舎が見えてきます。列車はそこへ向かって左へカーブ、高架へと上っていき、17:01、終着の旭川駅へと滑り込み、富良野線の旅が終わります。
富良野線の終着点・旭川駅
10. 旭川駅周辺|絶品スイーツに舌鼓
旭川駅から徒歩約30分、または神楽岡駅から徒歩約10分、神楽岡公園のそばにあるのが菓子店「The Sun 蔵人 本店」です。
こちらでは道内の各空港や駅などでもお土産品として販売されている生サブレ「蔵生(くらなま)」のほか、名物のどら焼き「豊穣蔵」、黒糖饅頭の「釜蒸し蔵」(2024年4月現在販売休止中)、そのほかオリジナルのスイーツが豊富に取り揃えられています。
なお「The Sun 蔵人」は旭川駅にも店舗があり、こちらでも各商品を購入することができます。
神楽岡公園のそばにある「The Sun 蔵人」の本店
11. ちなみに|富良野線を楽しむなら「富良野・美瑛ノロッコ号」もおすすめ
「富良野・美瑛ノロッコ号」はJR北海道が富良野線で運行する観光列車です。中富良野駅~ラベンダー畑駅間や、美馬牛駅~美瑛駅間など、「見どころ」となる一部の区間で速度を落として運行。
車内には木製のベンチシートが設置されています。グループでの乗車にオススメのテーブルを挟んで向かい合わせになる座席と、少人数で利用に適した窓に向かってシートが並ぶ座席があり、利用スタイルによって好みの座席を選ぶことができます。
詳しくはJR北海道公式サイト内、富良野・美瑛ノロッコ号のページで。
富良野・美瑛ノロッコ号
富良野・美瑛ノロッコ号の車内
おわりに
富良野線のハイシーズンは初夏〜真夏にかけて。
とはいえ、富良野線沿線は春夏秋冬の楽しみがあります。沿線の畑や水田、その背後にそびえる山々は、季節ごとに様々な姿となり、四季折々の色彩を放ちます。そんな富良野線の旅へ、皆様も出かけてみてはいかがでしょうか?
記事中に登場する店舗情報
フラノマルシェ
●住所:北海道富良野市幸町13-1
●時間:
6月15日~9月1日……10:00~19:00
上記以外……10:00~18:00
●定休:店舗により異なる(11月11日~11月15日と12月31・1月1日は全館休み)
●公式サイト:FURANO MARCHE フラノマルフェ
※編集部しらべ
なかふらの北星山ラベンダー園
●住所:北海道中富良野町宮町1-41
●公式サイト:北星山ラベンダー園|北海道中富良野町
※編集部しらべ
道の駅びえい「丘のくら」
●住所:北海道美瑛町本町1-9-21
●時間:
6月~8月……9:00~18:00
9月〜5月……9:00~17:00
●定休:無休(12月31日~1月3日は休館)
●公式サイト:道の駅びえい「丘のくら」
※編集部しらべ
洋食とcafeじゅんぺい
●住所:北海道美瑛町本町4-4-10
●時間:11:00~15:00(売り切れ次第終了の場合あり)
●定休:月曜
●公式サイト:洋食とcafeじゅんぺい
※編集部しらべ
The Sun 蔵人 本店
●住所:北海道旭川市神楽岡8条1丁目
●時間:9:00~18:00
●定休:無休
●公式サイト:丘の上の菓子工房 The Sun 蔵人
※編集部しらべ
Text:JYK_R
フリーライター、日本観光士会認定観光プランナー。北海道出身・在住。学生時代を東京・茨城で過ごしたため関東成分も少し。旅行&鉄道好きが高じて地理・観光を学んだことから、その二つの分野のほか、旅行や都市、文化などに関する記事を中心に執筆。
Edit:Erika Nagumo
Photo(特記ないもの):PIXTA