海一面を覆い尽くし、白銀の世界を作り出す「流氷」。白くて大きな氷の塊がオホーツク海に毎年1月から3月にかけて姿を見せます。
日本では冬の北海道、それもオホーツク海沿岸エリアでだけ見ることができます。さらにその年の気候によっても流氷が現れるかどうか左右されます。流氷が作る景色は奇跡と言っていいかもしれません。
この記事では、そんな貴重な流氷を120%楽しむための豆知識や流氷のアクティビティについてご紹介します。
※本記事は2023年2月時点の情報を元に作成しています。諸事情により最新の状況と異なる場合があります
※2025年1月、一部情報を更新しました
流氷は北海道のどこで見られる?
流氷は北海道の北東に広がるオホーツク海からやってきて、北海道最北端の地・椎内(わっかない)から釧路まで幅広く観測されます。その中でも、流氷の観測地としては特に有名な場所が3カ所あります。
①網走市(あばしりし)
「流氷の街」として知られる網走市。水平線まで続く流氷を見渡せる「能取岬(のとろみさき)」や、安定した流氷であれば乗って写真を撮ることができる「鱒浦海岸(ますうらかいがん)」など数々の人気流氷スポットがあります。
オホーツク海に最も近い駅であるJR釧網本線(せんもうほんせん)の「北浜駅」では、木製の駅と白く澄み渡る流氷が絶妙にマッチ。また、ユニークなアクティビティとして、馬に乗って流氷のそばを歩く乗馬体験を行う事業者も。
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人気流氷スポットである能取岬
②紋別市(もんべつし)
北海道のオホーツク海沿岸のほぼ中央に位置するのが紋別市。紋別市街の中心部にある「紋別公園」に設置されているのが「流氷展望台」です。
紋別市の街並みに流氷が押し寄せる姿や、知床連山を望むことができる紋別市有数の景勝地。紋別市街地から離れた川向地区にある流氷岬では海岸沿いに訪れる流氷の幻想的な光景を楽しめます。
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紋別市街地の中心に位置する「流氷展望台」
③知床半島
流氷が育む豊かな海の生態系と陸の生き物たちのつながりが特徴的であることから、世界自然遺産に登録された知床。流氷の季節は流氷観測はもちろん、流氷にまつわるアクティビティが楽しめる場所として人気です。
流氷の上を歩く「流氷ウォーク」、空からオホーツク海を見渡せる「熱気球フリーフライト」、流氷の海を自分の力で進む「流氷SUP」など、流氷の時期限定のアクティビティは貴重な経験になります。
ちなみに、北海道の中で最初に流氷を見ることができるのが、知床に位置する「プユニ岬」。海面に張る流氷の隙間から顔を出す海に夕陽が差し込み、光が反射する様子がなんとも幻想的です。
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プユニ岬から見渡すオホーツク海の絶景
流氷のシーズンはいつ? 観測時期や見頃について
北海道の流氷は、例年2月中旬~3月上旬までが見頃。ただし、流氷シーズンは年により多少変わることがあります。流氷初日や、流氷の現在地などの最新の海氷分布は海氷情報センターのページから確認できます。また気象庁でも、海氷分布予想図や天気予報、衛星画像などの海氷・流氷に関する情報を提供しています。
地点別の流氷初日
「流氷初日(りゅうひょうしょにち)」とは、気象台から流氷が初めて見えた日のことです。ちなみに「流氷接岸初日」とは流氷が初めて接岸した日のことです。
●稚内
平年の流氷初日:2月19日
2023-2024シーズンの流氷初日:観測なし
2024-2025シーズン:未観測
●網走
平年の流氷初日:1月22日
2023-2024シーズンの流氷初日:1月19日
2024-2025シーズン:未観測
●釧路
平年の流氷初日:未算出
2023-2024シーズンの流氷初日:観測なし
2024-2025シーズン:未観測
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北海道沖に流れ着いた流氷
いざ白銀の世界へ!流氷ツアー5選
オホーツク海を白く包む流氷。寒い冬にしか見られないという限られた期間の中で、毎年全国から多くの人々が北海道の流氷を見に訪れます。クルーズ船や列車に乗って流氷を見学できるのはもちろん、自分の足で流氷の上を歩く体験も!絶対に外せない流氷ツアー5選をお届けします。
流氷ツアー①【網走】おーろら号
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白色に赤と青の線が際立つ「おーろら号」
「おーろら号」は、観光を目的に造られた砕氷船(さいひょうせん)です。砕氷船というのは、水面(海面)に広がる氷を砕きながら進む船のこと。
「おーろら号」には、1階・2階の客室のほか、展望デッキもあり、迫力ある流氷の景色が楽しめます。またコーヒーラウンジや売店、トイレがあるほか、客室は暖房も完備。至れり尽くせりな観光船です。
網走流氷観光砕氷船おーろら号 基本情報
●乗り場:道の駅 砕氷船のりば
●乗り場住所:北海道網走市南3条東4-5-1(地図)
●運航期間:2025年1月20日(月)〜3月31日(月)
●料金:
大型船……大人4500円〜5000円/小学生2250円〜2500円
小型船……大人8000円/小学生4000円
●便数:
①1月20日〜1月31日……大型船4便
②2月……大型船7便
③3月1日〜3月14日……大型船5便、小型船2便予定
④3月15日〜31日……大型船3便、小型船2便予定
●所要時間:
大型船……約1時間
小型船……約2時間
●乗り場までのアクセス:
最寄りバス停名……おーろらターミナル(道の駅 砕氷船のりば)
①女満別空港から直通バスで約40分
▶︎直通バス時刻表:女満別空港線|網走バス
②JR網走駅前③乗り場より直通バスで約12分
▶︎直通バス時刻表:女満別空港線|網走バス
③JR網走駅からタクシーで約8分
●公式サイト:網走流氷観光砕氷船おーろら号
流氷ツアー②【紋別】ガリンコ号
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流氷観光に出発する「ガリンコ号」
真っ白な流氷により一層真っ赤な船体が際立つ「ガリンコ号」。船首にある二つの大きなドリルが、ガリガリと音を立てながら流氷を割って突き進む流氷観光船です。ガッチリとしたフォルムで安定感ある船なので、安心して乗ることができます。夏もフィッシングクルーズとして運航しており、釣りを楽しめます。
ガリンコ号 基本情報
●乗り場:海洋交流館
●乗り場住所:北海道紋別市海洋公園1番地
●運航期間:2025年1月17日(金)〜3月31日(月)
●定休:
ガリンコ号3……なし
ガリンコ号2……水曜
●料金:
大人……3600円(web予約)/4000円(電話予約)
小学生……1800円(web予約)/2000円(電話予約)
●便数:
1月17日〜1月24日……4便
1月25日〜1月31日……8便(水曜は4便)
2月平日……9便(水曜は5便)
2月土日祝……10便
3月1日〜3月9日……9便(水曜は5便)
3月10日〜3月31日……4便
●所要時間:1時間〜1時間30分
●乗り場までのアクセス:
最寄りバス停:海洋交流館(ガリンコ号乗り場)
①紋別バスターミナルから冬季限定連絡バス「ガリヤ号」で約15分
▶︎ガリヤ号時刻表:シャトルバス ガリヤ号|紋別市
②紋別空港から無料送迎バスで約8分
▶︎無料送迎バス時刻表:紋別空港から紋別市内へのバス|オホーツク紋別空港
●公式サイト:オホーツク・ガリンコタワー株式会社
流氷ツアー③【知床】エバーグリーン号
砕氷機能を持たない流氷観光船である「エバーグリーン号」。知床の海に押し寄せる流氷は密度が低いため、流氷を砕かないクルーズが可能です。
知床での流氷観光船旅の特徴は、流氷だけでなく知床に越冬しにきた動物や鳥も見れること。動物を発見した際にはその都度スタッフが、マイクと船内スピーカーで生態や特徴など詳しく丁寧にガイドしてくれます。
エバーグリーン号 基本情報
●乗り場:羅臼港内観光船のりば①
●発券所(駐車場):知床ネイチャークルーズ事務所
●発券所住所:北海道目梨郡羅臼町本町27-1(地図)
●運航期間:2025年1月25日(土)~3月10日(月)
●料金:
Aプラン……大人4400円/小学生2200円
Bプラン……大人1万1000円/小学生4400円
●便数:
1月25日〜1月31日……1便
2月1日〜3月9日……3便
3月10日……1便
●所要時間:
Aプラン……約1時間
Bプラン……約2時間30分
●発券所までのアクセス:
最寄りバス停:羅臼本町
◎標津バスターミナル(阿寒バス標津営業所)から路線バス(阿寒バス釧路羅臼線)で約50分、羅臼本町で下車。徒歩約1分
▶︎時刻表:釧路羅臼線・釧路標津線|阿寒バス
▶︎路線図:釧路羅臼線の路線図|NAVITIME
◎羅臼町へのアクセス:アクセス|知床羅臼町観光協会
●公式サイト:知床ネイチャークルーズ
流氷ツアー④【網走・知床】流氷物語号
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流氷観光の旅に出る「流氷物語号」
オホーツク海沿岸を網走から知床まで走る流氷列車「流氷物語号」。流氷物語号は流氷ノロッコ号の後継として2017年からスタートした観光列車です。運転期間は1月末から2月末の1ヶ月間で、1日の間に網走と知床の間を往復2回しか運行せず、片道1時間ののんびりとした流氷観光を楽しめます。
JR北浜駅やJR浜小清水駅で10分〜20分ほどの停車時間があるため、列車から降りてオホーツク海を白く染める流氷を直接眺望できます。
流氷物語号 基本情報
●乗り場:JR網走駅/JR北浜駅/JR浜小清水駅/JR知床斜里駅
●運航期間:
・2025年2月1日(土)〜28日(金)
・3月1日(土)
・3月2日(日)
・3月8日(土)
・3月9日(日)
●料金:
自由席970円(網走駅〜知床斜里駅)
指定席1810円(網走駅〜知床斜里駅)
●便数:1日2往復
●所要時間:約50分(網走駅〜知床斜里駅)
●公式サイト:流氷物語号
流氷ツアー⑤【知床】流氷ウォーク(SHINRA)
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流氷ウォークを楽しむ人々(写真はイメージ)
北海道のオホーツク海沿岸に浮かぶ流氷の上に乗って、そして流氷の上を歩くアクティビティ。ドライスーツを着用し、ガイドの先導で流氷の上を進みます。流氷と一緒に海に浮かぶ、稀少な体験は、このアクティビティならでは。
流氷ウォークでは運が良ければオオワシやオジロワシ、クリオネなどに遭遇できることも。圧倒的な非日常の世界を味わうことができます。
SHINRA(知床自然ガイドツアー株式会社)流氷ウォーク 基本情報
●集合場所:道の駅うとろ・シリエトク
●集合場所住所:北海道斜里町ウトロ西186-8
●催行期間:2025年2月1日(土)〜3月31日(月)
●料金:
2月1日〜3月9日……小学生以上7700円
3月10日〜3月31日……7000円
●ツアー時間:
・6:30〜8:00
・9:30〜11:00
・13:00〜14:30
・15:30〜17:00
●所要時間:約1時間30分
●公式サイト:流氷ウォーク®|シンラ(知床自然ガイドツアー株式会社)
流氷はどんな服装で見に行くのがベスト?
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極寒の北海道での服装
流氷が北海道に姿を現す時期は平均気温で0℃前後、最低気温は-10℃以下まで下がります。北海道の中でも最も過酷な寒さの時期に押し寄せる流氷を見る際は、その寒さに対応できる防寒対策が必要です。
保温性や発熱性の高いインナーに厚手のダウンジャケットやスキーウェアを着用することを推奨します。帽子やネックウォーマー、手袋、カイロ、スノーブーツなどプラスαで防寒グッズも揃えておくといいでしょう。
船に乗る場合、船内は暖かいので、脱ぎ着しやすい服装にしておくと快適です。
流氷にいる動物たち
流氷の時期には、オホーツク海沿岸にさまざまな動物たちがやってきます。いつもは水族館で見てきた動物を目の前で、自然の中で生きている様子を見ることができるチャンスです。
アザラシ
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流氷の上で寝そべるアザラシ
丸々とした体つきと優しい顔つきで人々を魅了する「アザラシ」。流氷シーズンになると、網走をはじめとするオホーツク海沿岸各地で、アザラシと遭遇する確率が高くなります。
網走で多く見られるアザラシは「ゴマフアザラシ」。全身にゴマ模様があるのが特徴ですが、体色や模様には個体差があります。流氷砕氷船に乗れば、運良く流氷の上に寝そべるゴマフアザラシを見られることも。
ワシ
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流氷の上に集まるオオワシ
冬になると越冬のために北海道各地にやってくる「オジロワシ」と「オオワシ」。翼を広げると約2mにもなり、その迫力ある大きさと風格、鋭い目つきに圧倒されます。
オジロワシとオオワシは共に天然記念物にも指定されており、数の少ない希少なワシですが、流氷の時期には高い確率で目撃することができます。流氷ウォークや砕氷船での流氷観光中に遭遇する可能性は十分にあります。
クリオネ
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オホーツク海に棲む流氷の天使「クリオネ」
流氷の天使と呼ばれる「クリオネ」。透明で中の赤い部分が透き通って見えるクリオネは貝の仲間です。貝殻を持たず翼足(よくあし)で優雅に泳ぐ姿はとてもかわいらしく、人気のある生き物です。
網走にあるオホーツク流氷館ではクリオネを水槽で飼育しているため、いつでも見ることができます。水面にいることもあり、流氷ウォーク中に遭遇することも。
エゾシカ
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流氷の上をのんびり散策するエゾシカ
知床半島を代表する動物「エゾシカ」。車や列車での移動中にエゾシカの大きな群れや親子の群れに出会うことがあります。知床半島を訪れたらほとんどの人が出会えるエゾシカは、運が良ければ流氷に乗っている姿を見れることも。
キタキツネ
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流氷の上で立ち尽くすキタキツネ
黄金色の毛をまとった愛くるしい顔の持ち主「キタキツネ」。北海道のほぼ全域に生息しており、北海道で遭遇率No.1の野生動物です。キタキツネも稀に流氷に乗っている姿が確認されています。
冬以外でも流氷を楽しめるおすすめスポット
【網走】オホーツク流氷館
「オホーツク流氷館」は、流氷とオホーツク海の生き物をテーマとした観光施設。流氷の世界が360度楽しめる「流氷海中ライブ」や、マイナス15度の室内で本物の流氷に触れることができる「流氷体感テラス」など、季節に関係なくいつでも流氷を楽しむことができます。
【紋別】オホーツクタワー
「オホーツクタワー」は日本最北端に位置する海中展望塔です。海底階では海中観察窓からオホーツク海を覗くことができ、広い海で生きる生物たちの姿を直接見ることができます。クリオネをはじめとした、オホーツク海で生息する海洋生物を展示したミニ水族館もありますよ。
海面に浮かぶ氷の塊「流氷」の豆知識
流氷とは、海面を濁流する氷の塊のこと。青くて広大な海を白銀の世界に変貌させる流氷の謎に迫ります。
流氷はどうやってできるの?
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オホーツク海に広がる流氷
オホーツク海は比較的浅い海で、シベリアからの冷たい空気により冷えやすいのが特徴的。短時間で海面の凍る温度-1.8℃に達し、海面に小さな氷ができ始め、それが集まることで流氷となります。
同緯度にある太平洋は水深が深く、水が全体的に混ざり合うため、凍ることはありません。
流氷の大きさは?厚さは?
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大きい流氷の集まり
流氷の大きさはバラバラ。小さいもので数ミリのものから、波や風の影響を受けない寒くて静かな海であれば数十キロメートルに及ぶこともあります。しかし波やうねりで簡単に割れるため、ほとんどが数メートルから数キロメートルサイズとなります。
流氷の厚さは北海道付近で約40cm~50cm、オホーツク海の北部で約1m、北極海で最大2~3mの厚さです。
北海道の流氷はどこから来るの?
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北海道沖に集まる流氷
海一面を覆い、北海道の青い海に白い光をもたらす流氷は、サハリン北東部の海でできたもの。海岸で発生した薄い海氷がシベリアからの寒い北風により流され、寒さで氷が厚くなりながら北海道までやってきます。
北海道沖の海も結氷温度-1.8℃に達するため、私たちが北海道の沿岸で見る流氷には、サハリンで生まれたものだけでなく北海道産の氷も含まれています。
流氷がなくなる?気温上昇と流氷
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オホーツク海から徐々に姿を消す流氷
寒さが厳しさを増す1月~3月にかけて、北海道のオホーツク海沿岸に現れる白い流氷。しかし、近年は最盛期の2月でもほとんど見られないことも珍しくありません。オホーツク海北部の気温がこの100年で約0.6℃上昇し、オホーツク海全体の流氷の面積は減少してきているという説もあります。
おわりに
1月〜3月になると、オホーツク海一面を覆い尽くす流氷。青い海を白銀の世界に一変させるその姿は、息を呑むほどの美しさで、見る人々を魅了します。
日本でも唯一観測することのできる北海道にさえ常に姿を見せるわけではありません。天気や気温など運気にも恵まれてこそ見ることのできる流氷は、普段感じることのできない感動を与えてくれます。
たくさんのさまざまな生き物を呼び寄せ、大自然が作り出す流氷。一生に一度の貴重な時間を流氷と共に過ごしてみてはいかがでしょうか。