花の盛りを過ぎた梅が、まるまるとした実をつける初夏。2023年も「梅仕事」の時期がやってきました。
「梅仕事」というと、新たな道具の購入や大量の保存食作り、時間をかけて丁寧に取り組むべきなど、少し敷居の高さを感じる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、梅仕事では定番の保存食を家にある道具で簡単に、少量で作るレシピを紹介。
初心者のあなたも、一人暮らしのあなたも、ことしはこの記事を読んで、ぜひ梅仕事に挑戦してみましょう。
【梅仕事】とは?いつやるもの?
昔からさまざまな効能があることで知られていた梅の実。熟して旬を迎えるのは6月ですが、梅仕事におすすめなのは5月中旬〜7月中旬ごろです。
また品種とは別に、梅の性質は時間の経過とともに変化します。時期ごとに梅の性質に合った加工を施すのが、梅仕事なんですね。
青梅を購入する際には、実がかたく産毛の生えそろったものを選ぶのがおすすめです
【梅仕事】作り方の前に!梅の基本知識を紹介
梅の種類
有名な南高梅など品種はさまざまありますが、初めて梅仕事をする際におさえておきたい性質別の種類は、大きく分けて次の三つです。
黄色がかった完熟梅とまだ熟しきっていない青梅
1.小梅
5月中旬頃から出回り始める、まだ育ちきっていない青くかたい梅です。漬かるのが早いので、初めての梅仕事にもおすすめです。
向いているレシピ
・カリカリ梅
・ピクルス
・酸味ひかえめのシロップ
など
2.青梅
5月下旬頃から出回り始める、熟しきる前の青く酸味の強い梅です。漬けたり加熱したりすることで、毒素を抜くことができます。
向いているレシピ
・カリカリ梅
・さっぱり風味のはちみつ漬け
・さっぱり風味のシロップ
・梅酒
・梅スパイス
・砂糖漬け
など
3.完熟梅
6月中旬頃から出回り始める、熟して黄色く赤みがかった梅です。皮は薄く、実も柔らかいのが特徴です。
向いているレシピ
・梅干し
・梅酒
・梅シロップ
・梅ジャム
・梅肉エキス
・梅みそ
など
加工や保管に便利な道具
特別な道具がなくても、身近にあるものでシンプルに梅仕事を楽しみましょう。ただし何を使うにしても、「清潔第一」です。
・ザルやボウルやバットなどの調理器具
・保管用のジッパー付き保存袋やプラスチック密閉容器
・爪楊枝や竹串
・キッチンベーバーやキッチン用手袋
・食品用消毒スプレーかホワイトリカー
・はかり
梅の仕分けと下処理
梅を手に入れたら、まずは仕分けと下処理をしましょう。梅は3種類とも同じ方法で下処理をしてOKです。
すぐに加工ができない場合も、保存方法を守れば大丈夫
0.仕分け
袋のまま室温で放置はNG。袋から出して傷のあるものとないものに分けましょう。また、梅を新聞紙でくるみ冷蔵庫の野菜室に入れれば、数日間は保存可能。
ただし完熟梅は足が早いので、なるべく早く加工に取りかかって。冷凍庫保存なら1年ほどもちますが、保存前に下処理を済ませておきましょう。
1.洗う
梅をボウルなどに入れて水を張り、手でコロコロと混ぜるように洗いましょう。梅の実は傷つきやすく、傷から変色が起きたりカビが生えたりすることがあります。
2.(小梅と青梅のみ)アク抜きをする
梅が青いほどアクを多く含んでいます。参考にするレシピ表記に沿った時間通りに、たっぷりの水に漬けておきましょう。※ただし冷凍して解凍した青梅はアク抜きの必要なし
3.水気をとる
キッチンペーパーなどを使い、1粒ずつ丁寧に拭いていきましょう。水分が残っているとカビの繁殖源になることがあります。ここでも力まず、梅を傷つけないよう注意。
4.へたをとる
茶色いへたを爪楊枝や竹串で取り除いていきます。へたとくぼみの境目にとがった先端を差し込み、くるっと回すようにするのがこつです。なかなかへたが外れない実は、そのまま加工してOK。
傷がついた梅はどうする?
表面にくぼみや傷、しみのある梅も、加工すればおいしく食べられます。傷ついた部分を切り取って、青梅はシロップや砂糖漬けに、そのままでも食べられる完熟梅はサラダに混ぜたり梅みそに使ったりしてみてください。
【梅仕事】違法に梅酒を作らないためのポイント
個人で酒類を作る場合には、正式な手続きを踏んで税務署から製造免許を受ける必要があります。では、家で梅酒を作る場合にもそうした届出が必要なのでしょうか?答えは否。ただし、守らなければならないポイントが3つあります。
①自分で作った梅酒をだれかにあげたり、販売したりしないこと。
②梅を漬けるお酒は、アルコール分20度以上の課税商品を選ぶこと。
③梅酒に、禁止されている食品を混ぜないこと。
ルールの範囲内で、楽しく梅仕事に取り組みましょう
個人で果実酒を手作りすることは、できたお酒を自分や家族間で飲む場合のみ、例外的に法律で認められています。ただし、「アルコール分20度以上の課税商品」であるお酒に漬けることが条件です。また、手作りするお酒に入れてはいけないものは以下の通りです。
①米、麦、あわ、とうもろこし、コウリャン、きび、ヒエもしくはでん粉またはそのこうじ
②やまぶどうを含むぶどう
③アミノ酸もしくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物もしくはその塩類、有機酸もしくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
参考:お酒に関するQ&A(よくある質問)【自家醸造】|国税庁
【梅仕事】簡単で少量!人気レシピ6選
初心者におすすめの梅酒
梅酒は、梅仕事の中でも特に失敗が少ないレシピ。たっぷりのアルコールで梅を漬けるため、他の保存食と比べてカビが発生しにくいことが理由です。梅仕事が初めてで不安という方は、まず梅酒作りから始めてみてはいかがでしょうか。
度数が高いジンやウオッカで漬ければさっぱりと、ブランデーで漬ければ甘くまろやかな味に仕上がります
材料
下処理・アク抜き済みの青梅または完熟梅……200g
砂糖……200g
(三温糖、氷砂糖、グラニュー糖、きび砂糖でもOK)
焼酎……200ml
(アルコール度数20度以上ならどんなお酒でもOK)
道具
食品用消毒スプレー
保管用の密閉プラスチック容器かガラス瓶
作り方
[1]使用する容器に食品用消毒スプレーをし、乾かしておく。
[2]容器に梅と砂糖を入れ、梅を濡らすように全ての焼酎をかける。
[3]容器の蓋を閉め、直射日光の当たらない室内に常温保存する。
[4]1週間たったら一度混ぜる。
[5]3ヶ月後から飲み頃になるが、その後1年以上常温保存できる。
※青梅で作る場合は、作業をする前に1時間ほど水につけてアク抜きをする
※梅全体が焼酎にひたっている状態で保存する
※梅の実は1年たったら取り出す
干さない梅干し
梅仕事の基本「梅干し」ですが、忙しい毎日の中「干す」ことのハードルが高いと感じる方も多いのでは?今回紹介するのは干さない梅干し「梅漬け」なので、加工後は基本放置でOK。ただし保存期間が長いので、傷のないきれいな梅を使いましょう。
写真は塩だけで漬けた色です。漬ける際にシソを一緒に入れれば赤くなります
材料
下処理・アク抜き済みの青梅または完熟梅……100g
焼酎……小さじ2
粗塩……18g
道具
バット
ジッパー付き保存袋
重し(中身の入ったペットボトルや塩袋などでOK)
作り方
[1]保存袋に梅を入れ、焼酎を入れてなじませる。
[2]保存袋の口を少し開け、たまった焼酎を捨てる。
[3]([2])に塩を入れてジッパーを閉め、振るように動かし梅全体に塩をまぶす。
[4]空気を抜きながら改めて保存袋のジッパーを閉め、梅が平らに並ぶように袋のままバットに置く。
[5]([4])の上に別のバットを置き、バット越しに重しをのせる。
[6]日の当たらない室内で常温保存する。
[7]1日2〜3回、塩を全体に行き渡らせるように袋の上下を入れ替える。空気が入っていたら抜き、梅から出る梅酢に実がひたるよう袋を動かす。
[8]青梅で作れば2〜3ヶ月、完熟梅で作れば1ヶ月ほどで食べ頃。
※青梅で作る場合は、作業をする前に2〜4時間ほど水につけてアク抜きをする
※カビ防止のため、塩の割合は梅の量に対して18%以上になるようにする
※しょっぱいと感じる場合は完成後に水につけて塩抜きをしたり、はちみつを加えたりするのがおすすめ
参考:梅干しは干さなくても作れます!干さない梅干し「梅漬け」の作り方と保存方法を紹介|熊平の梅
定番の梅シロップ
梅仕事の定番、「梅シロップ」を少量の梅で作ります。飲み物に混ぜるだけでなく、お菓子作りや料理にも使える万能調味料としても重宝しますよ。
傷のないきれいな梅を使いましょう
材料
下処理・アク抜き済みの青梅または完熟梅……200g
砂糖……200g
(三温糖、氷砂糖、グラニュー糖、きび砂糖でもOK)
道具
食品用消毒スプレー
密閉プラスチック容器かガラス瓶
作り方
[1]使用する容器に食品用消毒スプレーをし、乾かしておく。
[2]梅と砂糖を、梅→砂糖の順番で交互に容器の中に入れ、一番上に砂糖をかぶせる。
[3]容器にふたをし、日の当たらない室内で常温保存する。
[4]だんだん梅酢が出てくる。ときどきゆすったり、溶け残っている砂糖があれば混ぜたりして様子を見る。
[5]2〜3週間で食べ頃。この段階からは冷蔵庫で保管する。梅は取り出して、ジャム作りなど別のレシピに使う。
※梅酢が出ると、梅の実は茶色く変色していく
炊飯器で作る梅シロップ
梅仕事では、仕込んだ保存食の食べ頃を待つのも楽しみの一つ。でも「ぱぱっと作りたい」そんな気分の日は炊飯器を使って、一晩でおいしい梅シロップを作ってしまいましょう。
炊飯器で作る場合は多少傷のある梅を使っても大丈夫
材料
下処理・アク抜き済みの青梅または完熟梅……200g
砂糖……200g
(三温糖、氷砂糖、グラニュー糖、きび砂糖でもOK)
道具
3合炊き炊飯器
食品用消毒スプレー
保管用の密閉プラスチック容器かガラス瓶
作り方
[1]梅と砂糖を、梅→砂糖の順番で交互に炊飯器に入れ、一番上に砂糖をかぶせる。
[2]炊飯器にふたをして保温ボタンを押し、18時間ほど置く。ときどき炊飯器の中を確認し、底に砂糖がたまっているようならまんべんなくかき混ぜる。
[3]砂糖が溶け切ったら出来上がり。保管用の容器はシロップを移す前に食品用消毒スプレーをし、乾かしておく。梅は取り出して、ジャム作りなど別のレシピに使う。
※青梅で作る場合は、作業をする前に一晩水につけてアク抜きをする
※加熱中の青梅は毒素が分解されきっていない恐れがあるため、味見の際に実を食べることは避ける
※やわらかい完熟梅で作る際、実が潰れるとシロップがにごるので注意する
参考:一晩で出来る!炊飯器で作る梅シロップの作り方|農家のレシピ
残った実を使った梅ジャム
梅シロップから取り出した梅を使って、ジャムを作ってみましょう。
パンに塗ったりヨーグルトに混ぜ込んだりしていただきます
材料
青梅または完熟梅……200g
(シロップ作りに使用したもの)
水……40ml
砂糖……8g
道具
鍋
木べら
食品用消毒スプレー
密閉プラスチック容器かガラス瓶
作り方
[1]使用する容器に食品用消毒スプレーをし、乾かしておく。
[2]鍋に水と梅を入れ、中火にかける。
[3]沸騰したら弱火にし、砂糖を入れて木べらで実をつぶすようにかき混ぜる。
[4]果肉が種から外れてきたら、適度にとろみがつくまで煮詰めて火を止める。
[5]種を取り除いたら完成。すぐに食べられるが、保管する場合は([1])の容器に移し冷蔵庫に入れる。
参考:【梅レシピ】梅シロップの実が大活躍!ジューシー梅ジャム|富澤商店
人気のカリカリ梅
傷のないきれいな小梅や青梅を手に入れたら、ぜひ作りたい一品。かたい梅で作ると歯応えも良く、片手でぱくぱく食べられるサイズ感も魅力です。
梅仕事でも人気のレシピです(写真:PhotoAC)
材料
下処理・アク抜き済みの小梅か青梅……100g
焼酎かホワイトリカー……小さじ1/2
塩……小さじ2
道具
食品用消毒スプレー
ジッパー付き保存袋またはプラスチック製密閉容器
バット
作り方
[1]使用する保存袋や容器に食品用消毒スプレーをし、乾かしておく。
[2]([1])に梅と焼酎を入れ、全体を湿らせる。
[3]塩を入れ、梅全体に塩がなじむように手で直接もみこむか、袋の上からもみこむ。
[4]容器はふたをする。袋は空気を抜きながらジッパーを閉め、梅が平らに並ぶように袋のままバットに置く。
[5]日の当たらない室内で1日常温保存する。ときどき揺すって様子を見る。
[6]塩が溶け切ったら梅酢ごと冷蔵庫で保存する。1週間ほどで食べ頃。
※小梅と青梅は、作業をする前に2時間ほど水につけてアク抜きをする
【梅仕事】おいしく食べ切るアイデア
せっかく作った保存食は、最後までおいしく食べきりたいですよね。梅には消化器官を積極的に動かし、食べ物の消化を助けてくれる効果もあるので、食欲が減退しがちな暑い時期にぴったり。ちょっとしたアレンジに使えば、いつものメニューに季節感がプラスされマンネリ化予防にもなります。
どれもあえたり混ぜたりするだけで作れます。ぜひ試してみてくださいね
梅干しを使った「梅つくね」
つくねを作る際、肉だねに梅干しを練り込んで作ります。しその葉も一緒に入れるとアクセントに。
梅漬けを使った「まぜごはん」
ごはんに、小魚かほぐした焼き魚、塩昆布、薄切りにして塩もみをしたキュウリ、白ごま、刻んだ梅漬けなどを混ぜ込んで作ります。彩りも良い一品です。
参考:【小さくはじめる梅しごと】後編:献立づくりがラクになる。万能たれとアレンジ術|北欧、暮らしの道具店
梅シロップで作る「シャーベット」
シロップに水を混ぜて冷凍庫で凍らせるだけの、夏に食べたいさっぱりとしたひんやりスイーツ。ミントを飾れば、気分は「おうちカフェ」。
梅シロップで作る「炭酸ジュース」
梅シロップと炭酸水を混ぜて作る、すっきりとしたのどごしのジュース。気温の高い日でも、ごくごく飲めそうです。
カリカリ梅で作る「青梅のクリームチーズ」
カリカリ梅を刻んでクリームチーズとあえれば、洋風でおしゃれなディップの完成。お酒に合わせておつまみにするのがおすすめです。
カリカリ梅で作る「たまごサラダ」
いつものたまごサラダに加えるだけで、食感にアクセントをつけられます。塩加減を調整して、ピクルスのように使ってみてください。
梅仕事で暮らしに旬を取り入れよう
簡単かつ少量で作れる梅仕事の人気レシピや、アレンジメニューを紹介しました。身近にある道具でできるので、初めての方もぜひ気軽に挑戦してみてくださいね。
梅の旬はまだまだ続きます。ちょっとずつ色々な食べ方を楽しみながら、自分のペースで季節の食べ物を生活に取り入れていきましょう。
Text:Sakura Takahashi
Photo:PIXTA(特記ないもの)
参考:
『今井真美のときめく梅しごと』(今井真美著/左右社)
『ちょこっとから楽しむ はじめての梅仕事』(榎本美沙著/山と渓谷社)
『日本の365日を愛おしむ−毎日が輝く生活暦−』(本間美加子著/東邦出版)
国税庁
一般財団法人梅研究会
熊平の梅
農家のレシピ
富澤商店
北欧暮らしの道具店