1.お墓参りのタイミング
時期と時間
行ってはいけない日はあるか
適した服装とは
2.お墓参りの作法-手を合わせるだけでも
墓前に供える花
お供え物の選び方・置き方
必要な持ち物
お墓の掃除の手順
3.お墓参りのタブー・やってはいけないこと
ろうそく・お線香の火を口で吹き消す
お酒やジュースを墓石にかける
4.お墓参りの雑学-海外のお墓参り事情
お墓の捉え方
墓地や墓石のデザイン
まとめ

夏のお盆や、春のお彼岸、秋のお彼岸といえば多くの人がお墓参りをする時期。この記事では「知っておきたいお墓参りの作法」として時期・花選び・服装・持ち物などを解説していきます。

中にはなかなかお墓参りに行けず、後ろめたい気持ちがある人もいるかもしれません。しかし何よりも大切なのは故人や先祖を想う気持ち。一般的なお墓参りの作法とともに、海外のお墓事情も参考にしつつ、お墓参りの考え方をご紹介していきます。

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1.お墓参りのタイミング

お墓の前で手を合わせる女の子

墓前に花や飲み物を供え、手を合わせる

お墓参りはいつするのか|時期と時間

お墓参りをするタイミングとしてはお盆やお彼岸がメジャー

お墓参りをするタイミングとしてはお盆やお彼岸がメジャーではありますが……

実は、お墓参りに行く時期については明確なルールはありません。 大切なのは故人や先祖を想う気持ちで、ご自身の都合の良いタイミングでお参りしてかまいません。

一般的には、故人の祥月命日(亡くなった月)や月命日、春と秋のお彼岸(3月と9月)、お盆(7月盆なら7月13~16日、8月盆なら8月13~16日)の時期に、お墓参りを行うものとされています。ただ、これらのタイミングでお墓参りに行くのが難しければ、年末年始やゴールデンウイークなど帰省したタイミング、人生の節目などに報告や感謝を伝えるのもいいのではないでしょうか。

また、お墓参りはなるべく日中の早めの時間帯が望ましいとされています。夜間のお参りは掃除もしにくく、防犯の観点からも危険なため避けた方がいいでしょう。なお、施設によって開園時間が定められている場合もあるためご注意ください。

お墓参りに行ってはいけない日はあるか

お墓参りは行きたい日に行ってOK

お墓参りは行きたい日に行ってOK

お墓参りに行ってはいけない日はなく、いつでも問題ありません。「仏滅」「友引」は縁起が悪いと思われがちですが、仏教とは直接関係がありません(※)。どうしても気になる方は「仏滅」「友引」は避けてお参りすると良いでしょう。

※「仏滅」「友引」は六曜と呼ばれる暦の吉凶です。六曜は全部で「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「関口」の6つ。明治以降に広く用いられるようになりました。 参考:『暦入門 暦のすべて』(渡邉敏夫著/雄山閣出版刊)

お墓参りに適した服装とは

お葬式とは違い、お墓参りはカジュアルな服装で問題ありません

お葬式とは違い、お墓参りはカジュアルな服装でOK

お墓参りの服装についても明確な決まりはなく、普段着でかまいません。 ただし、目的や慣習を意識しつつ、周囲の人が不快にならないような装いをするのがマナーです。

基本的には、明るい色味は避け、黒やグレー、茶色といったダークカラーの服が無難です。 白いシャツやブラウスでも問題ありません。 アクセサリーや装飾品は派手なものはなるべく身につけず、香水も香りの強いものは控えましょう。

※編集部注:編集担当Nの実家では、お墓が緑豊かな場所にあり、蚊やハチがたくさんいました。自然豊かな場所へお墓参りに行く際は、あらかじめ足や腕に虫除けスプレーをかけておいたり、長袖長ズボンを着用すると安心です。

2.お墓参りの作法-手を合わせるだけでも

お墓参りは手を合わせるだけでも問題はありません。しかし、より丁寧にお参りするならば、花やお菓子などを供えたり掃除をします。

墓前に供える花

花はある程度の茎の長さがあるとお墓にお供えしやすい

花はある程度の茎の長さがあるとお墓にお供えしやすい

よく仏花として用いられる花は、菊、 カーネーション、アイリス、キンセンカ、スターチス、りんどう、グラジオラス、ケイトウ、ユリなどです。また、お墓には故人が好きだった花や、季節の花をお供えすることが多いかと思います。

絶対に供えてはいけない花というのはありませんが、一般的にお供えを避けた方がいい花はあります。例えば バラのようにトゲがある花、金木犀(キンモクセイ)など香りが強い花、彼岸花など毒がある花、椿など死を連想する花は避けられる傾向にあります。 また、朝顔などつる性の花、稲穂・麦・粟(アワ)など食べられる花は、隣のお墓にまで伸びたり、鳥や動物を寄せ付けてしまうので避けることをおすすめします。

お供え物の選び方・置き方

お供え物のお菓子や果物はパックから出し、半紙やお盆などに乗せて供えます

お供え物のお菓子や果物はパックから出し、半紙やお盆などに乗せて供えます

まず、お墓の中央にお菓子や果物などのお供え物を置きます。 そして、左右に1つずつお茶と水を挟むように配置します。これが正式な置き方となります。

またお供え物は、お墓参りの後は必ず持ち帰ります。「お参りの後すぐに持って帰るのは仏様に失礼で、ゆっくり召し上がってもらいたい」とそのまま置いていく方もいます。しかし、仏様はその場でお供え物の香りを飲食されているため、置いたままにしておく必要はありません。 お供え物を置いたままにしておくと、カラスや動物等に食べられ墓所が汚されたり腐敗するため、必ず持ち帰るようにしましょう。

お墓参りに必要な持ち物

お墓参りの持ち物は次の通り。5つのお供え物と、数珠、掃除用具を持っていきます。

【お供え物】
●線香
●花
●ろうそく
●お水
●お菓子・果物などの食べ物(下に敷く半紙など)

【お参り用】
●数珠

【掃除用具】
●柔らかいスポンジや毛の柔らかいタワシ
●タオルや雑巾
●ほうき
●ちりとり
●軍手・ゴム手袋
●ゴミ袋
など

いずれもスーパー、ホームセンターやネット通販などで揃えることができます。お墓参りに出かける前には、忘れ物がないようチェックをしましょう。

最近ではお墓の近くに売店があることもあり、お線香・お花・ろうそく・お供え物など購入することができます。また、掃除用具や手桶、ひしゃくなども必要ですが、お寺や霊園の備品として無料で借りられるケースが多いようです。心配であれば事前に確認してみるといいでしょう。

お墓の掃除の手順

ゴミや雑草は放置せず持ち帰るなど適切な処理を

ゴミや雑草は放置せず持ち帰るなど適切な処理を

お墓の掃除の仕方は地域や家によりさまざまですが、一例を紹介します。

①お墓の周りのゴミや落ち葉、雑草を取り除く
②タワシやタイオルなどで墓石の汚れを取り除く
③水で静かに汚れを洗い流し、タオルなどで拭き取る

掃除が終わったら持参した花を飾り、線香を供え、手を合わせてお祈りします。

3.お墓参りのタブー・やってはいけないこと

お墓参りは手を合わせるだけでも問題ありませんが、手を合わせる以上のことをする場合はNGな行動があります。

ろうそく・お線香の火を口で吹き消す

ろうそくや線香を息で吹き消すことは、タブーとされています。仏教の教義上、灯燭(とうしょく、明かりのこと)と香は基本のお供えに含まれており、清浄なものとされています。

一方、人間の「口」は体、意識ともに「身口意(しんくい)」と呼ばれ、悪いものを生み出す原因とされています。そのため、清浄なロウソクや線香の火を不浄な口から出る息で消すことは、よしとされていません。

お酒やジュースを墓石にかける

よくドラマやマンガで、お酒の好きだった故人のお墓に日本酒をかけるシーンがありますが、これは真似してはいけません。お酒やジュースには糖類が含まれており、かけて放置しておくと虫が寄ってきます。

また、墓石には無数の小さな穴があります。ここからお酒やジュースの成分を吸い込むと、石材が変色したり、カビの原因になります。

お酒やジュースを供える場合は、コップなどに注いでお供えします。缶のままお供えしても構いませんが、缶の金属がサビて墓石に侵食することがあります。いずれにせよ、お供え物は全て必ず持ち帰る、と覚えておくといいでしょう。

4.お墓参りの雑学-海外のお墓参り事情

ここまで日本の仏教式のお墓参りについて紹介してきました。それでは海外では、どのようなかたちでお墓参りが行われているのでしょうか。

お墓の捉え方

イタリア・ヴェネチアのサンミケーレ墓地

イタリア・ヴェネチアのサンミケーレ墓地

キリスト教圏の墓地というと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。青々とした芝生の中に真っ白な墓石が並ぶ、そんな広々とした美しい霊園の風景をニュース、海外の映画やドラマなどで見たことのある方も多いのではないでしょうか。

例えば、フランスやイギリスでは色とりどりの花が咲き乱れ、明るい雰囲気に満ちています。お墓参りに来る人だけでなく、ピクニックをしている人もいれば、画家や詩人、哲学者など有名な偉人の眠る墓地などは観光名所にもなっており、大勢のツアー客が墓石を巡っていることもあります。このように、一般的に海外では霊園は明るい場所として捉えられています。

一方、日本にも観光名所となっている霊園はあります。例えば、織田信長、豊臣家、徳川家、明智光秀、石田三成、伊達政宗、武田信玄・勝頼、上杉謙信など、誰もが一度は耳にしたことがある武将たちのお墓が点在する高野山・奥の院では、有名人のお墓を巡るツアーが開催されています。

東京・南青山の青山霊園も、多くの偉人が眠る場所として有名です。

また、日本の仏教がお墓を「故人や先祖の魂が眠る場所」と考えているのに対し、キリスト教にはお墓に故人の魂や亡くなった方の何かが宿っている、といった考え方はありません。キリスト教では、死とは新たな人生の始まりであり、死後は地上にとどまることなく「天国に召される」「神の元へ凱旋する」と考えられており、お墓は故人を偲ぶ場所である、という考え方をします。つまり、キリスト教においてお墓とは、故人が確かにこの世界に生きていたという証であり、故人に思いを馳せるための「記念碑」を意味します。

墓地や墓石のデザイン

ルクセンブルクの墓地

ルクセンブルクの墓地。十字架と一体になった墓石のデザインです

キリスト教では十字架と平板状の墓石が主流で、色は白が基本です。仏教のようにひとつの墓跡に先祖代々をまつるのではなく、1人でひとつのお墓が基本となります。墓石は仏教のものよりも石の高さが低めで「プレート型」や「オルガン型」などと呼ばれています。墓石のデザインに関しては十字架が刻まれるのが一般的とされていますが、特に制約はありません。名前だけでなく、故人の人物像やメッセージが刻まれることもあります。

世界には美しい墓地が数多くあります。例えばスウェーデンのストックホルム南部にあるスコーグスシュルコゴーデン(森の墓)は、景観デザインの価値と建築様式の素晴らしさが評価され、1994年に世界遺産に登録されました。日本の墓地とは異なり、静寂と木漏れ日の中にたたずむ墓石は穏やかで訪れる人々に安らぎを与えています。

スウェーデン・ストックホルム南部のスコーグスシュルコゴーデン(森の墓)

スウェーデン・ストックホルム南部のスコーグスシュルコゴーデン(森の墓)

世界遺産にはピラミッドやタージマハルをはじめ、古代の古墳など多くのお墓が登録されていますが、スクーグシュルコゴーデンは近代建築の共同墓地です。東京ドーム約22個分の広大な敷地の中に10万以上の墓石が整然と並んでいます。「死者は森へ帰る」という、独特の死生観を持つスウェーデン人にとって、森は魂の故郷なのです。

このように、お墓参りの習慣や墓地や墓石のデザインはその国の宗教観や文化が反映され、多種多様です。また、土地の問題で国が樹木葬や海洋葬を推奨したり、土葬から火葬になり広いお墓が不要になったりと世界的にお墓を巡る事情が変わりつつありますが、そもそもお墓自体を建てる習慣のない国も数多くあります。

日本のようにお盆や彼岸など決まった日にお墓参りをするという習慣は、世界的に見ると実は少数派なのです。

まとめ

お墓参りというと霊園が自宅から遠方であったり、忙しい日々を送る中でなんとなく足が遠のいてしまう方もいるでしょう。また持ち物やマナーのことを考えるとつい面倒になるかもしれません。

しかし、最も大切なのは「故人や先祖を想う気持ち」です。様々な事情でお墓参りになかなか行けないときは、例えば写真を見て故人のことを思い返してみる、一緒に過ごした思い出を語らい誰かと共有する、といったことも故人を想うひとつのかたちであり、大切なひとときなのではないでしょうか。


Text:Riko Edit:Erika Nagumo
Photo(特記ないもの):PIXTA

参考文献:
『一生使える! 大人のマナー大全』(岩下宣子 監修/PHP研究所 刊)
『知っておきたい 日本の宗教』(岩田文昭・碧海寿広 編著/ミネルヴァ書房 刊)
『仏教の常識としきたり』(大法輪閣編集部 編/大法輪閣 刊)
ほか