古き良き江戸の情景が広がる「江戸東京たてもの園」。江戸時代から明治、大正、昭和とそれぞれの時代を彩ってきた、歴史的建造物が立ち並ぶ野外博物館です。また関連施設として「江戸東京博物館」があり、こちらでは江戸時代の人々の暮らしの様子を知ることができます。
江戸東京たてもの園の数ある建物の中から、フォトジェニックな写真も撮れる注目のスポットをご紹介。どこか懐かしさを覚える昔の日本に出会いに、そして名建築たちとの写真撮影を楽しむために、江戸東京たてもの園に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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昔の日本にタイムスリップ!「江戸東京たてもの園」とは
江戸東京たてもの園の屋外展示建造物「デ・ラランデ邸」(建築家ゲオルグ・デ・ラランデ)
東京都の西部、小金井市に位置する「江戸東京たてもの園」。1993年、江戸東京博物館の分館として開設しました。昔から火災や震災、戦争などで貴重な歴史的建造物が失われてきた背景を鑑みて、東京都内に建つ文化的価値の高い歴史的建造物を70,000㎡の敷地内に移築し、復元・保存・展示しています。
復元建造物の数は30棟。江戸時代前期〜昭和中期までの建造物を見事に移築・復元しており、それぞれの建物の中では当時の生活の様子が伺える資料などを展示しています。まるでタイムスリップしたかのように、かつての人々の生活に触れられるのが魅力的です。
江戸東京たてもの園の旧自証院霊屋
江戸東京たてもの園には、園内の観覧に役立つ屋内の展示室やレトロ館溢れるグッズが揃うミュージアムショップなどがありますが、今回ご紹介するのは、屋外展示の建物です。
屋外展示は一部の建物を除いて、ほぼ撮影OK。ただ、各建物内では三脚などの機材を使うことはできませんので気をつけましょう。休憩所やカフェなども設けられているため、見学や撮影に疲れたら一休みするのもおすすめです。
江戸東京たてもの園 基本情報
住所:東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
電話番号:042-388-3300
開園時間:
【4月~9月】9:30〜17:30(最終入園:17:00)
【10月~3月】9:30〜16:30(最終入園:16:00)
休園日:月曜(祝日・振替休日の場合は翌日)、年末年始
入場料:
【一般】400円
【大学生】320円
【高校生・中学生(都外)・65歳以上】200円
【中学生(都内在学また在住)・小学生以下】:無料
※団体割引(20名以上)あり
公式ホームページ:江戸東京たてもの園
江戸東京たてもの園でジブリ映画「千と千尋の神隠し」の世界へ
江戸東京たてもの園の見どころの一つが、ジブリ映画の「千と千尋の神隠し」のモデルとなった建物がいくつもあること。油屋や釜爺のボイラー室、千尋の両親が豚に変わってしまうあの飲食店など、ジブリの名シーンが蘇るスポットが満載です。
子宝湯
「子宝」湯は東京の銭湯建築を代表する建造物
「千と千尋の神隠し」の公式モデルとして有名な「子宝湯」。1929年に足立区に建てられた東京の銭湯建築を代表する建築物で、風情ある当時の姿を残しています。
神社仏閣を思わせる荘厳な唐破風や玄関に七福神の彫刻を携えた子宝湯は、江戸東京たてもの園を訪れたら絶対に外せないスポット。昔ながらの男湯・女湯の中央に番台を据えた造りも魅力的です。脱衣所だけでなく、銭湯の浴室スペースにも入ることができます。
日本を象徴する富士山のペンキ絵
銭湯ならではの富士山のペンキ絵は、まさに日本の文化。普段は銭湯の中で撮影することはできないので、この機会に子宝湯のお風呂に浸かりながら記念撮影をしてみてはいかがでしょうか。
鍵屋
もともと居酒屋をだった「鍵屋」
子宝湯の隣に位置する「鍵屋」も「千と千尋の神隠し」の舞台となった建造物。1856年に酒問屋として建てられ、その後居酒屋として営業していた1970年頃の外観と内観を復元しています。
カウンター周りも当時を再現
一目見てどのシーンのモデルになったかわかる方も多いはず。暖簾をくぐるとカウンターの座席が並ぶ店内は、千尋の両親が豚に変わっていたシーンにそっくりです。鍵屋を訪れたら、ジブリの世界へ足を踏み入れたような気分になれることでしょう。
武居三省堂
ジブリ映画の世界そのものな「武居三省堂」
明治初期に創業した文具店「武居三省堂」。こちらの建造物も「千と千尋の神隠し」でモデルになった場所だと公式的に認められています。
もともと書道用品の卸を行っていた武居三省堂ですが、のちに小売店へと変わりました。壁いっぱいに敷き詰められた桐箱は、釜爺のボイラー室にそっくり。実際に昔の文具を販売しており、桐箱には商品の筆などが入っています。
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江戸東京たてもの園の注目スポット7選
江戸東京たてもの園はエントランス広場を中心に、西ゾーン・センターゾーン・東ゾーンの3エリアに区分されています。実際に建物の中に入れるのは、30棟のうち14棟。その他は建物の外観を見学できます。
屋外展示全体マップ(画像提供:江戸東京たてもの園)
約7haの敷地内をじっくり見て回るには1日では足りないため、訪れる前にどの建物を見学したいか目星をつけておくのがおすすめです。今回は広大な江戸東京たてもの園の中で、特に注目のスポット7選を紹介。どのように回るか迷っていた方は、ぜひ参考にしてください。
①高橋是清邸(センターゾーンC3)
総栂普請の高橋是清邸
明治から昭和のはじめにかけて活躍した政治家「高橋是清」の主屋を復元した「高橋是清邸」。1936年、日本の陸軍青年将校らが起こしたクーデター「2・26事件」の現場となった場所です。
建物は1902年に造られたもので、日本らしい真壁造りが特徴的。栂(つが)という高級木を使った栂普請(つがぶしん)の建築からは、当時の高橋是清がいかに名の知れた人物であったかが窺えます。洋間の床は寄木張りを施すなど、凝った造りも見どころです。
厳かな雰囲気に包まれた写真が撮れます
ここでは、日本家屋の古き良き趣を感じる写真を撮影できます。なお、館内の設備はどれも触ることはできませんので、撮影の際には注意しましょう。
②都電7500形(屋外展示物)
オレンジがかわいらしい7500形の車輌
センターゾーンから東ゾーンへと足を伸ばした東の広場の一角に展示されている「都電7500形」。かつて都内(渋谷駅前〜新橋・浜町中ノ橋・須田町)を走っていた都電7500形の車輌を展示しています。現在は荒川線以外廃止となってしまった都電。明るいオレンジの丸みを帯びた愛らしい車両をここで見ることができます。
車内は昭和レトロな雰囲気が魅力的
こちらは乗車OK。木材で造った床、天井に設置された扇風機、運転席側の壁に貼られた当時の路線図…昭和レトロな景観が楽しめます。実際に座席に座って写真を撮影。車内の様子を画角に収めれば、タイムスリップしたような一枚に。
③下町中通り(東ゾーン)
東ゾーンに伸びる「下町中通り」
東ゾーンは最奥部の建物「子宝湯」に向かってまっすぐ伸びている「下町中通り」。道の両サイドには、江戸〜昭和初期に造られたレトロな建築物が並んでいます。明治初期に創業した文具店「武居三省堂」や大正期に味噌や醤油、酒類を販売していた「小寺醤油店」など昭和に営業していた店頭の様子を見ることができます。
いずれも実際に店内に上がることはできませんが、入り口で並ぶ商品を眺めることは可能(触るのはNG)。この下町中通りで、写真撮影にぴったりなおすすめスポットを紹介していきます。
■花市生花店(東ゾーンE7)
一番右の建物が花市生花店
「花市生花店」は昭和時代に営業していたお花屋さんです。建物自体は昭和初期に建てられたものですが、店内は昭和30年代の様子を再現。水はけの良い豆砂利洗い出しの床や、タイルの花台が設置されています。季節に応じて展示される花々は変わるそうで、この日は、チューリップをはじめとした造花が生けられていました。
白の外壁とタイルで清潔感のある印象
■丸二商店(東ゾーンE10)脇の路地
銅板で造った外観が印象的
銅板片を趣向を凝らして組み合わせた外壁が特徴的。丸二商店はかつて神保町に建っていたザルやホウキなどの家庭用雑貨を販売する荒物屋です。商店の裏手には長屋も移築されています。
古き良き日本の景観を彷彿とさせる一枚
建造物自体も非常に魅力的ですが、さらにおすすめしたいのが長屋に面した路地。新緑が美しい春〜夏の時期なら、経年変化で色づいた木材と銅板の外壁と草木の緑が合わさり、ノスタルジックな雰囲気が味わえます。
④仕立屋(東ゾーンE5)
仕立屋は、明治時代の建造物
明治初期に建てられた「仕立屋」。軒を前面に長く伸ばした「出桁造り(だしげたづくり)」という建築方法が特徴的です。この日は建物の横に植えられたシダレヤナギが緑に色づき、明治のハイカラな風景を感じさせます。
下町中通りの「川野商店」という和傘問屋では無料で和傘の貸し出しを行っており、傘をさしてヤナギの下を歩けばまるで同じ時代を生きていたかのような感覚を味わうことができるでしょう。
⑤綱島家 / 八王子千人同心組頭の家(西ゾーン)
綱島屋(農家)の外観。茅葺き屋根が美しい
東ゾーンから野草ゾーンの小道を通って、西ゾーンへ。最奥部の「吉野家」という農家の住まいをはじめ、「綱島家」「八王子千人同心組頭の家」と江戸時代中期〜後期に建てられた茅葺き屋根の建物が並びます。太い梁や大黒柱を持つ日本家屋ならではの木造建築は見ものです。
この家屋では、日によってはボランティアの方々がかまどや囲炉裏を焚いており、当時の民家での生活の様子を窺うことができます。当時は薪をくべ、火を焚くことで煙を上げ、天井に害虫が棲みつかないようにしていたのです。天井を走る太い梁は経年変化と煙で黒々と光っており、歴史を感じられます。
縁側に座って写真撮影。古民家ならではの景観
ここでは、茅葺き屋根の家屋と一緒に写真撮影するのがおすすめ。縁側の引き戸が開かれた開放感のある空間は、日本の古民家が持つ独特の風情を漂わせていました。
⑥常盤台写真場(西ゾーンW1)
モルタルで造ったモダンな外壁が特徴
西ゾーンの最奥部からエントランス広場へと戻る途中、山の手通りに立つ「常盤台写真場」。1937年、常盤台に建てられた写真館兼住宅で、1階は住居、2階が写場となっています。昭和らしい和モダンな写真が撮れるフォトスポットです。
従来の日本家屋らしい畳の居間
写場の北側一面に摺りガラスの窓がはめ込まれているのは、安定した採光を叶えるため。漆喰の壁が採光を柔らかく反射し、照明設備が発達していなかった当時でも、被写体を美しく撮影することを可能にしたのです。
2階の写場で写真館の説明を聞きながら記念撮影
自分で気が済むまで撮影したら、2階の写場でスタッフに実際に記念撮影(無料)をしてもらえます。
⑦デ・ラランデ邸(西ゾーンW10)
西洋の雰囲気漂う「デ・ラランデ邸」
これまでの古風な日本の建造物とは打って変わり、西洋の雰囲気漂う「デ・ラランデ邸」。1910年頃、ドイツ人建築家「ゲオルグ・デ・ラランデ」により建築されました。
3階建ての優美な建物は外観だけでなく、内装も煌びやか。ゴージャスなシャンデリアや重厚なテーブル、ビンテージの絨毯などそのどれもが上品な空間を演出しています。
武蔵野茶房でランチやカフェが楽しめる
またデ・ラランデ邸は、カフェ「武蔵野茶房」としてランチやお茶を楽しめるのも魅力の一つ。メニューはカレーライスやハヤシライスなどの軽食から、デザートまで取り揃えています。江戸東京たてもの園を探索したあとは武蔵野茶房でのんびりひと休みしましょう。
江戸東京たてもの園へのアクセス
小金井市を巡行する「CoCoバス」利用もおすすめ
江戸東京たてもの園へは、武蔵小金井駅・東小金井駅・花小金井駅からそれぞれバスを利用して行くことができます。
今回は、JR 東小金井駅からバスに乗り、【たてもの園入口】のバス停で下車、そこから徒歩約10分の道のりを歩いて向かうルートを使用。バスは小金井市内を巡行しているコミュニティバス「CoCoバス」を利用しました。(乗車1回100円※現金のみ利用可)Cocoバスの時刻表はこちら
たてもの園入口バス停
ほかにも、武蔵小金井駅や花小金井駅からもアクセス可能。詳しくは下記を参照ください。
■ 武蔵小金井駅からのアクセス
・武蔵小金井駅北口②③のりばより 西武バス
→【小金井公園西口】バス停 → 徒歩(約5分)
・武蔵小金井駅北口④のりばより 関東バス / 三鷹駅行き
→【江戸東京たてもの園前】バス停 → 徒歩(約3分)
■ 花小金井駅からのアクセス
【南花小金井】バス停(小金井街道沿い)から 西武バス / 武蔵小金井駅行き
→【小金井公園西口】バス停 → 徒歩(約5分)
駐車場情報
小金井公園の第1駐車場(有料)を利用してください。
奥の方に駐車すると江戸東京たてもの園に近く、歩く距離が短くなるのでのでおすすめです。
■駐車料金
乗用車1時間(以降30分毎に100円):300円
大型車2時間(以降30分毎に500円):2,000円
歴史ある江戸東京たてもの園で過ごす趣深い時間
時代を超え、今なお当時の景観を残す江戸東京たてもの園の建築物たち。ビルやネオンが輝く現在の東京の街並みももちろん素敵ですが、時には日常から離れて昔ながらの建築に触れてみてはいかがでしょうか。
ここでしか味わえないノスタルジックな情景を、ぜひ堪能してみてください。