1. ゆるキャラのモチーフにも! 埼玉県北東部の「いがまんじゅう」
2. 飯能市のB級グルメ「味噌付けまんじゅう」
3. いもの魅力を感じる小江戸川越の味「いも恋」
4. 調神社のうさぎがモチーフに。浦和名物「招きうさぎ」
5. この日だけのまんじゅうに出会えるイベント「ついたちまんじゅう」
まとめ

古い町並みを残す川越や、美しい自然が楽しめる秩父、飯能に新しくできたテーマパークなど、観光地や見どころがたくさんある埼玉県。そんな埼玉には、「草加せんべい」や「十万石まんじゅう」のほか、地元民に愛されているおいしい饅頭(まんじゅう)がさまざまあるとご存知ですか?

今回は「埼玉に来たらこれ!」という、埼玉名物まんじゅうをご紹介します。

※営業時間や価格は一時的に変更になっている可能性があります。必ず事前にご確認ください。

1. ゆるキャラのモチーフにも! 埼玉県北東部の「いがまんじゅう」

「いがまんじゅう」は埼玉県北東部に古くから愛されているまんじゅうで、農林水産省が選定する「全国郷土料理百選」に選ばれた地元の味。赤飯で覆われたユニークなまんじゅうで、夏祭りや祝い事で縁起物として食されてきました。

いがまんじゅう作り

毎朝工房で手づくりされている「いがまんじゅう」(写真提供:キヤッセ羽生)

包んだ赤飯が栗の「イガ」にみえることから「いがまんじゅう」と呼ばれるようになったそうですが、なぜ赤飯で包まれることになったのでしょうか。埼玉県の彩の国 埼玉県公式Webサイトにその由来が記載されていました。

「もち米が高価なため、ボリューム感を出そうと赤飯の中にまんじゅうを入れたのがはじまりとも、赤飯とまんじゅうをいっぺんに作って手間を省くという農家のお嫁さんの知恵から生まれたとも言われています。」

いがまんちゃん

ご当地キャラクター「いがまんちゃん」(写真提供:羽生市観光プロモーション課)

羽生(はにゅう)市ではいがまんじゅうをモチーフとしたご当地キャラクター「いがまんちゃん」が活躍中。いがまんじゅうのように見える頭が特徴の妖精です。

いがまんじゅう販売の様子

いがまんじゅう 1個130円(写真提供:キヤッセ羽生)

羽生市でいがまんじゅうが買える場所は7店舗ありますが、そのうちのひとつが羽生市にある物産館「キヤッセ羽生」です。

館内で「コスモス工房」が作るいがまんじゅうは、赤飯には羽生産のもち米とささげ(赤い豆)を使用。まんじゅうの小麦には国産の「あかね」を使用し、できる限り地元の材料で提供することにこだわっています。

合成保存料はもちろん不使用。キヤッセ羽生内の工房で、地元農家のおかあさんたちが毎朝6:30から手作りしています。

キヤッセ羽生では「いがまんじゅう作り」の体験もできます。思い出づくりにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

キヤッセ羽生

キヤッセ羽生内「むじなも市場」で販売(写真提供:キヤッセ羽生)

いがまんじゅうは羽生市のほか、鴻巣市、加須市などにも伝えられています。コスモス工房のいがまんじゅうは、羽生市内のショッピングモール、東北自動車道パーキングエリア、温泉施設などで購入することができます。

【コスモス工房 基本情報】
住所:埼玉県羽生市大字三田ヶ谷1725 キヤッセ羽生内
電話:048-565-5255
営業時間:むじなも市場 4月~10月 10:00~17:30 / 11月~3月 10:00~17:00
定休日:月曜(祝日の場合翌日)

<いがまんじゅう作り体験>
料金:1,000円 / 1名(1団体15名以上)
※要事前予約
※外国語対応不可

2. 飯能市のB級グルメ「味噌付けまんじゅう」

味噌付けまんじゅう

味噌付けまんじゅう。注文を受けてから焼きあげる

江戸時代から続く「味噌付けまんじゅう」は、飯能市の名物です。

味噌付けまんじゅうとは、酒蒸ししたまんじゅうを焼き、その上に味噌だれを塗ったもの。かつて木材を運ぶ職人が、お弁当として持参していたとされています。

「第11回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」で準優勝を飾った経歴もある、飯能市のソウルフードです。

味噌付けまんじゅうの石田屋

創業約70年の「石田屋菓子店」

市内で味噌付けまんじゅうを販売しているお店は全3店舗。そのうちのひとつ、「石田屋菓子店」は飯能駅から徒歩で約5分の場所に立ち、駅から最も近いお店です。

石田屋味噌付けまんじゅう

店内には「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦準優勝」の文字が

石田屋菓子店の味噌付けまんじゅうは、自家製の味噌がお酒にも合うと評判の味。注文を受けてから焼くのもこだわりです。

アツアツまんじゅうの外側はしっかりとした味噌の風味とサクッとした歯ごたえ。中はもっちりした食感で、あんこの甘みと酒蒸しの風味がほのかに広がります。

店主の石田さん

3代目店主 石田百合子さん

2代目店主であった百合子さんのご主人は、2011年に他界。百合子さんは閉店を考えましたが、親戚一同はもちろん、近所の方や、子どもの同級生のお母さん方から「この味を守って欲しい」とお願いされ、ご主人の味を再現するべく奮闘してきました。

百合子さんがもっとも苦労したのが、米こうじで作るまんじゅうの形だったと話します。

「米こうじを使った生地は気温によって発酵が上手くいかないこともあり、試行錯誤しました。味は変わらないのですが、上手く膨らまなかったり、崩れてしまったり。失敗する度にサービス品として安く提供し、地元の方に応援してもらいました。常連の方が味のアドバイスをくれたり、友人が仕込みを手伝ってくれたり、仲間がいたからここまでやってこられました」と百合子さん。

試行錯誤すること1年、やっと百合子さんも納得のいく味噌付けまんじゅうが完成。現在でも朝の仕込みやイベント出店時には、ご近所の方が手伝ってくれるそう。地元の方の愛を感じますね。

飯能駅

飯能駅は池袋駅からの特急電車で約40分

2019年にはムーミンバレーパークが開業し、今後さらに盛り上がりが期待される飯能市。ここでしか出会えない「味噌付けまんじゅう」も、ぜひ味わってみてください。

【石田屋菓子店 基本情報】
住所:埼玉県飯能市柳町20-21
電話:042-972-4700
営業時間:9:00~18:00
定休日:月曜

3. いもの魅力を感じる小江戸川越の味「いも恋」

埼玉県の観光地として人気の小江戸・川越。その川越のお土産として注目されているのは「菓匠右門」が製造販売し、「彩の国認定優良ブランド品」に認定されているまんじゅう「いも恋(こい)」です。

いも恋

川越土産人気No.1に輝いた「いも恋」(写真提供:菓匠右門)

川越名物でもあるサツマイモとつぶあんを、山芋ともち粉の生地で包み、昔懐かしい味わいに仕上げたおまんじゅう。素材にこだわり、山芋が入った生地はもちもちとした食感で「皮がおいしい」と好評です。加えて、サツマイモの風味とつぶあんのしっとり感との調和も楽しめ、白、小豆色、黄色の断面がとてもきれいです。

いも恋パッケージ

ひとつひとつ手作りのいも恋(写真提供:菓匠右門)

「菓匠右門(かしょううもん)」は、東京の神楽坂で創業した菓子店。菓匠右門が川越に出店する際に、「川越名産であるさつまいもを使った和菓子で地元の役に立ちたい」という当時の会長の思いから、いも恋が誕生しました。

いも恋を作る様子

製造工程のほとんどが手作業(写真提供:菓匠右門)

多いときで1日10,000個ほどのいも恋を自社工場で製造しているそうですが、さつまいもの皮むきからはじまり、工程のほとんどが手作業なのだとか。

収穫期とその後の貯蔵時間経過により味が変わるさつまいもは、収穫時はホクホクして甘みが薄く、時間が経過するとともに甘みが増し、ネットリとした食感となるのだそう。時期によって生地やあんの味、食感を変えるなど工夫を凝らしながら品質を保つため、職人の勘が重要です。

添加物や保存料を使用していないため、通信販売では風味を損なわないよう、できたてを急速冷凍してお客様に届けているそうです。

いも恋 時の鐘店

「菓匠右門 時の鐘店」は観光スポットの「時の鐘」のすぐそば

いも恋は「川越のおすすめ土産アンケート」で1位に輝くなど、川越にとってなくてはならない名菓。

そのままいただくのはもちろん、「レンジで温めた後にトースターで表面をカリカリに焼いて食べるとおいしい」というお客さんもいて、色々な食べ方で楽しめます。「おばあちゃんに送るために購入したお孫さんが気に入って、リピートしてくれています」というエピソードからも、幅広い年代に人気であることがうかがえますね。

菓匠右門の「時の鐘店」「一番街店」「菓子屋横丁店」の各店舗では、できたてのいも恋が食べられます。いも恋片手に、古き良き日本の町並みの川越を散策してみてはいかがでしょうか。
※菓匠右門 公式Webサイトはこちら

【菓匠右門 一番街店 基本情報】
住所:埼玉県川越市幸町1-6
電話:049-225-6001
営業時間:9:00~18:00
公式サイト:菓匠右門
その他川越市内店舗:菓匠右門 工場直売店 / 菓匠右門 時の鐘店 / 菓匠右門 菓子屋横丁店 / 菓匠右門 ルミネ川越店

4. 調神社のうさぎがモチーフに。浦和名物「招きうさぎ」

さいたま市浦和区には、狛犬ではなく、「狛兎(こまうさぎ)」がいる「調神社(つきじんじゃ)」という神社があります。「調(つき)」が「月」と同じ読みであることから、月からの使いであるウサギの姿が、境内のところどころに見られます。

招きうさぎ

さいたま市浦和区の名物まんじゅう「招きうさぎ」

さいたま市には、このウサギをモチーフとした、とてもかわいいまんじゅうがあります。その名も、「招きうさぎ」。 いかにも縁起がよさそうです。

松月堂 外観

「松月堂」外観

今から20年ほど前、浦和市(現さいたま市)から「市の名物をつくってほしい」との依頼を受けて誕生したのがこのまんじゅう「招きうさぎ」。製造・販売を手掛けるのは、浦和駅東口から徒歩約7分の場所に店を構える「松月堂」です。

松月堂店主

2代目店主 中田一夫さん

松月堂は創業51年。「こだわりのないのがこだわり」という2代目店主の中田一夫さんの言葉通り、店内にはバターを使ったお菓子もあり、和洋折衷のラインアップ。「招きうさぎ」の味は、あずき、ゆず、うめ、栗、紅赤いもと5種類あります。ゆず味は、埼玉県毛呂山町の農家さんのゆずを使用。軽い口溶けの生地にゆずのさわやかな香りが混ざり合い、後口の良さが絶妙です。
※「紅赤いも」には旬があり、在庫に限りがあるため予約販売

招きうさぎの皮には山芋と米粉が使われています。調神社に仕えるウサギは白ウサギですが、小麦粉ではその白さが出せないため、米粉を使用して白さを表現しているのだそう。山芋と米粉の生地は口に含むとふわっと溶ける、なんともいえない食感を生み出します。

ほか、慶事用として紅白うさぎも人気(5日前までの完全予約制)。通信販売を求める声があるものの、賞味期限が3日間(冬季4日間)という問題があり実現が難しいとのこと。店主の「本当のこだわり」が感じられます。

招きうさぎパッケージ

「招きうさぎ」6個セット 660円

かわいらしいパッケージで、お土産にも、贈り物にも最適。松月堂と、浦和駅にある浦和観光案内所で購入できます。

【松月堂 基本情報】
住所:埼玉県さいたま市浦和区本太2-8-16
電話:048-882-5100
営業時間:8:30~18:30
定休日:火曜

5. この日だけのまんじゅうに出会えるイベント「ついたちまんじゅう」

9店舗のついたちまんじゅう

「ついたちまんじゅう」のために9店舗から集まったまんじゅうたち

さいたま市では、毎月1日に「ついたちまんじゅう」というイベントが開催されています。さまざまな店舗がこの日のためだけのまんじゅうをそれぞれ作り持ち寄り、販売するというイベントです。

そもそもさいたま市には旧暦6月1日(現在の7月1日)に、その年に取れた小麦でまんじゅうを作り、神さまに供えるという習わしがありました。小麦の収穫から田植えまでの繁忙期が一段落したこの時期に、朝からお腹いっぱい食べて一日ゆっくりするというのが「ついたちまんじゅう」の由来です。

昔の風習であったこの「ついたちまんじゅう」を復活させようと、さいたま市内にある和菓子店と、さいたま市の商工会議所が立ち上がり、2015年に「ついたちまんじゅうの会」が発足しました。

ついたちまんじゅうの会の佐藤さん

「ついたちまんじゅうの会」会長 佐藤高広さん

現在参加している和菓子店は9店舗。「ついたちまんじゅうの会」会長を務める「岩槻菓紗里 藤宮」の佐藤高広さんによると、イベント「ついたちまんじゅう」で販売できるまんじゅうの条件は以下の2つがあります。

① 純埼玉県産の小麦粉を使用すること
②ついたちまんじゅう」のイベント限定販売の商品を提供すること。

純埼玉県産の小麦粉は県内でも1社しか製粉しておらず、上記条件を満たすことは意外と難しいそうです。

運営の中心を担うのは、中小企業診断士の川原舞子さん。
「売り場に掲げる看板やディスプレイなど、女性ならではの気遣いを感じます」と佐藤会長も全幅の信頼を寄せています。ついたちまんじゅうの会発足にあたり、昔の風習をしっかりと調査した上で取り組まれたのだそうです。

ついたちまんじゅうの様子

看板や店舗のPOPなどは川原さんが担当(写真提供:さいたま商工会議所)

「埼玉県は江戸時代から、東京(江戸)に向けてさまざまなものを供給してきました。観光地化されていないローカルな日本の魅力と、埼玉の食を楽しんでいただきたいと思っています」と川原さんは話します。

各和菓子店が腕によりをかけて作ったまんじゅうが一堂に会するついたちまんじゅう。この日を楽しみにしているリピーターが多いというのもうなずけます。

浦和駅前での開催風景

浦和駅改札前での開催風景(写真提供:さいたま商工会議所)

埼玉に行くなら、ぜひ「ついたちまんじゅう」の日に合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。普段店頭に並ぶことのないレアなおまんじゅうは、お土産に喜ばれること間違いありません。

【ついたちまんじゅうの会 概要】
開催日:毎月1日
開催場所:大宮駅西口前 そごう大宮店2F入口
イベント情報:ついたちまんじゅうの会公式Facebook
※当日は各店のついたちまんじゅうをそれぞれの店舗でも販売
※6月、7月、11月にはJR浦和駅改札前通路でも販売イベントを開催予定

お好きな名物まんじゅうを埼玉土産に

埼玉県内の地元に愛されている、名物まんじゅうをご紹介しました。それぞれのこだわりを感じるおまんじゅう達にワクワクしながらお店を訪れ、知られていない場所のおまんじゅうだからこそ、新感覚の手みやげとして喜ばれることでしょう。

東京から日帰りで楽しめる埼玉県。隠れた名物まんじゅうを探しに、旅してみませんか。