毎年10月第3日曜日と前日に開催される歴史ある祭り「川越まつり」。関東有数の観光地である川越に、例年多くの見物客が訪れます。
国の重要無形民俗文化財に指定されている祭りの2024開催情報、歴史、特徴と見どころについて解説していきます。370年もの長い時間をかけて発展してきた祭りに足を運んだら、きっとすてきな経験ができるはず。
TOP写真提供:一般社団法人 埼玉県物産観光協会、複製・再転載禁止
※この記事に掲載の情報は2023年8月時点のものです。諸事情により変更となる場合があるため、お出かけの際はご自身で最新の情報をご確認ください
※2024年10月、一部情報を更新しました
「川越まつり」はどんな祭り?
川越氷川神社の例大祭
漆喰造りの建物が並び、江戸情緒を感じさせる「小江戸川越」。そんな川越がもっとも盛り上がる期間のひとつが「川越まつり」です。
川越氷川神社の例大祭を起源とする「川越まつり」は、370年の長きにわたって続いてきた祭り。一番上に人形を乗せた大きな山車(だし)が歴史ある町並みを練り歩きます。
例年のスケジュール
川越まつりは現在、毎年10月の第3土・日曜に行われています。ちなみに1996(平成8)年までは、曜日を問わず10月14日、15日に行われていたそうです。
2日間の日程で開催されるのは変わらずで、1日目は【神輿の巡行】や【宵山(よいやま)】があります。2日目は【山車の巡行】や【曳っかわせ】が見どころです。
二段式の高さのある山車が特徴
川越まつりの見どころ・特徴は、特殊な山車にあります。
川越まつりの山車は、町を巡る神様のお供のために各町が用意したもの。江戸や川越の職人たちによって作られました。
台座の上に屋台、その上にもう一段あり、さらにその上に人形が乗っているという造りで、人形を含む高さは8mほどもあります。
この特徴ある山車が町を行く行事は「川越氷川祭の山車行事」として、2005年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。また、2016年にはユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」にも登録されました。
川越まつりの歴史をさっくり解説
[起源]いつからある?
川越まつりの起源は江戸時代に遡ります。1648(慶安元)年、当時の川越藩主・松平信綱(まつだいら のぶつな)が祭りのための道具を奉納し、周囲の町に祭りを執り行うように促しました。これが川越氷川神社の例大祭の始まりです。
[発展]山車がお供をするように
そして川越氷川神社の例大祭は、江戸・日枝神社の「山王祭(さんのうまつり)」や、神田明神の「神田祭(かんだまつり)」などの影響を受けて発展していきます。
神社のお祭りの多くは、普段は神社にいる神様をお神輿(みこし)などに乗せて外へ連れ出し、町を巡っていただく「渡御(とぎょ)」というものが基本。川越氷川神社のお祭りでは、このとき各町の山車(だし)が神様のお供をするようになりました。
山車はやがて、江戸と川越の職人たちによって華やかなものとなっていき、今では10ヶ町から22台の山車が繰り出す大きな祭りとなりました。
川越氷川神社について
川越氷川神社は、1500年以上前、欽明(きんめい)天皇の時代に創建されたといわれています。もともと大宮氷川神社のご祭神を祀る別社として建立されたことから、「川越氷川神社」と呼ばれました。
室町時代以降は歴代城主をはじめとした多くの人々に、川越城の守護神として信仰されたという歴史があります。江戸時代に入ってからも、川越藩主から特別な扱いを受けました。
川越氷川神社は、五柱の神々(※)を祀っている神社です。これらの神々は、みな家族関係にあります。そのため、「家族円満の神様」「夫婦円満の神様」として親しまれています。
※主祭神の素盞鳴尊(すさのおのみこと)と、脚摩乳命(あしなづち)、手摩乳命(てなづち)、奇稲田姫命(くしなだひめのみこと)、大己貴命(おおあなむちのみこと)。脚摩乳命と手摩乳命は夫婦であり、奇稲田姫命はその娘。奇稲田姫命と素盞鳴尊は夫婦であり、大己貴命はその子どもにあたる
川越氷川神社の歴史やご祭神についてはこちらで紹介しています。▼
2024年の川越まつり開催情報
日程
2024年10月19日(土)・20日(日)
時間
●10月19日(土)
[神幸祭|神輿の巡行]
13:00〜14:30頃
[宵山]
18:00〜19:00頃
[鳶のはしご乗り]
18:20〜18:40頃
[曳っかわせ]
随時
※山車同士が出会ったときに開始
●10月20日(日)
[市役所前の山車巡行]
13:30〜16:00頃
[曳っかわせ]
随時
※山車同士が出会ったときに開始
場所
埼玉県川越市 川越氷川神社・蔵づくりの町並み周辺
●会場案内図|令和6年度川越まつり情報
屋台情報
2024年の川越まつりでは次の4つの屋台村が設置されます。
①丸広百貨店東側駐車場
10月19日(土) 10:00〜21:30
10月20日(日) 10:00〜21:00
②蓮馨寺境内
10月19日(土) 10:00〜21:30
10月20日(日) 10:00〜21:00
③タイムズ川越幸町第2駐車場
10月19日(土)10:00〜21:30
10月20日(日) 10:00〜21:00
④エムエス観光バス駐車場
10月19日(土)10:00〜21:30
10月20日(日) 10:00〜21:00
2024年川越まつりの屋台村マップ
通行止め情報
2024年10月19日(土)、10月20日(日)は西武新宿線川越駅〜川越氷川神社の周辺で車両通行禁止区域が設けられます。
車両通行禁止区域では自転車に乗っての通行も不可となるので、自転車で通過の際は押して歩くようにしてください。
公式サイト・公式アプリ
2024年の川越まつりの詳細情報や会場マップは以下サイトにまとまっています。おでかけの際はご確認ください。
また山車のリアルタイム位置情報や、トイレ、臨時駐車場などの会場案内には、モバイルアプリ「川越まつりナビ」が便利。事前のダウンロードがおすすめです。
●公式サイト:令和6年度川越まつり情報
●公式アプリ:川越まつりナビ
川越まつりの見どころ解説
見どころ①:山車
川越まつりの大きな見どころは、ハイスケールかつ豪華な山車です。黒や赤の漆が塗られ、金箔も使用したゴージャスなデザインが魅力。自在に伸縮できる迫りあげ式構造も特徴的です。
また、山車の上に設置された舞台には、精密に作られた人形が乗っています。牛若丸、弁慶、日本武尊、徳川家康、徳川家光、菅原道真……。山車によって、違う人物を模した人形が乗っているところがポイント。細かなデザインにも個性が出ているため、推しの山車を探してみるのもおすすめです。
きらびやかな山車が町中を巡行する風景は大変迫力があるので、思わず時を忘れて見とれてしまうでしょう
《山車を楽しみやすい日程》
●10月19日(土)
18:00~19:00頃……宵山
●10月20日(日)
13:30~16:00頃……市役所前山車巡行
見どころ②:曳っかわせ
川越まつり最大の見どころは、「曳(ひ)っかわせ」です。曳っかわせとは、山車と山車が出会った時にそれぞれのお囃子を披露して競い合う風習のこと。お囃子に合わせて歓声が上がるさまは、見ているだけでテンションが上がりますよ。
特に、祭り全体が盛り上がる夜のひっかわせは見逃せません。山車に明かりが灯るため、幻想的な雰囲気に満たされます。
川越まつりのクライマックスともいえるひっかわせ(写真提供:一般社団法人 埼玉県物産観光協会、複製・再転載禁止)
ちなみに、山車に乗っている囃子連の流派によって、披露するお囃子の内容は異なります。ひっかわせを眺めながらお囃子の聴き比べをする、というのも粋な楽しみ方です。曳っかわせは、両日見ることができます。
《「ひっかわせ」観覧におすすめの場所》
●本川越駅前
●連雀町交差点
●仲町交差点の周辺
見どころ③:お囃子
川越まつりを心ゆくまで楽しむために、前述の通り、お囃子(はやし)に注意を向けてみるのも粋。お囃子は、笛・太鼓・鉦・踊りなどからなる、祭りに欠かせない音楽のこと。
川越まつりで演奏されるお囃子は、文化・文政の時代に、江戸から伝わったもの。葛西囃子と川越にもともと伝わる里神楽を組み合わせたといわれています。
現在は、29もの囃子連が川越市囃子連合会に所属。大きく分けて「王蔵流」「芝金杉流」「堤崎流」の3流派に分かれており、それぞれの表現を継承し続けています。
見どころ④:木遣り(鳶のはしご乗り)
木遣り(きやり)も、川越まつりにおける見どころのひとつです。木遣りとは、山車の運行を始める前に、とび職の人々が披露する歌のこと。「川越の木遣り」として、市指定文化財無形民俗にも認定されています。
はるか昔から受け継がれてきた木遣りを聴けば、歴史の奥深さにじっくりと浸れることでしょう。
《とび職人の技が見られる日程》
●10月14日(土)
18:20~18:40……鳶のはしご乗り
見どころ⑤:屋台村
お祭りで外せないものといえば「屋台」! 川越まつりでは例年、たくさんの屋台が勢ぞろいする「屋台村」が設置されます。
なんと、出店される屋台の数は1000軒を超えるとか。人気の飲食店が数多く出店されるため、グルメマニアも必見・必食です。
おいしいごはんやお酒と一緒に、1年に1度の川越まつりを楽しみましょう
川越まつりに参加するには?
川越まつりは見物客として楽しむのが基本ですが、囃子連の会員になれば、参加者として祭りを盛り上げる側になれます。各囃子連は常に会員を募集しているわけではありませんが、地元の方を中心に会員を募集している場合もあります。
参加してみたいという方は、各囃子連の募集状況をチェックしてみてください。
アクセス・駐車場
川越まつりは、JR川越駅から徒歩圏内の「蔵造りの町並み」周辺で開催されます。川越へはJR以外にも複数路線が乗り上げているので、複数の駅が利用可能です。
会場エリアの最寄り駅
①西武新宿線[本川越駅]
②東武東上線[川越市駅]
③JR川越線[川越駅]
④東武東上線[川越駅]
会場の最寄り駐車場
川越まつり期間中は、会場周辺に臨時駐車場が設けられます。利用可能時間は8:30〜22:00です。
①市民グランド 約190台
②小仙波 約150台
③川越第一中学校 約160台
④仙波小学校 約70台
⑤富士見中学校 約100台
⑥月越小学校 約120台
⑦旧保健所跡地 約100台
詳しい場所は交通規制・会場案内マップや、川越まつりナビに位置が記載されています。
蔵の街川越号(川越まつり号)の運行
川越まつりの開催期間である10月19日(土)は、千葉県[君津駅]〜埼玉県[川越駅]を結ぶ臨時特急列車「蔵の街川越号(川越まつり号)」が運行されます。全席指定席で、運行スケジュールは次の通りです。
●往路
8:31 君津駅発
11:04 川越駅着
●復路
17:15 川越駅発
19:39 君津駅着
おわりに
川越まつりは、豪華絢爛な山車が町中を巡行する、華やかな祭りです。思わず写真を撮りたくなるきらびやかな山車、祭り全体が盛り上がるひっかわせ、おいしいグルメがたっぷり揃った屋台村と、見どころは盛りだくさん。
川越に根付く歴史の深さを感じながら、一生忘れられないような時間が過ごせるでしょう。気になった方は、ぜひ川越まつりに足を運んでみてください。
Text:Iwaipan / Sakura Takahashi
Edit:Erika Nagumo
Photo:PIXTA(特記ないもの)
参考文献:『御朱印でめぐる埼玉の神社〜週末開運さんぽ〜』(『地球の歩き方』編集室著/ダイヤモンド・ビッグ社)、『知れば知るほどおもしろい!日本の祭り大図鑑 由来・歴史・見どころがわかる』(芳賀日向監修/PHP研究所)
参考:
川越まつり公式サイト/埼玉県/川越市/川越氷川神社/川越祭囃子保存会/川越まつり今昔アーカイブプロジェクト/あおい囃子連/うずめ会囃子連/雀会/JR東日本ニュース/ほか各種パンフレット