夜空に輝く月。太陽の光を反射し、私たちの街を明るく照らします。そんな月の姿が時間とともに変化するのが「月食」。満月が欠けて見える現象で、月の満ち欠けとは違う形で月が姿を変えていきます。
月食とは一体どんなもので、なぜ月食が起こるのでしょうか。今回は、月食の仕組みや種類について紹介します。
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月食とは何か
月食の仕組み
月食は月が地球の裏に隠れることで起こる
太陽の光を反射している月。太陽の光が当たっている部分だけが地球から観測できます。そのため日によって月の形が変化。これが月の満ち欠けです。月食は満ち欠けとは異なり、地球の影の部分を通過することで月が暗くなったり欠けて見えたりする現象。太陽、地球、月の順に一直線上に並んだ満月の時に観測されます。
この並び順が変わり、太陽、月、地球の順に一直線上に並んだ時に起こるのが「日食」。太陽と地球の間に月が入ることで、太陽が隠れて見える現象です。月食も日食も、観測される原因は月と地球の公転周期が異なるため。地球の公転周期が約1年で月の公転周期が約27日であるため、月と地球の公転のタイミングが上手く合った時に月食や日食は起こります。
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また地球の影は、「本影(太陽光がほぼ遮られた濃い部分)」と「半影(本営の周りを囲む薄い部分)」の2種類。月食の際の月の欠け方は、本影と半影のどちらに月が入っているかによって変わります。
月食と新月の違い
新月は月が見えない
月食とは異なり、月が見えなくなるのが「新月」。地球から見て月と太陽が同じ方向に来ることで月が見えなくなります。太陽、月、地球の順に並び、一直線上にならなくても新月になるというのが月食と異なる点。約1カ月に1回観測できますが、月食はおよそ半年に1回観測できます。
月食は赤い
月食が赤いのは夕陽と同じ理由
月が欠けて見える月食ですが、実は月食が最大になっても月は消えません。月食が最大の時、月は赤く染まります。これは夕陽が赤く見えるのと同じで「光の散乱」が影響するため。
太陽光には赤や青など様々な色が含まれています。光が地球の大気を通過する時、波長の短い青い光は空気中の粒子によって散乱。一方で波長の長い赤い光は散乱しにくいため、光を弱めながらも大気中を通り抜けます。そして赤い光は大気によって屈折され、本影の内側に回り込んでから月面に到達。これによって月食中は月が赤く見えるそう。
ちなみに月食中の月の色は「赤銅(しゃくどう)色」と呼ばれています。
満月=月食ではない理由
満月だからといって月食が起こるとは限らない
およそ月に1回観測できる満月。月食が起こるのは満月の時ですが、満月の日に月食が起こるとは限りません。それは地球と月の公転軌道が約5度傾いているため。普段の満月は地球の影の北もしくは南側を通るので、満月のたびに月食がおこるわけではないのです。
しかし、日食と比べると月食は観察しやすい現象。日食は限られた時間・場所でしか見ることができませんが、月食の場合は月食が起こった時に月の見える場所であればどこでも観察できます。
月食の種類
月が欠けたかと思えば赤銅色に変わる月食。地球の影のどの部分に月が入るかによって、月食の呼び方が異なります。大きく分けると「本影月食」と「半影月食」の2種類。詳しく見ていきましょう。
本影月食
月の一部もしくは全体が本影に入った時に起こる「本影月食」。本影は影が濃いので、月がはっきり欠けたように見えます。一般的に月食といえば本影月食のこと。本影月食はさらに2つに分けることができます。
皆既月食
月が完全に隠れる前後でターコイズフリンジが起こる
月全体が本影に入った時に起こる「皆既月食」。月が赤銅色に変わるのは、皆既月食の時です。皆既月食は約20分ほどしか観測できないので、タイミングを逃さないようにしましょう。
月食によって月が赤銅色に変わりますが、実は地球の影に完全に隠れる前後で月の縁が淡い青緑色に見えることがあります。それが「ターコイズフリンジ」と呼ばれる現象。太陽光がオゾン層を通過する時に赤い光が吸収され、残った青い光が月に到達することで起こるそうです。
部分月食
部分月食は月の満ち欠けと欠け方が異なる
月の一部だけが本影に入ると起こるのが「部分月食」。月が欠けて見えるのは、部分月食が起こっている時です。部分月食が観測できるのは2〜3時間ほど。部分月食が見えて皆既月食は見えないということもあるので、皆既月食よりも部分月食の方が観測される回数は多いです。
満ち欠けと月食で混同しがちな月の欠け方。実は見分ける方法があります。満ち欠けの場合、月は段々と細い楕円になるような欠け方。一方で月食の場合は、月が楕円形にならずに細くなっていく欠け方をします。
半影月食
半影月食は月が欠けているのか分かりにくい
月の一部もしくは全体が半影に入った時に起こる「半影月食」。半影は影が薄いので、目で見ても月が欠けているかどうかハッキリとはわかりません。
月食を観察する
およそ半年に1度のペースで観測される月食。比較的観測される回数は多いですが、必ずしも日本で観測できるとは限りません。観測できる時に備えて、観察の仕方やいつ見られるのかを知って準備しておきましょう。
月食の観察の仕方
双眼鏡などがあるとより月食を楽しめる
日食を肉眼で見るのは禁止ですが、月食は肉眼で観察しても問題なし。肉眼でも十分に月食を観察できるので、気軽に楽しむことができます。ただ、双眼鏡や望遠鏡を持っている人はそれらを使うのがおすすめ。部分月食の時は徐々に月が欠ける様子が分かりやすく、皆既月食中は肉眼とは違った見え方ができることもあるので、ぜひ見比べてみましょう。
カメラを持っているという人は、月食を撮影するのも楽しみ方の1つですね。
過去に日本で観測された月食
2018年に日本で観測された皆既月食
最後に日本で皆既月食が観測されたのは2021年5月26日。部分月食が観測されたのは2019年7月17日です。実は2021年に観測された皆既月食は「スーパームーンの皆既月食」という珍しい現象。次は2033年にスーパームーンの皆既月食が観測できるそうです。
次に日本で見られる月食
次に月食が見られるのはいつ?
次に皆既月食が日本で見られるのは2022年11月8日。詳しい月食の情報は、国立天文台の公式サイトをご覧ください。
月食は観察しやすい天体現象
今回は、月食の知識や仕組みを紹介しました。肉眼でも観察できて発生する頻度も多い月食。珍しい現象ではありますが、比較的観察しやすいので気軽に楽しめます。しかし、頻繁に見えるものほど忘れてしまいがち。月食が観測される時を意識して、空を見上げてみてはいかがでしょうか。