十五夜とは?お月見と何が違うの?
2023年の十五夜(お月見)はいつ?
十五夜の由来
十五夜は別名「中秋の名月」とも呼ばれる
十五夜の月ではうさぎが餅つきをしている?
十五夜(お月見)は何をするの?
童謡「十五夜お月さん」の歌詞の意味は悲しい?
十五夜だけじゃない?「三月見」
素朴な質問
秋の風物詩、十五夜を楽しもう

日本の秋の風物詩といえば、美しい満月を望む十五夜。ススキを供えて月を眺めながら月見団子を食べる、なんとも風流なイベントです。

しかしなぜ十五夜の月が特別なのか、なぜススキや月見団子を供えるのか、気になったことはありませんか?そして、毎年のイベントにも関わらず「十五夜っていつだっけ?」と思ってしまう人も多いはず。2023年の十五夜は9月29日の金曜日です。

この記事では、十五夜とお月見の由来や歴史を詳しく解説していきます。この記事を読んで十五夜を深く知れば、今年のお月見はもっと楽しくなるでしょう。

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歴史

十五夜とは?お月見と何が違うの?

中秋の名月とススキ

中秋の名月とススキ

十五夜は旧暦の毎月15日に月を鑑賞しながら、その年の収穫などに感謝をする日本の伝統行事です。

旧暦とは中国式の月の動きを基準とした太陰太陽暦(たいいんたいようれき)のことです。以前は太陰太陽暦を利用していましたが、明治時代から太陽の動きを基準とする、太陽暦に変更になったと言われています。

太陽の動きを基準とする新暦の太陽暦は1年を365日と数えますが、旧暦の太陰太陽暦では1年を354日と数えます。そのため11日間ずれることになり、毎年のように十五夜の日にちが異なるようになりました。

一般的に広く知られている十五夜は旧暦の7月〜9月(秋の季節)のそのちょうど真ん中にあたる、8月15日です。8月は空が最も澄んで月が美しく見えることから、その夜にお月見をする風習が生まれました。

十五夜とお月見の違いについて

お月見

お月見

十五夜にはふたつの意味があります。一般的に知られている意味合いと異なるかもしれません。

ひとつは月の齢の意味合い。旧暦では毎月1日に新月、15日に満月と定めるため十五夜の満月の日に貴族は宴会、庶民は作物の感謝をしていました。つまり十五夜の本来の意味は、毎月15日の満月の夜のことを言います。

もうひとつが月見行事の十五夜。こちらは旧暦の8月15日をさし、秋の季節から空気が澄みわたります。そのため月が綺麗に見えるため、中秋の名月とも呼ばれます。たくさんの人がこの日に月を見ていたため、お月見と呼ばれるようになったかもしれません。こちらの月見行事の十五夜が、広く一般的に知られていますね。

2023年の十五夜(お月見)はいつ?

新暦と旧暦の日数の違いにより、十五夜は毎年異なる日付になります。2023年の十五夜(お月見)はいつになるのでしょうか?

2023年の十五夜(お月見)は9月29日になります。

table
月日
2022年 9月10日
2023年 9月29日
2024年 9月29日
2025年 10月6日

十五夜の由来

日本の伝統文化である十五夜とお月見。この文化はいつごろ始まり、どのように広まっていったのでしょうか。十五夜やお月見の由来や歴史を紹介します。

中国の伝統文化の由来

長崎中華街

中秋節の長崎中華街
十五夜は中国の伝統文化「中秋節」に由来します。中秋節は、中国では中華三大節のひとつとして春節(中国の旧正月)、清明節(日本のお盆のように里帰りやお墓参りをする)と並ぶビッグイベント。

日本の十五夜と同様、毎年の旧暦8月15日を指します。丸い満月は中国では団欒の象徴と考えられているため、この日は家族や親しい友人を招き、月を愛でながら食卓を囲んで団欒を楽しみます。

また中秋節には、お月見をする以外にも満月を象った「月餅(げっペい)」といわれるお菓子を食べたり、最近では少なくなりましたが、提灯やランタンに火を灯したりする風習があります。現在、月餅はその時期の贈答品として定着しています。

平安時代からの由来

平安時代の貴族

平安時代の貴族
十五夜のお月見が日本に伝わったのは、平安時代からと言われています。859~877年ごろに中国から伝わり、貴族の間に広まりました。

当時の十五夜は、月を見ながら酒を酌み交わし、船の上で詩歌や管弦に親しむ風流な催しだったんだとか。貴族たちは空を見上げて月を眺めるのではなく、水面や盃の酒に映った月を愛でたといわれます。また月は秋を表す季語として、和歌にも度々登場します。百人一首には月を題材にした句が11首も存在。

庶民も広く十五夜を楽しむようになったのは、江戸時代から。月の神様である月読命(ツクヨミノミコト)が農耕の神様として信仰があったため、貴族のようにただ月を眺めるのではなく、収穫祭や初穂祭の意味合いが大きかったようですよ。

十五夜は別名「中秋の名月」とも呼ばれる

中秋の名月

中秋の名月

旧暦では7月〜9月を秋の季節とみなすことを紹介しました。そのちょうど真ん中である旧暦8月15日を「中秋(ちゅうしゅう)」と定めています。秋の季節には空が澄み渡り、月が美しく見えることから、十五夜に見える月を「中秋の名月」と呼ぶようになりました。

十五夜は満月とは限らない?

十五夜に見える月は満月である、と認識している人も多いのではないでしょうか?実は十五夜の月は満月とは限らず、1日ずれてしまう年もあるんです。2020年は10月1日が十五夜でしたが、満月の日はその翌日の10月2日でした。

なぜ満月の日がずれてしまうのでしょうか?

その理由は、月はいつも15日周期で新月から満月になると限らないからです。年によっては新月から満月に変わる日数が、13日間〜15日間と変わるんです。そのため十五夜の月が満月でない場合があります。

ちなみに2023年は、十五夜と満月の日が同じ9月29日の予定です。天候が良ければ、満月のお月見ができる予定ですよ。

十五夜の月ではうさぎが餅つきをしている?

十五夜にお月見をしていると、「月にはうさぎがいて、餅つきをしている」なんて話をよく耳にしたことがありませんか?これは昔から語り継がれる伝承で、月の影がうさぎに見えることからこういわれるようになりました。しかし、実はこの話の由来となったある伝説が存在するんです。

仏教説話から生まれた「月のうさぎ伝説」

満月の影はうさぎに見える?

満月の影はうさぎに見える?

昔、あるところにうさぎとキツネとサルがいました。ある日、3匹は食べ物を乞う老人に出会います。そこで老人のために、それぞれ食べ物を探すことになりました。

ところが、うさぎだけはどれだけ一生懸命探しても、食べ物を見つけることができません。悩んだうさぎは、「私を食べてください」といって火の中に飛び込み、老人のために自らの身を捧げました。

実はその老人は帝釈天(たいしゃくてん)という神様。これを哀れんだ帝釈天は、そのうさぎを月の中に蘇らせ、みんなの手本としました。

これは仏教説話が元になっており、この「月のうさぎ伝説」が、「月にはうさぎがいる」という話の由来となったといわれています。また、「うさぎの焼けた皮を月に映すことでうさぎを生き返らせた」という説もあり、月の影がうさぎに見える理由として語られたといわれています。

うさぎが餅をついているのはなぜ?

餅をつくうさぎ

餅をつくうさぎ

それでは、なぜ「うさぎが餅をついている」といわれるようになったのでしょうか。

これには先の伝説と関連して、「うさぎが老人のために餅をついている」「うさぎが食べ物に困らないように」などという説や、日本で満月を「望月(もちづき)」と呼ぶことから、これが転じて「餅つき」になったという説など、諸説存在します。

十五夜(お月見)は何をするの?

中秋の名月がみれる十五夜のお月見の日は、何をするんでしょうか?

十五夜の由来で紹介したように、昔の人々は月を農業の神様だと信仰していました。そのため月に向かって、収穫に感謝するべくお供え物をする風習があります。

十五夜にお供えする食べ物

供えるものは地域によって異なる場合もありますが、ここでは代表的なお供え物と、それらを供える意味について解説していきます。

月見だんご

月見団子

月見団子
お月見といえば欠かせないのが月見団子。米文化が根付いている日本の行事には、餅や団子がよく登場します。十五夜では月見団子を供えて作物の収穫に感謝し、豊作を祈願します。丸い月見団子は、満月に見立てたものです。

月見団子の数は十五夜にちなんだ15個が定番ですが、他には1年の満月の数にあわせて12個(うるう年には13個)、15を簡略して5個にする地方もあります。

並べ方は三方や皿に白い紙を敷き、月見団子をピラミッドのように盛ります。お供えする場所は、月がよく見える床の間に置くのがベスト。月見団子はお月見が終わったら、おいしくいただきましょう。

月見団子には「お月見泥棒」という面白い風習が残っています。これは「十五夜のときだけはお供え物を勝手に取ってもよい」というもの。「お月様がお供え物を受け取ってくれた」として歓迎する地域もあるんだとか。

ススキ

穂の実ったススキ

穂の実ったススキ
茎が空洞であるススキは、神様の依代(よりしろ)であるともいわれています。十五夜は豊作を祈る行事のため、本来なら稲穂をお供えしたいところですが、場所によっては穂が実る前、あるいはすでに収穫が終わってしまう場合もあるため、代わりに穂が実ったススキを使うようになったといわれています。

ススキと一緒にクズやナデシコなどの「秋の七草」をお供えする場合もあります。また、ススキの鋭い切り口は、魔除けになるとも考えられました。そのため、地域によってはお月見に飾った後のススキを庭や水田に立てたり、軒先に吊ったりして、災いから田や家を守る風習が今でも残っています。

農産物

秋の農作物

秋の農作物
稲作が始まる前は、芋などが主食とされてきました。そのため、十五夜は「芋名月」とも呼ばれ、芋類の収穫祝いという意味もあります。

里芋、栗、枝豆など収穫されたばかりの農作物を供え、豊作に感謝します。お供えした食べ物は十五夜が終わってから食べましょう。お供え物を体に取り入れることにより、健康や幸せを得ることができるともいわれています。

童謡「十五夜お月さん」の歌詞の意味は悲しい?

1920年に野口雨情によって作られた童謡「十五夜お月さん」をご存知でしょうか?

もしかしたら歌ったことがある、聴いたことがあるという方もいらっしゃるかも知れません。その歌のタイトルから、十五夜にぴったりな歌であると思われるかもしれませんが、十五夜お月さんの歌詞が孤独を感じさせるような内容です。

”十五夜お月さん ごきげんさん
婆やは お暇(いとま)とりました

十五夜お月さん 妹は
田舎へ貰(も)られて ゆきました

十五夜お月さん 母(かか)さんに
も一度わたしは あいたいな”

最初の「婆や」という女性は、家に仕えるお手伝いさんという意味。「お暇」というのは休暇という意味もありますが、退職をするという意味もあります。どちらにせよ、お手伝いさんとは離ればなれになってしまう、ということを意味しているようです。

2番目には、妹が田舎へと貰われていったという意味の歌詞があります。妹とも離ればなれになってしまったようです。

最後には母親に会いたいと願いながら、十五夜の月を見上げるということを考えると、母親とも会えない状況になっていることがわかります。この歌を作った野口雨情の境遇や、その時代の背景とも重なり、離ればなれの家族を想う歌が生まれたようです。

十五夜は普段会えない人のことを考えながら、お月見をするのも良いですね。

十五夜だけじゃない?「三月見」

お月見といえば、最も美しい満月が見られるとされる十五夜が一般的ですが、実は十五夜以外にもお月見を楽しめるとされる日があるのをご存知ですか?

それが「十三夜(じゅうさんや)」と「十日夜(とおかんや)」。これらは十五夜と合わせて「三月見」と呼ばれています。季節柄、雨の日が多い十五夜は、タイミングよく月が見えないなんてことも。

そんな時は、十三夜や十日夜を選んでお月見を楽しんでみてはいかがでしょうか。また、「三月見」を全て行うと縁起がいいともいわれています。

十三夜(じゅうさんや)

栗を供えて収穫を祝う

栗を供えて収穫を祝う

十三夜は、旧暦の9月13日から14日の夜を指します。中国から伝わった十五夜に対し、十三夜は日本由来の風習だといわれております。また、十三夜は栗や枝豆を供えて収穫を祝うことから「栗名月」「豆名月」とも呼ばれています。2022年の十三夜は10月8日の土曜日です。

十三夜は十五夜に次いで美しい月だといわれており、中秋の名月である十五夜から約1カ月後に巡ってくる十三夜のお月見も、日本では昔から大切にされていました。かつては十五夜または十三夜のどちらか一方しかお月見をしないことを「片見月」といい、縁起が良くないとされていました。

十日夜(とうかんや)

田んぼとかかし

田んぼとかかし

十日夜は旧暦10月10日の夜を指します。2021年の十日夜は11月14日。東日本を中心に収穫祭がおこなわれ、地の神様に感謝の気持ちを表します。

稲の収穫を祝って餅つきをしたり、稲の茎をたばねた「わらづと」や「わら鉄砲」で作物に悪さをするモグラを追い払ったり、田んぼを見守る「かかし」にお供えものをしたりと、地方によって内容はさまざま。

西日本では旧暦10月の「亥の子(いのこ)」という行事に当たります。十日夜は「田の神さまが山に帰る日」ともいわれ、この日までに稲刈りを終わらせるところが多いようです。

素朴な質問

  • 2023年の十五夜はいつですか?

    2023年の十五夜は9月29日の金曜日です。満月の予想が出ているので、天気が良ければ中秋の名月が見られるでしょう。


  • 十五夜の由来とはなんですか?

    十五夜の由来は中国の伝統文化「中秋節」に由来します。その文化が日本の平安時代に伝わったとされ、貴族が月を見ながら酒を酌み交わし、船の上で詩歌や管弦に親しむ風流な催しだったんだとか。


  • 十五夜は必ず満月ですか?

    十五夜は必ず満月とは限りません。その理由は、月はいつも15日周期で新月から満月になると限らないからです。その年によっては、新月から満月に変わる周期が少しずれる場合があります。

秋の風物詩、十五夜を楽しもう

今回は、十五夜やお月見の風習や歴史を解説しました。中国から伝わった十五夜ですが、今や日本の伝統文化として大切に受け継がれています。

「昔の人も今と同じように月を眺めていたのかもしれない…」そんな日本の文化や歴史に思いを馳せながら、十五夜のお月見を楽しんでみてはいかがでしょうか。

Edit:Kaoru Maki
参考:やさしい漆四季の美水野染工場二木紘三のうた物語ほか