彼岸花ってどんな花?
彼岸花はなぜ不吉なイメージなの?
彼岸花の怖い別名とその理由
彼岸花には毒がある|致死量はどのくらい?
彼岸花の花言葉
美しくも毒がある花・彼岸花

私たちの認識の中でどうしても不吉な花、怖いというイメージを持ってしまう「彼岸花」。真っ赤で色鮮やかな花びらは妖しげな雰囲気を醸し出し、何となく不気味と思ってしまいます。

そんな日本人からは不人気な彼岸花ですが、海外ではとてもきれいな花だということで人気なのだそう。

ここで気になるのは、なぜこんなに日本人が思う彼岸花のイメージは悪いのか、という事。その理由は彼岸花の別名や花言葉、またその言葉に込められた悲しい事実が関係しているのです。

今回は彼岸花が怖がられてしまう謎について紹介します。

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彼岸花ってどんな花?

ヒガン花科ヒガンバナ属に分類されるヒガンバナ

ヒガン花科ヒガンバナ属に分類される彼岸花

まずはそもそも彼岸花とはどのような花なのか、紹介します。

彼岸花はヒガン花科ヒガンバナ属に分類される中国原産の多年草(多年生草本)で、路辺や畔、墓地、堤防など日当たりの良い場所に生えていることが多い植物。

夏の終わりから秋にかけて、1本の真っ直ぐな緑色の茎の先端に、直径約10cm前後の花を咲かせます。彼岸花の花びらは品種改良によっていろいろな種類がありますが、日本では赤色が一般的です。

毎年見頃の秋になると、田んぼやあぜ道の各地で長い茎と赤い花を咲かせるのが特徴。

もともと「彼岸」という言葉は、サンスクリット語である「波羅蜜多(はらみた)」の漢訳「到彼岸(とうひがん)」の略で、先祖の霊を敬い墓参りをする仏教行事の事なのです。

春分(秋分)の日の前3日と後3日の7日間を「彼岸」と言い、春と秋のどちらにもあります。「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があるように、9月の彼岸頃には残暑が和らぐそう。

彼岸花はなぜ不吉なイメージなの?

墓地に咲いている彼岸花

墓地に咲いている彼岸花

夏が終わりお彼岸の時期になると、墓地などで彼岸花が咲いているのを見かける人も多いはず。もともと不吉なイメージの彼岸花ですが、墓地に咲いているとより一層不気味ですよね。

ではなぜ墓地の周りに彼岸花が咲いていることが多いのでしょうか。それにはしっかりとした理由があります。

現代の日本では火葬がほとんどですが、昔は死体を土の中に直接埋める土葬が一般的でした。そのためモグラや他の動物たちから遺体を荒らされる事が多かったのだそう。

そこで植えられたのが彼岸花でした。彼岸花には毒があるためモグラなどの動物を寄せ付けません。こういった理由からお墓の周りには彼岸花を植えるようになったのですが、それが不吉だといわれるきっかけとなってしまったのです。

また彼岸花の花の咲き方は少し独特。本来植物は葉が出てきてそこから花を咲かせるものですが、彼岸花はその逆でまず花を咲かせてから葉が伸びてくるのです。

その花と葉を一緒に見られない彼岸花の性質から「葉見ず花見ず」と呼ばれ、昔の人はその様子を怖がり死人花(しびとばな)や地獄花(じごくばな)などと呼ぶこともありました。

彼岸花という名前は、秋の彼岸頃に突然花茎​を伸ばし、鮮やかな紅色の花が開花する事に由来しています。突然花茎を伸ばす、というのも少し不気味ですね。

彼岸花の怖い別名とその理由

怖い雰囲気の彼岸花

彼岸花の怖い別名とは?

彼岸花の別名と言われて一番最初に思い浮かぶのは「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」だと思います。しかし彼岸花にはなんと1,000を超える異名があるといわれているのだそう。

その中にはもちろん良い意味の言葉もありますが、怖くて少し不気味な言葉がほとんど。そこからも彼岸花が怖いというイメージがついたのではないかといわれています。

ここでは彼岸花の怖い別名を抜粋して、その名前になった理由も一緒に紹介します。

曼珠沙華

彼岸花の別名として一番有名な「曼珠沙華」。この言葉は仏教用語で「天上の花」という意味を持っています。曼珠沙華は一見怖いイメージが無いように見えますが、「天上=あの世」という解釈で不吉なイメージとされているのだそう。

親死ね子死ね

お次はなんとも恐ろしい言葉。上の「彼岸花はなぜ不吉なイメージなの?」で紹介した通り、彼岸花は花と葉が同時に出ないことからこの別名が付けられたと言われています。

また少し怖い話ですが、彼岸花にある毒で親子が互いに殺し合ったことからこの別名が付けられたという説も。深い闇を感じられるような話ですね。

この名前に似ている「捨て子花」という別名もあります。これは彼岸花の独特な咲き方に関係していて、葉と花を親子に見立てたもの。葉(親)に捨てられた花(子)=「捨て子花」という事で、この名前になったそうです。

南無阿弥陀仏(なんまいだっぽ)

この言葉はもともと浄土宗や浄土真宗などで、 阿弥陀仏(あみだぶつ)への帰依を表して唱えるもの。その名の通り彼岸花を食べるとあの世へ行ってしまうことから付けられた別名です。

他にも中毒死してしまうことを表す「喉焼花(のどやけばな)」という別名もあります。

忘花(わすればな)

一見「忘花」と言われても何を忘れてしまったか、どうして花を忘れてしまったのか、などよく分からない言葉ですよね。しかし彼岸花には他にも「道忘花(みちわすればな)」や「道迷草(みちまよいぐさ)」という別名があります。

これらから連想して、現実世界の道を忘れてしまい、あの世へ引っ張られてしまうという意味なのではないかと言われているのだとか。

その他にも「幽霊花」などまだまだ怖い別名がたくさんあります。これだけ不吉な名前を付けられていたら、彼岸花は怖いというイメージが付いてしまうのも、致し方なしです。

彼岸花には毒がある|致死量はどのくらい?

毒を持っている彼岸花

彼岸花は有毒植物!?

彼岸花は真っ赤で色鮮やかな花を咲かせ、花弁も大きく開き華やかでとても美しいもの。だからと言って何も知らず、もし道などで見つけた時に触ってしまったら大変です。

というのもなんと彼岸花には毒があり、その場所は花、葉、茎、根と全ての場所に持っています。彼岸花は全ての部分に毒性物質が含まれている全草有毒(ぜんそうゆうどく)という植物。

その毒性物質が特に多く含まれているのが「鱗茎(りんけい)」と呼ばれる球根なんです。鱗茎とは魚のウロコのような欠片がいくつも重なり合い、球のようになった根のこと。

彼岸花は花から先に咲かせ、その後葉や茎が枯れてしまっても鱗茎が土の中に残り、何年も花を咲かせ続けるのです。

彼岸花の毒の致死量は?

食べてしまうと身体に影響がある彼岸花

彼岸花の毒の致死量はどのぐらい?

これだけ毒があると言われている彼岸花ですが、実は触るだけでは問題無いのです。彼岸花は口に入れたり食べてしまう事で身体に影響を及ぼすといわれています。

もし、彼岸花を口にしてしまった場合はどうなってしまうのでしょうか?彼岸花には「リコリン」というアルカロイドの一種である毒が含まれています。

このリコリンを摂取してしまうと、嘔吐、下痢、呼吸困難を引き起こし最悪死に至ることも。彼岸花の鱗茎に含まれるリコリンの量は15mg程度といわれています。

しかし人がリコリンを摂取した場合の致死量は10gなので、およそ667個の彼岸花を食べなければ死ぬことはありません。

こんなに食べる事はまず無いですよね。ですので、もし子どもが食べてしまった場合なども慌てず、すぐに病院に連れて行ってください。

ちなみにモグラやネズミなどは彼岸花の球根1つで1,500匹が死んでしまうほど。動物の墓地荒らしを防ぐため、お墓周りに彼岸花を植えていたのは理にかなっていたのですね。

また触っただけでは身体に害を及ぼさない彼岸花ですが、もしかしたら触ってしまった手で食事をして体内に毒が侵入してしまうなどの危険性もあります。心配な方は、小さい子どもやペットと一緒の時は無闇に近づかないほうが無難です。

彼岸花の花言葉

赤い彼岸花の花言葉

赤い彼岸花の花言葉とは?

赤い彼岸花の花言葉とは?

赤い彼岸花の花言葉は「情熱」「独立」「再会」「諦め」「悲しい思い出」。最後の悲しい思い出は墓地に彼岸花を植えるようになったことから、この花言葉になったのではないかといわれています。

「情熱」は真っ赤で色鮮やかな彼岸花の見た目にぴったりですね。

白色の彼岸花の花言葉

白い彼岸花の花言葉とは?

白い彼岸花の花言葉とは?

彼岸花は実は赤色だけではなく、白や黄色の彼岸花もあります。彼岸花は「リコリス」と呼ばれる球根植物で、赤い彼岸花以外は比較的リコリスと呼ばれることが多いのだそう。

白い彼岸花の花言葉は「また会う日を楽しみに」「想うはあなた一人」。こちらは先程の赤い彼岸花に比べると少し明るくロマンチックな言葉に聞こえますが、故人への思いなのではないかという気もしてしまいます。

黄色の彼岸花の花言葉

黄色の彼岸花の花言葉とは?

黄色の彼岸花の花言葉とは?

黄色の彼岸花の花言葉は「追想」「深い思いやり」「陽気」「元気な心」。悲しみを乗り越えた後の前向きな様子をイメージできます。

「陽気」という花言葉が黄色い彼岸花にぴったりですね。

青い彼岸花【番外編】

青い彼岸花とは?

青い彼岸花とは?

大ヒット漫画「鬼滅の刃」で話題になった青い彼岸花。真っ青でどこかロマンチックでとても素敵ですよね。しかし青い彼岸花というのは実在しません。

鬼滅の刃内だけで存在する「青い彼岸花」、夢がありますね。

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公園・遊び場

美しくも毒がある花・彼岸花

なぜ彼岸花には不吉で怖いイメージがついてしまっているのかをご紹介してきました。昔の習慣から来たものや彼岸花にある毒、彼岸花の花言葉から来ているものなどさまざまな理由からついたイメージであることが分かりました。

見るだけでは美しくきれいな彼岸花は忌み嫌われがちですが、かつての人々は彼岸花の毒を有効活用していたこともまた事実。モグラやネズミから米を守るため、鱗茎をすりつぶして蔵の壁に塗ったりしていましたし、お墓を守るためにも利用してきました。危険なものをむやみに恐れるのではなく、知恵で味方につける精神は、現代に生きる私たちも見習いたいですね。

Text:編集部
写真(特記ないもの):PIXTA