神社やお寺の新たなフォトジェニックスポットとして注目されている「花手水(はなちょうず)」。参拝前に手や口を清める場所である手水舎(ちょうずしゃ)の手水鉢(ちょうずばち)を色鮮やかな花々で飾ること、または花を浮かべた手水鉢のことを「花手水」といいます。
人々の心を癒し、和ませてくれる「花手水」。今回は、花手水の魅力やおすすめの花手水がある神社、自宅で簡単に作れるミニ花手水の作り方を紹介します。
※この記事に掲載の情報は2021年11月時点のものです。諸事情により変更となる場合があるため、お出かけの際はご自身で最新の情報をご確認ください
「花手水」って何? 読み方や由来
読み方が難しい花手水(はなちょうず)
花手水は、「花手水=はなてみず」と書いて、「はなちょうず」と読みます。何を指すかと言えば、「花を浮かべた手水(ちょうず)」のこと。あるいは、「手水に花を浮かべること」。
「手水(ちょうず)」というのは、神社の参道脇にある、手や口を清めるための水(あるいはその水で手や口を清めること)です。龍の像や竹管から水がちょろちょろと出ていて、その水を柄杓(ひしゃく)ですくい、手を洗いますよね。
龍の銅像が特徴的な手水舎
「花手水」のもともとの意味は、「草花や葉についた朝露で手を清めること」でした。野外の神事などで水が使えないときに、野外にある水分で身体を清めたのです。
近年、京都の「柳谷観音楊谷寺(やなぎだにかんのんようこくじ)」が手水舎に紫陽花を浮かべたことをきっかけに、手水鉢に花を浮かべることを「花手水」と呼ぶようになりました。
花手水のある神社・お寺
柳谷観音楊谷寺(京都府)
紫陽花の隠れた名所として知られる楊谷寺の花手水
新型コロナウイルスが猛威をふるっていた頃、神社やお寺では、感染拡大防止の観点から、手水で心身を清めることを禁止とするところが多くありました。その代わりに手水鉢を美しい花々で飾ろうという動きが全国の寺社で広がります。
この動きの発端となったのが、京都府長岡京市にある柳谷観音楊谷寺(やなぎだにかんのんようこくじ)。平安時代から1200年にわたり、“眼病平癒の祈願所”として、眼病に苦しむ多くの人々に信仰されてきたお寺です。この柳谷観音楊谷寺では、コロナ禍より前から手水鉢に花を入れており、SNSでじわじわと人気になっていました。
もみじのグラデーションが美しい楊谷寺の花手水
「歴史と四季を感じられる聖地にしたい、不安な現代にご利益と共に五感を通じて心に平安を」という想いから定期的に手水鉢に色鮮やかな花々を入れるようになったそうです。楊谷寺の花手水は時期によって異なり、もみじや紫陽花、ひまわりのほか、ハロウィンやクリスマスなど季節のイベントをイメージした花手水も登場。
境内には「龍手水」「花手水」「恋手水」「花水盆」「苔手水」「琴手水」の6つの花手水があり、それぞれの手水舎で癒しの風景を楽しむことができます。
【柳谷観音楊谷寺 基本情報】
●住所:京都府長岡京市浄土谷堂ノ谷2
●参拝時間:9時〜16時
●拝観料:通常期500円、イベントウイーク開催時700円
●公式サイト:柳谷観音楊谷寺
●アクセス:
①京都縦貫自動車道 長岡京ICから車で約10分
②阪急西山天王山駅からタクシーで約10分、徒歩約60分
※毎月17日は、柳谷観音楊谷寺のシャトルバスが阪急西山天王山駅東口、JR長岡京駅西口の2ヵ所から発着しています。(片道300円)
帯廣神社(北海道)
帯廣神社の明るくポップな花手水
北海道帯広市に位置する「帯廣神社(おびひろじんじゃ)」。北海道有数のパワースポットとして有名な帯廣神社には3人の神が祀られており、五穀豊穣、商売繁盛、縁結びなどにご利益があるといわれています。
帯廣神社で花手水の取り組みが始まったのは2019年5月。天皇陛下の御即位をお祝いし、手水に色鮮やかな花を浮かべるようになったそうです。
花手水の開催時期はゴールデンウィーク、帯廣神社の夏詣期間、例祭中の年6回。ピンクや赤の花を使ったかわいらしいものから、寒色系の花々とビー玉を浮かべた涼やかなものまで、さまざまな雰囲気な花手水を楽しむことができます。
【帯廣神社 基本情報】
●住所:北海道帯広市東三条南2-1
●参拝時間:9時〜17時
●公式サイト:帯廣神社
●アクセス:帯広駅から車で約6分、徒歩約24分
行田八幡神社(埼玉県)
ライトアップが美しい行田八幡神社の花手水(写真提供 Twitter: @Yuji_48様)
埼玉県行田市に位置する「行田八幡神社」。「封じの宮」と称される行田八幡神社は子どもの夜泣きや癌の病、難病などに効果があるといわれる封じ祈願で有名です。
行田八幡神社で手水舎を美しい花々で飾るようになったのは2020年4月。コロナ禍で自粛生活が続く中、「参拝に訪れる方々に癒しを提供したい」という想いからスタートしたそうです。
行田八幡神社の花手水が最も盛り上がりを見せるのは、毎月1度だけ行われるライトアップイベント「希望の光」。行田八幡神社をはじめ、忍城址、前玉神社の3つのメイン会場では美しい花手水のライトアップを見ながら幻想的な雰囲気を味わうことができます。
【行田八幡神社 基本情報】
●住所:埼玉県行田市行田16-23
●参拝時間:10時〜12時、13時〜16時
●公式サイト:行田八幡神社
●アクセス:
①秩父鉄道行田市駅から徒歩約8分
②JR行田駅から市内循環バスで約14分→商工センター前停留所から徒歩約6分
最明寺(埼玉県)
最明寺のピンクリボン花手水(写真提供 Twitter: @GTHabMEm1576PaW様)
埼玉県川越市にある「最明寺」。1262年に鎌倉幕府の執政を担っていた北条時頼が建てた最明寺は、古くから歴史的価値のある寺として知られ、多くの人々の信仰の対象となっています。
最明寺の1番の魅力は一風変わった花手水。炭治郎や禰豆子をイメージした「鬼滅の刃花手水」や乳がん撲滅プロジェクト「最明寺ピンクリボンFestival」のピンクリボン花手水など、他の神社では見ることができない珍しい花手水は参拝者を楽しませてくれること間違いなしです。
【最明寺 基本情報】
●住所:埼玉県川越市小ヶ谷61
●公式サイト:瑶光山 最明寺
●アクセス:西川越駅から徒歩約15分
築地本願寺(東京都)
紫や青、白などの花々が敷き詰められた涼しげな花手水(写真提供 Instagram: sakixx1027様)
東京都中央区築地にある浄土真宗本願寺派の寺院「築地本願寺」。一目見たら忘れられない異国感あふれる本堂は、古代インド仏教様式を用いられて設計されたものです。
独特な雰囲気が魅力的な本堂と手水に浮かぶ涼しげな色合いの花々が織りなす光景はまるで海外のよう。青や紫、白などの爽やかな花々が敷き詰められた花手水は夏の暑さを忘れさせてくれます。
【築地本願寺 基本情報】
●住所:東京都中央区築地3-15-1
●参拝時間:6時〜16時
●公式サイト:築地本願寺
●アクセス:地下鉄日比谷線築地駅から徒歩約3分
鶴岡八幡宮(神奈川県)
鶴岡八幡宮の紫陽花の花手水
鎌倉を代表する歴史スポットの一つである「鶴岡八幡宮」。源頼朝ゆかりの地である鶴岡八幡宮は、厄除けや健康、縁結びなどにご利益があるパワースポットとして知られています。
鶴岡八幡宮の代表的な花手水は、色とりどりの紫陽花が敷き詰められた王道の花手水。鶴岡八幡宮では2020年から不定期で花手水が登場しており、訪れる人の心を癒しています。
梅雨の時期には紫陽花、7月には蓮の花、11月には菊やもみじなど、四季折々の花を楽しめるのが魅力です。
【鶴岡八幡宮 基本情報】
●住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-31
●参拝時間:10月〜3月は6時〜21時、4月〜9月は5時〜21時
●公式サイト:鶴岡八幡宮
●アクセス:
①JR鎌倉駅東口、江ノ電鎌倉駅から徒歩約10分
②横浜横須賀道路 朝比奈ICから約5km
水堂須佐男神社(兵庫県)
かわいらしい色合いの水堂須佐男神社の花手水(写真提供 Instagram: xb.2412様)
兵庫県尼崎市に鎮座する「水堂須佐男神社(みずどうすさのおじんじゃ)」。須佐之男命(すさのおのみこと)を祀るこの神社は、厄除けや夫婦円満、縁結びにご利益があることで知られています。
境内の見どころは拝殿の天井に描かれた「万葉の花」の天井画。日本画家の鈴木靖将氏が「阪神大震災の犠牲者の霊に捧げる」という思いを込めて描いたもので、震災復興の美しく貴重なシンボルとして大切にされています。
水堂須佐男神社の手水舎は色鮮やかな季節の花で彩られており、写真映えすること間違いなし。境内に咲く花を浮かべた可憐な花手水は参拝者の心を和ませてくれます。
【水堂須佐男神社 基本情報】
●住所:兵庫県尼崎市水堂町1-25-7
●参拝時間:9時〜16時
●公式サイト:水堂須佐男神社
●アクセス:JR立花駅から徒歩約8分
北野天満宮(京都府)
美しく華やかな花々で埋め尽くされた北野天満宮の花手水
京都府京都市洛中エリアに位置する「北野天満宮」。学問の神様である菅原道真が祀られており、多くの受験生が訪れる学業成就のパワースポットとして知られています。
「テーマ性のある花手水」として人気を集めている北野天満宮の花手水。オリンピックの五輪や聖火を表現した力強いイメージの花手水や、「憧れ」や「尊敬」という花言葉を持つひまわりを浮かべた父の日にぴったりの花手水など、バラエティに富んだ花手水を目にすることができます。
【北野天満宮 基本情報】
●住所:京都市上京区馬喰町北野天満宮社務所
●参拝時間:9時〜16時30分
●公式サイト:北野天満宮
●アクセス:
①名神高速道路南インターまたは東インターから約30分
②JR京都駅から市バス50・101系統 北野天満宮前停留所下車すぐ
春日神社(福岡県)
紫陽花とダリアの花で埋め尽くされた春日神社の花手水
福岡県春日市にある「春日神社」。中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)が天児屋根命(あめのこやねのみこと)を祀ったことが起源といわれる歴史ある神社です。
境内にある神門と手水舎は季節によってアレンジされ、手水鉢の中をガーベラや紫陽花が浮かぶ様子が写真映えすると話題に。定番の紫陽花の花手水だけでなく、8月頃には珍しいガーベラの花手水を目にすることができます。
また夏場は手水舎につけられた風鈴と花手水のフォトジェニックなコラボレーションを楽しむことができます。
【春日神社 基本情報】
●住所:福岡県春日市春日1-110
●公式サイト:福岡 春日神社
●アクセス:
①西鉄春日原駅から徒歩約30分
②西鉄春日原駅から西鉄バスで約10分 春日停留所下車すぐ
③JR春日駅から西鉄バスで約7分 春日停留所下車すぐ
手水の作法
手水の基本的な作法とポイントを紹介します。
神社の入り口近くにある手洗い場
1.心を落ち着かせる
手水の主な目的は心身を清めること。そのためには参拝前に心の平静を保つことが大切です。手水舎の前で心を落ち着かせ、邪念を払ったら軽く一礼します。
2.柄杓を右手に持ち、水をくんで左手を清める。
手水の作法では柄杓(ひしゃく)を持つ手が決められています。まずは右手で持ち、水をくんでそのまま左手を清めます。このとき、柄杓にはたっぷりと水を入れ、全体の3割くらいの量を目安に使うのがポイント。
心身を清めるために行う手水
3.柄杓を左手に持ち替え、右手を清める。
次に、柄杓を左手に持ち替え、先ほどと同様、3割くらいの水を使って右手を清めます。
4.柄杓を右手に持ち替え、左手に水を受けて口を清める。
両手を清めたら柄杓を右手に持ち替え、左手に水を受け、口をすすぎます。衛生面が気になる場合は口をすすぐ真似をするだけでもOK。このとき、柄杓の水を少し残しておくのがポイントです。
手水に用いる柄杓
5.もう一度左手を清める。
口をつけた左手に水を受けて清めます。
6.柄杓の持ち手の部分を清める。
両手と口を清めたら、最後に使用した柄杓の柄を清めます。両手で立てるように持ち、柄杓の中に残っている水を持ち手部分に流します。なるべくゆっくり立てて、水しぶきを立てないようにするのがコツ。清め終わったら柄杓を元の場所に戻します。
自宅で作れる「ミニ花手水」の作り方
自宅で簡単に作れるミニ花手水
華やかな美しさの中に日本文化特有の風情を感じる「花手水」。神社を訪れなくても自宅で簡単に手作りすることができます。
作り方に特にルールはないので、好きなようにアレンジできるのもミニ花手水の魅力の一つ。自分好みの花手水を作れば自宅が癒し空間になること間違いなしです。
用意するもの
・好きな切り花
・茎を切るハサミ
・器
・水
おすすめの花
椿や牡丹、ダリア、紫陽花、ひまわり、ガーベラなど、花びらが大きくひらいていて、色が鮮やかなもの、上から見たときに形が丸く見えるものがおすすめです。
ミニ花手水の作り方
①花手水をつくる器を用意する。
②器に水を入れる。
③茎を少しだけ残して花の頭部分のみを使う。
④全体のバランスを見ながら花を浮かべる。
おわりに
花手水の魅力やおすすめの花手水がある神社、自宅で簡単に作れるミニ花手水の作り方を紹介しました。
見た目の華やかさに一目で心を奪われる花手水。花手水を目当てに神社を訪れ、日本ならではの和のアートを楽しんでみてはいかがでしょうか。