寒さが増す頃、秋の味覚が次第に目に映るようになります。「秋の味覚」と聞けば柿や梨などの果物、きのこ尽くしの炊き込みご飯などを連想することでしょう。
秋に旬を迎える食材の数々はどれも魅惑的で、ついつい手を伸ばしてしまいますよね。
その理由は夏バテからの回復や、冬に備えて体力を溜めようとする本能など複数ありますが、ともあれ店頭に並ぶきのこや果物などの秋の味覚は私たちの食欲を掻き立てます。
この記事では秋の味覚にはどんな食材があるのか、どんな特徴や栄養素があるのか、料理例も一緒にご紹介。旬を迎えた秋の味覚を、今こそ味わい尽くしましょう!
秋の味覚一覧-秋が旬の食材早わかりリスト
秋は山の幸、海の幸ともに収穫量が増える季節。果物や野菜、魚など、秋の味覚は種類が豊富で、栄養価の高いものが多くあります。食卓によく並ぶ食材の中で、〝秋の味覚〟といえる食材たちをまとめてみました。
主な秋の味覚一覧
●野菜
□かぶ □かぼちゃ □小松菜 □ごぼう
□さつまいも □さといも □じゃがいも
□しょうが □にんじん
□山いも(自然薯、長いも、つくねいも、いちょういもなどの総称)
□きのこ(特にしいたけ、しめじ、まつたけ、マッシュルーム)
●果物・穀物
□柿 □梨 □ぶどう □りんご
□銀杏 □栗 □くるみ □落花生
□米
●魚介
□いわし □かつお □鮭 □さば
□さんま □ししゃも □あさり
参考文献:『日本のおいしい食材事典』(江上佳奈美 監修/ナツメ社)
ちなみに果物と野菜の違いは植物学的には曖昧な部分があるそうですが、日本の農林水産省では「2年以上栽培する植物で、かつ、実を食べるかどうか」で区別しています。(参考:果樹とは)
次からは、この中でも特に人気の食材について、健康効果や意外な豆知識、定番の料理や食べ方をご紹介していきます!
1.スイーツでお馴染み秋が旬の【果物】4選
ぶどう-おいしくて健康にもいい
みずみずしいぶどうは、そのままスイーツのトッピングに(写真:kikisorasido/PIXTA)
秋の味覚の代表のひとつであるぶどう。実はぶどうには健康を支える栄養素が豊富に含まれていることはご存知でしょうか。
緑や赤など色とりどりの実はまるで宝石のよう。実りの時期には各地で開催されるぶどう狩りへ多くの観光客が押し寄せます。ケーキやタルト、パフェやゼリーでもお馴染みのぶどうは子どもたちにも大人気!
ぶどうの良さは美しさだけではありません。旬の時期にこそ食べたいぶどうの魅力をご紹介します。
ぶどうには視力の改善や生活習慣病の予防効果などがあり、健康を保つのに適しています。またぶどうに含まれるぶどう糖と果糖は果物の中でもトップクラスを誇り、疲労回復を促す効果も有しています。
ただし、糖質の摂取過剰は血糖値を上昇させる直接的な要因となるため、特に大粒のぶどうの食べ過ぎには注意しましょう!
種類の多さもぶどうの魅力
日本国内では山梨県や長野県、山形県で多くぶどうが生産されています(写真:秀星~shusei~/PIXTA)
世界に一万種以上あるといわれるぶどうの中で、日本で最も栽培されている品種は巨峰。それ以外にもマスカットやデラウェアなども人気で、その味わい方は様々です。
ぶどうはワインやジュース、ドライフルーツとしても楽しむことができ、まさに秋の味覚を代表する果物であると言えるのではないでしょうか。
栗-果物とナッツの栄養を一度に摂れる!
栗の定番料理といえば、炊き込みごはんや甘露煮、ゆで栗、焼き栗(SORA/PIXTA)
9月初旬頃から収穫の時期を迎える栗。日本人が栗を食していた時期をさかのぼると、縄文時代にまでたどり着くと言われています。
はるか昔から、日本人と切っても切れない縁をもつ栗。現代でも愛されるその魅力をご紹介します。
栗にはビタミンCや食物繊維などの果物によく含まれる栄養と、ビタミンE、鉄、マンガンなどナッツ類に豊富に含まれる栄養を持ち合わせているという特徴があります。
この特徴は珍しく、ニホングリ7個ほどでビタミンや食物繊維の1日の必要量を摂取できるとも言われています。日本人の食生活の一部として適しているからこそ、古来から食の中心として愛されてきたのです。
秋の味覚・栗を味わうなら栗拾いがおすすめ
皮につやがあり、全体に厚みがあるのがいい栗です(写真:mao/PIXTA)
秋の味覚である栗を味わうなら栗拾いがおすすめです。栗拾いは秋の行楽シーズンに人気のイベント。地域によって差はあるものの、早いところでは8月下旬から9月初旬には収穫が始まり、10月に最盛期を迎えます。
栗は収穫時期ごとに「早生(わせ)」「中手(なかて)」「晩生(おくて)」に別れており、栗の種類によって8月下旬から1カ月ほどの間を隔てています。
栗農園によって時期は異なるので、栗拾いに行く場合には収穫時期を確認してみてくださいね。
拾った和栗をそのまま茹でて食べるもよし。マロンのスイーツとして味わうもよし。日本だけでなく世界中で愛されるからこそ様々なレシピに組み込まれている栗を、ぜひこの旬の機会に食べてみてはいかがでしょうか。
柿-根や葉まで食べれば医者いらず!?
柿はそのままはもちろん、マリネやなますにしても。生ハムやクリームチーズとの相性も良好(写真:shige hattori/PIXTA)
「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」。生涯に20万句を読んだと言われる明治の俳人、正岡子規が読んだ俳句の中で最も有名なのはこの俳句でしょう。
赤く熟した柿と法隆寺の鐘の音には、正岡子規にとって、秋の訪れを実感させる風情があったのでしょう。秋晴れの空に映える秋の味覚、柿の知られざる魅力をご紹介します。
「柿が赤くなると、医者が青くなる」といった言葉があるように、柿は不足しがちな栄養源として食されていたことはご存知でしょうか。柿の木の根は薬として、レモンの数十倍のビタミンCを含むと言われる柿の葉は握り飯の包みとしてそのまま食べられることもあるんだとか。
干柿はなぜ渋みがなくなる?
干柿の名産地といえば長野県。もっちり食感の「市田柿」が有名です(写真:manbo-photo/PIXTA)
さらには渋味成分であるタンニンが血液注の余分なコレステロールを減らす働きを有するなど、柿には健康に良いとされる効果が多く含まれています。
渋柿を利用して作るのが干し柿。天日乾燥させることによって渋味であるタンニンが固まり、渋みを感じなくさせるため干し柿はとても甘く感じるようになります。
そのままで食べても干しても美味しい柿は、スイーツにピッタリな秋の果物です。
梨-「赤」と「青」の違いって?
和梨の代表品種のひとつ「幸水」は赤梨系と青梨系の交配でうまれました(写真:umekaisen/PIXTA)
ここまで紹介してきた果物はどれも魅力的ですが、秋の味覚の果物を使ったスイーツとしてのバリエーションの豊富さで言えば、梨に軍配が上がるのではないでしょうか。
梨は大きく分けて和梨、中国梨、洋梨の三種類に分類できます。その中でも和梨は一般的に甘味の強い赤梨と、みずみずしい青梨の二つに分かれており、赤梨は豊水や幸水、青梨は二十世紀などを代表品種としています。
和梨ならソルベ、洋梨なら焼き菓子などに
梨のタルトやケーキは冷凍パイシートやホットケーキミックスを使えば手軽に作れますよ(写真:mei/PIXTA)
梨の人気スイーツにはどのようなものが挙げられるのでしょうか。しゃりしゃりとした食感の和梨を使ったスイーツでは、ソルベが特に人気なようです。水分が多い梨は凍らせやすく、ハチミツとともにミキサーにかけるだけで完成。そのまま食べるには甘みが足りないような梨は、ハチミツをプラスしたソルベにしてみてはいかがでしょうか。
洋梨スイーツの中ではやはりタルトが大人気。サクサクとした生地とアーモンドなどの香ばしい風味に、とろりと甘い洋梨がマッチ。洋梨ならではのとろけるような口当たりは、和梨のタルトとはまた違った魅力があります。
他にもパンナコッタやスムージー、パウンドケーキなどに使われることの多い梨。旬の美味しい梨が手に入ってレシピに悩むのも、食欲の秋の醍醐味ですね。
2.食卓に並べば主役級【秋が旬の野菜・魚】4選
かぼちゃ-収穫後に甘みがアップ
スーパーでよく見かける緑の「栗かぼちゃ」のほか写真の「バターナッツ」など、かぼちゃの種類はいろいろ(写真:daysgoby_JPN/PIXTA)
秋の野菜の主役を挙げるのならまずはかぼしゃ! かぼちゃが秋のメインイベントであるハロウィンの代名詞であることは言うまでも無いでしょう。
かぼちゃは糖質やカリウム、食物繊維やビタミンCなどを豊富に含んでいます。収穫時期は8〜9月と、秋の味覚としては早いのですが、しばらく保管するとでんぷんが糖へ変わり、より美味しくなることから秋が旬であるとされています。
カボチャはイベントに欠かせない野菜
素朴な甘みがあるパンプキンパイ。野菜だけどスイーツと相性抜群なのがかぼちゃ(写真:svetlana_cherruty/PIXTA)
かぼちゃはスープやグラタン、プリンにも使われるほどレシピのバリエーションに富んだ野菜ですが、イベントや伝統とも深く結びつきのある野菜です。
たとえばハロウィンの「ジャックオーランタン」。かぼちゃのランタンには魔除けの意味があり、イベントのシンボルとして有名ですよね。また、アメリカでは11月の感謝祭に欠かせないパンプキンパイとして伝統行事に深く結びついています。
ドイツで開催されたヨーロッパ最大のかぼちゃを決める大会では、2016年にアトランティックジャイアントと呼ばれる品種のかぼちゃが1190.5kgを記録し、世界最大となりました。こういった親しまれ方もかぼちゃの魅力ですね。
きのこ-低カロリー・高栄養価 ダイエットの強い味方
きのこのホイル焼き。バターをのせ醤油をたらすだけで絶品(写真:midori_chan/PIXTA)
秋になれば確実といっていいほど食卓に並ぶ秋の味覚・きのこ。食用のものだけでも日本には100種類以上のきのこがあり、旬の秋には目にしない日がないほどです。秋の食卓で大活躍のきのこの魅力をご紹介します。
きのこはまず何と言ってもヘルシー! 100gあたり20kcalでありながら、ビタミンB、ビタミンD、食物繊維などが含まれており、疲労回復や便秘予防効果もあります。
たとえばまいたけ。まいたけは天ぷらや炒め物として食されることの多いきのこですが、他のきのこと比べてビタミンB1やビタミンB2が豊富に含まれることが特徴です。
ひと手間で栄養価がアップ
炊き込みごはんにお味噌汁、天ぷら、ソテーなどなど、何かと出番の多いきのこ(写真:shige hattori/PIXTA)
旨味と栄養が凝縮された干ししいたけや冷凍えのきは、和洋折衷のレシピにも使われ老若男女にも親しまれています。他にもしめじやエリンギ、なめこや松茸など、きのこは食卓に欠かせません!
出番の多いきのこは、まとめて買って冷凍保存しておくと便利ですよ。買ってきたきのこの石づきを落とし、汚れを拭き取ったら生のまま冷凍してOK。きのこは冷凍保存することでアミノ酸がアップします。
また、きのこは天日干しするとビタミンDなどが増加します。買ってきたきのこをザルなどに広げ、日当たりのいい部屋で日光に当てるだけで変わります。
旬の秋にこそ、いつもと違うきのこレシピに挑戦するのもありかもしれませんね!
さつまいも-食糧難の時代を支えた名脇役
さつまいの定番料理は大学芋や薩摩汁、さつまいもごはん、甘露煮など(写真:ヨシヒロ/PIXTA)
「いしや〜きいも〜」。最近は残念ながらあまり聞くことができなくなってしまったこの呼び声は、少し前までは秋の訪れのサインでしたよね。
さつまいもの旬は9〜11月。秋の味覚として人気のさつまいもは、江戸時代から民衆に愛された食材でした。近年では戦中戦後の食糧難を解決するために、多くの国民が栄養価の高いさつまいもを毎食のように食べていた時代もありました。
また、戦中戦後の時代はさつまいもの〝つる(茎)〟もメジャーな食材でした。今でも直売所や通販サイトなどで手に入ります。自分でさつまいもを育てているなら捨てずに食材として使えますよ。油と醤油、砂糖で甘辛く炒めると、ご飯とよく合う立派なおかずになります。
焼き芋は皮ごと食べてみて
焚き火で焼き芋を作るときは、濡らした新聞紙やキッチンペーパーにくるみ、アルミホイルを2重に巻くのがコツ!(写真:tokomaru7/PIXTA)
さつまいもの主成分はでんぷんと糖分。焼いたり蒸したりすると多量の麦芽糖ができ、甘みが増えることから、焼き芋は甘みを強く感じるのだとか。皮にも食物繊維やビタミンCが含まれているので、あまり気にせず食べてしまっても問題ありません。
大学芋やスイートポテトなど、スイーツとしての選択肢が多いことも魅力のひとつです。簡単に作れるものも多く、その調理の容易さが親しまれる理由なのではないでしょうか。
秋刀魚(さんま)-新鮮な秋刀魚の見分け方は?
口先の黄色も秋刀魚の鮮度の指標です。黄色が濃い秋刀魚が新鮮(写真:SORA/PIXTA)
日本の食卓に欠かせない秋の味覚は野菜だけではありません。
秋の味覚といえばやはり秋刀魚! 名の通り秋にとれる刀のような魚で、脂の乗った秋刀魚は炭火で焼いて塩をふるだけで絶品です。かぼすやスダチなどを絞り、大根おろしを添えて食べる秋刀魚は定番ながらご飯を(お酒を)何杯でも食べられる(飲める)ほどの美味しさ。
新鮮な秋刀魚の見極め方は、背と腹の色がはっきりとしていること、目が濁っていないこと、尾を持っても真っ直ぐに立つものが良いとされています。
秋刀魚がたくさん食べられるようになったのは最近
新鮮な秋刀魚の塩焼きは内蔵も一緒に食べると格別(写真:shige hattori/PIXTA)
秋刀魚に含まれる栄養分には、脳梗塞や心筋梗塞を予防するエイコサペンタエン酸や、悪玉コレステロールを減らすドキサヘキサエン酸も含まれています。
見て良し、味良し、体に良し、といいところだらけの秋刀魚ですが、実は意外にもさんま漁業が本格化したのは第二次世界大戦後。「目黒の秋刀魚」など有名な落語があったりと日本の文化と馴染み深い秋の味覚ですが、戦後爆発的に漁獲量が増えたことも考えると、まだまだ知られざる魅力があるのかもしれません。
今こそ秋の味覚を味わい尽くしましょう!
秋は冬に向けて自然界が次第と栄養を蓄えるようになる時期。食材が美味しくなるだけでなく、私たちの食欲が増すことも自然の摂理なのかもしれません。
今回ご紹介した8つの秋の味覚以外にも、秋が旬の食材はまだまだたくさんあります。栄養価が高く、日本の文化と深い関わりを持つ食材も多い秋の味覚には、マイナーな調理方法、意外性のある組み合わせなど、まだ誰も見つけていない魅力があるかもしれません。
自分にとって最高の食材を探し楽しむこと、それもまた秋の味覚が持つ魅力のひとつですね。
参考文献:『日本のおいしい食材事典』(江上佳奈美 監修/ナツメ社)