- 【PROFILE】この人たちに話を聞きました
- 舞台は伊豆大島・波浮港
- 【INTERVIEW】「ちょい呑みガレージ」高橋萌乃さん・巧さん
- 海が恋しくなり地元にUターン
- なぜか家に人が集まる。「いっそ」の気持ちで開業
- 地元の食材中心のメニュー
- 島の中の違い、昔と今のこと
- 【INTERVIEW】「露伴」山口健介さん・薫さん
- 2020年にオープン 本がテーマの宿「露伴」
- 子育てするならゆったりした環境で。内地から伊豆大島に移住
- 地元のために何もしていないことへの疑問。そして宿開業
- 喫茶店と一棟貸し宿の開業に向けて準備中
- 【INTERVIEW】空き家だった古民家をリノベーション中 佐々木やすともさん
- 島に来てみたら食べる場所が少ない。だから自分たちで作っちゃおう
- 二拠点生活の大島サイドはほぼ解体作業。でもリフレッシュになる
- 都内にはない雰囲気、ロケーションが醍醐味
- Information
『もう嫌になってしまって。海で遊びたくなって帰ってきました』『ゆったりした環境で育児をしたい』『もともと離島が好きだった。友人が大島にUターンして、つられてやってきました』
そう話すのは、伊豆大島の波浮港(はぶみなと)で暮らす3組。伊豆大島にやってきた理由は三者三様ですが、共通するのは、「島の外で暮らした経験がある」こと、「地域の課題解決に向け動いている」こと。
3組それぞれに移住や二拠点生活のきっかけ、島での暮らしや開業のこと、今後の計画について伺いました。
Photo&Text:Erika Nagumo
Special Thanks:Koji Yoshimoto(青とサイダー ao to cider)/東海汽船
【PROFILE】この人たちに話を聞きました
左から萌乃さん・巧さん・健介さん・薫さん・佐々木さん
高橋萌乃さん・巧さん
萌乃さんは自宅のガレージを改装した居酒屋「ちょい呑みガレージ」を営んでいます。巧さんは公務員として勤務する傍ら、手伝いでお店に立つことも。二人とも伊豆大島出身で、高校卒業後に内地へ。内地では巧さんは左官職人として働き、萌乃さんは働きなら夜間専門学校に通いました。2008年に伊豆大島へUターン、2022年9月に「ちょい呑みガレージ」をオープン。
山口健介さん・山口薫さん
本をテーマにしたゲストハウス「露伴(ろはん)」を営む夫婦。健介さんは伊豆大島・波浮港出身。高校卒業後に島を離れ、内地へ。薫さんは千葉県出身で、内地にいた頃は百貨店に勤務。2009年に夫婦で伊豆大島に移住。子育てが落ち着いてきたタイミングで空き家をセルフリノベーションし、2020年に「露伴」をオープン。
佐々木やすともさん
大阪府出身。アパレルデザイナー。2021年に伊豆大島の古民家を購入して以来、平日は都内、週末は伊豆大島の二拠点生活を送っています。2023年2月末の宿&飲食・レンタサイクル・ボルダリングスペース開業を目指し、週末を中心に古民家をリノベーション中。
舞台は伊豆大島・波浮港
東京都心からジェット船で1時間45分ほどで行ける離島・伊豆大島。話を伺った3組が暮らしている(拠点としている)のは、伊豆大島の南の端にある「波浮港(はぶみなと)」というエリア。
かつて漁業で栄えた港町で、昭和初期頃の趣が残る、ノスタルジックな町です。
港のすぐそばの通りと、港から高台にあがった場所が住宅地となっており、560人ほどの人が暮らしています(2022年11月時点)。
【INTERVIEW】「ちょい呑みガレージ」高橋萌乃さん・巧さん
高橋萌乃さん・巧さん
海が恋しくなり地元にUターン
都会が合わず地元・伊豆大島にUターンした巧さん・萌乃さん夫婦。子育てに奮闘する日々の中、Uターンして14年目の2022年、周囲とのつながりをきっかけに自宅ガレージを改装した居酒屋をオープンしました。
2008年に伊豆大島に戻ってきた二人ですが、その背景には都会暮らしへの疲弊と、自然豊かな場所で暮らしたい、という思いがありました。
巧さん:
「高校を卒業した後に島を出て、内地では左官業をしていました。2年半くらい働いていましたが、なんというか、都会の喧騒に疲れてしまって。
現場仕事だったので関東一円、あちこちに移動して仕事をしていたんですが、その移動が切なくなってしまって。電車で行くこともバイクで行くこともあったけれど、片道2時間の移動とかはザラ。渋滞にはまってしまえばもっとかかる。
島出身だと、移動でそんなに時間かかることってないから、なんだかどうしようもなく切なくなってしまったんですよね。もう嫌になってしまって。海で遊びたくなって。『合わないな』と思って帰ってきました。
彼女(萌乃さん)はそのとき専門学生だったんですが、そうこうしているうちに妊娠がわかって。」
萌乃さん:
「当時私は夜間学校に通いながら、就職のための試験準備をしていました。そのタイミングで妊娠がわかったので、書類を全部破棄して。それで籍を入れて私も里帰り出産のために大島へ帰ってくることにしました」
巧さんの趣味はサーフィン。店内にはサーフボードがディスプレイされています
なぜか家に人が集まる。「いっそ」の気持ちで開業
2008年に伊豆大島に帰ってきた二人。無事に長女が誕生し、その後も3人の子宝に恵まれました。2022年に居酒屋をオープンしたのは、自宅周辺にゲストハウスが増えたことがきっかけだったといいます。
巧さん:
「このあたりは、もともと民宿がたくさんあったのですが時代の流れで廃業してしまって。宿は新しくできた貸切宿が1軒あるだけでしたが、2019年頃からゲストハウスや貸切宿が増えてきたんです。
それで宿業はだんだん栄えてきたんですけれど、飲食するところが少ないんですよ。昼はたい焼きカフェの『島京梵天』さんとか、コロッケがおいしい『鵜飼商店』さんとか、『Hav Cafe』さんとかがあるけれど、夜食べられる場所がなくって。」
萌乃さん:
「だからなぜかうちによく人が集まっていたんです。ゲストハウス『青とサイダー』のオーナーは友達だから、彼がゲストとか周りの人とか、いろんな人を連れて来るんです。家にいると急に『ピンポーン』って鳴ったり、『今から飲み行っていい?』って連絡きたり。全然お店とかじゃないですし、お金も取らないんですけど、なぜかうちでもてなすっていう。
それで一度うちに来た人はもう知り合いだから、また会っても『うちでごはんどう?』って逆にこっちから誘ったり。そんなことがずっと続いていました。『もう店やればいいじゃん』って冗談半分で言われて、それでお店にしました。
基本、予約はとらないようにしていたんですが、近隣の宿の人から『お客さんを連れて行きたい』って言われれば席をとっておくようにしたりしているうちに、予約でいっぱいになる日も最近は出てきました。」
「ちょい呑みガレージ」にはほっとするようなメニューが揃います。酒のアテにも食事にもGOOD
地元の食材中心のメニュー
「保育園に通う前の小さい子がいるから、家のすぐ隣でできるのもちょうどよかった」と笑う萌乃さん。お店になっている部分はもともとガレージで、大工さんである巧さんのお父さんが改装したそう。
萌乃さん:
「お義父さんは大工さんだからなんでも作ってくれて。なんなら私たちの家を作ってくれたのもお義父さんです。ガレージはお店にする前、洗濯物を干すのに使っていました。まずは洗濯物を干すサンルームを家のほうに作って、それからガレージの改修をはじめました。お店の棚とか、キッチンカウンターもお義父さんの手作りなんですよ。最初は『ほんとにやるの?』って言われたけど(笑)」
巧さんのお父さん手作りのカウンター
萌乃さん:
「営業スタイルは家で宴会やっていたのをそのまま持ってきたって感じですね。私が勝手に出すんじゃなくてメニューから選んでもらうのは違う点だけれど。
メニューはストックがある食材で組んだり、その日自分たちが食べたいものをメニューにしたりって感じで毎回変わります。固定はハムエッグと赤ウインナーくらいですね。今日のピーマンの肉詰めは、うちの畑で採れたピーマンを使っていますし、明日葉ごはんも、午前中に摘んできた明日葉を炊き込みご飯にしています。
食材やお酒の仕入れは地元で、というのは大切にしていますね。肉にしても野菜にしても酒にしても、ネットで買ったほうが絶対に安いんですけれど、ここで商売する以上、地域で経済を回していかないといけないですから。
お酒や氷は近所の『高林商店』、食材も近所の『マルエー商店』とかから購入します。たまに元町のほうまで行ったときは『紅屋』さんとかで買ったりするけど、基本的には波浮港ベースで仕入れてますね。あとは自宅の畑で採れたものとか、散歩ついでに摘んできたものとかを使っています。」
明日葉ごはん。その日に近所で詰んだ明日葉を使用
島の中の違い、昔と今のこと
二人揃って伊豆大島出身の萌乃さん・巧さん夫婦ですが、実は島の中にもいろいろと違いがあるそう。伊豆大島の中の違いや、子どもの頃のこと、今の波浮港について伺いました。
萌乃さん:
「伊豆大島の中心部は『元町(もとまち)』というエリアなんですが、私はそこ出身なんです。元町はけっこう範囲が広いから、知り合いが多いとはいえ知らない人もいたりして。でも波浮港はみんながみんな知り合いって感じですね。
元町だと『○○のところの子だよ~』って紹介されても誰のことか分からなかったりするけど、波浮港だとすぐに『あそこの子ね!』って分かったり。」
巧さん:
「僕は波浮港出身です。元町は島の中では都会っていう印象ですね。銀行や郵便局、大きなスーパーもあるので。
波浮港は今でこそ静かな印象ですが、昔はそれなりに子どもいました。波浮港だけで子ども十何人って集まれましたし。」
波浮港の風景。「ちょい呑みガレージ」は港から高台に登った場所にあります
巧さん:
「でもUターンで戻ってきたときの波浮港は、本当に若い人がいなくて。うちともう1軒くらいしか子どものいる家庭はなかったんじゃないかな。でも徐々にUターンで人が戻ってきたりして、子どもが増えてきたし、ここ数年では宿とか人が集まる場所も増えているから、観光のお客さんも来てくれるようになりました。
観光客からしたらなにもない場所かもしれないけれど、『それでいい』って言ってくれる人たちが遊びに来てくれます。近所の宿に泊まっていたお客さんも『別にいいんですよ、なにもなくて。ぶらぶらそのあたり歩いて宿帰ってきて、酒飲んで寝る』って言っていましたね。
ノスタルジックな雰囲気とか、田舎感みたいなものがこの場所のいいところなのかな、って思っています。」
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【INTERVIEW】「露伴」山口健介さん・薫さん
ゲストハウス「露伴」を営む山口健介さん・薫さん
2020年にオープン 本がテーマの宿「露伴」
明治~昭和初期頃まで漁業で栄え、港が船で埋め尽くされるほど賑わった伊豆大島・波浮港(はぶみなと)。旅館では毎夜のように宴が開かれ、踊り子たちが踊りを披露しました。与謝野晶子(よさの あきこ)や与謝野鉄幹(よさの てっかん)、林芙美子(はやし ふみこ)といった歌人や小説家も多く訪れ、現在も波浮港のいたるところに記念碑が残っています。
健介さん・薫さんが営む宿「露伴」は、そうした波浮港の文学的な背景があってできた宿です。
健介さん:
「宿の名前の由来の人物はもちろん、波浮港に訪れた小説家の幸田露伴(こうだ ろはん)です。ちょうど宿をやろうと思っていたときに幸田露伴全集を知人から譲ってもらえることになって。それから実はもうひとり、由来になった人物がいます。漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するキャラクター・岸辺露伴(きしべ ろはん)です。文学だけじゃなくて漫画が好きなお客さんにも来てもらいたかったし、〝ジョジョ〟なら海外のお客さんにも通じるかなと思って。」
本棚の中央上部に置かれているのが幸田露伴全集。その下が荒木飛呂彦さんの『ジョジョの奇妙な冒険』。「本をテーマにした理由は、大島はアウトドア主体の観光が多いので、天候を気にせず宿の中で楽しめる空間を作りたい、という思いもありました」(健介さん)
子育てするならゆったりした環境で。内地から伊豆大島に移住
「露伴」は2020年10月にオープンし、2022年10月で開業から丸2年が経ちました。しかし山口さん夫婦は移住した当初、宿を開業するとは思っていなかったそう。そもそもの移住のきっかけを伺いました。
健介さん:
「高校卒業後、たいていの人がそうするように自分も大島を出て内地で仕事をしていました。そんな中で奥さんと知り合って結婚しました。ひとり目の子どもが生まれたタイミングで、もっとゆったりした環境で育児をしたい、子育ては大島でしたいと思い、大島への移住を決めました。」
薫さん:
「私は出身が千葉で、ずっと実家の近くに住んでいたので千葉以外で暮らしたことがなく、最初は移住を不安に思うこともありました。
でも移住してからは、子どもを通じて友人も増えて、徐々に島暮らしにも慣れていきました。今は子どもが3人いますけれど、千葉だったらたぶん、ひとりっ子のままだったと思うんですよね。島だから3人でもいけるって思いました。」
前の持ち主の親族が遊びにきたとき懐かしんでもらえるように、と「露伴」では前の住人の持ち物もあえて残していると話す二人。たとえば、本棚に飾っているフィギュアや波浮港の写真など
地元のために何もしていないことへの疑問。そして宿開業
移住後数年は自営業ではなく勤め人として子育てをしてきた二人でしたが、やがて宿を立ち上げ、今はまた新たなプロジェクトを進めています。最初に宿を立ち上げた時の思いとは。
健介さん:
「自分が子どもの頃、波浮港は民宿がまだちゃんと稼働していて、観光客は今より断然多かったんです。24~25年前の話ですけれど。それがUターンで戻ってきたときは閑散としていて。たい焼きカフェ&一棟貸し宿の『島京 梵天』くらいしか宿はなかったかもしれないですね。
その『島京 梵天』を経営してたのが、トモさんという移住者の方でした。島の外の人が波浮港のために動いているのに、地元出身の自分が何もできていないっていうのがひたすら悔してくて。『なんで地元の自分らは何もしていないんだろう』って思っていました。
それから先輩であり幼馴染でもある、ゲストハウス『青とサイダー』のオーナーに影響を受けました。自分で音楽フェスを企画したり、ゲストハウスを始めたり、という具合にすごく行動力の奴だから、それに引っ張られた感じです。自分でも何か新しいことを始めてみよう、と思うようになったんです。」
健介さんの趣味はDIY。独学で勉強したり、大工の友人の現場にヘルプとして入って基礎を習うなど、DIYスキル・大工スキルを磨いてきました。友人の宿を手がけるうちに、自分にもできそう、と思ったといいます。「露伴」もセルフリノベーションで作り上げました。
内装は文豪が訪れていた明治・大正・昭和初期の時代背景に合わせて作られています。洗面所や廊下は大正ロマンを意識したデザイン
薫さん:
「『露伴』開業前、夫は介護員、私はパートで働いていました。固定収入で安定していたから、自営業で宿をやることに対して、もちろん不安はありました。でも今となれば行動してよかったなって思っています。」
健介さん:
「少なくとも自分は、人から影響を受けて宿を始めましたが、そういう流れの中で、地元の仲間も居酒屋を始めたりしていて。自分が始めたことが誰かに影響を与えられている感覚がすごくある。そしてそれが広がっている雰囲気が、今の波浮港にはすごくあるから、タイミングを逃さずにどんどん新しいものを作ろうと思って、今は次に向けて動いています。」
「露伴」の客室。和室と洋室それぞれ1部屋ずつ、計2部屋があります
喫茶店と一棟貸し宿の開業に向けて準備中
健介さん:
「今は2023年3月完成を目標に、喫茶店と一棟貸しの宿を作っているところです。港のそばの通りに作る予定なんですが、今その通りにある飲食店といったら『Hav Cafe』さんというカフェと『港鮨』さんというお寿司屋さんくらい。そこがいっぱいだとどうしても食べる場所に困るお客さんが出てきてしまう。だからその受け皿になれれば、と思っているんです。」
薫さん:
「設備を整えたり、食材の管理をしたりしなきゃいけなかったりで、飲食店は宿に比べるといろいろなハードルがあります。でも設備を整えれば、またそこからいろいろなことが動いていくかなと思っていて。来てくれたお客さんにおもてなしできれば、という気持ちで準備を進めています。」
喫茶店と一棟貸しの宿をオープンする予定の波浮港の通り。ノスタルジックな雰囲気が漂います
健介さん:
「今は次にオープンするものの準備を進めていますが、個人的な最終目標は、祖母の家を直すことです。港の前の通り沿いにあるんですが、自分の持ち物ではないし、傷みがひどいから、全然手をつけられていなくて。でも、すごくロケーションのいい場所だから、何とかしたいと思ってます。
それから、波浮港の祭りの景色を残していきたい。祭りの時、港の前の通りでは各家庭でちょうちんをぶら下げます。通り沿いにずっとちょうちんの灯りが続く景色を『絶対続けて』と言われているので、お店ができたら常に目印としてちょうちんをぶら下げておくのもありかな、って思ったりしているんです。」
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【INTERVIEW】空き家だった古民家をリノベーション中 佐々木やすともさん
宿&飲食ほかスペース開業に向け準備を進めている佐々木やすともさん
島に来てみたら食べる場所が少ない。だから自分たちで作っちゃおう
平日は都内・原宿でデスクワークをし、週末は伊豆大島へ。そんな二拠点生活を送っているのが、某有名ブランドのアパレルデザイナー・佐々木さん。
伊豆大島は、東京都心からジェット船で1時間45分、飛行機なら25分と至近。夜に出発して翌日朝に到着する大型客船も運航しており、二拠点生活を送るのにぴったりの場所でもあります。
佐々木さんは2021年に伊豆大島の波浮港で古民家を購入。宿・飲食スペースとしてオープンすべく、自ら解体作業を行い目下リノベーション中。伊豆大島にいる間はほとんどの時間を作業に費やしているそう。物件購入のきっかけから伺いました。
佐々木さん:
「もともと離島が好きで、沖縄とか五島列島とかによく行ったりしてたんです。だから友人が大島にUターンして、宿を開業して商店やイベントもやったり、なんだかいろいろやっているのを見て、つられてやってきました。今は平日は都心部で過ごしていますが、週末はだいたい大島にいます。
今は何をしているかというと、購入した物件をリノベーションして、宿と飲食のスペース、それからレンタサイクルのスペースと、ボルダリングウォールを作ろうとしています。
大島に来てみて思ったんですが波浮港というエリアは、すごくいい場所なんだけど、泊まっても朝ごはんや晩ごはんを食べる場所が少ない。だから自分たちで作っちゃおうと。
購入した物件がけっこう大きな物件だったので、飲食のほかにもスペースを小さく切り取って、いろいろなものの集合体にしようと思っています。自分は毎週来ていますが、奥さんも月1くらいで手伝いに来るんですよ。」
解体作業の様子
二拠点生活の大島サイドはほぼ解体作業。でもリフレッシュになる
佐々木さんが作業をしている物件は、建て増しを重ね大きくなっていった民家。一番新しい部分でも昭和初期に建築されたもので、少なくとも70〜80年が経っている物件です。
佐々木さん:
「年数を経たからこそ出る味があると思っていて、それを活かしたスペースにしたいと思っています。リノベーションで解体した廃材をなるべく使ったり。廃材利用がひとつのテーマですね。」
平日は本業のお仕事、週末は宿・飲食スペース作り。かなりタフな生活に思えますが、佐々木さん曰く「逆にリフレッシュになる」のだそう。
佐々木さん:
「物件を購入してからはじめにやったことといえば、床や壁を解体すること。自分にはリノベーションの技術はないけれど、床や壁を取り払うっていう解体作業だったら、大工さんに頼まなくても自分でなんとかできるかなと思って、自分でやりました。その後2022年に入ってからは、友人の大工さんにも入ってもらって作業を進めながら、自分は壁を塗装したりと、内装のできる範囲の作業をコツコツと進めています。
平日はひたすらパソコン作業したり、メールしたり電話したり、絵を描いたりっていう仕事をしているんですけれど、平日と週末で全然違うことをしているから、逆にリフレッシュになっています。僕の中では、二つの仕事をしているようなイメージで、ストレスはないですね。相性もあるとは思うけれど。」
壁を自ら塗装
佐々木さん:
「でも知識がないから、はじめは分からないことが多くて。いろいろな人に相談すると、『ああしたらいいんじゃない』『こうしたらいいんじゃない』ってアドバイスをくれる。すごくありがたいんだけど、自分に迷いが生じるから決めきれないところがあったりして。最終的には現実的なお金の着地も考えて決めていくんですけどね。
特に電気回りは苦労しました。
建物が古いから、電気回りや水回りも自分で整えなくちゃいけなくて。仕事でお世話になっている人に、お父さんが内装業をされている方がいるので、『電気回りマジで困ってるんです、力貸してもらえませんか』って相談したんです。そしたらいろんな繋がりの人に声をかけてくださって。なんとか解決できることになって、本当によかった。
みんな一緒に島まで来てくれたので、島のいいところ知ってもらおうと、あちこち回ったりもできましたし。」
都内にはない雰囲気、ロケーションが醍醐味
伊豆大島に通うようになってから、開業に向けての作業に時間を割いているため、あまり観光らしい観光はしていないという佐々木さんですが、島の空気感に魅力を感じているとのこと。
佐々木さん:
「やっぱり波浮港はいいですね。日曜日の夜が一番好きです。観光の人は帰って、地元の人は月曜からの仕事に備えて早めに帰る。だからすごく静か。でも人の気配がない静けさではなくて、人が生活している音はする。ちょっと裏を散歩するにも、めちゃくちゃ雰囲気がいい。
作業ばっかりしているので、あんまり島で遊んだりとかしていないんですが、散歩したりっていうちょっとした時間とか、外で夜ごはんを食べたりすることがリフレッシュになっています。だって都心じゃこんなロケーションないじゃないですか。
完成は、2023年の2月末を目指しています。そしてやるからには事業を継続していきたい。そうしていくことが地域のためになると思うんです。そのためにはボランティアでなく、継続できるだけの利益が出る方法を探っていきたい。
それに釣りとか島でやりたいこともたくさんありますし、ほかの島にも行ってみたい。やりたいことはたくさんなので、今は完成に向けてラストスパート的に作業をしています。」
伊豆大島の友人、電気回りの助っ人の方々と一緒に焚き火を囲みながら晩酌をした夜
Information
■露伴
住所:東京都大島町波浮港14
料金:
1泊1名 1万円〜
2泊2名 6000円〜(1名あたり)
1泊一棟貸し 2万8000円〜
公式サイト:露伴 ROHAN
■ちょい呑みガレージ
住所:東京都大島町波浮港12
時間:18:00〜22:00
定休:不定休
公式Instagram:ちょい呑みガレージ波浮12(伊豆大島)