【PROFILE】この人たちに話を聞きました
【INTRODUCTION】伊豆大島1分解説
【INTERVIEW】「青とサイダー」吉本浩二さん
都心で10年過ごしUターン 「大島の良さを僕は全然分からなかった」
オープン後まもなくゲストハウスの屋根が吹き飛ぶ
次は露天風呂付き貸切宿とクラフトビール醸造
「『なんか波浮港って面白いな』っていうのが表現しやすい」
【INTERVIEW】「トウオンデザイン」千葉努さん
奥さまの故郷・伊豆大島に移住「地方で活動したら面白そう」
「伊豆大島ナビ」を立ち上げ観光情報やディープな魅力を発信
山積する島の課題-離島全体で持続可能なあり方を探る
地元の人に聞いたフェイバリットスポット/伊豆大島編
Information

都心から南へ約120km。太平洋上に浮かぶ伊豆大島は、海と山の大自然、ゆったりした島時間、おいしい魚介が魅力の東京の離島です。観光で人気の島ですが、日本のほかの離島や田舎と同じく、人口流出・産業の停滞などの課題も抱えています。

しかし近年、伊豆大島の外で経験を積んだ移住者が増え、面白い宿や飲食店、ユニークなサービス、取り組みが急増中。新たな移住需要・観光需要が生まれています。

この記事では伊豆大島の二人のキーマンに、伊豆大島への移住や、観光活性、地域の持続をテーマに話を伺いました。


Text&Photo Erika Nagumo
Special Thanks Koji Yoshimoto(青とサイダー ao to cider)/東海汽船

【PROFILE】この人たちに話を聞きました

左からゲストハウス「青とサイダー」の吉本浩二さん、デザインオフィス「トウオンデザイン」の千葉さん

左からゲストハウス「青とサイダー」の吉本浩二さん、デザインオフィス「トウオンデザイン」の千葉さん

吉本浩二(よしもと こうじ)さん

伊豆大島のゲストハウス「青とサイダー」、そのお隣「高林商店」のオーナー。伊豆大島出身。20歳で内地に渡り、約10年都内のアパレルメーカーに勤務。2012年に伊豆大島にUターン。2019年3月に「青とサイダー」をオープンするもその半年後、台風15号により屋根が吹き飛び、修繕ののち2020年4月に再オープン。

千葉 努(ちば つとむ)さん

伊豆大島でデザインオフィス「トウオンデザイン」を運営。web制作、フリーペーパー制作、イベント企画など、島関連の企画制作を幅広く担当。2011年に「伊豆大島ナビ」を立ち上げ、現在は企画・取材・執筆など一貫して担当。2022年からは「東京都離島区」プロジェクトを始動。神奈川県出身、2010年に夫婦で伊豆大島に移住。奥さまは伊豆大島出身。

【INTRODUCTION】伊豆大島1分解説

伊豆大島のシンボル・三原山

伊豆大島のシンボル・三原山(写真:ピクスタ)

伊豆大島は、東京都心からジェット船で1時間45分、飛行機ならわずか25分で行ける、都心から好アクセスの離島です。火山島ゆえに非日常の景色が広がり、別世界にトリップしたような体験ができます。

特に島の中央部に位置する三原山(みはらやま)の景観は圧巻。車やバスでアクセスできる登山道の入り口から絶景の連続です。山の東側には常に風が強く吹く一帯があり、植物が育たないため「裏砂漠」と呼ばれています。一面スコリアに覆われた黒い世界が広がります。

伊豆大島の人口は2022年時点で7000人強。人口がピークだった1950(昭和25)年頃は1万2000人を超えていましたが、それ以降は減少が続いています。30年ほど前は7校あったという小学校は、2022年現在は3校になりました。

伊豆大島では、高校を卒業した若い世代の多くが進学や就職のために島を離れます。そしてそのまま島に戻ることなく内地で暮らす人も多く、人口流出や高齢化などが課題となっています。

【INTERVIEW】「青とサイダー」吉本浩二さん

「青とサイダー」「高林商店」のオーナー・吉本浩二さん

「青とサイダー」「高林商店」のオーナー・吉本浩二さん

都心で10年過ごしUターン 「大島の良さを僕は全然分からなかった」

伊豆大島で生まれ、伊豆大島で育った吉本浩二さん。10年ほど内地で過ごしたのち、2012年にUターン。現在は波浮港(はぶみなと)というエリアでゲストハウスと商店を営んでいます。

ゲストハウス「青とサイダー」は、吉本さんが子どもの頃、駄菓子屋だった建物をリノベーションしてオープン。アートと自転車がコンセプトの宿です。吉本さんが学生の頃、友人とともに二日間かけ自転車で仙台まで旅した体験が、宿の名前とコンセプトの由来。

お酒や食品などを販売する「高林商店」は、2019年の台風被害で屋根が吹き飛んだのを機に、前オーナーから吉本さんに託されました。屋根を修繕し、外装や内装も新たに2020年9月に再オープン。

現在吉本さんは、露天風呂付き貸切宿のオープンと、伊豆大島初のクラフトビール製造に向けて準備中。次から次へとアクションを起こしていく吉本さんですが、そもそも伊豆大島の魅力に気がついたのは、内地で行き詰まりを感じている時だったといいます。

ゲストハウス「青とサイダー」の共有スペース

ゲストハウス「青とサイダー」の共有スペース

夕方以降になると近所の学生さんも立ち寄る高林商店。地域密着型の商店です

地域の人や学生さんも多く立ち寄る高林商店。地域密着型の商店です

吉本さん:
「大島を出たのは20歳のときでした。ファッションの勉強がしたくて。内地の専門学校を卒業した後はアパレルメーカーに就職し、デザイナーの仕事をしていました。でも、デザイナーっていっても、『○○社のデザインが売れてるから、うちもそれに寄せる』みたいな仕事が多かったんですね。自分でデザインすることもあったけど、数を作らせてもらえない。それじゃああんまり意味が無いなと思って、仕事を続けるかどうか悩んでいたんです。ちょうど同じ頃、当時の部長からパワハラを受けていて。だんだん仕事に行かなくなって、休職状態になっていました。

そんなタイミングのときに、トラベルジャーナリスト・寺田直子さんの知人から『大島で講演をやるから来なよ』と誘われたんです。大島に帰って、その講演に足を運びました。そうしたら世界90カ国以上も回ってきた人が、大島の魅力について1時間も話をするんですよ。すっげえなって思いましたね。

だって大島の良さを僕は全然分からなかったから。大島で育ってきて、大島の環境や文化が普通だと思って生きてきたから。でも世界中いろんな場所を見てきた人が、大島の良さをこれだけ話せるんだ、って驚いたんです。」

伊豆大島・三原山の東側に広がる「裏砂漠」。国土地理院の日本地図に「砂漠」と記載されているのはここだけ

伊豆大島・三原山の東側に広がる「裏砂漠」。国土地理院の日本地図に「砂漠」と記載されているのはここだけ(写真:ピクスタ)

吉本さん:
「講演が終わった後、寺田さんに質問してみたんですよ。『もし自分が大島に帰ることになったら、波浮港(※1)で宿をやりたいんですけれど、どう思いますか』って。大島の宿って元町(※2)が多いから。

寺田さんは、『大島に来る人はレンタカーとか自転車を使って移動する人がほとんどだから、場所は関係ない。むしろ波浮港は面白いからありだと思う』と言ってくれて。本格的に大島に帰ることを考えはじめました。

それから2カ月後くらいかな。漁師の父が水難事故に遭ったんです。幸い命は無事だったけれど心配だったので、奥さんと、内地で暮らす兄と一緒に、様子を見に大島に帰ることにしました。その時に兄が『このまま親父が死んでいたら後悔したと思う。でも俺は島へは帰れない』って言っていて。兄が帰れないなら僕が帰ろうかなって、それで大島に戻ってきました。30歳のときでした。」

※1 波浮港(はぶみなと):伊豆大島の南側にある小さな港町。伊豆大島の中心地・元町からは少し距離がある ※2 元町(もとまち):伊豆大島の西側にある町。大島町役場や銀行、大きなスーパー、宿泊施設などが集まる島の中心地

オープン後まもなくゲストハウスの屋根が吹き飛ぶ

2012年に伊豆大島にUターン後、携帯ショップで働きながら、一時元町で宿を営業したのちの2019年、吉本さんは波浮港にゲストハウス「青とサイダー」をオープン。しかしオープン後間もなく、伊豆大島全土や千葉県に甚大な被害をもたらした「令和元年房総半島台風」が襲います。

吉本さん:
「台風があったのが2019年の9月。せっかくオープンした『青とサイダー』も、隣の『高林商店』も屋根が飛んで営業できなくなってしまいました。
高林商店は当時、前のオーナーが営業していたんですけど、屋根が飛んだから引き継いで欲しいと言われて、結局『青とサイダー』と一緒に『高林商店』の屋根も直すことになりました。

クラウドファンディングで資金を集め、幼馴染やたくさんの仲間に助けてもらいながら半年で『青とサイダー』は再オープン。そのさらに半年後に『高林商店』を復活させました。

クラウドファンディングを立ち上げた頃は、『なんで自分だけクラファンやってるの』って叩かれることもありました。『大島はほかにも台風被害で大変な人はたくさんいるのに』って。

でも味方になってくれる人もいて。たとえば同じ波浮港出身の友人とか。ほかにもいろんな人が手伝ってくれた。本当に1秒でも早く何かしなきゃいけないっていうタイミングで、朝5時から作業してくれたり。その時に『この人たちは裏切れないな』って思いましたね。」

青とサイダーの共有スペースにはクラウドファンディングに出資した方々の名前が掲示されています

青とサイダーの共有スペースにはクラウドファンディングに出資した方々の名前が掲示されています

次は露天風呂付き貸切宿とクラフトビール醸造

ゲストハウス「青とサイダー」は2020年4月に再オープンしたものの、新型コロナウイルスの流行と重なり3カ月ほど自粛。ようやく本格的にオープンしたのは2020年の7月でした。

新型コロナウイルス関連の制限も緩和されてきた今、吉本さんは次の試みを始めている最中だといいます。

吉本さん:
「実は今、高林商店の下に露天風呂付きの貸切宿を作ろうと思っていて。幼馴染や大工さんの友人、ほかの仲間たちと一緒に工事をしているところです。

『なんでまた宿?』って思われるかもしれないけれど、青とサイダーには弱点があって。ひとつは青とサイダーが〝夏のイメージ〟になっていること。名前とかカラーリングが夏っぽいから、あまり冬に来るイメージが湧かないなと。
それから、青とサイダーは、ひと部屋につき布団3組までしか敷けないから、4人っていう客層が取りにくい。ファミリーのお客さんが利用しづらいんです。

だから新しいほうの宿は、そういう弱点を補いたいと思ってます。つまり、ファミリー層にも利用してもらいやすくて、秋冬なイメージの宿。
星を見ながらお風呂に入れる露天風呂と、焚き火ができるウッドデッキを作って、1組限定の貸切宿にしようと準備を進めているところです。」

工事を進める貸切宿のウッドデッキで焚き火をしてみた夜。BBQや星空鑑賞も楽しめます

工事を進める貸切宿のウッドデッキで焚き火をしてみた夜。BBQや星空鑑賞も楽しめます

吉本さん:
「それからもうひとつ進めているのが、クラフトビール醸造所の立ち上げです。
高林商店がオープンしたときに、観光客の人に『地元のお酒ってなんですか?』って聞かれることがあって。地元のお酒といえば焼酎があるんですが、それを伝えたら『焼酎ですかぁ……』って言われてしまったんです。焼酎が苦手な人のために、ほかの選択肢も用意しておきたいと思って、じゃあビールはどうだろう、ということで作ることにしました。

材料に関しては、麦は島外のものですが、ホップは伊豆大島のものを使います。知り合いの農家さんに相談したら、ビールのためにホップを作ってもらえることになって。
あとはビールの醸造は自分でやらなきゃいけないので、これから免許を取りますし、レシピも勉強します。やることはいっぱいなんですけれど、2023年の12月オープンを目指して進めてます。」

やりたいことのアイデアは大量にある、と話す吉本さん

やりたいことのアイデアは大量にある、と話す吉本さん

『なんか波浮港って面白いな』っていうのが表現しやすい

吉本さんがゲストハウス、商店、貸切宿、ブルワリーを展開する伊豆大島の「波浮港」というエリアは、歴史がありながらも高齢化が進み、人口減少や観光客減少の課題があるエリアです。しかし数年前から、新たな宿やカフェ、飲食店を立ち上げる人が増えてきていて、エリア全体の雰囲気が変わりつつあります。
(関連記事:地元で生きる/田舎と都会の二拠点生活をする-伊豆大島の3組に聞いた地方での生き方

波浮港エリアで2019年以降にオープンした宿は4軒、飲食店は2軒。2023年は、宿と飲食店が少なくとも5軒オープンする予定。伊豆大島の中でも、急速に変化しているエリアで、新たな魅力が生まれ始めています。

吉本さん:
「波浮港の面白さは、昔からのお店や新しいカフェ、宿なんかがコンパクトにまとまっているところだと思っています。全部歩いていけるくらい近い。きゅっとまとまっているから、『なんか波浮港って面白いな』っていうのが表現しやすいですよね。

今の大島は、ここ何十年の間で初めてのムーブメントが起こっているんじゃないかと思っています。宿ができて、カフェや飲み屋ができて、人がどんどん集まってきている。空き家だった物件も次々に再生しています。今まで行政が起こしてこなかったアクションを、民間が起こしている。そしてその起爆剤が波浮港なんだと思っています。」

そして波浮港の盛り上がりと並行して、離島同士でつながっていこう、伊豆諸島全体を盛り上げていこうという気運もあり、自治体の枠を超えた動きがあります。

吉本さん:
「本当は大島の自分の宿にたくさん泊まってもらうのがいいんでしょうけど、大島だけじゃなくて、アイランドホッピングをしながら伊豆諸島のほかの島も楽しんでもらいたいって思ってます。たとえば大島に1泊して、次は新島に1泊、とか。

もし宿のお客さんが『明日新島行く』って言っていたら、あそことあそこがおすすめだよってレコメンドもできるし、そしたら行く側もちょっとユニークな旅ができるんじゃないかって思うんです。たとえば『青サイのオーナーに言われて来ました』って言えば、それをきっかけに新しいつながりができるかもしれないですしね。」

晴れた秋の日の波浮港

晴れた秋の日の波浮港

■■

【INTERVIEW】「トウオンデザイン」千葉努さん

デザインオフィス「トウオンデザイン」と株式会社TIAMのメンバーである千葉努さん

デザインオフィス「トウオンデザイン」と株式会社TIAMのメンバーである千葉努さん

奥さまの故郷・伊豆大島に移住「地方で活動したら面白そう」

自治体の枠を超えて、東京の離島全体でつながっていこう、という動きのひとつにwebメディア「東京都離島区」があります。東京の離島郡を、東京23区と並ぶ24番目の区と見立てた命名で、伊豆諸島や他県の離島に暮らす人にフォーカスをあてたインタビュー記事を公開しています。
運営するのは、伊豆大島在住の千葉さんと、三宅島在住の伊藤さんを中心とする株式会社TIAM(ティアム)。

今回話を伺った千葉さんは、神奈川県出身の移住者。
これまで奥さまと共同運営のデザインオフィス「トウオンデザイン」を設立し、大島の観光情報をまとめた「伊豆大島ナビ」の立ち上げ・運営のほか、島内の宿や飲食店のロゴ・ボームページの制作などを行なってきました。

今でこそ仕事のほとんどすべてが島関連だという千葉さんですが、昔は「伊豆大島のことはよく知らなかった」と話します。移住前から現在までの変化、現在の取り組みについて伺いました。

千葉さん:
「本土にいた頃はweb関係の仕事をしていました。大島に移住したのは2010年ですが、その少し前くらいから、自分たちの周りに地方移住する人だとか、まちづくりの活動をする人が増え始めていました。
知り合いにも地方でコミュニティスペースをやっている人がいて、そこには結構いろんな人が集まっていて面白そうでした。人が集まる場を、島に移住して作ったら面白そうだよね、って奥さんと話していたのが、そもそものきっかけです。もともと海に囲まれた離島の独特な地域性に興味があったのと、奥さんの地元が大島だったこと、何より大島の自然に魅せられて大島に移住しました。

移住後は地域の商工会の事務局に勤めました。時間を作っていろいろと活動したほうが面白いだろうなって思ったから、新規で内地のほうからデザインの仕事を受けるのを一旦やめたんです。」

「青とサイダー」吉本さんなど、島内外に友人・知人が多い千葉さん

「青とサイダー」吉本さんなど、島の内外に友人・知人が多い千葉さん

「伊豆大島ナビ」を立ち上げ観光情報やディープな魅力を発信

トウオンデザインが運営する『伊豆大島ナビ』では、大島の定番スポットやグルメ情報はもちろん、島人にフォーカスした取材記事を公開するなど、ディープな魅力も発信しています。千葉さんは企画や取材のアポイントメント、撮影のディレクション、実際の取材や執筆など、トータルで担当されているとのこと。『伊豆大島ナビ』誕生のきっかけを伺いました。

千葉さん:
「実は大島に移住する前から、面白い活動や事業をされている知人を紹介するフリーペーパーを、奥さんと一緒にやっていたんです。『12class(じゅうにクラス)』というタイトルで、1年の12カ月と〝自由に暮らす〟をかけたタイトルです。大島移住前からやっていたフリーペーパーですが、移住した後は主に大島の情報を紹介するフリーペーパーとして定期的に発行していました。

その『12class』を東海汽船(※3)の中で立ち上がったあるプロジェクトの担当者の方が見てくださっていたみたいで、声をかけてくださったんです。それで話しているうちに、自分はwebも作れるから、webで一緒に情報発信しませんか、という話になって。それではじめたのが『伊豆大島ナビ』です。それが2011年で、大島に来てから1年くらい経った頃でしたね。

現在は月に一度のペースで『伊豆大島ナビ』の運営計画や取材企画を話し合う定例会を行いながら方向性を決めたりしています。比較的自由に、さまざまなコンテンツを作らせてもらっています。」

※3 東海汽船……東京・竹芝と伊豆諸島を結ぶ航路を運航する海運事業者 伊豆大島ナビのトップページ(2022年11月時点)

伊豆大島ナビのトップページ(2022年11月時点)

山積する島の課題-離島全体で持続可能なあり方を探る

千葉さんは現在、東京の諸島部全体で持続可能な在り方を探る株式会社TIAMの事業の一環として、webメディア「東京都離島区」を運営するほか、さまざまなプロジェクトを進めています。どんな活動を行なっていく予定なのか尋ねました。

千葉さん:
「TIAMにはもうひとり、伊藤くんというメンバーがいるんですが、彼は両親の都合で幼少期から小笠原諸島の父島、伊豆諸島の大島、八丈島と転々としながら、今は三宅島でゲストハウスの運営をはじめ、さまざまな活動をしている人です。彼といろいろと話しているうちに方向性が一致したので、一緒にやっていこう、という感じで会社を設立しました。

今、各島でどんどん人口が減り、高齢者の割合が増え、第一次産業も成り立たなくなってきています。それぞれが持続的にやろうと思ってもなかなか難しくなってきているんです。そういう状況を、なんとなく見過ごしてきていると思っていて。

未来を見据えた動きをしていくために、まずはいろいろな島の人たちとつながりを持って情報を集めるところから始めています。それが『東京都離島区』の活動です。それぞれのキャリアや経験を活かして新しいことを始めている面白い人たちが、〝東京諸島〟っていうちょっと広いエリアで見るとたくさんいて、そんな人たちにお話を伺ったり対話することで、それぞれの島の今を浮き彫りにしたいと思っています。」

「東京都離島区」のオウンドメディアトップページ

「東京都離島区」のトップページ

千葉さん:
「そして情報を集めたり、いろいろな人の取り組みを知ることによって、東京諸島全体で繋がって、何か持続可能な展開に持っていけるんじゃないか、っていう前向きな気持ちで取り組んでいます。webメディア『東京都離島区』の運営ほか、イベントの企画や、旅行商品の企画なんかもやっています。

たとえば来年1月以降、3カ月に1回くらいのペースで、竹芝の『東京ポートシティ竹芝』を会場に東京諸島のイベントをやっていこうという話もあります。移住の相談ができたり、バル形式で島の簡単なおつまみを島焼酎と一緒に楽しめたりするイベントです。島の観光のことはもちろん、暮らしの部分もリラックスした雰囲気で情報交換できたら、と思っています。

それから地域限定旅行業の登録を目指していて、地域の人と連携して学びの要素がある旅行ツアーを組みたいと考えています。毎回テーマを決めて、興味を持ってくれた人がより深く楽しめるような内容にしていきたいですね。できたらツアーの後はコミュニティを立ち上げて、島内外のつながりを深めていけるような仕組みを作れていけたらいいなと思います。」

■■

地元の人に聞いたフェイバリットスポット/伊豆大島編

地元の方に独断と偏見でお気に入りの場所・思い出の場所を選んでいただき、紹介していく本コーナー。今回は、青とサイダー・吉本さんと、トウオンデザイン・千葉さんにお聞きしました。

サンセットパームライン

千葉さん:
「サンセットパームラインにはよくリフレッシュしに行きます。奥さんも大好きで、夕日が綺麗な日は家族で散歩します。しょっちゅう行くけれど、毎回空の色が変わるんですよ。夕日を見ながら足だけちょっと海に浸かったり、裸足のまま地面に足を置く『アーシング』をすることもあります。」

サンセットパームライン

サンセットパームライン(写真:ピクスタ)

波浮港のはじっこ

吉本さん:
「漁師だった父が帰ってくる場所が、波浮港の西側のはじっこでした。夕方になるとそこでいつも、母が父の帰りをずっと待っていたんですよね。ちょっとでも父が遅れると、何かあったんじゃないかってソワソワしだして。母がちょこんと父を待ってるのを見るのがすごく切なかった。どこか思い出の場所を、と言われたらそこが真っ先に浮かびます。」

Information

■青とサイダー
住所:東京都大島町波浮港4
料金:1泊1人あたり5000円〜
公式サイト:青とサイダー

■高林商店
住所:東京都大島町波浮港4
時間:10:00~20:00
定休:火曜
公式Instagram:高林商店

■トウオンデザイン
公式サイト:伊豆大島のデザインオフィス『トウオンデザイン』

■東京都離島区
公式サイト:新しい、が生まれる「離島区」 東京都離島区

■東京島々ダイアローグ(東京諸島のリアルイベント)
開催日:2023年1月20日(金)
時間:18:00〜21:30
会場:東京ポートシティ竹芝 3F 「まちづくりプラザ」
公式サイト:東京島々ダイアローグ