1. ボンネットバスとはなんぞや
2. 四国交通のボンネットバスのこれまで
四国交通のボンネットバスは御年57歳!
一度は引退するもクラファンで復活
[How To]四国交通の定期観光バスツアーに参加するには
3. 絶景&祖谷そば堪能:ボンネットバスの祖谷旅へいざ!
「かずら橋夢舞台」から出発
「祖谷(いや)のかずら橋」で絶景&スリルを味わう
「平家落人の郷」祖谷をボンネットバスが走る!
「つづき商店」で祖谷そば手打ち体験&山の食材とともにいただきます!
天空の郷・落合集落
4. 祖谷「かずら橋夢舞台」にバスで行くなら【Grelaかずら橋号】が便利!
まとめ

ちょっとレトロで、独特のカタチがかわいい「ボンネットバス」をご存じですか?

昭和20年代・30年代にはメジャーだったものの、今はレアな存在です。

この記事ではボンネットバスに乗って徳島の祖谷(いや)地方へ行く四国交通のツアーのようすをお届けします。

※本記事は関係者向けのツアーに参加の上で執筆しています。一般向けツアーは経由地によってさまざまなプランが組まれているので、詳細は四国交通ホームページをご覧ください

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にし阿波【祖谷】の楽しみ方:小便小僧にかずら橋、ホテル祖谷温泉、そばも!

1. ボンネットバスとはなんぞや

一般的に路線バスと言えば、最前部に運転席がある四角い長方形の車体を思い浮かべる人も多いでしょう。しかしボンネットバスは、運転席前側のボンネットにエンジンを積んでいるため、前側にニュッと車体が伸びて、なんだかカバのような愛らしいカタチをしています。

ボンネットバスは昭和20年代・30年代には、地方を中心に日本全国各地を走り回っていました。しかし高度成長期にさしかかるあたりから今の四角いタイプに置き換わり、今ではほぼ見かけなくなっています。しかし定期観光路線として運行している例も。

四国交通では、ボンネットバスに乗車できるさまざまなツアーを開催。深い谷を渡る「祖谷(いや)のかずら橋」でスリルを味わったり、風味豊かな「祖谷そば」の手打ちを体験したり、落ち武者が身を潜めていた「平家の隠し里」を見ることができたり……。この記事では、そんな四国交通のボンネットバスツアーの旅のようすをお届けします。

2. 四国交通のボンネットバスのこれまで

最近でもボンネットバスを運行しているバス会社は、岩手県北バス(岩手県)、鞆鉄道(広島県)、備北バス(岡山県)などがありますが、四国交通(徳島県)の例を紹介しましょう。

四国交通のボンネットバス

四国交通が保有するボンネットバス(写真:宮武和多哉)

徳島県の「にし阿波」地方(三好市など)では、車歴50年以上(!)のボンネットバスが、現地のバス会社「四国交通」の定期観光バスとして走り続けています。通常のバスはだいたい10〜20年ほどの運行が多いので、50年は相当長い部類です。

年を追うごとに故障も多くなり、交換する部品もどんどん入手困難に……という中でも何とか維持を続けて、ついに使用不能となった際にも、クラウドファンディングで出資を訴えかけ、全面修理の上で、定期観光バスとして奇跡の復活を果たしました。

四国交通のボンネットバスは御年57歳!

落合集落展望台に停車するボンネットバス

落合集落展望台に停車するボンネットバス(写真:宮武和多哉)

このボンネットバスは、いすゞ自動車製の「BXD30」。1966(昭和41)年に、四国交通にやってきました。

実は、いすゞ自動車は1967(昭和42)年にボンネットバス全車種の販売を中止し、現在のタイプの四角いバス(※1)の製造に一本化しています。しかし四国交通のバス路線は、険しい山道を走る路線が多数。エンジンが最前部にあり、舗装されていない悪路や山道でもパワフルに走れるボンネットバス以外では走れない! という事情があったそうです。

そのため四国交通は、今も走っている「598号車」を含めて、特注仕様のボンネットバスを4台まとめて駆け込み購入しています。

当時はいまのような「ワンマン(※2)」ではなく、車掌さんが乗り込む「ツーマン」運行が当たり前の時代でした。車掌さんは運賃の支払いを管理したり、バックするときはバスを降りて、運転手さんに「オーライ! オーライ!」と合図を送る仕事をしていたそうです。

※1 いすゞBU。現在の「エルガミオ」の数代前の車種
※2 運転席ヨコに運賃箱があって、運転手さんが一人ですべて管理する運行体制

運転席

ボンネットバスの運転席(写真:宮武和多哉)

バス車内の電装品を管理するトグルスイッチ

バス車内の電装品を管理するトグルスイッチ(写真:宮武和多哉)

一度は引退するもクラファンで復活

ボンネットバスを前面から。右側のオレンジ・黄色のライトは方向指示器

ボンネットバスを前面から。右側のオレンジ・黄色のライトは方向指示器(写真:宮武和多哉)

その後、各路線のワンマン化とともにボンネットバスは路線バスの運用を外れ、「祖谷のかずら橋」「祖谷温泉」など、徳島県西部のさまざまな名所をめぐる定期観光バス「秘境の小便子僧号」に転用。

丸っこいボディで力強く走るレトロなボンネットバスは「四国交通と言えばボンネットバス」といえるほどの根強い人気を誇っていました。

しかし長年の運転で車体は不足し、故障と修理の繰り返しにも限界が来たため、2021年に引退。しかし「どうしても、もう1回乗りたい!」と惜しむ声が多く、見積もり段階で715万円にも及ぶ修理費用のためにクラウドファンディングを実施。目標を大きく上回る977万4000円もの支援を集め、復活を果たすことができたのです。

四国交通・谷口典久さん

四国交通・谷口典久さん(写真:宮武和多哉)

ボンネットバスの魅力と言えば、今のバスにはない武骨な車体のフォルム、タイムスリップしたかのようなレトロな内装、まるで生きているかのような力強いエンジン音など、さまざま。バスに乗っているだけで、昭和の雰囲気を味わえるのも人気の秘密です。

ボンネットバスの復活に力を注いできた四国交通・谷口典久さんによると、これからも様々なツアーを企画していくそうです。詳しくは、四国交通のホームページや、SNSをこまめにチェック!

[How To]四国交通の定期観光バスツアーに参加するには

ボンネットバスで行く祖谷そば打ち体験・祖谷かずら橋のツアーをはじめ、四国交通が開催する各種定期観光バスツアーの情報は、四国交通の公式サイトなどで確認できます。

●四国交通 公式ホームページ:四国交通株式会社
●四国交通 公式X(旧twitter):@yonkoh

3. 絶景&祖谷そば堪能:ボンネットバスの祖谷旅へいざ!

「かずら橋夢舞台」から出発

かずら橋夢舞台の入口

かずら橋夢舞台の入口(写真:宮武和多哉)

四国交通のボンネットバスのツアーは、多くが観光施設「かずら橋夢舞台」駐車場から発車します。

「かずら橋夢舞台」は「祖谷(いや)のかずら橋」の近くにある観光拠点施設。おみやげが豊富にそろった物産館、山の幸を味わえる食堂「かずら橋亭」や、川魚の串焼きなどを売る屋台などがあります。ボンネットバスは冷房設備がないので、乗り込む前にここでお茶・ジュースなどの水分を買っていきましょう。

なお、「かずら橋夢舞台」は300台の駐車場も併設しているので、クルマで来られる方も安心。徳島自動車道・井川池田ICから1時間程度で到着します。ただし定期観光バスツアーの中には、高速バスとの乗り継ぎの方のみ参加可能なプランもあるので、事前に参加条件を確認しておきましょう。

【かずら橋夢舞台の基本情報】
●場所: 徳島県三好市西祖谷山村今久保345-1
●時間:4月~11月 9:00~18:00/12月~3月 9:00~17:00
●駐車場:300台(普通車1日500円)
●アクセス:徳島自動車道[井川池田IC]から車で約1時間(約46km)
●参考サイト:大歩危祖谷ナビ かずら橋夢舞台
※編集部しらべ

「祖谷(いや)のかずら橋」で絶景&スリルを味わう

祖谷のかずら橋

祖谷のかずら橋。国の重要有形民俗文化財に指定されてます(写真提供:大歩危祖谷ナビ)

「かずら橋夢舞台」から「祖谷のかずら橋」までの距離は300mほど。時間に余裕があれば、徒歩で立ち寄ってみましょう。

「かずら橋夢舞台」のすぐ横を流れる吉野川水系・祖谷川の流れは10m以上の深い谷底にあります。両岸の集落の移動手段として、シラチクカズラ(※3)という植物のツルで編んだ「かずら橋」が架けられました。今は近くにコンクリート橋が架けられているので、生活移動手段としての役目は終えています。

ただし、観光資源として重要な役目を負っています。「かずら橋」は長さ45m、幅はわずか2mほど。ちょっと風が吹いたり、向こうから渡ってくる人がいると、グラグラと揺れて……渡るだけでアトラクションのような楽しみ方ができる橋は、この地方の名物として全国的に知られるようになりました。

かつては、この橋を行き来して買い物に行ったり、学校に行ったり……在りし日の山での暮らしの大変さがしのばれるだけでなく、スリルと迫力も味わえる「かずら橋」。ぜひ渡っておきたいものです。

※3 別名「サルナシ」。祖谷に自生するマタタビかの植物

【かずら橋の基本情報】
●時間:日の出~日没(年中無休)
●通行料金:大人550円 子ども350円
●参考サイト:大歩危祖谷ナビ 祖谷のかずら橋THE GATE(スポット) 祖谷のかずら橋
※編集部しらべ

「平家落人の郷」祖谷をボンネットバスが走る!

かずら橋夢舞台・観光バス駐車場。ここでボンネットバスに乗り継ぐ

かずら橋夢舞台・観光バス駐車場。ここでボンネットバスに乗り継ぐ(写真:宮武和多哉)

「かずら橋」を楽しみ、いよいよボンネットバスでツアーに出発! バスは、「ガラガラガラガラ!」と力強い爆音を立てて走り、「にし阿波」の祖谷地方に分け入っていきます。

祖谷地方は、源平合戦(治承・寿永の乱/1180年~1185年)で敗北した平氏の一族・平教常(たいらののりつね)が落ち延び、源氏の追手から身を潜めたことでも知られています。車窓から見える山々は険しく、恐らく落人も「さしもの源氏もここまで追ってはこれまい!」と考えた……のでしょう。

バスは祖谷の山々に分け入るように走る

バスは祖谷の山々に分け入るように走る(写真:宮武和多哉)

なお、多くの資料では「壇ノ浦の合戦で海に身を投げて命を落とした」とされている安徳天皇も、祖谷に落ち延び、2年ほど暮らして8歳で生涯を閉じたと伝えられています。

こういった「平家の隠し里」は西日本を中心に数多く、なかには「江戸時代まで集落の存在が知られていなかった」ような場合も。しかし祖谷の場合は2代・3代で里の人々と交流を持ち、山肌に段々畑を築いてそばの実や・たばこの葉などを育て、集落を築き上げてきました。「あんな山の上に?」と驚くような場所にある集落もあるので、バスの車窓から探してみましょう。

車窓からは緑いっぱいの祖谷の風景が広がる

車窓からは緑いっぱいの祖谷の風景が広がる(写真:宮武和多哉)

「つづき商店」で祖谷そば手打ち体験&山の食材とともにいただきます!

祖谷そばがいただける「つづき商店」

祖谷そばがいただける「つづき商店」(写真:宮武和多哉)

「にし阿波」祖谷地方に足を運んだら、名物の「祖谷そば」を、ぜひとも食べておきたいものです。

土地が狭くコメの栽培が難しい祖谷では、育てやすくて短期間で実が穫れるそばを栽培し、長らく主食としてきました。「祖谷そば」は少し太めで、地元のそば粉を100%使った風味豊かな香りと力強い食感を楽しむことができます。

そして、ボンネットバスツアーでは、祖谷そばの「つづき商店」に立ち寄り、「食べる」だけでなく「そば打ち」体験もできます。入口でエプロンと頭巾を借りて、いざ厨房へ!

左:石臼でそばの実を挽く 右:そばの作り方は熟練スタッフが優しく教えてくれる

左:石臼でそばの実を挽く。上部の穴に少しづつそばの実を入れて引くと、粉となって下に落ちる 右:そばの作り方は熟練スタッフが優しく教えてくれる(写真:宮武和多哉)

祖谷がそばの名産地となったきっかけは、やはり「平家の落人がそばの栽培をはじめた」ことにあるそうです。8月頃にはそばのタネをまき(夏まき)、10月ごろに刈り取って1カ月ほど天日干しをし、脱穀・粉挽きを行うそうです。

「つづき商店」には年季のはいった石臼があり、そばの実を少し入れて回し、サラサラのそば粉を製粉していきます。来客がある日は前日から夜通し、「♪祖谷の~かずら橋ゃ~風もないのに~ゆら揺られ~」という「祖谷の粉ひき歌」を歌いつつ、粉を挽き続けたそうです。

挽いた粉と水を混ぜてこねて、包丁で手切りしてゆで上げ、「祖谷そば」完成!

「つづき商店」の山菜御膳。そばは筆者手打ち

つづき商店 山菜御膳。そばは筆者手打ち(写真:宮武和多哉)

「つづき商店」では、自分で作った祖谷そばを使った「山菜御膳」をいただくことができます。シカ肉の竜田揚げ、目の前の畑でとれた野菜の天ぷら、しっかりした食感の田舎豆腐、噛むごとに味わい深いご飯……。打ち立て・切りたて・茹でたてのそばとともに、ゆっくりと味わいましょう。
 
【つづき商店の基本情報】
●場所: 徳島県三好市東祖谷若林84-1
●公式サイト:つづき商店
※定期観光バスツアー以外でも、そば打ち体験・食事は可能。前日までの予約制です

天空の郷・落合集落

落合集落を展望台から眺める

落合集落を展望台から眺める(写真:宮武和多哉)

祖谷そばと山の幸を味わったあと、ボンネットバスは「落合集落」が一望できる展望台に駆け上がっていきます。
約390mもの高低差がある山肌に70戸近い家屋や段々畑が山肌に張り付き、見事な茅葺の家や石垣を、遠くからでもしっかり確認できます。かつてはこの段々畑でとれた野菜やタバコの葉を、路線バスで池田町の市街地やタバコ工場(専売公社池田工場)に運んでいたのだとか。

展望台から眺める落合集落は、忘れかけた日本の農村の原風景を見るかのようです。

落合集落からさらに奥にも、もうひとつのかずら橋「奥祖谷の二重かずら橋」、住民を模したかかしを並べた「天空の村・かかしの里」などの見どころはありますが、今回のツアーはここで折り返して「かずら橋夢舞台」に戻ります。

4. 祖谷「かずら橋夢舞台」にバスで行くなら【Grelaかずら橋号】が便利!

高速バス「Grelaかずら橋号」

高速バス「Grelaかずら橋号」(写真:宮武和多哉)

「かずら橋夢舞台」に公共交通機関で行くなら、四国交通の高速バス「Grela(グリラ)かずら橋号」がおすすめ!

「Grelaかずら橋号」は、JR[三ノ宮駅(兵庫県神戸市)]にほど近い[神姫神戸三宮バスターミナル]から約4時間半で「かずら橋夢舞台」に直通します(土日祝のみ ※4)。最後の1時間少々は、温泉むすめ・祖谷メグリが観光情報をアナウンスしてくれます。

「Grelaかずら橋号」にタッピングされた「祖谷メグリ」

阿波池田バスターミナルからは、温泉むすめ「祖谷メグリ」がアナウンスで案内してくれる(写真:宮武和多哉)

徳島県内からは[アヲアヲナルトリゾート前][高速鳴門]からも乗車が可能。鳴門市には「大鳴門橋」「大塚国際美術館」などの観光スポットがあるので、徳島県をゆっくり巡られる方は、「1日目=鳴門を満喫してホテル泊、2日目=ボンネットバスツアー」という日程を組んでもいいですね。

※4 平日は途中の「阿波池田バスターミナル」止まり

【高速バス「Grelaかずら橋号」の基本情報】
●乗車地点:[神姫神戸三宮バスターミナル][高速舞子][アオアオナルトリゾート前][大塚国際医術館前][高速鳴門]
●料金:神姫神戸三宮バスターミナル~かずら橋夢舞台=片道5500円(往復9900円)
●公式サイト:grelaかずら橋号

おわりに

レトロなボンネットバスで「にし阿波」祖谷地方を巡る旅、いかがでしたか?
平家の落ち武者が身を潜めた秘境・祖谷には驚きの絶景やグルメ、それから温泉もあるので、日帰りでもいいですが……余裕があれば、1泊・2泊したいものですね。

四国交通のバス

四国交通のスタンダードな路線バス車両。阿波池田バスターミナルにて




Text:宮武和多哉(みやたけ・わたや)

鉄道全線完乗、路線バス1800系統乗車、フェリーなど船舶60航路乗船(いずれも国内・2023年現在)。47都道府県で通勤ラッシュ巻き込まれ&100km以上ドライブを経験。モードにこだわらず「乗りもの」全般をカバー。
全国で食べ歩いた駅弁・駅そば・ご当地料理は数知れず。おうちで再現レシピの作成も得意としており、NHK『さし旅』では〝再現料理人〟として指原莉乃さんと共演。
香川県高松市出身。兵庫県・大阪府・高知県・東京都・神奈川県などに在住経験あり。著書に『全国“オンリーワン”路線バスの旅(1・2)』、『路線バスで日本縦断! 乗り継ぎルート決定版』(いずれもイカロス出版)がある。


Edit:Erika Nagumo
協力:四国交通