全国に火山が点在している日本は、世界有数の温泉大国。古来日本人の生活に根付いており、日本旅行に訪れたら、ぜひとも温泉巡りに挑戦してほしいものです。
実は、「温泉」と一口にいっても、湧き出す泉質によって色や匂い、効能などもさまざまあることをご存知ですか?今回ご紹介するのは、数ある日本の温泉地の中でも、屈指の人気を誇る神奈川県箱根町の「箱根温泉」に湧く6つの泉質について。
箱根観光で温泉は外せないものですが、泉質に合わせて入る温泉を選ぶのはいかがでしょうか。箱根温泉の6つの泉質の特徴と女性にうれしい効能について、温泉専門家でAll Aboutガイドの植竹深雪さんにお話を伺いました。
さらに、編集部が選んだおすすめの日帰り温泉施設を4つご紹介いたします。
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箱根温泉に湧く6つの泉質
自然の絶景と温泉が楽しめる箱根エリア
世界有数の温泉大国でもある日本。環境省によると、2017年時点での全国の温泉地数が2,983カ所という統計が出ているほど、全国各地に温泉地が存在していることが分かります。日本人にとっても温泉の人気は根強く、温泉宿は旅行先に、日帰り温泉施設は休日のちょっとしたお出かけだけでなく、平日の仕事帰りに利用する人もいるほど身近なものとして愛されています。
その中で、今回は観光地としても名高い神奈川県箱根町に湧き出る箱根温泉の「泉質」に注目。エリアや値段で入りたい温泉を決めるのもいいですが、たまには泉質から温泉を選んでみるのはいかがでしょうか。
6つの泉質とその特徴とは?
箱根一帯には、「箱根十七湯」と呼ばれ親しまれている17つの名湯があります。泉質はさまざまですが、大きく分けて6つ。色や匂い、肌触り、効能がそれぞれ異なりますので、自分のお気に入りの「泉質」を見つけてみましょう。
まずは植竹さんから、6つの泉質の特徴について、教えてもらいました。
単純温泉
子供から高齢者まで万人が楽しめる、刺激が少なく身体に優しい温泉です。含有成分の総量が1000mg/kgに達していないものが単純温泉とされます。とはいうものの、実は様々な泉質をブレンドした「単純」ではない温泉が多いんです。
*主な効能…不眠症・うつ など
*箱根十七湯では…箱根湯本温泉・大平台温泉・小涌谷温泉・芦ノ湖温泉
硫黄泉
ゆで卵が腐ったような、硫黄独特の臭いがする泉質で、「温泉らしさ」を感じられる湯です。末梢毛細血管や心臓の冠状動脈、脳動脈も拡張させてくれると言われており、生活習慣病に効く温泉とされています。
*主な効能…生活習慣病 など
*箱根十七湯では…湯ノ花沢温泉・芦之湯温泉
塩化物泉
別名「あたたまりの湯」と呼ばれています。その理由は、入浴で肌に付着した塩分が汗の蒸発を防ぐから。塩成分のパックが保温・保湿効果が高めてくれます、血液循環が良くなり湯冷めしにくいんです。
*主な効能…冷え性・末梢循環障害 など
*箱根十七湯では…塔ノ沢温泉・堂ヶ島温泉・宮ノ下温泉・底倉温泉・二ノ平温泉・芦ノ湖温泉
酸性泉
その名の通り、酸性の温泉で「殺菌の湯」と呼ばれています。刺激が強いので、高齢者や敏感肌の方は注意が必要。お湯はレモンのように酸っぱく、殺菌力が高いので水虫やあせもに良い湯です。
*主な効能…アトピー性皮膚炎、糖尿病 など
*箱根十七湯では…仙石原温泉
炭酸水素塩泉
「清涼の湯、美肌の湯」。皮膚の表面を軟化させる作用があるので、火傷または皮膚病や切り傷など良いと言われています。
*主な効能…切り傷・やけど・皮膚乾燥症 など
*箱根十七湯では…二ノ平温泉・姥子温泉
硫酸塩泉
カルシウム(石膏泉)、ナトリウム分(芒硝泉)と組み合わせによって泉質が細分化されますが、総じて外傷や動脈硬化予防効果が期待できます。「傷の湯」「若返りの湯」とも呼ばれています。
*主な効能…末梢循環障害・冷え性・皮膚乾燥症 など
*箱根十七湯では…蛸川温泉・仙石原温泉・姥子温泉
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箱根が温泉地として名高い理由
箱根湯本に流れる早川
今回ご紹介したように、箱根エリアの温泉は大きく6つの泉質に分けられるほど、様々な温泉が湧き出ています。開湯時は「箱根七湯」だった箱根の温泉も、「箱根十七湯」に数が増え、今ではさらに3つが追加され、「箱根二十湯」とも呼ばれるように。いかに箱根エリアが温泉に愛される土地であったかが分かるかと思います。
では、なぜ箱根エリアは日本屈指の温泉地として人気になったのでしょうか?もちろん観光地として都心からのアクセスもよく、伝統工芸や自然そのものの姿が楽しめることから毎年多くの観光客が訪れるのも理由の一つです。しかし、古くから、病気の療養を目的とした「湯治の場」として親しまれてきたのが大きな理由と考えられるでしょう。
今なお活動を続ける大涌谷
箱根エリアの温泉は、箱根火山を中心に誕生していきました。箱根火山の誕生は今からおよそ400万年前とされており、日本の歴史では奈良時代から箱根の各地でさまざまな温泉が湧き出ていたのだそう。
明治・大正時代〜昭和初期には文人や世界各国の著名人も癒しを求めて箱根へと足を運びました。文化人たちの間で湯治の場として親しまれていたことから、由緒ある温泉地として、今なお日本人のみならず、世界中の観光客からも人気を集めているのです。
女性にうれしい効能もチェック
各泉質にはそれぞれ女性にうれしい効能も
上記のように泉質それぞれに特徴があり、その見た目や匂い、効能もさまざま。その中で「美肌の湯」と呼ばれる炭酸水素塩泉のように、温泉は女性にうれしい効能が期待できるんです。箱根エリアに湧き出る6つの泉質にも女性にうれしい効能があると、植竹さんから教えてもらいました。お肌の状態に合わせて泉質を選ぶのもおすすめです。
単純温泉…古い角質を除去してくれるものも
泉質をブレンドしてているものが多いため温泉地によって違いはあるものの、場所によっては、肌の古い角質を取る「ゴマージュ効果」が期待できる温泉がありますよ。
硫黄泉…デトックス効果が期待できる
メラニンを分解しシミやそばかすを薄くする効果や、古い角質を取り除き美肌に導く効果が期待できます。また老廃物とさよならできる、デトックスの湯としての効果も。
塩化物泉…しっとりとした素肌に
塩のヴェールによる保温・保湿効果によりしっとりとしたお肌へ導いてくれます。
酸性泉…天然ピーリングですべすべ肌に
強い酸性のお湯により、「天然ピーリング」の効果が。ピーリング効果で、吹き出物対策も叶えてくれるとされています。
炭酸水素塩泉…肌を柔らかくしてくれる
皮膚を乳化し肌を軟化してくれます。しっとりツルツル、そしてスベスベなお肌が石鹸いらずで手に入りますよ。
硫酸塩泉…肌のハリと弾力アップ!
肌の蘇生効果が期待できる「若返りの湯」の効果で、お肌のハリと弾力がアップ。化粧水のような湯を、たっぷりお肌に浸透させてあげてください。
美肌を叶えるための入浴法とは?
温泉の入浴方法で美肌効果がぐんとアップ
ちなみに、美肌効果を叶えるためには温泉の入り方にもポイントが。一般的には体・頭を全て洗って、最後に温泉に浸かって体を温めてから出る…という人が多いようですが、これでは美肌効果が十分に期待できないのだとか。温泉の効能を最大限に体感できるよう、ぜひ下記の方法で入浴してみてください。
①かけ湯:まずは体を簡単に流します。石鹸を使って体を洗う必要はありません。ここで気になる汚れをオフし、温泉に汚れを持ち込まないようにしましょう。
②入浴:5分ほど肩までしっかり温泉に浸かります。体を温めましょう。
③頭を洗う:体と頭を別々に洗うのがポイントです。
④入浴:3〜5分、温泉を皮膚に浸透させるように、ゆったりと浸かります。
⑤体を洗う:ここでようやく体を洗っていきます。石鹸を使いますが、タオルでゴシゴシこするのではなく、手のひらで優しく洗ってあげましょう。
⑥入浴:最後にもう一度入浴。芯まで体を温めながら、温泉を肌になじませましょう。
ポイントは、入浴を何回かに分けてじっくりと芯まで体を温め、お肌に温泉をなじませていくこと。一度に長時間温泉に浸かると、湯冷めの原因になったり、のぼせてしまったり、かえって肌の乾燥を引き起こしたりしてしまいますのでご注意を。
編集部おすすめ!箱根の日帰り温泉施設
最後に、編集部員おすすめの箱根の日帰り温泉施設をご紹介。絶景が望める温泉や、希少な乳白色の温泉など、「これぞ箱根温泉!」と胸を張ってご紹介したい4軒です。気になる泉質や美肌効果と照らし合わせて、お気に入りを見つけてください。
希少なにごり湯を楽しめる「川涌の湯 マウントビュー箱根」
川涌の湯 マウントビュー箱根
箱根湯本駅からバスで約20分、仙石原エリアに位置する「川涌の湯 (かわらのゆ)マウントビュー箱根」。箱根エリアだけでなく関東近郊でも珍しい、乳白色のにごり湯を楽しめます。泉質は酸性硫酸塩泉で、箱根ならではの自然の景色を望みながら、硫黄分・鉄分・ミネラルをふんだんに含有した温泉を満喫できます。
貸切露天風呂 かぐや
中でもおすすめは浴槽のサイズや景観が異なる3つの貸切露天風呂。受付で予約すれば、60分3,500円もしくは4,000円でにごり湯をひとり占めできます。受付は先着順のため、希望する場合は早めに足を運んでみて。
【日帰り入浴】
料金:90分 大人 1,200円 / 子供 630円
【貸切露天風呂】
◆かぐや
2名様 4,000円
◆めだか・金魚
2名様 3,500円
※いずれも営業時間11:00〜(受付終了:14:00 / 先着順)
44℃の熱い湯がクセになる!「箱根大平台温泉 姫之湯」
箱根大平台温泉 姫之湯
梅雨の時季には沿線にアジサイが美しく咲き誇ることでも有名な大平台エリア。大平台駅から徒歩約5分の場所に、「姫之湯」は位置しています。歴史は古く、今から約70年前の1951年に設立された共同浴場で、当時から変わらず源泉掛け流しの大平台温泉を提供。泉質は無色透明のナトリウム塩化物泉です。
44℃の熱めのお湯で体を一気に温める
最大の特徴は、その温泉の温度。姫之湯で楽しめるお湯は44℃と温泉の中でも熱めで、体を一気に温めてくれるのが特徴。この熱いお湯に浸かりたいと、常連さんも多いのだそう。
昔ながらの券売機もステキ
設立約70年ということもあり、昔ながらの共同浴場としての景観が楽しめるのも魅力の一つです。
【入浴概要】
料金:大人(中学生以上) 550円 / 小学生 300円 / 小学生未満 無料
時間:9:00〜21:00
定休日:木曜
箱根でもっとも空に近い温泉「箱根湯の花プリンスホテル」
大きなゴルフ場を併設する同館
箱根湯本駅からバスで約30分、標高935mという、箱根十七湯のなかでももっとも標高の高い位置に設けられた露天風呂が人気の「箱根湯の花プリンスホテル」。ほんのり乳白色の硫黄泉を泉質とする湯ノ花沢温泉です。
標高935mで箱根の自然に囲まれながら入浴
箱根の中で一番空に近い露天風呂で、夜は満天の星を眺めながら、昼は柔らかく吹く風を受けながら、硫黄の香りに包まれのんびりと温泉に浸かることができます。同施設が提供する湯ノ花沢温泉は自家源泉からお湯を引いているのも特徴です。
【温泉入浴】
料金:大人 1,800円 / 子供 1,080円
時間:月〜金曜 13:00〜18:00(最終入場:16:00) / 土・日曜 12:00〜18:00(最終入場:16:00)
【温泉&ルームプラン】
料金:1室2名 6,600円〜
時間:チェックイン 13:00 / チェックアウト 17:00
※部屋サイズは12畳の和室
※滞在中何度でも入浴可
※隣接のゴルフ場レストランで昼食の提供も可能(料金別途。13:00LO)
芦ノ湖まで徒歩5分!アクセス良好の「姥子温泉 芦ノ湖一の湯」
ロッジのような外観が特徴的
箱根エリアに8つの施設を構える「一の湯」グループの一つである「姥子温泉 芦ノ湖一の湯」。箱根観光の定番スポットである芦ノ湖から徒歩5分という好立地に構える、姥子温泉が楽しめる温泉施設です。
1階では露天風呂も楽しめる
内湯は源泉掛け流しで、カルシウム(マグネシウム)・ナトリウム炭酸水素硫酸塩泉。1階には3人ほどが入れる露天風呂も用意しています。
同施設で日帰り入浴をすると、一の湯グループのほか施設の大浴場が当日に限り無料で入浴できるように(日帰り入浴受け入れ施設のみ)。入りの湯グループの日帰り温泉巡りをするのもいいですね。
【立寄り入浴】
料金:大人 770円 / 子供 380円
時間:内湯 13:00~20:00 / 露天 13:00〜15:00
泉質から選ぶ箱根温泉巡り
箱根十七湯を中心に、箱根エリアには複数の温泉地が存在しています。旅行プランのエリアに合わせて足を運ぶ温泉地を決めるのもいいですが、泉質から温泉を選んでみるのもおすすめ。泉質を意識して入浴してみると、その匂いや肌触りなどが違うことに気づけるはずです。
泉質からお気に入りを見つける、ツウな箱根温泉巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。