美しい月、お供えの月見団子、ススキ……。日本の秋を楽しむには、やっぱりお月見が欠かせません。日本では十三夜にもお月見をする習慣がありますが、やはり「1年でもっとも美しい月」といわれる中秋の名月を堪能したいところ。ちなみに、中秋の名月とは、旧暦の8月15日である十五夜に見られる月のことです。
2024年に中秋の名月が見られるのは、9月17日(火)。全国各地で、中秋の名月にちなんだお月見イベントやお祭りが開催されています。
この記事では、ぜひ訪れていただきたいイベントの概要や見どころを解説していきます。2023年は、美しい月に思いを馳せながら、風流な気持ちに浸ってみませんか?
★十五夜の歴史や由来について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
2024年の【十五夜】はいつ?日本のお月見の由来や歴史を解説!
(宮城県)観瀾亭「お月見の会」
伊達家の「月見御殿」でお月見を
県指定有形文化財にも登録されている、松島における名所のひとつ「観瀾亭(かんらんてい)」では、雄大な松島湾を望みながらお月見ができます。
松島の海に面して建つ観瀾亭
伊達政宗が豊臣秀吉から譲り受けた観瀾亭は、かつて伊達家の「⽉⾒御殿」としても使われてきました。お抹茶とお菓子をいただきながら、日本有数のロケーションで中秋の名月を楽しめます。
景勝地・松島
日本三景の一つに数えられる、宮城県・松島。松島湾に浮かぶ数百もの島々を含めた風光明媚な景色は、昔から多くの人々を魅了しました。
「おくのほそ道」にも登場する歴史深い観光地であり、全国的な知名度と人気を誇ります。
満月の松島
【お月見の会の基本情報】
■場所:観瀾亭
■住所: 宮城県宮城郡松島町松島町内56
■日程:2024年は開催未定(編集部調べ)
■料金:
大人200円、高・大学生150円、小・中学生100円
■公式サイト:松島市
(東京都)向島百花園「月見の会」
江戸時代から続く歴史あるイベント
向島百花園でのお月見イベント「月見の会」は、なんと江戸時代から続いています。
生い茂る草木から秋の虫の声がきこえてきます
篠笛の演奏をおこなうお供え式、絵行灯の点灯、茶会、箏奏者団体による演奏などを実施。35基もの絵行灯には、それぞれ俳句や俳画が描かれているので必見です。
行灯やぼんぼりに照らされた庭園の中でお月見をしながら、優美な時間を過ごしましょう。
向島百花園とは?
文化・文政期(1804〜1830年)につくられた向島百花園は、エリア一帯に四季の草花があふれる自然豊かな公園です。秋は、ホトトギス、サザンカ、ワレモコウ、ヒガンバナ、センニチソウ、サクラタデ、シュウメイギクなどが見られます。
夜にはぼんぼりに明かりが灯って昼とは違う雰囲気に
9月下旬から見頃を迎える全長30mの「ハギのトンネル」は、名物の一つです。紫色のハギの花が咲き乱れる風景は圧巻。もちろん、お月見には欠かせないススキも見られます。
【月見の会の基本情報】
■場所:向島百花園
■住所:東京都墨田区東向島三丁目
■日程:2024年9月16日(月祝)〜18日(水)
■時間:9:00~21:00(最終入園20:30)
■料金:茶会参加費…1席1000円
■公式サイト:月見の会
(滋賀県)石山寺「秋月祭」
平安時代からの月の名所
石山寺は、歌川広重の「近江八景」にも描かれた歴史ある月の名所です。歴史をさかのぼってみると、どうやら平安時代にはすでに「石山寺から見る月は美しい」と人気だったようです。
灯籠でライトアップされた境内
そんな石山寺では、9月下旬に境内一帯で秋月祭を開催します。境内が竹灯篭でライトアップされ、本堂では「源氏物語」に関するイベントを開催予定です。紫式部法要のほか、能「源氏供養」の披露、講談師による「紫式部と月と源氏物語」など、知的好奇心が刺激されるイベントが多数。中秋の名月を、文学的な空間の中で味わうことができます。
「源氏物語」がうまれた石山寺
石山寺は、紫式部が「源氏物語」の構想を練ったといわれているお寺です。新しい物語を書き上げるために、紫式部は石山寺に7日間参籠。
そこで琵琶湖湖面に映る十五夜の名月を見て、「今宵は十五夜なりけり」と書き出したとか。本堂には、物語を起筆したとされる「源氏の間」も存在しており、部屋の中には紫式部の肖像画(世界最古)も置かれています。
石山寺の境内では、紫式部の像も見られます
【秋月祭の基本情報】
■場所:大本山石山寺
■住所:滋賀県大津市石山寺1-1-1
■日程:2024年9月17日(火)〜18日(水)
■時間:17:30~21:00(最終入山20:30)
■料金:
大人1000円、小学生500円
(8:00~16:30は別途大人600円、小学生250円が必要)
■公式サイト:秋月祭
(愛媛県)八日市・護国「八日市町並観月会」
美しい月を和楽器とともに
八日市町並観月会は、八日市・護国地区の街並みの中でお月見ができるイベントです。手作りの吊り行灯・置き行灯が灯された幻想的な雰囲気の中で、中秋の名月を堪能できます。
護国地区の街並みを通ると、まるで江戸末期〜大正時代にタイムスリップしたかのような気分に浸れます。伝統的な町家を散策しながらお月見をする体験もできます。重要文化財でもある、本芳我家(ほんはがけ)住宅の庭園のライトアップもお見逃しなく。
ライトアップされた風情ある街並み
和楽器(琴や篠笛など)の演奏と一緒に月を楽しめるほか、八日市護国地区町並保存会女子部による月見団子がいただけるところも魅力です。
中秋の名月を彩る催しの数々
観月会では、行灯によるライトアップのほか、さまざまな催しが開催されます。愛媛県民謡である「はぜとり唄と踊り」、「手漉き和紙作品展・箔飾和紙展」、「街並みでの自由投句」など、バラエティ豊か。
ロマンチックな雰囲気に浸りながらお月見をするだけでなく、地域の文化に触れることができるので、興味のある方はぜひチェックを。
【八日市町並観月会の基本情報】
■場所:八日市護国伝統的建造物群保存地区
■住所:愛媛県喜多郡内子町内子町内子
■日程:2024年9月17日(火)〜18日(水)
■時間:18:00頃~
■公式サイト:八日市町並観月会
(大分県)杵築市「城下町杵築観月祭」
行灯と月明かりに照らされる城下町
昔ながらの風景が味わい深い城下町・大分県杵築(さつき)市一帯では、中秋の名月にあわせて観月祭が開催されています。
歴史的な武家屋敷や町家に、雰囲気のある行灯や光のオブジェなどが灯される光景は、まるで映画のワンシーンのよう。琴や尺八の演奏を聴きながら月を眺められる観月祭は、多くの人々から支持されています。
月見を楽しむ人々の足元を照らす行灯
行灯で街を照らす理由とは?
観月祭の期間中、武家屋敷の中ではお茶会も開催。杵築市は、古くから茶の湯の文化が生活に根付いている町でした。
普段からお茶会もよく開催されており、行灯で客人の足元を照らしていたといいます。お月見に訪れた人々の足元も、同じように行灯で照らしたため、「行灯で街を照らす」観月祭のかたちが生まれました。
現在は行灯だけでなく、趣向を凝らした光のオブジェも多数。月明かりはもちろんのこと、さまざまな明かりのかたちを楽しめる祭りです。
【城下町杵築観月祭の基本情報】
■場所:きつき城下町一帯
■住所:大分県杵築市杵築
■日程:2024年開催未定(編集部調べ)
■公式サイト:大分県杵築市観光協会公式ホームページ
(長崎県)長崎新地中華街「中秋節」
異国情緒あふれる神秘的な空間
諸外国との貿易が盛んだった背景から、さまざまな国の文化が息づく長崎県では、個性的なお月見イベント「中秋節」が体験できます。新地中華街に600個もの黄色いランタン「満月灯籠」が照らされる光景は、まるで異国のお祭りのようです。
過去には、中国獅子舞・龍踊・変面ショーなどの中国文化たっぷりの催し物も開催。チャイニーズな雰囲気とともにお月見を楽しめる、全国でもレアなイベントです。
中秋節の長崎中華街
中秋節とは?中秋の名月とは違うの?
中秋節とは、日本の中秋の名月とほぼ変わりません。なぜなら、日本のお月見は中国に由来する文化・風習だからです。
中秋節は、中国における三大節句のひとつ。春節・端午節とともに、国民から親しまれています。丸く明るく美しい中秋の名月は、中国における家族団らんの象徴。新地中華街の中秋節なら、日本とは少し違う意味が詰まったお月見が味わえます。
【中秋節の基本情報】
■場所:新地中華街
■住所:長崎県長崎市新地町10
■日程:毎年9月下旬開催予定
■時間:17:00~21:00(提灯点灯17:00~22:00)
■公式サイト:長崎市公式観光サイト
まとめ
中秋の名月には、日本各地で多彩なお月見イベントが開催されます。美しい自然や幻想的な街並みとともに月を眺めれば、思わず写真を撮りたくなることでしょう。
地元のイベントに参加するのもよし、ずっと訪れてみたかった地域のイベントに足を運んでみるのもよし。一生の思い出に残るような、素晴らしい秋の夜長を過ごしてみてください。
Text:Iwaipan / Sakura Takahashi
Photo:PIXTA(特記ないもの)
参考:
松島町/日本三景松島/宮城まるごと探訪/松島島巡り観光船/向島百花園/石山寺/内子町公式観光サイト/イマナニ/内子町/大分県杵築市観光協会公式ホームページ/九州たびネット/長崎市公式観光サイト/長崎文化放送/各種パンフレット