日本を代表する歴史ある楽器のひとつ「和太鼓」といえば、祭りや行事等のイベントで欠かせないマストアイテム。歴史ある打楽器として知られていますが、近年ではプロの和太鼓アーティストも登場し、世界的にも非常に注目を集めている楽器であることをご存知でしょうか?
今回の記事は、そんな和太鼓に興味を持っている人にぴったり。和太鼓の歴史や種類について探っていくとともに、実際に和太鼓を叩ける体験アクティビティに参加し、その魅力を深掘りしていきます。
日本のお祭りで欠かせない「和太鼓」の歴史とは?
日本人にとってなじみのある楽器、和太鼓。祭りなどでよく目にする和太鼓ですが、実は長い歴史があることをご存知でしょうか?
夏祭りでも大活躍の和太鼓
日本における太鼓の歴史は、およそ紀元前500年頃が始まり。古代日本では、膜鳴楽器の総称としてツヅミと呼ばれていたそう。712年に完成したとされる日本の神話『古事記』にもツヅミ(都豆美・豆豆美)が登場しているそうです。
現在では日本で伝統的に使われる太鼓の総称として知られる「和太鼓」ですが、この名称の起源は諸説あります。一説によると、中国から大太鼓という意味の「大鼓(タイクー)」という語が伝わり、その後日本で使われる太鼓の総称として「タイコ(太鼓)」と呼ばれるようになったそうです。
中国の太鼓・大鼓(タイクー)と奏者
今回は、東京都台東区にある太鼓の博物館「世界の太皷資料館 太皷館」にお邪魔し、その歴史や種類を調査してきました。
太皷館は和太鼓の展示のほか、アジア、アフリカ、ヨーロッパなど世界各地の太鼓を約800点収蔵。「太鼓について学ぶだけでなく、実際に叩くことで太鼓の良さを知ってほしい」という七代目・宮本卯之助の思いから、展示されている太鼓の多くを実際に叩くことができ、太鼓による音の違いを実際に体感できます。
太皷館では、和太鼓以外にも世界の太鼓が多く並ぶ
【世界の太皷資料館 太皷館 営業案内】
住所:〒111-0035 東京都台東区西浅草2-1-1 4F
TEL:03-3842-5622
営業時間:10:00 - 17:00
入館料金:大人 500円 子供150円
休館日:月曜(祝日の場合は開館) 火曜
公式ホームページ:世界の太皷資料館 太皷館
日本に残る歴史ある最古の太鼓の資料
日本に残る最古の太鼓の資料は、古墳時代後期の500年頃(6世紀頃)だそう。群馬県佐波郡堺町で出土した埴輪(素焼きの土人形)のなかに、太鼓をもった男子の埴輪が発見されています。樽型の太鼓を肩から斜めにかけているその埴輪は、現在、東京国立博物館に所蔵されています。
群馬県にある天神山古墳の埴輪(太鼓を持った埴輪イメージ)
今では一般的に楽器として使われる和太鼓ですが、かつては戦の合図や士気を高めるために使われたり、情報伝達のために使われるなど、より日本人の生活に寄り添う道具であったことがうかがえます。
1200年以上の歴史がある「雅楽」でも使われる太鼓
1200年以上の歴史がある、日本の最も古い古典音楽「雅楽(ががく)」。現在でも、宮内庁の楽部が雅楽を伝承しています。そんな歴史的な音楽の中でも太鼓が登場し、音楽の節目に使われる「楽太鼓(がくだいこ)」や、リズムをとる「三の鼓(さんのつづみ)」などが使われています。歴史ある雅楽の打楽器は、さまざまな大きさや構造をもち、種目によって用いられるものが異なるのだそう。
現在も雅楽で使われる伝統的な太鼓・楽太鼓
752年に行われた奈良の「東大寺大仏開眼会」ではアジア各地から音楽家が集まり大演奏会が開かれるなど、ほかの国々と音楽によって交流していた記録が残っています。中国や朝鮮などから伝わった手法や知識が、日本国内においても継承されさまざまな形に変化していったことがわかります。
日本のお祭りなどで欠かせない存在
ちなみに、日本に古くから伝わる「能」や「狂言」などの歴史ある伝統文化にも和太鼓が登場し、現在も演技やセリフに華を添えるお囃子(おはやし)で使用されています。曲の進行を握ったり、舞を盛り立てたりと演劇に彩りを添える役割を担っています。
愛媛県内子町に残る芝居小屋の舞台
また、江戸時代に庶民の間で大流行した「歌舞伎」でも伴奏音楽として太鼓が使用されてきました。日本各地のさまざまな民俗芸能や祭礼などのお祭りでも、和太鼓が使われています。日本の音楽や文化において、歴史的にも和太鼓が欠かせない存在であることが分かりますね。
「和太鼓」の作り方や種類について
古代より日常の場面だけでなく、宮廷から民間まで祭りなどの行事で使われてきた和太鼓。和太鼓には大きいものから小さなものまでさまざまな種類がありますが、作り方にも特徴があります。
鋲留め太鼓
日本の太鼓は、皮の張り方により大きく2種類に分けられます。ひとつは「鋲留め太鼓」と呼ばれ、鉄の鋲で直接胴に皮を張ります。もうひとつは「紐締め太鼓」という、鼓面を胴の両側から紐で締め上げる張り方。
中国の太鼓・架鼓
鋲留め太鼓は中国や朝鮮半島、日本などのアジア圏に多くみられます。紐締めは世界でみられる最も古いタイプです。太皷館では、中国や韓国の太鼓も展示されており、見た目も似ている部分が多いことから、アジア圏ならではの繋がりを感じられます。
太鼓の種類は様々。太鼓の鼓面の多くは動物の皮
太鼓の鼓面には、動物の皮を使うのが一般的なのだそう。和太鼓では牛や馬の皮を使う一方、外国の太鼓の中には、象やキリンの皮を使った珍しいものもあります。
左側は、ベトナムのエデ族の太鼓。鼓面は象の皮。(太皷館・アジアの太鼓コーナー)
【和太鼓で使われる材料】
鼓面:牛皮、馬皮
胴:木(欅・栓(せん)・タモ・杉・桐・桜・栃)
長胴太鼓(宮太鼓・大太鼓)
日本の夏祭りや祭事などで多く登場する「長胴太鼓」は、神社仏閣、祭礼、歌舞伎や伝統芸能などで使用される日本で一般的な和太鼓です。他の太鼓と合わせてグループ演奏する「組太鼓」などの和太鼓演奏でも使用されています。鋲で固定している鋲留め太鼓です。
長胴太鼓の胴には欅(けやき)などが使われ、山から伐りだした大木を原木のまま自然乾燥させ、荒胴と呼ばれる形に整形し、3〜5年ほどかけてじっくりと乾燥させます。鼓面には牛皮が使用されることが一般的。胴の表面は手鉋(てかんな)で丁寧に仕上げます。それぞれに年輪が違うため、木目を整えながら美しく仕上げるには経験が必要です。
そして完成した胴に皮を張り、打面を打ち伸ばす作業と、皮の縁を木槌で打ち下げていく作業(エンオトシ)作業とを繰り替えし、皮を均一に伸ばしていきます。この場面で、音を確かめながら、高い音、低い音など調整していきます。
大きな胴が特徴の長胴太鼓
平胴太鼓
「平胴太鼓」は長胴太鼓と同じ鋲留め太鼓で、胴の短さと低めの音質が特徴。軽量で持ち運びしやすいことから、歩き回る阿波踊りなどで使用されます。
持ち運びにも便利な平胴太鼓
締太鼓
歌舞伎の囃子や民俗芸能などでも使われる「締太鼓」。紐で皮を締めた太鼓の総称で、紐で縛る「ロープ締め」と平輪とボルトで締める「ボルト締め」に分けられます。鋲留めと異なり音が調整しやすいのが特徴ですが、ロープ締めは手の込んだ作業が必要なのだそう。もともと「麻緒」などのロープ締めが一般的でしたが、現在では大正時代の中頃にできたとされるボルト締めが多いのだとか。
ボルト締めの締太鼓
桶胴太鼓
主に北陸や東北地方のお祭りなどで使われる「桶胴太鼓」。胴はくり抜きではなく、板を張り合わせた胴に紐で皮を締めつけた太鼓です。大小さまざまなサイズがあり、肩から下げて演奏するスタイルもよくみられます。長胴太鼓より軽い音質が特徴です。
東北のお祭り・鹿踊りで使われる桶胴太鼓
鼓(つづみ)
能楽や長唄で用いられる「鼓(つづみ)」。手で打ち鳴らすタイプの太鼓で、中央のくびれた砂時計型の胴に皮を張る紐締め太鼓です。「大鼓」と「小鼓」の2種類があり、同じ構造ですが、サイズや構え方が異なります。
右側が小鼓、左側が大鼓。太皷館では実際に演奏も可能(体験用として合成の皮を使っています。)
小鼓と大鼓は、一緒に演奏されることが多く、演奏では曲の進行を握る大事な存在です。温度や湿度によって音が変わる繊細な楽器で、大鼓は演奏前に鼓面の皮を焙じて乾燥させるのに対し、小鼓は皮に適度な湿気が必要。さらに、演奏の度にそれぞれ組み直します。
日本の歴史的な古典音楽で使われる鼓
東京都内で気軽にできる和太鼓体験!
今回はさらなる太鼓の魅力をさぐるため、実際に和太鼓を叩き曲を演奏できるという体験アクティビティに参加してきました。
昨今は学校のクラブ活動や自治体ごとに結成する団体に参加し、習い事や趣味として和太鼓を楽しんでいる人も多いようです。身体全体を使って音を奏でる和太鼓は、軽いエクササイズにもぴったりなのだとか。ここからは、体験アクティビティの様子をレポートしていきます。
和太鼓HANADAの花田さんと参加者のメンバー
今回参加したのは、東京・大久保にて開催される「和太鼓HANADA」の和太鼓体験アクティビティ。1時間のレッスン内で、実際に和太鼓を叩いてリズムを習得し、最後は参加者全員で曲を演奏していきます。
この日は、香港から日本に旅行に来ていた3人の参加者と一緒に和太鼓体験をすることに。3人とも日本の和太鼓に興味津々な様子です。和太鼓HANADAには海外からの生徒も訪れるようで、オーストラリアやシンガポール、アメリカといった国々からの参加者も多いそう。和太鼓を叩くだけでなく、国際交流もできるなんて驚きです。海外からの注目度の高さが伺えます。
指導してくれるのは、新宿と蒲田の和太鼓教室を運営している花田さん。初心者にも優しく教えてくれ、とっても親しみやすい方です。和太鼓はほかの楽器と違い音階がないため、リズムを意識することが上手に叩くためのコツ。音の強弱などをつけ美しく演奏するのは難しいものの、音を奏でるのは簡単なため、初心者でも気軽に挑戦できます。今回参加のメンバーも、全員初心者。花田さんの太鼓の説明にしっかり耳を傾けます。
花田さんがしっかりとサポート
レッスンで使う和太鼓は、軽快な音が特徴の桶胴太鼓と、高い高音が特徴の締太鼓。バチを使い、花田さんの合図でゆっくり叩きはじめます。
花田さんのリズムを真似して太鼓を叩いていくと、タイミングを気にしすぎて思い通りに手が動かなかったり、テンポが掴めなかったりと、それぞれの参加者によって個性が出てきます。リズムをしっかり覚えるのがなかなか難しく、苦戦する場面もありました。花田さんだけでなく、参加者もお互いにアドバイスを出し合い、楽しく覚えていきます。
アクティビティで使う桶胴太鼓と締太鼓
和太鼓の叩き方を習得したところで、一曲を複数のパートに分けて練習し、最後には通しで叩いてみます。今回の体験では、桶胴太鼓のリズムをベースに、締太鼓の高音で華やかさを出していきます。
通しで一曲演奏するためには、それぞれのパートの繋がりを意識しながらリズムを体に刻み込んでいくことが必要です。一曲を何度も繰り返し叩き、周りの音を聴いて合わせていくことで、徐々に全員のタイミングが合うようになっていきました。
和太鼓のリズムを覚える参加者
音階がない和太鼓はメロディを演奏することはできないものの、和太鼓の音量や音質を利用しながら全員で合わせていくことで立派な一曲が出来上がります。最後に参加者全員とリズムが揃うと、達成感があり思わずガッツポーズ。言語は違えど、リズムで心を通わせ楽しく交流できました。
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世界からも注目を集める和太鼓グループ 「DRUM TAO」
和太鼓教室が東京都内に多く誕生しているだけでなく、有名な和太鼓グループは、国内はもちろん世界公演も行なうなど、国内外で和太鼓は密かなブームとなっています。最後に、昨今の和太鼓ブームを牽引している、洗練されたビジュアルとパフォーマンスで圧巻の演奏を披露するグループ「DRUM TAO(ドラム タオ)」を紹介していきます。
これまでの和太鼓のイメージを覆すパフォーマンス ⒸDRUM TAO
「DRUM TAO」は、世界観客動員数800万人を超える人気を誇り、日本だけでなく世界からも大注目の和太鼓グループです。政府から「第6回観光庁長官表彰」「地方自治法施行70周年記念総務大臣表彰」を受賞するなどの功績を持ち、今後さらなる人気が期待されています。
2018年年末のNHK紅白歌合戦にも登場するなど、メディアでも積極的に取り上げられている「DRUM TAO」。現在、日本国内を含め世界各地で年間700回以上の公演を行なっています。世界公演を行っていく中で試行錯誤を繰り返し、技術や演出のアップデートを行っているのだとか。これまでの和太鼓の概念を打ち破り、一流アーティストとのコラボレーションやプロジェックションマッピングの導入など、常に新たな進化を続けています。
躍動感あるステージで観客を圧倒 ⒸDRUM TAO
1993年に活動を始めた同グループは、40人を超えるメンバーで構成。従来の和太鼓の古典的なイメージを覆し、現代のスタイリッシュな様相で繰り出されるパフォーマンスは驚きの光景です。
衣装などにも工夫を凝らし、魅せ方にこだわっているのも特徴。デザイナーのコシノジュンコ氏に衣装を依頼し、公演ごとに新調するなど細部までこだわりを感じられます。また、DRUM TAOのメンバーの肉体美も人気のひとつ。アスリートのように鍛え上げられたメンバーの身体はパフォーマンスにより一体感を与え、耳だけでなく目でもその演出を存分に楽しむことができます。
和太鼓の演奏はもちろん、和楽器の笛や琴、殺陣なども楽しめる「DRUM TAO」の公演は、力強いパフォーマンスを楽しみたいという人にぴったり。
Youtubeで、演奏の一部を見ることができます。
>>DRUM TAOの動画はこちら
世界で大人気の歴史ある和太鼓に挑戦してみてはいかが?
日本人であれば誰もが親しみを感じる歴史ある楽器、和太鼓。今回ご紹介した「和太鼓HANADA」では、楽器として和太鼓を楽しむ以外にも、他の参加者との交流を楽しめます。リズムを通じて仲間と心を通わせることができます。和太鼓は音階がなくリズムを覚えるだけで気軽に挑戦できるため、年齢も国籍も問わず楽しく演奏ができますよ。
新たな趣味のスタートとして、ぜひ和太鼓体験に参加されてみてはいかがでしょう。