毎年11月3日は「文化の日」。国民の祝日のひとつで、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ための日とされています。
では、いったい何故この日が「文化の日」として定められたのでしょうか? この記事では、文化の日の意味や由来を解説します。
さらに、文化の日にまつわるイベントやおすすめの過ごし方も紹介。文化の日について深く知り、今年はいつもと一味違った楽しみ方をしてみませんか?
※この記事は2024年年10月に制作されました。諸事情により最新の状況と異なる場合があるため、お出かけの際はご自身で最新の情報をご確認ください
※2024年10月、一部情報を更新しました
「文化の日」はどんな日? 意味や由来
国民に新憲法が発表された日
11月3日は、現在日本で使われているあらゆる「法」のトップ【日本国憲法】が公布(国民に発表)された日です。
日本国憲法では「平和」と「文化」が大切にされているため「文化の日」という祝日が生まれました。
平和主義の国をめざす新憲法の精神を象徴する「文化の日」は、国民が文化に親しむことを国が推奨しています。
毎年、11月3日は「文化の日」
制定されたのは1948年
日本国憲法が国民に発表(公布)されたのは、1946(昭和21)年。
そして実際に使われ始めた(施行された)のは、翌年の1947(昭和22)年です。
そしてさらにその翌年、1948(昭和23)年7月に、【国民の祝日に関する法律】が成立します。これにより、11月3日は「文化の日」と定められました。
昔は「明治節」という祝日だった
11月3日は明治天皇の誕生日でもあります。「文化の日」が制定される以前、昭和中期までは、11月3日は明治天皇偲ぶ祝日「明治節(めいじせつ)」でした。
ちなみに「明治節」よりも前、明治天皇が在位中は、「天長節(てんちょうせつ)」という祝日でした。「天長節」とは、今でいう「天皇誕生日」のことです。
「憲法記念日」との違い
「文化の日」と似たような由来を持つ祝日に、5月3日の「憲法記念日」があります。
11月3日「文化の日」は、日本国憲法が【公布された日】(=国民に発表された日)なのに対し、
5月3日「憲法記念日」は、日本国憲法が【施行された日】(=実際に使われ始めた日)です。
日本国憲法は発表されて即使われるようになったわけではないのですね。
■■
参考①:11月3日の変遷
●1873(明治6)年 10月14日
「年中祭日祝日ノ休暇日ヲ定ム」という法令が発表され、11月3日が「天長節(てんちょうせつ)」として祝日になる。
●1912(大正元)年 9月4日
「休日ニ関スル件」という法令が発表される。明治天皇が崩御し、11月3日は「天長節」ではなくなって平日となる。天長節は大正天皇の誕生日である8月31日に移動となった。
●1927(昭和2)年 3月4日
「休日ニ関スル件」が改正され、11月3日は「明治節」として祝日になる。
●1948(昭和23)年 7月20日
「国民の祝日に関する法律」が施行される。11月3日は「文化の日」となり、今日に至る。
参考②:1948年【国民の祝日に関する法律】で制定された祝日
1月1日 元日
1月15 成人の日 ※1
2月11日 建国記念の日
3月20日頃 春分の日
4月29日 天皇誕生日 ※2
5月3日 憲法記念日
5月5日 こどもの日
7月20日 海の日 ※3
9月15日 敬老の日 ※4
9月23日頃 秋分の日
10月10日 体育の日 ※5
11月3日 文化の日
11月23日 勤労感謝の日
※1 成人の日:2024年現在は1月の第2月曜
※2 4月29日:2024年現在「昭和の日」
天皇誕生日:2024年現在は2月23日
※3 海の日:2024年現在は7月の第3月曜
※4 敬老の日:2024年現在は9月の第3月曜
※5 体育の日:2024年現在は「スポーツの日」という名称で、日付は10月の第2月曜
参考:
年中祭日祝日ノ休暇日ヲ定ム
休日ニ関スル件
国民の祝日に関する法律
■■
「文化の日」に何をする?─ おすすめの過ごし方
土日と合わせて3連休となる2024年の文化の日。制定された理由にちなんで、文化に触れる知的な楽しみ方をしてみませんか?
ここからは、文化の日におすすめの具体的な過ごし方のアイデアを紹介します。
美術館/映画館/博物館に行ってみる
文化の日におすすめの過ごし方は、美術館や映画館、博物館などの施設を訪れることです。
文化の日を含む11月1日~7日の間は、国が指定する「教育・文化週間」。全国各地で特別展や施設の無料開放が行われる期間であるため、気になっていた施設や展示を訪れるチャンスです。
★「文化の日」に入館料無料になる国立美術館・博物館の一覧はこちら(2023年度)
2023年の場合、国立映画アーカイブ(東京都)の観覧料が無料に。日本の映画史をたどる常設展に加えて、企画展「月丘夢路 井上梅次 100年祭」も観覧できました。
「文化の日」を機に、見たかった映画を見に映画館に足を運んでみては
また、アイヌ文化の展示や調査研究などに特化した 国立アイヌ民族博物館(北海道)も、2023年の文化の日(11月3日)は入館料無料となりました。
国立アイヌ民族博物館の展示室
国立アイヌ民族博物館は「ウポポイ(民族共生象徴空間)」というアイヌ文化の復興と創造等をめざすナショナルセンターの一部。
ウポポイには、湖に面し緑に囲まれた広大な敷地に工房やホールなどの施設が点在しており、アイヌの世界観や自然観を存分に体感できます。
伝統文化を体験してみる
伝統文化を体験することも、文化の日におすすめの過ごし方です。
日本には、さまざまな伝統文化が根付いています。日本固有の文化は海外からも人気が高く、本やテレビ番組などで紹介されているのを目にする機会も多いはず。
しかし、実際には日常で伝統文化に触れる機会はかなり少ないのではないでしょうか。もし日本ならではの文化に興味があれば、文化の日を日本の伝統に触れるきっかけにしてみませんか?
気軽に楽しみたいのであれば、食文化の体験がベストです。南北に広く、海に囲まれた日本には、全国各地に特色ある多彩な食文化が存在しています。
日本の有名な伝統食「おせち」
文化庁に「100年フード」と認定された100年以上続く食文化は、なんと2023年時点で201件。
食べて楽しむのもいいですが、地元の人に親しまれる朝市を訪れてみたり、伝統料理をつくる体験会に参加してみたり、食文化への理解の深め方はさまざまですよ。
家族で楽しみたいなら「伝統文化親子教室事業」に参加してはいかがでしょうか。
こちらは民俗芸能・工芸技術・邦楽・日本舞踊・茶道・華道などの伝統文化を体験できる、小学生・中学生向けのプロジェクト。
全国で毎年3000以上の伝統文化親子教室が開催され、地域に根差した伝統文化の魅力を子どもたちに伝えています。
例を挙げると、公益社団法人が主催する落語教室や、文化財団が開催する和太鼓教室、市が開催する京料理や菓子文化の体験教室など。
文化庁が主導する国の事業であるため、本格的な伝統文化体験がかないます。
華道を体験する親子
ワンランク上の体験をしたい方には、関西地方への旅行がおすすめ。
かつての都がおかれていた関西地方では、和食、古典芸能、工芸など多くの日本文化が生まれました。そんな日本の精神文化の聖地ともいえる関西では、源流に近い体験ができます。
大阪天満宮の御本殿を貸し切った能楽鑑賞や、国宝「勧学院客殿」で行う座禅の特別体験など、人生で一度は体験してみたいラグジュアリーなプログラムがたくさんありますよ。
近畿地方最古の芝居小屋「出石永楽館」。現在も日々、歌舞伎や落語といった日本の伝統芸能を見ることができます
読書をしてみる
文化の日には、思い切って1日を読書に費やす過ごし方もおすすめです。
読書をしたいと考えていても、仕事や勉強の忙しさでなかなか時間が取れない方は多いのではないでしょうか。
2019年に実施された「国語に関する世論調査」では、 16 歳以上の男女の約47.3%が、1か月に1冊も本を読まないという結果が出ました。(※)
(※)平成30年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 |文化庁より(2023年10月27日閲覧)
山積みにされた本
電子機器やソーシャルメディアの発達により、知識を得る手段として手ごろなインターネットが選ばれるのはやむを得ないことかもしれません。
しかし、ゆっくりと時間が取れる休日には、興味をもつ分野に対する知識を深めてみるのがおすすめ。専門性の高い知識に触れ、教養を磨く手段としては、やはり本を読むことが最適です。
自宅でお気に入りの本を読みふけるのもいいですが、新しい本に出会いたい方や、普段と違う環境で読書に没頭したい方は、本の専門施設を訪れてみませんか。
たとえば 国立国会図書館(東京都・京都府)はいかがでしょう。
こちらは法律に基づいて1948年に設立された国の施設で、日本において発行された出版物のすべてが貯蔵されています。
貯蔵物は本だけでなく、学術論文やCD、地図なども対象。膨大な貯蔵数の分、「東京本館」はサッカーのグラウンド21個分ほど、「関西館」は8個分ほどの莫大な面積を誇っています。
東京都台東区の上野公園内には、レンガ棟が美しい国立初の児童書専門図書館「国際子ども図書館」も
マンガを楽しみたい方には京都国際マンガミュージアム(京都府)がおすすめ。
館内では、書架に並ぶおよそ5万冊のコミックスを自由に読むことができます。
さらに、古いマンガ雑誌や研究書など約25万点のマンガ資料や、マンガ制作の現場を実演するマンガ工房など、マンガ好きにはたまらない特別な展示・プログラムも盛りだくさんです。
建築美で有名な埼玉県所沢市の「角川武蔵野ミュージアム」。有料の館内施設の中には「マンガ・ラノベ図書館」があります
史跡巡りをしてみる
文化の日には、史跡巡りもおすすめです。
文化の日は、普段見られない歴史的な彫刻や絵画などが見られる絶好の機会。というのも、この日には全国のさまざまな場所で文化財の特別公開やイベントが行われるからです。
2024年秋の史跡・文化財関連イベント
・石川県の金沢市寺町寺院群における文化財の特別公開
・東京都の東京文化財ウィーク2024
・長野県の国宝松本城Week
・京都府の令和6年度 京都非公開文化財特別公開
「東京文化財ウィーク」は、東京の歴史や文化の魅力を多くの人に伝えるためのプロジェクトで、都内の文化財を一斉に公開する「公開事業」と、特別展や講座などを行う「企画事業」の2本柱で構成されています。
京都府の「非公開文化財の特別公開」は毎年恒例のイベント。上賀茂神社、下鴨神社、知恩院など京都市内の15か所の施設で、建築や庭園、国宝などの貴重な文化財を拝観できます。
紅葉が美しい秋の松本城
世界遺産である京都市南区の東寺では、講堂と五重塔の内部が特別公開されます
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デジタルデトックスしてみる
文化の日におすすめの過ごし方として最後に紹介するのは、デジタルデトックスです。
「デジタルデトックス」とは、一定の時間スマートフォンやゲームなどの機器を使用せず、心身をリフレッシュさせる過ごし方のこと。
「文化の日」を機に、スマートフォンは少し脇に置いた生活をしてみましょう
デジタル機器と距離を置いて自然や人とのコミュニケーションに身をゆだねることは、ストレスの解消に効果的です。
文化の日をきっかけに、デジタルデバイスが欠かせない現代の日常から離れ、昔ながらの文化や自然に触れる過ごし方をしてみてはいかがでしょうか。
全国の宿泊施設では、さまざまなデジタルデトックスプランが提供されています。
たとえば株式会社星野リゾートが展開する宿泊ブランド「星のや」は、軽井沢・京都・竹富島・富士・東京の5施設で「脱デジタル滞在」プログラムを提供。
デジタルデトックスする女性のイメージ
所持するデジタルデバイスをチェックイン時に預け、それぞれの地域の文化や自然を活かしたアクティビティを体験することで、豊かな感性を取り戻せます。
長崎県の宇久島は、島ぐるみでデジタルデトックスを支援。宇久島では、実際に島に住む方々の家に宿泊して島暮らしを体験できる、民泊プログラムが盛んです。
島に入ってスマートフォンの電源をオフにしたら、パワースポットであるアコウの巨樹を訪れて壮大な自然を感じるのもよし、農業体験をして汗を流すのもよし、釣りをしながら海をぼんやり眺めるのもよし……。島暮らしの体験を通じて日常を忘れられます。
宇久島の星空
香川県西部に位置する荘内半島の宿泊施設ル・ポール粟島(香川県)は、デジタルデトックス研修会を提供。
1泊2日のプログラムで、島の文化や大自然を存分に味わうことが可能です。スマートフォンはプログラム開始時に預けなければなりませんが、使い捨てカメラが支給されるため、思い出はしっかりと形に残せます。
「文化の日」関連のイベント・お得情報
毎年恒例!文化の祭典「国民文化祭」
「国民文化祭」は、日本中から個人や団体が集まり、芸術文化や生活文化などの活動を発表する、年に一度の文化の祭典。
1986(昭和61)年から続く歴史あるイベントですが、近年はデジタル技術を駆使した作品が増加するなど、時代とともにアップデートが続けられています。
2024年の開催地は、岐阜県。【「清流の国ぎふ」文化祭2024】と題し、県内全域で各種ワークショップや企画展が開かれます。イベント情報の検索は「清流の国ぎふ」文化祭2024公式サイトでできますよ。
10府県限定「関西文化の日」
関西地方では「関西文化の日」という事業が行われているのをご存じでしょうか。
こちらは、11月の特定日に特定の文化施設を訪れると、入館料や観覧料が無料になるという嬉しい取り組み。
域内にはもちろん、域外の方々に向けても関西が誇る文化資源の魅力を幅広くアピールする事業として、2024年で22回目の開催を迎えます。
2024年は関西全域の約900施設が対象で、11月16日(土)〜17日(日)を中心日として開催。施設によっては11月中に特定日を設定して実施するところもあります。
●無料となる施設を探す:関西文化施設一覧
西日本最大級の規模を誇る兵庫県立美術館。2024年は文化の日当日と、11月16日(土)の2日間、コレクション展の観覧料が無料に
11月1週目は「教育・文化週間」
11月1日から7日までの期間は、国が指定する「教育・文化週間」です。
国民の文化に対する関心と理解を深め、文化のさらなる振興をはかるために、文部科学省や教育委員会が中心となってさまざまなイベントを開催します。
最も注目を集める行事は、毎年の11月3日に開催されている「文化勲章」の授与式でしょう。「文化勲章」とは、文化・芸術・科学技術といった分野で素晴らしい功績をあげた人におくられるもの。勲章は、日本で平安時代から大切にされている花・タチバナをモチーフにしています。
ほかにも、全国各地で体験活動や公開講座、美術館の無料開放などの文化振興を推奨するイベントが実施されます。
芸術を楽しんだり、新しい学問に触れたりするにはもってこいの機会ですね。
まとめ
文化の日の由来や、おすすめの過ごし方を紹介しました。
文化として残された物や芸術や学問には、長い時を経て人々に親しまれるだけの魅力や価値が詰まっています。
この日をきっかけに新しい文化に触れて、感性を磨いてみてはいかがでしょうか。
11月は全国各地で文化に関するさまざまな取り組みやイベントも実施されるため、ぜひ足を運んでみてください。
Text:きいろ Edit:Sakura Takahashi
Photo:PIXTA / Photo AC
参考:
ジャパンナレッジ/関西文化の日/2023年度「第21回関西文化の日」|PR TIMES/教育・文化週間とは?|文部科学省/教育・文化週間|文部科学省/国立映画アーカイブ/国立アイヌ民俗博物館/食文化イベント情報・体験コンテンツ|食文化あふれる国・日本/特別文化体験|Exclusive Expeditions/伝統文化親子教室事業(地域展開型)/伝統文化親子教室事業/Spiritual KANSAI/平成30年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 |文化庁/京都国際マンガミュージアム/[国立国会図書館/国立国会図書館を知ろう!/東京文化財ウィーク情報|東京都生涯学習情報/東京文化財とうきょうぶんかざいウィーク ~見てみよう!身近みぢかにある文化財~|東京都生涯学習情報/令和5年度 第59回 京都非公開文化財特別公開|そうだ京都、行こう。/金沢寺町寺院群文化財 特別公開2023|金沢市観光公式サイト/イベント情報|国宝松本城/金沢寺町寺院群文化財特別公開2023|テレビ朝日系列【HAB北陸朝日放送】/非公開文化財特別公開事業|公財 京都古文化保存協会/DIGITAL DETOX JAPAN/星野リゾートニュースリリース/宇久島デジタルデトックス/ル・ポール粟島/宇久島の民泊/文化庁/一般社団法人日本デジタルデトックス協会