茨城県つくば市北部に位置する「筑波山」は、「男体山」と「女体山」二つの峰が連なるようにしてそびえ立っています。標高は男体山が877m、女体山が871m。日没の際には山頂付近が紫色に輝くことから「紫峰(しほう)」とも呼ばれています。筑波山の麓に広がる北条大池と作り出す風景は息を呑む美しさ。
筑波山の登山コースはレベル別に分けられているほか、頂上まで続くロープウェイやケーブルカーも運行され、初心者の方でも安心して山登りを楽しめます。気軽に登れる山として愛される筑波山の登山コースや見どころについてご紹介していきます。
筑波山の登山コース6種
筑波山にはいくつかの登山コースが整備され、主要なコースは6種。それぞれ長さや高低差はもちろん、男体山と女体山どちらの頂上に続くのかといった点で異なります。バラエティに富んだ登山コースにより、上級者はもちろん初級者の方でも登山を楽しむことができるでしょう。ここでは筑波山の各登山コースを紹介します。
1. 御幸ヶ原コース
筑波山の男体山山頂
男体山の頂上まで続く「御幸ヶ原コース」は、標高差約610mで、筑波山登山全コースの中で最もハードな登山コース。ケーブルカーに沿って作られた道は比較的険しいですが、初心者の方でもしっかりと準備すればトライできるコースです。
距離:約2km
所要時間:登り90分、下り70分
2. 迎場コース
迎場コースにある休憩所
「迎場コース」は1.6kmと筑波山登山コースの中では距離は長いものの、高低差が190mと小さく、岩場も少ないため非常に登りやすい登山コース。このコースはロープウェイがある「つつじヶ丘駅」に向かうため、山頂まで続いていません。女体山の頂上へ歩いて目指す方は「酒迎場分岐」で合流する白雲橋コースにそって歩きましょう。
頂上に直結していないことから比較的空いており、ゆっくり登山を楽しみたい方にオススメの登山コースです。
距離:約1.6km
所要時間:登り60分、下り50分
3. 白雲橋コース
白雲橋コースの途中にある迫力のある岩「弁慶七戻り」
全長2.7kmを誇る最長の登山コースである「白雲橋コース」。女体山の山頂へ続く道には、「弁慶七戻り」や「高天原(たかまがはら)」と呼ばれる巨岩があり、筑波山ならではの自然を満喫することができます。
また道中、弁慶茶屋跡等があり休憩場所にぴったり。ほっと一息入れることができます。往復3時間ほどかかるコースではありますが、筑波山の魅力を存分に味わいたい方にオススメの登山コースです。
距離:約2.8km
所要時間:登り110分、下り95分
4. おたつ石コース
おたつ石コース入り口
つつじヶ丘駅から弁慶茶屋跡を通る短いコースです。そのため、片道はロープウェイに乗って景色を楽しみたい方にオススメ。途中から白雲橋コースに入ることができ、女体山頂まで登山をすることが可能です。
おたつ石コース自体は全長1kmで約1時間で往復することができます。女体山まで登山する場合は往復で2時間半程度です。
距離:約1.0km
所要時間:登り40分、下り35分
5. 自然研究路
緑豊かな自然研究路
「自然研究路」は、男体山の山頂付近を一周するコース。全長は1.5kmで、約1時間で歩くことができます。道中では、国定公園の特定保護地区に指定されているブナ林があります。さらに途中の展望台からは関東圏を一望できるほか、晴れた日には富士山やスカイツリーを望むことが可能です。
距離:1.5km
所要時間:60分
6. 山頂連絡路
山頂連絡路
男体山と女体山の山頂を結ぶ「山頂連絡路」。ケーブルカーの駅「筑波山頂駅」もここにあります。
道中の見どころは、筑波山頂駅からすぐの場所にある男女川源流(みなのがわげんりゅう)」。第57代陽成天皇がこの場所の百人一首の歌を詠んだと言われている場所です。その隣には筑波山を象徴する大杉「紫峰杉(しほうすぎ)」がそびえ立ちます。
距離:男体山頂まで約300m、女体山頂まで約550m
所要時間:男体山頂まで約15分、女体山頂まで約15分
筑波山の見どころ
筑波山神社
筑波山の麓にある筑波山神社の拝殿
「筑波山神社」は、約3,000年もの歴史を誇り、神聖な山としても知られる筑波山を頂上から見守ってきました。筑波男大神(いざなぎのみこと)と筑波女大神(いざなみのみこと)の夫婦二神を祀る神社で、夫婦和合・縁結びのご利益があるとされ、多くの参拝客が訪れます。
筑波山神社本殿は男体山、女体山の山頂にそれぞれありますが、中腹部に位置する宮脇駅のすぐそばに拝殿もあるので、筑波山の山頂まで行かずとも参拝が可能です。
公式サイト:筑波山神社
登山道にある数々の奇岩
筑波山には多くの奇岩が登山道に点在しています。それぞれの由来や言い伝えを楽しみながら登山をするのも筑波山の楽しみのひとつ。
男体山山頂近くにある「立身石(りっしんいし)」は、親鸞聖人が念仏を唱えた場所、間宮林蔵が武士の身を立てる祈願をしたなど、歴史上の人物と関わりがある岩だとされています。
歴史と深く関わる立身石
女体山頂に向かうコース上にある「ガマ石」は、江戸時代の大道芸人の長井兵助が傷薬である「ガマの油」を売るための口上を考え出したと場所と言われています。その口上により長井兵助が大成功をおさめたことにより、その名残から口の中に石を投げ込むと金運が上がるパワースポットになりました。
金運が上がるパワースポット・ガマ石
その他にも「弁慶七戻り」や「出船入船」など数々の奇岩があります。筑波山の不思議な岩のパワーを感じに行きましょう。
季節によって移り変わる美しい筑波山の景色
夏の筑波山頂から見た景色
筑波山は季節によってその色を変え、様々な風景を映し出します。春には梅や桜が咲き乱れ、ピンク色や白色に染め上げます。
夏にはブナ林などが生み出す自然の風を感じながらリフレッシュ。山頂では夏の雄大な関東の景色を一望できます。
秋は紅葉やイチョウが見ごろを迎えます。この時期には紅葉のライトアップが行われ幻想的な雰囲気に。夜間のケーブルカーも運行され、筑波山ならではの秋の季節を楽しむことができます。
白い景色に移り変わる冬の筑波山
空気が澄み渡り、筑波山からの夕暮れや雪に覆われた景色を見ることができるのは冬の季節ならでは。夕暮れ時に見られる山頂から富士山のシルエットも格別です。ロープウェーなどで気軽に冬景色を見ることができます。
筑波山の見頃は?紅葉が見られる秋がオススメ
日本の四季折々に合わせて、多様な景色を生み出す筑波山。そんな中でも、秋の紅葉の時期に訪れるのがオススメです。
紅葉が見ごろを迎える秋の筑波山
秋の紅葉が見ごろを迎える10月ごろからケーブルカーで「ナイトクルージング&もみじライトアップ」が開催。美しく咲き誇る筑波山の紅葉が夜にはライトアップされ、お昼とはまた違った景色を生み出してくれます。車両からの景色はもちろんのこと、ゆっくり登山をしながら筑波山の紅葉を楽しむこともできるでしょう。
ライトアップされた秋の筑波山
また、例年9月中旬から始まる「筑波山ロープウェイ サンセット&スターダストクルージング」が行われます。ロープウェイが夜間運行され、筑波山頂から空が赤く染まった夕焼けや夜の煌びやか景色を眺めることができます。その美しさは夜景事務局が選ぶ「日本夜景遺産」にも認定されました。
筑波山の基本情報(アクセス・駐車場など)
筑波山の基本情報について紹介していきます。筑波山に訪れる前に事前に確認をしておきましょう。
アクセス
●電車
【秋葉原駅】→つくばエクスプレス乗車→【つくば駅】下車→筑波山シャトルバス乗車→【筑波山神社入口】または【つつじヶ丘】下車
●バス
【東京駅】→高速バス乗車→【つくば駅】・【筑波センター】下車→筑波山シャトルバス乗車→【筑波山神社入口】または【つつじヶ丘】下車
●車
常磐自動車道土浦北ICより40分
常磐自動車道桜土浦ICより45分
駐車場
あり
筑波山神社駐車場 :450台 500円
市営筑波山第3駐車場 :138台 500円
市営筑波山第4駐車場 :97台 500円
ケーブルカー&ロープウェイ情報
ケーブルカー(宮脇駅〜筑波山頂駅)
運行時間:9時20分〜17時40分
料金:片道・大人590円 子ども390円
往復・大人1070円 子ども540円
ロープウェイ(つつじヶ丘〜女体山駅)
運行時間:8時40分〜17時40分
料金:大人750円 子ども380円
往復・大人1300円 子ども650円
(※時期によって運行時間が変動します。詳しい情報は公式サイトをご覧ください。)
公式サイト:筑波山ケーブルカー&ロープウェー
山登りには何を着ていけばいい?
基本は3層のレイヤリング
それほど高い山ではないとはいえ、自然の中で楽しむからには服装にもそれなりの準備が必要です。ここでは山登り初心者さんに向けて、筑波山登山でおすすめの服装と持ち物について解説していきます。
山登りの基本は「重ね着」
山登りに限らずキャンプなどでもそうですが、天気や気温の変化がある野外では〝重ね着〟がおすすめ。基本は「ベースウェア」「ミドルウェア」「アウター」の3層でレイヤリングを作ります。
ベースウェア
ベースウェアは直接肌に触れる肌着のこと。山登りをしていると汗をかきますので、汗冷えしないよう速乾性のある素材がおすすめ。コットンは乾きにくいので△。化繊は乾きやすい素材です。
ミドルウェア
肌着とアウターの間に着る中間着を指します。やはり山登り中は汗をかきますので通気性のよいものがおすすめ。春先や秋口などは保温力のあるフリースが便利です。
アウター
雨や風から体を守るためのウェアがアウターです。防水・防風性があるものを選ぶとよいでしょう。脱ぎ着することも多いので、コンパクトに収納できて、軽いものが便利です。
たとえば暖かい季節の筑波山登山ならこんな格好
●ベースウェア:吸水速乾インナー(ユニクロのエアリズムなど)
●ミドルウェア:速乾Tシャツ(ザ・ノース・フェイスのポリエステルTシャツなど)
●アウター:シェルジャケット(モンベルのソフトシェルジャケットなど)
筑波山周辺のおすすめ宿泊施設3選
筑波山 江戸屋
創業390年以上の伝統ある宿「江戸屋」。和風クラシカルモダンを特徴としており、ノスタルジックな雰囲気を感じることができるでしょう。
宿泊はもちろんのこと、日帰り温泉や旅館内の喫茶店にある足湯も利用可能。自然の心地よさを感じながら足湯に浸かることができます。筑波山登山の後はこちらの江戸屋でリラックスしませんか。
公式サイト:江戸屋
青木屋
宮脇駅の近くにある「青木屋」。こちらのホテルの特徴は屋上にある大パノラマの露天風呂「雲上の湯」です。開放的な露天風呂で身も心も癒されることでしょう。
公式サイト:青木屋
筑波山京成ホテル
つつじヶ丘駅の隣にある「筑波山京成ホテル」。どの部屋も抜群の景色を望めることができます。
関東平野を見下ろす形で景色を楽しむことができる「天空の湯」。露天風呂からは夜景や夕焼けをリラックスしながら堪能できます。
公式サイト:筑波京成ホテル
まとめ
筑波山の登山コースから、見どころ・おすすめの時期などを紹介いたしました。筑波山は複数の登山コースがあり、初心者〜上級者の方でも登山の楽しさを感じることができるでしょう。ロープウェーやケーブルカーもあるので、帰りも車両に揺られながら景色を楽しむことができます。ぜひ、筑波山に立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
Edit:Kaoru Maki
参考書籍・サイト:『ランドネアーカイブ 山登り基本のステップアップBOOK』(ピークス発行)/『新しい登山の教科書』(栗山裕哉監修・池田書店発行)/Mount -Tsukuba/筑波山ケーブルカー&ロープウェー/つくば観光コンベンション協会ほか