しとしとと雨が降り続く梅雨の季節。なんとなく気分も憂鬱で、外出するのが億劫になってしまう人も多いのではないでしょうか。
そんな時期に見頃を迎えるのが、「紫陽花(あじさい)」です。紫、水色、ピンクなど、色とりどりに咲くあじさいは、美しくも妖艶で、見る人の気持ちを明るくしてくれます。
家にこもりがちな生活が続く中、外に出てあじさいを観賞したい。だけど、人が多く集まっている場所は避けたい。
今回はそうした声に応えるために、紫陽花の基本情報や花の色の変化の秘密、散歩をしながらあじさいが観賞できる関東の「あじさいロード」を紹介します。
梅雨を代表する花「あじさい」
まずはあじさいがどんな花なのか、簡単に知っておきましょう。
あじさいは日本原産で、奈良時代には既に存在していたと言われています。18世紀になると、西欧に渡って品種改良が行われるようになり、今ではその品種は2,000を越えるほど。近年では、カーネーションに代わる母の日の贈り物としても人気の花です。
日本で見頃を迎えるのは6~7月頃ですが、西欧で栽培されているのは3月~11月頃。梅雨の花というイメージを持っているのは、日本だけなのです。
「ダンスパーティー」という品種のあじさい
どうしてあじさいの色が変化するの?
あじさいは、次第に色が変化していく植物です。これは土壌の酸度によるもので、土が酸性であれば青色、アルカリ性ならピンク色へと変化します。そのため、あじさいは別の名で「七変化」とも呼ばれており、古来の日本では変化する様子が移り気であるとして、あまり好まれていませんでした。
酸性の土であれば青系に、アルカリ性の土であれば赤系に変化するあじさい
あじさいの「花」は花じゃない!
あじさいと言えば、花が集まって膨らみができているようなイメージを思い浮かべますよね。実は、あじさいの花びらのように見える部分は「がく」。本当の花は、がくの奥にある小さく色づいた部分です。あじさいは、花びらではなく美しいがくを観賞する花なのです。
また、一般的な紫陽花は、装飾花として改良された園芸種となっています。
ガクアジサイの上部の小さい蕾のようなものが「花びら」、花びらのような大きな花が「がく」
全国に存在する「あじさい寺」
日本には、境内にあじさいが見事に咲く「あじさい寺」と呼ばれる寺院が数多くあります。これは、季節の変わり目である6月に亡くなる人が多いことから、仏花として植えたのが始まり。代表的なあじさい寺は、神奈川県・鎌倉の明月院や山梨県・富士川町の小室山妙法寺などです。
梅雨の時期の明月院には、毎年多くの観光客が訪れます
関東のあじさいロード5選
それでは、あじさいの基本情報や特徴を学んだうえで、人混みを避けてのんびりとあじさいを観賞できる、関東のあじさいロードをチェックしていきましょう。
隅田公園あじさいロード(東京都)
東京都台東区にある「隅田公園あじさいロード」。隅田公園は隅田川の両岸に位置する公園ですが、あじさいがまとまって咲いているのは浅草側。吾妻橋入り口から山谷堀広場までの約2kmに、1万株ものあじさいが植えられています。
東京スカイツリーとあじさいの2ショット
あじさいを見るための小径も整備されているので、ゆっくりと歩きながら観賞することができます。スカイツリーをバックにあじさいの写真を撮りたい人は、「山の宿の渡し」跡で撮影するのがおすすめ。あじさいもスカイツリーもどちらも観賞できる、贅沢な観賞スポットです。
【隅田公園あじさいロード 利用情報】
本数:約1万株
距離:約2km
見頃:6月中旬〜下旬
住所:〒111-0033 東京都台東区花川戸2-1
アクセス:銀座線・都営浅草線 / 東武伊勢崎線 浅草駅より 徒歩(約5分)
大清水境川アジサイロード(神奈川県)
神奈川県藤沢市にある「大清水境川アジサイロード」。境川の大清水橋から鷹匠橋までの両岸に広がる、あじさい観賞スポットです。
境川サイクリングロードであじさいを鑑賞しながらサイクリングも(写真提供 Instagram: makomako.0203様)
もともとは、藤沢市大清水地区の地域の人々が自宅の庭などで育てたあじさいを植栽したもの。約500mの距離に渡って、400株のあじさいが咲き誇っています。2009年からは、毎年藤沢市立大清水中学校の校庭などを借りて「アジサイまつり」が開催されており、2010年には川沿い一体が藤沢の景観に指定されました。
【大清水境川アジサイロード 利用情報】
本数:約400株
距離:約500m
見頃:6月中旬
住所:〒251-0002 神奈川県藤沢市大鋸
アクセス:小田急線 藤沢本町より 徒歩(約25分)
滝ノ川あじさいロード(神奈川県)
神奈川県横浜市保土ヶ谷区にある「滝ノ川あじさいロード」。今はなき「滝ノ川」の川跡に整備された散策路です。
入り口は、国道1号線と県道13号線とが交差する三ツ沢上町交差点。
終点である第3京浜の高架下あたりまで、約700mの距離に800株のあじさいが咲いています。
滝ノ川あじさいロードに連なるあじさいをゆっくり鑑賞(写真提供 Instagram: gizama2naga様)
散策路の途中には、手押しポンプの井戸や、メダカや金魚が住めるように整備された池も。ベンチも設置されているので、休憩しながらあじさいを観賞することができます。
【滝ノ川あじさいロード 利用情報】
本数:約800株
距離:約700m
見頃:6月上旬
住所:〒240-0061 神奈川県横浜市保土ケ谷区峰沢町
アクセス:市営地下鉄 三ツ沢上町より 三ツ沢公園方面に徒歩(約5分)
騎西あじさいロード(埼玉県)
埼玉県加須市にある「騎西(きさい)あじさいロード」。玉敷公園、騎西総合公園、騎西文化・学習センターと続く全長約1.5kmの遊歩道に、約1万本のあじさいが咲いています。
紫陽花は「紫陽花ロードボランティアの会」の方々によって手入れされています
騎西文化・学習センターからふじアリーナへと続く道には、真っ白なあじさい「アナベル」の連なりが。遠くには騎西城を眺めることもでき、風景の変化を楽しみながら散歩することができます。
騎西あじさいロードの散歩道に連なる真っ白なあじさい「アナベル」
あじさいの見頃となる6月中旬には「加須市騎西あじさい祭り」が開催され、力車の搭乗体験やスタンプラリーなどのイベントが催されます。
【騎西あじさいロード 利用情報】
本数:約1万株
距離:約1.5km
見頃:6月中旬〜下旬
住所:〒347-0106 埼玉県加須市外川446-9
アクセス:<玉敷公園まで>
伊勢崎線 加須駅 → 朝日バス / 免許センター行き →【騎西一丁目】バス停 → 徒歩(約7分)
JR高崎線 鴻巣駅 → 朝日バス / 福祉センター行き → 【騎西一丁目】バス停 → 徒歩(約7分)
あじさい遊歩道(千葉県)
千葉県香取郡にある「あじさい遊歩道」。多古町を流れる栗山川の堤防沿いの、両堤約1.2kmにわたる遊歩道です。
あじさい遊歩道付近では、釣りやバードウォッチングも楽しめます
紫、白、薄紅など、約1万本もの色とりどりのあじさいが作る美しい散歩道。
あじさいだけでなく、春には菜の花、秋にはコスモスが川辺を飾り、訪れる人々の目を楽しませます。
あじさい遊歩道の川沿いにはジョギングやサイクリングを楽しむ人も
川のほとりには道の駅が作られており、新鮮な野菜や、食味で名高い多古米を購入することも。周辺には正東山日本寺があり、ここでも約1万本の色鮮やかなあじさいを観賞することができます。
【あじさい遊歩道 利用情報】
本数:約1万株
距離:約1.2km
見頃:6月上旬〜中旬
住所:〒289-2241 千葉県香取郡多古町多古
アクセス:JR成田駅
→ JRバス / 多古行き・八日市場行き
→【多古新町】バス停
→ 徒歩(約25分)
散歩をしながらあじさいを楽しもう
梅雨の晴れ間の紫陽花
関東には、知る人ぞ知るあじさいロードがたくさんあります。
雨が上がった後に、近場のあじさいロードへ行くもよし、時間がある人はちょっと遠出して、初めて訪れる土地のあじさいロードへ行くもよし。梅雨だからこそ見ることができる、あじさいの美しい姿を堪能しましょう。