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各所に伝統工芸品を使用
まとめ
アクセス
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日本有数の温泉地、松山のシンボルとして街に佇む、日本最古の温泉「道後温泉本館」。2017年、そこから徒歩3分のところに新たな温泉施設が誕生しました。

「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」は道後温泉の歴史と伝統を受け継ぎつつも、「太古の道後」をテーマに最先端のアートや工芸品を建物の各所にあしらい、道後の温泉街に新たな風を吹かせています。その工夫は入り口から感じることができます。和紙や和釘を使うことで重厚な雰囲気を作りつつも、そのデザインは近代的なアート作品のよう。

今回は、そんな飛鳥乃湯泉の魅力をご紹介します。

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【道後温泉本館】道後の歴史を支え続ける日本三古湯

愛媛県 < 松山・道後温泉

道後温泉温泉本館

【道後温泉本館】道後の歴史を支え続ける日本三古湯 日本三古湯のひとつ道後温泉のシンボル「道後温泉本館」。日本を代表する近代和風建築で、松山の街中に堂々と佇んでいます。外観はもちろん、浴室や館内のいたるところで感じられる歴史と伝統。今回は道後の歴史を支え続ける道後温泉本館の魅力を紹介します。

温泉・スパ・銭湯

飛鳥乃湯泉の歴史

飛鳥乃湯泉は2017年12月にオープンしました。飛鳥時代の建築様式を取り入れた湯屋がコンセプトの「新湯」です。日本三古湯の一つとしても称される道後温泉の歴史を引き継ぎつつ、その伝統にここならではのアクセントが加わった新施設を目指し、建築が始まりました。

数々の伝説や聖徳太子が訪れた逸話の残る道後温泉の歴史を表現するべく、建物には飛鳥時代の建築様式が取り入れられています。

また、道後湯之町の遺跡調査を行った際、縄文時代や飛鳥時代の土器が見つかったことも影響を与えました。充実した温泉施設はもちろん、愛媛の伝統工芸品やアート作品が館内には多く飾られており、装飾ひとつひとつにこだわりが感じられます。道後温泉本館と同様に、全国でも珍しい加温も加水もしていない源泉かけ流しの「美人の湯」を満喫できます。

飛鳥乃湯泉の浴室

飛鳥乃湯泉には3種類の浴室が用意されています。

男子浴室内観 伊予の霊峰・石鎚山

男子浴室、伊予の霊峰・石鎚山

多くの方が利用する「大浴場」は男子浴室・女子浴室に分かれており、注目すべきはその壁画。道後温泉本館と同様、砥部焼の陶板が敷き詰められています。男子浴室には奈良時代の歌人 山部赤人の歌をテーマに「伊予の霊峰」とも呼ばれる石鎚山を望む風景が描かれています。

女子浴室、熟田津の海

女子浴室、熟田津の海(瀬戸内海)

その一方で、女子浴室には飛鳥時代の歌人 額田王の歌をテーマに美しい瀬戸内海が広がっており、四国・松山の温泉地ならではの雰囲気を楽しむことができます。

男子露天風呂内観

男子露天風呂

また、飛鳥乃湯泉には本館にない「露天風呂」がついています。太陽の暖かい光が地元愛媛原産の媛ヒノキでデザインされた壁に差し込み、心休まる空間が作られています。

特別浴室、又新殿の豪華な内観

特別浴室、又新殿

そして、飛鳥乃湯泉の大きな見どころの一つが「又新殿」です。本館にある皇室専用の浴室を再現したもので、壮美で高級感のある空間となっています。浴室と休憩室の間にかけられているのは「御簾(みす)」と呼ばれるレースカーテンのようなもので、「簀(す)」と呼ばれる和紙を作る際に使用する特別な道具を用いて作られています。

また、昔の浴衣よくい「湯帳ゆちょう」を着ての入浴体験もできます。

大広間休憩室

広々とした大広間休憩室

大広間休憩室

2階には約60畳の大広間があり、ゆっくりと温泉の余韻を楽しむことができます。室内では国指定の伝統工芸品である「大洲和紙」に金箔(ギルディング)をあしらうことで完成した「ギルディング和紙」が照明や装飾品として使われており、飛鳥乃湯泉ならではの優雅な雰囲気を作り出しています。

また、その照明には聖徳太子が松山の地に伝えたといわれる「やちゃら編み」という伊予竹細工が用いられています。松山の魅力に溢れた一室です。

個室休憩室

飛鳥乃湯泉には温泉に伝わる伝説をモチーフとした個室の休憩室が、5つ用意されています。

白鷺の間

水引細工で白鷺が描かれた白鷺の間

白鷺の間

1710年に完成した郷土地誌『予陽郡郷俚諺集(よようぐんごうりげんしゅう)には、白鷺(シロサギ)が怪我をしていたスネに岩から吹き出るお湯を当てていたところ、瞬く間に怪我が治り飛んで行った、という伝説が記されています。その姿を見た人々は驚き、白鷺に習って温泉に入ってみると、同じように病人やけが人が元気になっていきました。

この出来事をきっかけに道後温泉は発展したといわれています。「白鷺の間」では、そんな白鷺の姿を「水引細工」で表しています。

玉之石の間

筒描染がかけられた玉之石の間

玉之石の間

大国主命(おおくにぬしのみこと)が伊予の国を訪れた際、重い病に犯されていた少彦名命(すくなひこなのみこと)を温泉で休ませたところ、少彦名命がたちまち元気になり、石の上で踊りだしたという伝説があります。

今でもその「玉の石」は本館の北側に置かれています。そんな伝説が「筒描染(つつがきぞめ)」で描かれています。

椿の間

今治タオルで椿が描かれている椿の間

椿の間

道後温泉は聖徳太子ゆかりの地としても有名です。飛鳥時代に温泉を訪れた際、「湯岡の碑文」という石碑を残したといわれており、そこに描かれていた「椿の森」の様子をこの部屋では楽しむことができます。今では全国的に有名となった「今治タオル」を壁に敷き詰めることで大きな椿の花を作っており、歴史と現代の融合が大きなテーマである飛鳥乃湯泉を代表する空間となっています。

行宮の間

蒔絵によって行宮の様子が描かれている行宮の間

行宮の間

この部屋の名前となっている「行宮(かりみや)」とは天皇などが御所を離れ、その間使用していた施設などのこと。飛鳥から平安時代にかけて、皇室の方が頻繁に道後温泉を訪れていた縁もあり、この部屋が作られました。壁にはその時の様子が金粉や漆器を用いる「蒔絵(まきえ)」によって描かれています。

湯桁の間

西条だんじり彫刻が用いられている湯桁の間

湯桁の間

数が多いことの例えにも使われる「伊予の湯桁」という言葉。道後温泉はそれだけ盛況していたといわれており、源氏物語にもその一幕が登場するほどです。この部屋ではその様子が「西条だんじり彫刻」によって表現されています。

【営業時間】
6時〜23時
【料金】
1階浴室 大人:600円 / 小人(2~11歳):300円
2階大広間 大人:1,250円 / 小人(2~11歳):620円
2階個室 大人:1,650円 / 小人(2~11歳):820円
2階特別浴室 大人:1,650円 / 小人(2~11歳)820円(+2000円/組)
※利用時間は各コース90分まで

イベントも開催

季節限定のイベントやキャンペーンなど定期的に開催されています。詳しいイベント情報はこちら

各所に愛媛県の伝統工芸品を使用

飛鳥乃湯泉を語る上で外せないのが、館内各所に見られる地元の伝統工芸品。伝統工芸とアートの融合を1つのコンセプトとして掲げており、40名の匠による品々が装飾品として飾られています。地元に根付きつつも、新たな温泉文化を発信する飛鳥乃湯泉ならではの取り組みです。ここではその中のいくつかをご紹介します。

砥部焼

飛鳥乃湯泉の浴室の壁では「砥部焼」の陶板画を見ることができます。そもそも砥部焼とは愛媛県砥部市発祥の焼き物で、主に食器や花瓶が作られています。江戸時代から続く歴史ある伝統工芸で、現在も砥部町には100以上の窯が残っています。

飛鳥乃湯泉の物は、砥部町唯一の国指定女性伝統工芸士の山田ひろみさんが手がけています。特別な筆や技法を使い、山部赤人らの歌の世界観を忠実に再現しています。なんとその枚数は1つの画で162枚。湯船から見る雄大な陶板画は、どこか日本人としての心を思い出させてくれます。

ゼオライト和紙

ゼオライト和紙があしらわれたエントランス

ゼオライト和紙があしらわれたエントランス

愛媛では和紙の生産も古くから行われており、「伊予和紙」などが有名です。そんな中、「手漉き和紙(てすき)」の原産地 内子町五十崎で育った佐藤友佳理さんは、「ゼオライト」という鉱物を使って全く新しい和紙を作り上げました。

和紙の原料となる「楮(こうぞ)」と吸着機能とイオン交換機能を持つゼオライトを混ぜることで「呼吸する和紙」が完成。その「ゼオライト和紙」はエントランスのデザインに使われており、上品な空間を演出しているだけでなく、湿度調節と消臭の機能も兼ね備えています。奥には、和釘わくぎを使い、巨大な湯玉を描いた装飾壁があり、日本最古であることを感じていただけます。

伊予竹細工

大広間の行燈といった照明に使われている「伊予竹細工」もまた、愛媛に長年伝わる伝統工芸の1つです。かの聖徳太子が伝授したとも言われており、竹ひごを不規則に編み合わせる「やちゃら編み」が特徴です。虎竹工房の西川静廣さん制作の行燈は優しいおぼろげな光に灯され、心を落ち着かせてくれます。

伊予水引

愛媛県の東端に位置する四国中央市は、長野県の飯田市と並ぶ「水引」の生産地として知られています。水引とはお祝儀などの封筒についてある帯紐のこと。一般的には紅白のものが多く使われています。伊予水引の歴史は平安時代にまで遡り、心を込めた贈り物を送る際に使われてきました。

現在は伝統が紡いできた技術を応用し、髪飾りやバッグ、ストラップなども作られています。飛鳥乃湯泉では伊予水引の伝統的な技法「淡路結び」を用い、飛び立つ白鷺の姿を描いています。その作業は繊細そのもの。白鷺の美しさを是非間近でお楽しみください。

道後の新たな魅力を

「新たな温泉文化を発信する拠点」を目指し、建設が始まった飛鳥乃湯泉。その工夫は随所に感じられ、今までにない体験ができる温泉施設となっています。館内では浴衣の原型ともなったといわれ、昔は一定以上の身分の者にのみに着ることが許された「湯帳」を借りることもできます。

松山を訪れた際には、本館とはまた違った雰囲気の中、源泉掛け流しの温泉を楽しめる飛鳥乃湯にも足を運んでみては。

アクセス

最寄駅:(道後温泉駅)

松山駅からのアクセス

【松山駅前】 ー 伊予鉄道市内線5系統/道後温泉行
→ 【道後温泉駅】 → 徒歩(約4分)

松山市駅からのアクセス

【松山市駅】 ー 伊予鉄道市内線3系統/道後温泉行
→ 【道後温泉駅】 → 徒歩(約3分)

松山空港からのアクセス

【松山空港バス乗り場】 ー 連絡バス・伊予鉄道・空港リムジンバス/道後温泉行
→ 【道後温泉駅】 → 徒歩(約4分)

周辺情報