全国に約3万社あると言われ、「お稲荷さん」として親しまれている「稲荷神社」。老若男女を問わず多くの人から信仰を集めています。その稲荷神社の総本宮が、京都にある「伏見稲荷大社」。終わりが見えないほどたくさんの鳥居が並ぶ、朱色の「千本鳥居」が有名です。
伏見稲荷大社は国内外から人気のスポットで、千本鳥居を目的に訪日する海外の観光客もいると言われるほど。初詣の際には、多くの参拝客で賑わいます。
今回は、伏見稲荷大社の歴史や見どころを紹介します。
【関連記事】
京都で目にできる世界遺産を全て知りたい人はこちら↓
【京都の世界遺産】は実は1つだけ?古都の文化財を徹底解説
伏見稲荷大社の歴史
伏見稲荷大社の起源は奈良時代まで遡る
伏見稲荷大社は初午の日に起源があるとされている
伏見稲荷大社の歴史が始まったとされているのは、平城京遷都が行われた翌年711年の「初午(はつうま)の日」。伏見稲荷大社の御祭神である「稲荷大神」が、稲荷山に鎮座したことが起源だと言われています。
初午の日とは、2月で最初に訪れる午の日のこと。昔の日本では日にちに対して十二支を順番に割り当てており、その中で午の順番に該当した日が午の日です。元々、初午の日は1年で最初の午の日を指すもの。しかし昔は2月4日ごろの立春が1年の始まりとされていたため、2月最初の午の日が初午の日となりました。
伏見稲荷大社の歴史が始まった頃は、全国的な気候不順で五穀の不作が続いていた時期。勅命を受けた「伊侶巨秦公(いろこのはたのきみ)」が稲荷山に稲荷大神を祀ったところ、五穀豊穣に恵まれて国は栄えたと言われています。
「いなり」という名前は、五穀豊穣を意味する「稲が成る」からついたそう。現在の伏見稲荷大社は、商売繁盛や五穀豊穣、家内安全などのご利益がもらえる守護神として信仰を集めています。
応仁の乱で伏見稲荷大社のほとんどが焼失
伏見稲荷大社は格式高い神社
平安時代に入ると、伏見稲荷大社の人気が加速。827年に「従五位下(じゅごいげ)」の神階(しんかい)を与えられてからは、京都中の人々から崇敬されるようになりました。ちなみに神階とは昔の日本における地位や身分の序列を表したもの。従五位下よりも上の神階を持つ者が貴族とされていました。
その後は格付けも急上昇し、927年に全国約3,100社中で最高の格式である「名神大社(みょうじんたいしゃ)」へ仲間入り。さらに942年には、極位である「正一位(しょういちい)」が与えられました。
しかし1467年に応仁の乱が勃発し、甚大な被害を受けた京都。伏見稲荷大社も被害を逃れることはできませんでした。当時の神主が東軍に味方し、東軍の武将「骨皮道賢(ほねかわどうけん)」が稲荷山を陣地にすることを容認。その結果、伏見稲荷大社の社殿はことごとく燃え尽きました。
伏見稲荷大社は多くの困難を乗り越えてきた
千本鳥居が有名な伏見稲荷大社は京都で人気の観光スポット
応仁の乱以降は破損などの被害を受けていなかった伏見稲荷大社ですが、明治維新の際に政府から土地を没収されます。1868年には廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の動きが生じ、伏見稲荷大社を管理していた「愛染時(あいぜんじ)」が廃寺に。伏見稲荷大社を取り巻く環境は優れなくなりました。
それでも明治政府と交渉を重ね、1902年に旧社領の一部を奪還。1909年には、伏見稲荷大社の本殿が重要文化財に指定されました。そして長年にわたる政府との長い交渉の末、1962年にもともとの敷地を全て回復。2011年に稲荷大神鎮座から1300年を迎えた伏見稲荷大社は、京都で人気の観光地となっています。
伏見稲荷大社の見どころ
京都で人気の観光名所である伏見稲荷大社。重要文化財をはじめ、見逃せないスポットが多く存在します。
千本鳥居
千本鳥居は伏見稲荷大社の代名詞
伏見稲荷大社の代名詞とも言える「千本鳥居」。社殿と同じく「稲荷塗(いなりぬり)」と言われる朱色の鳥居が、どこまで続くように立ち並びます。
朱(あけ)という言葉は赤や明、茜などに語感を持ち、明るい希望と生命や大地、生産の力を稲荷大神の御霊(みたま)の働きとして表現した色。千本鳥居に一歩足を踏み入れれば、目の前に朱色の世界が広がります。
ずらりと並んだ伏見稲荷大社の鳥居は、江戸時代から参拝者によって奉納されたもの。祈りと感謝の気持ちを込めて奉納される鳥居は、実は1万基以上あり今も増え続けていると言われています。
おもかる石
おもかる石で願いの成就可否が占える
千本鳥居を抜けたところに位置する、一対の石灯篭(いしとうろう)「おもかる石」。願いごとの成就可否を占う試し石です。
おもかる石を持った時に感じる重さが、成就可否を占うポイント。石灯篭の頭を持ち上げた時に予想より軽く感じれば願いが叶い、重く感じたら叶いにくいとなるそうです。
楼門
伏見稲荷大社では楼門前でキツネ像がお出迎え
伏見稲荷大社の入り口にある鳥居をくぐると姿を見せる「楼門(ろうもん)」。1589年に豊臣秀吉が造営したと言われています。
秀吉の母「大政所(おおまんどころ)」が病気になった際、秀吉は伏見稲荷大社に祈願。母親の病気が治ったら1万石を寄付すると記したことが、秀吉の造営と言われる理由です。
神社の楼門としては最も大きな規模で、重厚感漂う伏見稲荷神社の楼門。重要文化財に指定されていて、一対のキツネ像が、狛犬のように楼門前で参拝客を出迎えています。
きつね絵馬
伏見稲荷大社の絵馬は珍しいキツネの形
伏見稲荷大社にあるキツネの顔型をした通称「きつね絵馬」。稲荷大神の使いがキツネであるということから、特別な形の絵馬が置かれています。
元々は耳と吊り上がった目だけが描かれているものの、参拝者が自由に表情を描けるのが魅力的。いっぱいキツネ絵馬が並ぶ中に、願いごとに合わせたあなただけの絵馬を奉納することができます。
本殿
伏見稲荷大社の本殿には五柱の神様が祀られている
五穀豊穣を司る「五柱(いつはしら)の神様」が祀られている「本殿」。応仁の乱で焼失しましたが、1499年に再建されました。社殿建築としては大型な伏見稲荷大社の本殿は、安土桃山時代の気風が漂う豪華な造り。千本鳥居と同様、重要文化財に指定されています。
伏見稲荷大社の基本情報
交通アクセス:JR奈良線【稲荷駅】から 徒歩すぐ
住所:〒612-0882 京都府京都市伏見区深草藪之内町68番地
電話番号:075-641-7331
参拝時間:年中無休(お守り・御朱印等の授与は8:30〜20:00)
拝観料:無料(お茶屋の特別公開時のみ料金800円)
公式サイト:伏見稲荷大社
伏見稲荷大社周辺のおすすめスポット
京都でも人気の伏見稲荷大社。複数のご利益がいただける開運スポットとして観光客で賑わいます。しかし京都には、伏見稲荷大社以外にも見逃せないスポットも数多く存在。ここでは伏見稲荷大社と併せて足を運びたいスポットを紹介します。
東寺
世界遺産の東寺は五重塔が有名
創建から1200年以上の歴史を持つ「東寺」。日本一高い木造建築物である「五重塔」を有し、多くの観光客で賑わいを見せます。
正式名称は「教王護国寺(きょうおうごこくじ)」で、「古都京都の文化財」として世界遺産にも登録されているスポット。京都駅から比較的近い場所に位置しているので、京都観光の最初や最後に訪れるのもおすすめです。
【関連記事】
世界遺産、東寺について詳しく知りたい人はこちら↓
【東寺】歴史や見どころとは?五重塔が有名な京都の世界遺産
寺田屋
寺田屋では幕末の歴史を感じられる
幕末の歴史と深い関わりを持つ「寺田屋」。1862年に起きた薩摩藩の志士9名が殺害された「寺田屋事件」と、1866年に「坂本龍馬」が襲撃を受けた事件の舞台です。
当時の寺田屋は鳥羽・伏見の戦いで焼失し、現存するのは再建されたもの。内部の見学が可能で、弾痕や刀傷など幕末に起きた動乱の爪痕を目にすることができます。
【関連記事】
幕末の鳥羽・伏見の戦いで舞台となった鶴ヶ城を知りたい人はこちら↓
【鶴ヶ城】は会津若松のシンボル!歴史や見どころとは?
醍醐寺
醍醐寺は桜の名所として人気の世界遺産
200万坪以上の広大な境内を有する世界遺産「醍醐寺(だいごじ)」。醍醐山の上部一帯にあたる「上醍醐」と山麓の「下醍醐」、そして壮麗な庭を誇る「三宝院」に分けられます。
境内に広がる庭園は豊臣秀吉の設計と言われ、特別名勝・史跡に指定。醍醐寺は「桜の醍醐」としても有名で、秀吉が植えたとされる約700本の桜とともに「醍醐の花見」を楽しめます。
伏見稲荷大社は千本鳥居が有名
今回は、朱色の千本鳥居が有名な伏見稲荷大社を紹介しました。多くのご利益がいただける伏見稲荷大社は、京都で屈指のパワースポットとして人気。どこまでも続く千本鳥居に足を踏み入れれば、神秘的な空間を体感できます。
奈良時代からの歴史がある伏見稲荷大社を目にすれば、歴史の重みをあなたの肌で感じられるはず。京都を訪れる際には、ぜひ伏見稲荷大社に足を運んでみてください。