1. 七福神の名前・ルーツ・ご利益
恵比寿(えびす)
大黒天(だいこくてん)
弁財天(べんざいてん)
毘沙門天(びしゃもんてん)
福禄寿(ふくろくじゅ)
寿老人(じゅろうじん)
布袋(ほてい)
あわせて知っておきたい:吉祥天(きちじょうてん)
2. 全国の七福神巡り
大阪:大阪七福神
京都:都七福神
東京:日本橋七福神
おわりに

昔から縁起のいい神様として親しまれてきた七福神。神社やお寺で、七福神をモチーフとした絵馬や掛け軸を目にする機会も多いでしょう。それぞれの神様がどのようなご利益をもたらしてくださるのかご存知でしょうか。

長年信仰されてきた七福神について、ルーツやご利益を解説します。大阪・京都・東京の有名な七福神巡りも紹介するので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

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1. 七福神の名前・ルーツ・ご利益

七福神とは、名前の通り7柱の神様のこと。恵比寿・大黒天・弁財天・毘沙門天・福禄寿・寿老人・布袋が一般的で、それぞれ外見やルーツ、ご利益が異なります。1柱ずつ紹介しましょう。

七福神の名前と姿一覧

七福神の名前と姿一覧

恵比寿(えびす)

恵比寿像

東京・JR恵比寿駅前の恵比寿像

恵比寿様は、七福神で唯一日本ルーツの神様です。おもなご利益は「商売繁盛」「大量漁豊作」「航海安全」「海上安全」など。恰幅が良く、狩衣・指貫・烏帽子を身にまとい、鯛と釣り竿を持っているのが特徴です。また、「えびす顔」とは恵比寿様のようににこにことした笑顔のこと。それほど、笑顔が印象的な神様でもあります。

古くは海の神様として、漁師の間で信仰されていました。徐々に信仰が広がり、商売の神様として認識されるようになったといわれています。

また、日本の神話に登場する蛭子神(ひるこのかみ)や事代主神(ことしろぬしのかみ)と同一視されるケースが多く見られます。そのため、恵比寿様を祀る神社でも、御祭神には蛭子大神や事代主神のお名前が記されているかもしれません。

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大黒天(だいこくてん)

大黒天立像

大黒天立像/作者不明/江戸時代・19世紀
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 大黒天立像

大黒天は、もともとはインドの神様です。おもなご利益は「五穀豊穣」「商売繁盛」「財運上昇」「縁結び」で、恰幅の良い体で大きな袋を肩に担ぎ、打ち出の小槌を手にしています。

はじまりは、ヒンドゥー教の神様であるシヴァ神です。仏教に取り入れられる際に大黒天となり、日本に伝わった際に大国主神(おおくにぬしのかみ)と習合しました。どちらも名前が「だいこく」と読めることがきっかけといわれています。また、大国主神は土を掘り起こして日本を作ったとされる神様で、そこから五穀豊穣のご利益をもたらすと考えられています。

大黒天は恵比寿様とセットで祀られる場合が多く、理由も諸説あります。そのひとつは、恵比寿様と同一視されている事代主神と、大黒天と同一視されている大国主神が親子だからというもの。親子で並んでいらっしゃると思うと、より親しみを感じますね。

弁財天(べんざいてん)

弁財天像

群馬・榛名神社参道の弁財天像

弁財天は、七福神で唯一の女性の神様。おもなご利益は「諸芸上達」「財運上昇」「水利自在」です。音楽など芸事の神様なので、琵琶を持った姿で表されるのが一般的です。

元々はヒンドゥー教の水の神様・サラスヴァティーで、音楽などの芸能の神様として信仰されていました。日本に伝来した際に、「弁才天」が「弁財天」に転じ、財福を司るようにもなったのだとか。また、弁財天の美しさにあやかりたい女性が、美顔や縁結びのご利益をお願いするケースも増えているそうです。

宇賀神(うがじん)と呼ばれる蛇神と習合した姿や、8本の腕をもつ八臂(はっぴ)弁財天として祀られている寺社もあります。多くの人に信仰されてきたことが伝わりますね。

毘沙門天(びしゃもんてん)

毘沙門天立像

毘沙門天立像/作者不明/平安時代・応保2年(1162)頃/重要文化財
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 毘沙門天立像

毘沙門天は、戦いの神様でもあります。おもなご利益は「合格祈願」「大願成就」「金運上昇」「厄除招福」「難関突破」です。勇ましい甲冑を身につけ、槍や宝棒、宝塔を持っています。

ヒンドゥー教のクベーラと呼ばれる、財宝を守る神様が由来となっています。北方の守護を任される戦いの神様でもあるため、険しい表情で描かれるケースが多いです。聖徳太子や、戦国時代の武将・上杉謙信が篤く信仰していた神様としても有名ですね。

また、毘沙門天は仏教の四天王の一人・多聞天と同一視されており、天部四天王と呼ばれる神様の1柱でもあります。1柱で祀られる場合は毘沙門天、四天王として祀られる場合は多聞天と呼ばれるそう。いくつもの役割を背負った神様なんですね。

福禄寿(ふくろくじゅ)

福禄寿木彫根付

福禄寿木彫根付/線刻銘「月洗」/江戸時代・19世紀
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 福禄寿木彫根付

福禄寿は、老人の姿をした神様です。おもなご利益は「延命長寿」「財運招福」「子孫繁栄」「立身出世」で、つるりとした長い頭が特徴。この特徴的な頭の中に、ぎっしりと知恵が詰まっているのだそう。

中国から伝わった神様で、名前の福は「子宝に恵まれる幸福」、禄は「身分や財運に恵まれる」、寿は「健康で長生き」と、3つの徳を具現化しているんだとか。

外見が似ている寿老人と並んで祀られる場合もあります。2柱を見分けるポイントは頭部の大きさで、福禄寿の方が立派な頭をされているそう。また、福禄寿と寿老人を双子の兄弟とする説もあるようです。

寿老人(じゅろうじん)

寿老人像

寿老人像/作者不明/江戸時代・19世紀
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 寿老人像

寿老人は、福禄寿と同じく老人の姿をした神様。おもなご利益は「延命長寿」「身体健全」「病気平癒」「智慧増大」です。長い髭をたくわえている姿や、長寿の象徴とされる桃を手にしているケースも多い神様です。また、導きの神・幸運の神として、人々の運命を開いてくださるという説もあります。

ほかの神様は商売繁盛や五穀豊穣といった、お金にまつわるご利益が多いなか、寿老人は長寿や健康にまつわるご利益が中心。七福神のなかでは、少し特殊な神様といえるでしょう。

縁起の良い星・カノープス(南極老人星)の化身とされていて、不老不死の霊薬をもっているとされています。福禄寿と外見が似ているため、同一神や兄弟神とする説も。ほかにも、中国の老子が天に昇って仙人になった姿とする説もあります。

布袋(ほてい)

布袋木彫彩色根付

布袋木彫彩色根付/線刻銘「周山」/江戸時代・18世紀
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 布袋木彫彩色根付

布袋尊は、七福神のなかで唯一実在の人物が元になっている神様。おもなご利益は「家庭円満」「子宝祈願」「無病息災」「諸願成就」「財運向上」「学芸発達」です。たっぷりとした太鼓腹で大きな袋を担ぎ、満面の笑みを浮かべている姿で表されるのが一般的です。

昔の中国に実在したとされる、仏教の僧が元になっています。常に布の袋を担いで各地を放浪していたため、布袋和尚と呼ばれていたのだとか。旅先で出会った貧しい人々に袋の中から必要なものを与えられ、お礼にともらった物をまた袋の中に入れ、旅を続けたといわれています。布袋和尚は、弥勒菩薩(みろくぼさつ)の生まれ変わりだったともいわれています。

あわせて知っておきたい:吉祥天(きちじょうてん)

吉祥天立像(模造)

吉祥天立像(模造)/関野聖雲模 作/昭和6年(1931)、原品:鎌倉時代・13世紀
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 吉祥天立像(模造)

七福神に名を連ねる神様は、時代によって異なります。吉祥天は古くから信仰されてきた神様で、かつて七福神に数えられていた女神です。しかし、徐々に庶民の間では弁財天の方が有名になり、七福神に数えられるのも弁財天が主流になりました。一部では、吉祥天と弁財天を同一神とする信仰もあるそう。

吉祥天は毘沙門天の妻で、美しい神様なのだとか。日本の吉祥天は、中国の貴婦人の姿で表されるケースが多いといわれています。名前の「吉祥」は繁栄・幸運といった意味をもちます。インドでは美や福徳を司る神様として信仰されてきました。

2. 全国の七福神巡り

七福神信仰の始まりは室町時代で、七福神巡りが流行し始めたのは、江戸時代とされています。関東では元旦から7日までの間、関西では元旦から15日までの間に、七福神巡りを行うのが一般的です。

東京をはじめ、各地で有名な七福神巡りスポットをご紹介しましょう。

大阪:大阪七福神

今宮戎神社

恵比寿様が祀られている今宮戎神社

大阪七福神は、大阪日本橋周辺で巡れる七福神巡りです。『摂津奇観』という摂津(今の大阪)の雑記や年代記をまとめた冊子の巻之43の中、享和3年(1807)年の様子を記した部分に「今年七福神巡拝発起」と登場します。所要時間は1時間半~約3時間で、バスや電車を使ってアクセスできます。パワースポットとして人気がある神社も含まれていて、七福神巡り以外で足を運ぶ方も多いのだとか。

七福神巡りは通年行われています。必ず1日で回りきらなくてはいけないわけではないので、時間をかけても大丈夫ですよ。お祭など、行事に合わせて訪れてもいいですね。

大阪七福神の神社・お寺一覧

【恵比寿天】今宮戎神社
住所:大阪府大阪市浪速区恵美須西1-6-10

【大黒天】大国主神社
住所:大阪府大阪市浪速区敷津西1-2-12

【毘沙門天】大乗坊
 住所:大阪府大阪市浪速区日本橋3-6-12

【弁財天】法案寺
 住所:大阪府大阪市中央区島之内2-10-14

【福禄寿】長久寺
 住所:大阪府大阪市中央区谷町8-2-49

【寿老人】三光神社
 住所:大阪府大阪市天王寺区玉造本町14-90

【布袋尊】四天王寺布袋堂
 住所:大阪府大阪市天王寺区四天王寺1-11-18

京都:都七福神

京都ゑびす神社

恵比寿様が祀られている京都ゑびす神社

都七福神は日本最古の七福神巡りといわれ、2024年に草創600年を迎えるのだそう。七福神巡りは、特に新春に参拝すると功徳が大きいといわれています。スタートはどこからでも構わないそうで、各社寺で御軸・大護符(色紙)・御宝印帖をいただくことができます。大護符の大きさや種類は社寺によって異なるので、事前にどこでいただくか調べておくとよさそうです。

都七福神の社寺は京都内に点在し、それぞれ距離があるため移動に時間がかかる点に注意しましょう。ゆとりをもって計画を立ててくださいね。

都七福神の神社・お寺一覧

【恵比寿天】ゑびす神社
 住所:京都府京都市東山区大和大路通四条下ル

【大黒天】松ヶ崎大黒天
 住所:京都府京都市左京区松ヶ崎東町31

【毘沙門天】東寺
 住所:京都府京都市南区九条町1

【弁財天】六波羅蜜寺
 住所:京都府京都市東山区ロクロ町81-1

【福禄寿】赤山禅院
 住所:京都府京都市左京区修学院赤山町

【寿老人】革堂
 住所:京都府京都市中京区寺町通竹屋町上ル

【布袋尊】万福寺
 住所:京都府宇治市五ヶ庄三番割

東京:日本橋七福神

末廣神社

毘沙門天が祀られている末廣神社

日本橋七福神は、全国で最も移動距離が短い七福神巡りとしても有名で、一巡するのに約2時間ほどといわれています。手軽さもあってか毎年大人気で、移動時間や参拝時間より、御朱印をいただくまでの待ち時間の方が長い、といわれるほど。

また、七福神巡りは神社とお寺で構成されているところが多いなか、日本橋七福神は全て神社なのも特徴のひとつです。周辺は下町情緒を感じられる地域ですので、散策も楽しめそうです。

日本橋七福神の神社・お寺一覧

【恵比寿天】椙森神社
 住所:東京都中央区日本橋堀留町1-10-2

【大黒天】松島神社
 住所:東京都中央区日本橋人形町2-15-2

【毘沙門天】末廣神社
 住所:東京都中央区日本橋人形町2-25-20

【弁財天】水天宮
 住所:東京都中央区日本橋蠣殻町2-4-1

【福禄寿】小網神社
 住所:東京都中央区日本橋小網町16-23

【寿老人】笠間稲荷神社
 住所:東京都中央区日本橋浜町2-11-6

【布袋尊】茶ノ木神社
 住所:東京都中央区日本橋人形町1-12-11

おわりに:七福神巡りで福を呼び込みましょう!

今回ご紹介した場所以外でも、七福神巡りができる神社やお寺はたくさんあります。東京だけでも「港七福神」「江戸最初山手七福神」「新宿山ノ手七福神」「小石川七福神」「雑司が谷七福神」など、15カ所以上も。そのほか、神奈川県、埼玉県、奈良県など、全国各地に七福神巡りができる霊場があります。

きっと身近にも、七福神巡りができる場所があるはず。次のお正月に足を運んでみましょう。

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江戸最古の七福神【谷中七福神巡り】でパワーをもらおう


Text:Akiko Kobayashi Edit:Erika Nagumo
Photo(特記ないもの):PIXTA

参考:
頼富本宏・正木 晃・大角 修・吉田さらさ・瓜生 中『仏像が好き! 天部像のすべて』(枻出版)
『地球の歩き方』編集室『御朱印でめぐる東京の七福神』(ダイヤモンド・ビッグ社)
後藤泰弘『図解 身近にあふれる「神社と神様」が3時間でわかる本』(明日香出版社)
渋谷申博『参拝したくなる! 日本の神様と神社の教科書』(ナツメ社)
平藤喜久子『神話でたどる日本の神々』(ちくまプリマー新書)
平藤喜久子『日本の神様解剖図鑑』(エクスナレッジ)
斎藤昭俊『インドの神々』(吉川弘文館)
一色史彦『七福神の創始者』(三五館)
日本橋七福神めぐり 公式サイト都七福神まいり今宮戎神社高野山霊宝館黄檗宗大本山 萬福寺
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