「えべっさん」とは、恵比寿様に商売繁盛を祈願し行われる行事。「十日戎(とおかえびす)」とも言い、毎年1月10日前後に開催される関西では馴染みのある新年のお祭りです。
この記事では、大阪以外で行われる2024年「えべっさん」の開催場所や日程、各会場の限定グルメや行事など、見どころ情報をまとめています。
兵庫、京都、福岡、愛媛、和歌山など…実は西日本にはユニークな「えべっさん」がたくさんあるんですよ。
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(兵庫)西宮神社のえべっさん
兵庫県西宮市にある「西宮神社」は、全国の恵比須神社の総本社。地元では「西宮のえべっさん」と呼ばれ親しまれています。
西宮神社の本殿
御祭神は、蛭児大神(恵比寿様)、天照大御神、大国主大神(おおくにぬしのかみ)、須佐之男大神。創建時期は不明ですが、和田岬の沖に現れた蛭児命の神像を、漁師が引き上げ自宅で祀っていたところ、神のお告げがありこの地にお祀りしたのが起源だそうです。
1月10日、本えびすの早朝に行われる「福男選び」は大変有名。新年の風物詩として、毎年テレビで取り上げられています。
えびす宮総本社 西宮神社
住所:兵庫県西宮市社家町1-17
「十日えびす」会期:2024年1月9日〜11日
公式サイト:十日えびす|えびす宮総本社 西宮神社
全国のえべっさんの総本山
全国に約3500社ある恵比須神社の総本社。西宮神社は、大阪の今宮戎神社と並び、最も有名な「えべっさん」の一つです。祭り期間中には、800を超える屋台が軒を連ね、100万人を超える参拝者で賑わいます。
十日えびす開催期間中の西宮神社の様子
注目すべきは西宮神社の名物「開門神事の福男選び」。足に自信のある男性たちが、開門と同時に参拝者一番乗りを目指し境内を疾走します。白熱したレースの様子は毎年ニュースを賑わせていますね。
また、数万枚の硬貨が貼られた巨大な「招福大まぐろ」や、9日の宵えびすに行われる、芸妓衆による湯もみの儀式「有馬温泉献湯式」も見どころです。
西宮神社の「招福大まぐろ」
名物「えべっさんブレンド」
「えべっさん」にあやかり、末永く繁盛することをイメージしたブレンドコーヒー「えべっさんブレンド」をご存じですか?西宮神社のお膝元にあるコーヒーショップ「COFFEE HOUSE FIELD」の商品で、かわいらしいえべっさんの笑顔が印象的です。
十日えびす開催期間限定で、えべっさんのラテアートがかわいらしい「招福ラテ」を販売。パッケージに恵比寿様のイラストがあしらわれたコーヒーパックは年中購入できます(写真提供:instagram まくしょんさん)
厳選した輸入豆を自家焙煎、チョコレートのような口当たりの良いコクと、冷めていくとベリーのような優しい甘みが心地良いと大人気。西宮神社へ参拝の際は、ぜひお立ち寄りください。
COFFEE HOUSE FIELD
住所:兵庫県西宮市本町5-10
公式サイト:COFFEE HOUSE FIELD
(兵庫)尼崎えびす神社のえべっさん
商売繁盛と家内安全のご利益がある「尼崎えびす神社」。創建は後醍醐天皇以前で、当時は漁業人から崇拝されていました。
尼崎えびす神社の本殿と大きな鳥居
漁業から工業へ、尼崎の躍進とともに商売の神様「尼(あま)のえべっさん」と呼ばれるようになりました。ひときわ目を引く朱色の大鳥居が目印。高さ17m、笠木22m、柱直径1.6mの荘厳な姿は尼崎のシンボルです。
「十日えびす大祭」には、福笹など縁起物を求め尼崎商店街まで参拝客があふれます。本殿に備えられた大マグロにお金を貼りつけると福が付くそうですよ。
尼崎えびす神社
住所:兵庫県尼崎市神田中通3丁目82
「十日えびす大祭」会期:2024年1月9日〜11日
公式サイト:十日えびす大祭|尼崎えびす神社
楽しい境内巡り
境内にはパワースポットが盛りだくさん。「月像石(つきいし)」は、アポロ11号が月に到着した日に発見された奇石、触れるとストレスや疲れが癒やされるのだとか。
境内には三猿やカエルの石像も
他にも、さすると願いが叶う「しあわせえびす」、願い事を稲荷神へ運んでくれる「願掛きつね」、勝負運を授ける「勝馬さん」、開運招福・病気平癒の「うさぎ針」など。境内を巡るだけでも、ご利益がありそうですね。
ご利益は恋愛運アップ
尼崎えびす神社では、縁結びの神様である猿田彦大神(さるたひこのかみ)と天宇受命(あめのうずめ)をお祀りしています。2人の神様は結婚し良い夫婦となったことで、良縁を導いてくれるといわれています。
尼崎えびす神社の絵馬
仲睦まじい二人の姿に思わずほっこり。商売繁盛だけでなく、恋愛運・良縁、結婚運を求めて訪れる人も多いそうです。カラフルでかわいい御朱印も人気を集めています。
(京都)八坂神社のえべっさん
京都の八坂神社は全国にある八坂神社、祇園信仰神社(約2300社)の総本社。境内外には国宝1棟、重要文化財29棟が立ち並ぶ世界的に有名な観光名所です。
八坂神社末社、北向蛭子社(きたむきえびすしゃ)に祀られている事代主神(恵比寿様)は、商売繁盛の神様「祇園のえべっさん」と呼ばれ親しまれています。
毎年1月9日、10日に行われる「蛭子社祭」は、福笹などの縁起物を求め多くの参拝客で賑わいます。
北向蛭子社は国の重要文化財にも指定されています
同時に開催される「三社詣」では、北向蛭子社と合わせて本殿と大国主社にお参りすることでご利益がパワーアップするそうです。三社をお参りした証として「三社詣朱印紙」を配布しているので、ぜひ記念にいただきましょう。
八坂神社
住所:京都府京都市東山区祇園町北側625
「蛭子社祭」会期:2024年1月9日・10日
公式サイト:蛭子社祭|八坂神社
平安時代から続く歴史
「祇園祭」で有名な八坂神社ですが、実は「えべっさん」の歴史も古く、平安時代から始まったとされています。
大阪の今宮戎神社と親交が深く、祇園祭の中御座神輿の担ぎ手は、今宮の地に住む今宮神人と呼ばれる人々でした。
現在も今宮戎神社で行われる献茶祭では八坂神社のご神水が献上され、年末には今宮より鯛が奉納されているそうです。
豪華な蛭子船巡行
9日には「商売繁盛で笹もって来い!」の掛け声と賑やかなお囃子とともに、蛭子像と七福神を乗せた蛭子船が巡行します。
八坂神社楼門石段下から始まり、四条烏丸間を往復。新年の縁起物である華やかな行列は、見ているだけで福がありそうです。
(京都)京都ゑびす神社のえべっさん
「京都ゑびす神社」は西宮神社・大阪の今宮戎神社と並び「日本三大ゑびす」と称され、「えべっさん」の名で親しまれています。
御祭神は八代言代主大神(やえことしろぬしのかみ)、大国主大神、少彦名神(すくなひこなのみこと)です。
京都ゑびす神社正面
1202(建仁2)年は土御門(つちみかど)天皇の頃、禅の祖とされる「栄西禅師」が建仁寺建立にあたり、鎮守として建てられたのが起源だといわれています。
「縁起物=笹」のイメージは、京都ゑびす神社の御札の形態から始まったとされています。
1月8日~12日の5日間開催される「十日ゑびす大祭」には、「招福マグロ」「宝恵かご社参(太秦映画村)」「舞妓さんによる福笹の授与」など華やかな儀式が行われます。
京都ゑびす神社
住所:京都市東山区大和大路四条南
「十日ゑびす大祭」会期:2024年1月8日〜12日
公式サイト:十日ゑびす大祭|京都ゑびす神社
ここだけの縁起物「人気大寄せ」
赤い大きな傘の下に白や金の人型をぶら下げた不思議な飾り物。「人気大寄せ(にんきおおよせ)」は、京都ゑびす神社ならではの縁起物です。
「人がたくさん集まりますように」「人と人との輪が広がりますように」という願いが込められているそうです。
京都周辺のお店に入ると、天井から吊るされている「人気大寄せ」を見かけるかもしれませんよ。
老舗が限定販売「えびす焼」
「えびす焼」とは、和菓子の老舗「かぎ甚」が作る、えべっさんの福顔をかたどったお菓子のこと。
カステラ生地に浮かぶ顔の焼き印がかわいらしい。中には粒あんが入っています(写真提供:instagram sa__i212さん)
通常は店舗での販売のみですが、「十日ゑびす大祭」の間は、露店でも買うことができます。ありがたい「福の神」のお菓子、縁起担ぎにぜひいかがでしょうか。
(和歌山)東の宮恵美須神社のえべっさん
和歌山市にある「東の宮恵美須神社」では、事代主神(恵比寿様)と大国主神をお祀りしています。
創建は1946(昭和21)年。戦後復興のよりどころとして建てられ、商業の神様「恵比寿様」を祀ったのが始まりです。
「十日ゑびす」では、福娘による縁起物のご奉仕と、毎年豪華な景品が当たる「福引き」や和歌山のえべっさん名物「のし飴」、悪を切って福を呼ぶ「悪斬(あくぎり)の舞」などが有名です。
東の宮恵美須神社
住所:和歌山県和歌山市吉田495
「十日ゑびす」会期:2024年1月9日〜11日
公式サイト:東の宮恵美須神社
和歌山では定番「のし飴」
「のし飴」とは、和歌山の十日えびすに欠かせないお菓子。千歳飴のような長い棒状の飴で、ひらがなの「のし」の形に似ていることから名前が付けられました。
のし飴の製造元は年々減少し、現在はほとんどが和歌山市の「うみの製菓」によるもの(写真提供:instagram 坂上 尚美さん)
のし飴は東の宮恵比須神社の境内で購入できます。この風習は明治時代から始まったとされ、和歌山では「えべっさん」にお参りした後は、のし飴を食べるのが定番です。
(愛媛)大洲神社のえべっさん
愛媛県にある「大洲(おおず)神社」は、福徳・商売繁盛・安産の神社。御祭神は大国主命・事代主命(恵比寿様)です。
大洲神社の本殿
1871(明治4)年から行われている「十日ゑびすまつり」には、縁起物の福熊手、福俵、福笹などが境内に並びます。愛媛県唯一の「えべっさん」ということで、県外からも多くの参拝客が訪れます。
大洲神社
住所:愛媛県大洲市大洲神楽山417
「十日ゑびすまつり」会期:2024年1月9日〜11日
公式サイト:十日ゑびすまつり|大洲神社
大鯛撒きで盛り上がる
大洲神社の名物「大鯛撒き」は、10日の本えびすに行われるメインイベント。通常の餅まきの最後に、「鯛」という文字が書かれた直径20センチほどの餅が投げ込まれます。
この餅を拾った人は天然の鯛がもらえるということで、皆餅を取ろうと真剣そのもの。祭りが最も盛り上がる瞬間です。
年始早々大きなタイを手に入れられたら、幸先が良いですね
「大鯛撒き」は男女に分かれて行われ、餅を取った各1名が、長さ約1メートルの巨大な鯛を持ち帰ることができます。
(福岡)十日恵比須神社のえべっさん
博多区東公園に鎮座する「十日恵比須神社」は、商売繁盛の事代主大神(恵比寿様)と、出雲大社の縁結びの神様、大國主大神(おおくにぬしのかみ)をお祀りしています。
「正月大祭」では、9日の宵えびすの「徒歩(かち)詣り」が有名。黒紋付に身を包んだ博多の芸妓衆が、髪に稲穂のかんざしを挿し、お囃子とともにそろって参拝する姿はあでやかです。
正月大祭開催中の十日恵比須神社と、徒歩詣りの様子(写真提供:福岡市)
十日恵比須神社
住所:福岡県福岡市博多区東公園7-1
「正月大祭」会期:2024年1月8日〜11日
公式サイト:正月大祭|十日恵比須神社
福岡では定番「えびす銭」
「えびす銭」とは、古い通貨1文銭を参拝者に授与し、お財布に入れておくと金運に恵まれるというお守り。
この銭は、えびす神社から貸りているため次の年に返却します(写真提供:instagram nenechanさん)
昔、商人たちの間では「神社で縁起の良いお金を借り、それを元金に商売をして翌年倍にして返す」という風習がありました。これが今でも「えびす銭」として残っているのです。
【えべっさん】2024年の開運祈願はおまかせ!
西日本の新年の恒例行事「えべっさん」。実は大阪以外にも兵庫、京都、愛媛、福岡、和歌山など西日本各地で開催されています。
景気が気になる昨今、2024年の開運は、商売繁盛の神「恵比寿様」にお任せしませんか?
お商売やお仕事運が気になる人だけでなく、地域ならではの慣習や限定商品など、ひらりと訪れて楽しめる要素もたくさん。
気になる「えべっさん」で新年をスタートするのも良いですね。
Text:酒徳 留美(さかとく・るみ)
大阪在住、神戸生まれのおでかけ情報ライター。「美味しい&楽しい!」を求め大阪・京都・神戸に出没。趣味はカフェ巡りと愛犬とたわむれること、そしてフラ(ダンス)。最近は、関西のカフェ取材・愛犬とのおでかけスポット紹介・ハワイ文化を紹介するコラムの執筆など、好きなことが仕事につながる幸せを感じている。
Edit:Sakura Takahashi
Photo:PIXTA/PhotoAC(特記ないもの)
参考:
コトバンク/えびす宮総本社 西宮神社/COFFEE HOUSE FIELD/尼崎えびす神社/尼からセカイへ!「ワールド・ピース」をめざす宮司|AMANISM/神楽のルーツ!神々を沸かせた踊り子「天宇受売命」日本人なら知っておきたいニッポンの神様名鑑|Discover Japan
/八坂神社/祇園商店街振興組合オフィシャルサイト/京都ゑびす神社/本山順子の迷子のお守り〜お寺と神社、お散歩アラカルト〜
〈京都ゑびす神社〉の「十日ゑびす大祭」へ!京都流の商売繁盛祈願を体験。|Hanako/かぎ甚/東の宮恵美須神社/十日戎「のし飴」|全国菓子協同組合連合会/大洲神社/愛媛 NEWS WEB 大洲神社で「大鯛撒き」商売繁盛を祈願|日本放送協会(NHK)(2023年11月21日閲覧)/十日恵比須神社