梅、桜、桃、菜の花、つつじ……。たくさんの「春の花」の中でも早い時期から楽しめるのが「梅」。まだ肌寒い1月末〜2月頃から咲きはじめ、長い期間花を楽しめます。桜に比べれば控え目だけれど、可憐で、それでいて雪の中でも美しく咲く強さを持っています。
ここでは京都の梅の名所をご紹介。ほのかに感じられる春の空気感を楽しんでみてください。
※本記事は2023年12月時点の情報を元に作成しています。諸事情により最新の状況と異なる場合があります
※2025年2月、一部情報を更新しました
[1]城南宮(じょうなんぐう)
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城南宮・春の山
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散りはじめると、花びらがじゅうたんのよう
引越・工事・家相の心配を取り除く「方除(ほうよけ)の大社」として信仰を集めている城南宮。794(延暦13)年、都を平安京へ移すときに、都の安泰と国の守護を願い、八千矛神(やちほこのかみ)と息長帯日売尊(おきながたらしひめのみこと)の2柱を祀ったことが創建と伝えられています。
城南宮の見どころは「楽水苑」「春の山」「室町の庭」「城南離宮の庭」といった趣の異なる庭園。作庭したのは中根金作(なかね きんさく)という人物。中根金作は金閣寺、天龍寺などの庭園の保護・修理のほか、国内外にいくつもの庭園を作ったことで知られる凄腕の造園家です。
梅は「春の山」で見ることができます。濃いピンクや白のしだれ梅150本は、咲き始め、満開、散り始め、と見るタイミングによっても異なる趣を感じさせてくれます。
城南宮では例年、梅の見頃に合わせて「しだれ梅と椿まつり」を開催。期間中は平日1回、土日祝は2回、「梅が枝神楽」を見ることができます。梅の花を冠にさした巫女さんが舞う神楽は風雅で素敵です。
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〝しだれ梅と落ち椿〟は城南宮ならではの味わい深い風景
城南宮 基本情報
●住所:京都府京都市伏見区中島鳥羽離宮町7
●例年の梅の見頃:2月下旬〜3月中旬頃
●神苑拝観時間:9:00〜16:30(最終受付16:00)
●神苑拝観拝観料
大人(中学生以上)……1000円
小学生……600円
●公式サイト:城南宮
城南宮の「しだれ梅と椿まつり」 基本情報
●開催期間:2025年2月18日(火)〜3月22日(土)
●詳細:しだれ梅と椿まつり|城南宮
[2]正法寺(しょうほうじ)
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正法寺梅園
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立派な梅の木と遍照塔
唐代の僧である鑑真とともに日本に渡来した智威大徳が開山したお寺。754(天平勝宝6)年に創建されました。本堂にある三面千手観世音菩薩立像は国の重要文化財に指定されています。鎌倉時代初期につくられたもので、顔が3つあるのには過去にも未来にも目を配る、という意味があるそうです。
正法寺は「石の寺」という別名があります。というのも、境内に庭園がいくつもあり、全国各地から集められた600トンにも及ぶ巨石が配されているから。特に代表的な庭園は「宝生苑」。遠くの山々を借景とした山水庭園で、庭石をよく見ると、ゾウ、フクロウ、ウサギなど動物の形をしているように見えます。
そんな数ある庭の一つが「正法寺梅園」。東山連峰を借景とした庭で、百数十本の梅の木が植えられています。3月上旬〜中旬頃の見頃の時期になると斜面を覆うように紅と白の花が開き、美しい景色を見せてくれます。
正法寺 基本情報
●住所:京都府京都市西京区大原野南春日町1102
●例年の梅の見頃:3月上旬〜中旬頃
●公式サイト:正法寺
[3]三室戸寺(みむろとじ)
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三室戸寺・しだれ梅園は市街地を見渡す高台にある
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濃いピンクなど多様な花を咲かせる
770(宝亀元年)年頃、光仁天皇(こうにんてんのう)の勅願によって創建されたお寺。宮中に毎夜、金色の霊光が差し込むという不思議な現象を目にした光仁天皇が、光の源を右少弁(※)の犬養に探させたことが創建のきっかけです。
光の源を追い、渓流を登った犬養はやがて青い淵を見つけます。そして犬養が淵に近づくと、2丈(約6mほど)の千手観世音菩薩がまぼろしのように現れました。しかし淵に飛び込み抱き上げてみると、一尺二寸(35cm程度)の像と化していたのだとか。
そんな不思議な逸話のある三室戸寺の境内は広く、アジサイやツツジの庭、モミジ園など、季節の花が咲きます。「しだれ梅園」は、約7000平方mの敷地に、約250本の紅白のしだれ梅が植わる庭。京都盆地から大阪平野までを見渡す高台にあります。
※右少弁(うしょうべん):国政を担う役職のひとつ
三室戸寺 基本情報
●住所:京都府宇治市莵道滋賀谷21
●例年の梅の見頃:2月下旬〜3月中旬頃
●公式サイト:西国十番 三室戸寺
●開園情報:しだれ梅園の開園
三室戸寺のしだれ梅園 基本情報
●開園期間:2025年2月15日(土)~3月23日(日)
※開花状況により変更となる場合あり
●開園時間:8:30~15:10
●拝観料:
大人……1000円
子ども……500円
●詳細:しだれ梅園の開園|三室戸寺
[4]北野天満宮
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北野天満宮の梅苑「花の庭」
北野天満宮は、学問の神様・菅原道真公をお祀りする全国の天満宮の総本社です。947年に創建され、皇室からの崇敬を受けてきました。豊臣秀吉の時代には文化の発信地としても栄え、現在も年間を通じて多くの文化的な行事が執り行われています。
菅原道真公は梅をこよなく愛したとされ、北野天満宮の境内には道真公ゆかりの梅が約50種・1500本が植えられています。特に本殿前の「飛梅」は道真公が育てた紅梅の系統を受け継ぐ特別な梅。
また、境内の南側にあり例年2月上旬から3月下旬頃に公開される梅苑「花の庭」でも梅の花を楽しむことができます。「花の庭」は江戸時代には「雪月花の三庭苑」の一つとして知られた名園で、2022年に再興されました。
北野天満宮 基本情報
●住所:京都府京都市上京区馬喰町 北野天満宮
●例年の梅の見頃:2月下旬〜3月上旬
●公式サイト:北野天満宮
北野天満宮の梅苑「花の庭」 基本情報
●公開期間:2025年1月25日(土)~3月16日(日)
※開花状況により変更となる場合あり
●受付時間:9:00〜16:00(最終受付15:40)
●ライトアップ日:
2025年2月14日(金)〜2月16日(日)
2025年2月21日(金)〜2月25日(火)
2025年2月28日(金)~3月2日(日)
●ライトアップ時間:日没〜20:00
●詳細:梅苑「花の庭」|北野天満宮
おわりに
早春の京都を楽しむ梅の名所をご紹介しました。ちなみに、梅(学名:Prunus mume)の花言葉は「上品」、「高潔」、「忍耐」など。まだ寒さの厳しい季節にも、凛と可憐に花を咲かせる姿にぴったりな花言葉ですね。
京都では、歴史のあるお寺や神社などが梅の名所になっているパターンが多く、庭園や歴史的な建造物とともに、絵になる風景を楽しめます。もし気になる場所が見つかったなら、この春出掛けてみてはいかがでしょう。
Text・Edit:Erika Nagumo
Photo(特記ないもの):PIXTA