日本で「すべての始まりの地」と言われる「鹿島神宮」。
創建は紀元前660年と日本最古の神社で、「武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)」が奉る由緒ある鹿島神宮は、今もなお観光客の心を捉えて離さない魅力と威厳を秘めています。この記事ではそんな鹿島神宮の歴史やご利益、見どころを紹介していきます。
鹿島神宮とは
鹿島神宮は茨城県鹿嶋市にある由緒ある神社。創建は紀元前660年と伝えられており、格式の高い神社として有名です。初代天皇である神武天皇によって御創建されました。
関東の有名なお参り「東国三社」の一つでもあり、毎年多くの参拝客が訪れます。全国に約600社ある鹿島神社の総本社で、かつての常陸国(ひたちのくに)で最も格式が高いとされた一宮にあたります。
まず初めに、鹿島神宮の御祭神とご利益について解説していきます。
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鹿島神宮が祀っているのは武甕槌大神(タケミカヅチノカミ)
大ナマズを押さえつける武甕槌大神
鹿島神宮では、雷、剣、地震、相撲の神といわれる御祭神「武甕槌大神」を祀っています。
武甕槌大神はもともと雷神、そして剣の神として生まれました。地震を鎮める役割を担っていることから、地震の神としても崇められています。なかでも、暴れて日本に地震を引き起こすとされる、大ナマズの頭を押さえつける逸話が有名。その頭を押さえつけている石のてっぺんは、鹿島神宮の境内にあり「要石」と呼ばれています。
その他にも、日本神話の国譲りのエピソードにおいては「建御名方(タケミナカタ)」との力比べにも勝利しています。この力比べが相撲の原点とされ、建御名方とともに相撲の神といわれるように。
このように、力を誇示する逸話が多い武甕槌大神は武神と呼ばれるほど強力な神様です。
怖いほど強力?鹿島神宮のご利益とは
その由緒ある歴史から、関東最強クラスのパワースポットと呼ばれる鹿島神宮。勝負運向上や勝利祈願、縁結び、安産祈願のご利益があるとされています。
徳川家康
御祭神である武甕槌大神の存在が非常に強力で、勝負運・必勝祈願のご利益の力は相当なもの。その証拠に、多くの著名人が鹿島神宮へと参拝しました。江戸幕府を開き天下統一を果たした徳川家康が、関ヶ原の戦いの前に参拝されたと言われています。その後、徳川家康はその戦いに勝利。その御礼に鹿島神宮本殿を寄進した歴史が残っています。
鎌倉時代に歴史に名を残した源頼朝も鹿島神宮への信仰が厚く、現在は国の重要文化財になっている鹿島神宮の宝物の一つ「梅竹蒔絵鞍(うめたけまきえくら)」を奉納した伝えがあります。
鹿島神宮近くにある塚原卜伝の像
また、戦国時代に活躍したのちに「剣聖」と呼ばれた「塚原卜伝(つかはらぼくでん)」も鹿島神宮との繋がりがあります。塚原卜伝の父が神官として鹿島神宮に仕えており、塚原卜伝も鹿島神宮で剣の腕を磨く修行をしていたようです。多くの武家の人物からの信仰が厚かったことが分かりますね。勝負運アップの力が非常に強力だと感じるでしょう。
現在では、プロサッカーチームの「鹿島アントラーズ」が毎年必勝祈願のため参拝しています。
また、鹿島神宮に保管されているとされる宝物の一つ「常陸帯(ひたちおび)」。神功皇后(じんぐうこうごう)の腹帯を進衲したことが由来で、妊娠や出産などの安産信仰や恋愛も成就させる神徳があるとされました。そのため、縁結び、安産祈願にもご利益もいただくことができます。
鹿島神宮の「始まり」の歴史
参拝客を迎える鹿島神宮の大鳥居
鹿島神宮の歴史は神代にまでさかのぼります。
日本神話の一説によると、神々の国である高天原(たかまがはら)から葦原中国(あしはらのなかつくに・現在の日本)へ天降った武甕槌大神は、出雲で大国主命(オオクニヌシ)と国譲りの交渉を終えて日本を平定した後に鹿島地方に根付きます。その後、鹿島地方で天寿を全うした武甕槌大神は、高天原へ昇りました。
時は流れ、のちに日本の初代天皇となる彦火火出見(ひこほほでみ)が日本を平定する旅の最中、彦火火出見(ヒコホホデミ)の軍は熊野の土地神の毒に倒れてしまいます。この窮地を救ったのが、武甕槌大神の神剣である「韴霊剣(ふつのみたまのつるぎ)」。剣の神威により息を吹き返した彦火火出見の軍は見事日本を平定し、彦火火出見は神武天皇として日本の初代天皇に御即位されました。
神武天皇は剣に救われた神恩への感謝から、武甕槌大神にゆかりのある鹿島地方に神宮を御創建されます。紀元前660年に創建されたこの神宮こそが、鹿島神宮。
神代日本を平定した武甕槌大神が根付いた土地、初代神武天皇を救った神が見守る土地として、鹿島神宮は「すべての始まりの地」と呼ばれているのです。
鹿島神宮の見どころ
東京ドーム15個分に及ぶ広大な鹿島神宮の境内には、数多くの見どころが満載。古くは源頼朝や徳川家康をはじめとする、歴史に名を残す武士が参拝のために足を運んだ鹿島神宮は、時を経た現代でも国内外の観光客に人気の観光スポットです。ここからは、そんな鹿島神宮の見どころの一部をご紹介していきます。
鹿島神宮樹叢
樹叢に囲まれた鹿島神宮社殿
鹿島神宮の境内には、周囲を取り囲むように多くの木々が自生しています。その種類は、なんと600種以上。シイやタブ、モミなどの樹木の立派な幹が天へ向かって伸びています。長い歴史をもつ鹿島神宮とともに生育してきたこともあり、名木が多く集まる樹林。この樹林は「樹叢(じゅそう)」と呼ばれ、茨城県指定の天然記念物にも指定されています。
また、立派な木々が生い茂るだけでなく、生育南限と北限の植物が混在する特殊な生態系が築かれているのも、この樹叢の大きな特徴です。初夏にはみずみずしい新緑が木陰を作り、秋には満点の紅葉が樹叢と足元を赤と黄色に彩ります。季節によって違う顔で観光客を出迎えてくれるため、訪れる度に鹿島神宮の違う姿を楽しむことができるでしょう。
鹿園
奥参道の途中にある鹿園には、約20頭の鹿が飼育されています。
鹿島神宮には鹿にまつわる逸話があります。1300年ほど昔、奈良県の春日大社の創建に際して鹿島神宮から武甕槌大神が遷されたときのこと。武甕槌大神を運んだのが、まさに鹿たちであったと伝わっています。以降、鹿島神宮では鹿を「神の使い」として扱い、神鹿(しんろく)として今でも親しまれています。
この鹿園では鹿への餌やりも体験でき、より鹿を身近に感じながらスキンシップを楽しめます。かわいらしい鹿達にぜひ餌をあげてみてはいかがでしょうか。ただし、鹿は食欲が強く時には手に提げていたビニール袋などを食べてしまうことがあるそう。鹿の命の危険につながりますので、注意しながら鹿達と触れ合いましょう。
社殿
鹿島神宮本殿
鹿島神宮の社殿は、本殿・石の間・幣殿・拝殿の4棟からなる複合社殿。鹿島神宮本殿は1605年に徳川家康から、残る社殿一式は1619年に徳川二代将軍の秀忠によって寄進されています。
徳川家二代に渡って造営がなされていることからも、徳川家の鹿島神宮への信奉心がよほど強かったことがうかがえます。本殿には御祭神の武甕槌大神が祀られており、漆塗りかつ柱頭や組物など、随所に映える力強い極彩色が特徴。参道から見て拝殿・幣殿・石の間・本殿の順で並び、幣殿と本殿の間は石の間である渡り廊下で繋がっています。
鹿島神宮の拝殿は、正式参拝や結婚式の時にのみ中に入ることができる厳かな空間。厳重に守られた空間だからこそ、霊験あらたかな空間なのだと感じることでしょう。
楼門
銅板葺の鹿島神宮楼門
鹿島神宮の楼門は、熊本県の阿蘇神社、福岡県の筥崎宮と並んで日本三大楼門のひとつ。1634年、水戸徳川初代藩主の徳川頼房によって奉納され、現在は重要文化財に指定されています。
当初は檜皮葺(ひわだぶき)の作りでしたが、修繕を重ねるうちに現在の銅板葺(どうばんぶき)へと変わりました。総朱漆塗りで赤々とした外観が特徴ですが、彩色は抑えめで全体的に赤くも静かな佇まいの楼門です。
楼門の上部に飾られている額「鹿島鳥居」は、日露戦争などで指揮をとった東郷平八郎の書。この凛とした雰囲気を持つ楼門は国の重要指定文化財に指定され、楼門左右の回廊は鹿嶋市指定文化財に指定されている価値ある建造物です。
鹿島神宮宝物館
鹿島神宮には、徳川家など名だたる武将が奉納した宝物が多数所蔵されています。その中でも、国宝や重要文化財などを展示するのが鹿島神宮宝物館。武甕槌大神が用いた神剣であり、初代神武天皇を救ったとされる日本最古最大の直刀「韴霊剣(ふつのみたまのつるぎ)」や、神社にゆかりのある雪村筆「百馬図」などが展示され、直刀の実物大レプリカに触れて、重さや長さを体感することもできます。
【鹿島神宮宝物館】
開館時間:9:00〜16:00
料金:大人300円 / 中学生以下100円(土曜無料)
※2018年5月7日から宝物館解体工事、埋蔵文化財試掘調査実施のため長期休館中
一之鳥居
夕景との相性バッチリな一之鳥居
神社をお参りする時にまず目にするのが鳥居でしょう。実はその鳥居の中は神様が鎮まりになる御神域とされているのをご存知でしたか。鹿島神宮にはそんな鳥居が東西南北にあります。注目は西にある「一ノ鳥居」。
一ノ鳥居は歌川広重の「六十余州名所図会」にも描かれており、広島の厳島神社より大きな高さを誇る日本最大級の水上鳥居でもあります。夏には鹿島市の花火大会の会場にもなっており、鳥居の背後に打ち上げられる景色は絶景です。
鹿島神宮のお守り・御朱印について
鹿島神社には多くの種類のお守りを頒布しています。
地震の原因となっているナマズを抑える大神様が描かれた「自信守」や、茨城県のいきす神社と千葉県の香取神宮のご神紋を合わせる「東国三社守り」など、鹿島神宮ならではのお守りばかり。
強力な力を持つ武甕槌神を祀っていることから「勝守」にも注目です。負けられない勝負事の前にはぜひ立ち寄りたいですね。
御朱印も見逃せません。鹿島神宮の公式サイトによると御朱印帳は全部で6種。鹿島神宮の楼門が描かれた御朱印帳のほか、一之宮の御朱印帳、さらに鹿島アントラーズとのコラボで生まれた御朱印帳もいただくことができます。
まだ御朱印帳を持っていないという方、2冊目以降を購入予定の方は是非こちらの鹿島神宮の御朱印帳を、ご検討してみてはいかがでしょうか。最新の御朱印帳については鹿島神宮公式サイトの御朱印帳ページをご覧ください。
御朱印については全部で2種類。本宮と奥宮で2種類の御朱印があり、文字やデザインが異なります。御朱印は境内の祈祷殿で入手可能です。
奥宮の御朱印(左)と本宮の御朱印(右)(写真提供:chamezou様)
鹿島神宮のイベント
1月「白馬祭」
鹿島神宮の「白馬祭(おうめいさい)」は約750年もの歴史をもつ伝統的なお祭りです。御神馬の白馬が神殿の前を駆け抜け、その御神馬が踏んだものを身につけていると願い事が叶うといわれています。そのため参拝者はハンカチなどを地面に敷いて、御神馬が踏むのを待ち構えます。
1月「大寒禊」
鹿島神宮境内にある御手洗池で開催される「大寒禊」は、湧水で身を清めることで、一年の幸運を祈願する祭事です。男性はふんどし、女性は白衣を身につけ、祝詞を大きな声で唱えながら、胸のあたりまで体を沈めます。一年で一番寒い大寒に、寒さを吹き飛ばしてしまうほどの熱気にあふれます。
3月「祭頭祭」
毎年3月9日に開催される「祭頭祭」は、カラフルな祭衣を身にまとい、約2mの樫の棒を組んでは解きを繰り返しながら街中を歩くお祭りです。その年の五穀豊穣を願って行われます。
鹿島神宮パワースポットの七不思議
鹿島神宮には、パワースポットとしての側面も。ひそかに語り継がれている七不思議についてご紹介しましょう。
1. 大鯰の要石
鹿島神宮の要石の祠
暴れて地震を引き起こす大鯰の頭を押さえつけ、地震を鎮めていると伝えられる石。鹿島地方に地震の被害がないのはこの石のおかげともいわれています。水戸黄門としても知られる水戸藩第二代藩主「徳川光圀」がこの石を掘り起こして底を確かめようと七日七晩掘ったものの、石を掘り起こすことができず、そればかりか事故が頻発しけが人が多数出てしまったため取りやめたという逸話が残されています。
2. 水嵩変わる御手洗池
鹿島神宮の御手洗池
参拝客が参拝前に身を清めるために浸かったとされた池の名称。不思議なことに、池に入るのが大人でも子供でも水面が胸の高さに留まり、それ以上は上がってこなかったと伝えられているそう。
3. 下流知れずの末無川
鹿島神宮境外にある川のこと。川の流れに沿おうとしても途中で流れが地下に潜って途切れ、その末がどこに通じているのかわからないためこの名が付きました。
4. 豊凶占う御藤の花
飛鳥時代に活躍し、大化の改新の中心人物である藤原鎌足が植えたとされる藤の木。現在は存在が確認されませんが、その木が付ける花の数で作物の豊凶を占うことができたそうです。
5. 枯れずの根上がり松
鹿島神宮境内にある松の木はすべて、伐採しても切り株から芽が生えるため何度伐っても枯れることがないという伝説。現在は真偽不明ですが神宮境内の樹木をむやみに傷つける行為は禁止されています。ルールを守って観光を楽しみましょう。
6. ヤニ知らず松の箸
鹿島神宮境内の松で作られた箸からはヤニが出ないとの言い伝えがあります。※現在は箸作りに使用されていません。
7. 天候告げる海の音
鹿島灘の波の音が、北から聞こえると晴れ模様。南から聞こえると雨模様の天候となるといいます。
鹿島神宮へのアクセス
最寄駅:鹿島神宮駅
東京駅からのアクセス
【東京駅】- 高速バス・かしま号 / 鹿島神宮駅行き
→【鹿島神宮バス停】
水戸駅からのアクセス
【水戸駅】- 鹿島臨海鉄道大洗鹿島線 / 鹿島神宮方面
→【鹿島神宮駅】→ 徒歩(約10分)
駐車場情報
【鹿島神宮 参拝者第一駐車場】
住所:茨城県鹿嶋市府中 2306-1
台数:60台
料金:
300円(普通車)
500円(中型車)
700円(大型車)
【鹿島神宮 参拝者第二駐車場】
住所:茨城県鹿嶋市府中2-8-8
台数:55台
料金:無料
※土日祝、繁忙期は有料になる場合があります
【鹿嶋市宮中地区駐車場】
住所:茨城県鹿嶋市宮中1-13
台数:150台
料金:
500円(普通車)
700円(中型車)
1000円(大型車)
200円(バイク)
※平日は無料
鹿島神宮のパワーを実際に体感してみて
「すべての始まりの地」鹿島神宮を、その歴史と神話をなぞりつつご紹介しました。神代から現代にいたるまで多くの人々を魅了してきた鹿島神宮。
この記事でご紹介した鹿島神宮の見どころは、ほんの一部に過ぎません。実際に足を運んでみることで、より日本の始まりや、鹿島神宮のパワーと歴史を感じることができるはず。「すべての始まりの地」を、五感で感じてみてはいかがでしょうか。
また、鹿島神宮では御朱印をはじめ、鹿島神宮ならではの武道守、常陸帯守、鹿島の帯占いなど、数多くのお守りも授与しているので、訪れた際にチェックしてみるのもおすすめです。
Edit: Ayano Enokido/Kaoru Maki
参考:鹿島神宮/国会国立図書館/鹿行ナビ/鹿嶋市公式サイト/ほか