日本の食卓の定番調理器具である「土鍋」。冬になるとこたつに土鍋を置き、家族みんなで鍋料理をつつく…日本らしい光景です。その土鍋、実は鍋料理だけでなく、様々な料理で活躍する万能調理器具であることをご存知ですか?ご飯を炊いたり、スープや煮込み料理を作ったりと、幅広い料理で活躍するんです。
今回は、都内の「白金陶芸教室」でオリジナルの土鍋作りを体験レポート。土鍋の魅力や長持ちさせるための手入れ方法とともに紹介していきます。
土鍋の持つ魅力とは?
日本食に欠かせない調理器具「土鍋」
実は万能調理器具なんです
日本の食卓にぴったりな土鍋。冬の鍋料理でよく使われる定番の調理器具です。しかし、鍋料理でしか土鍋を使っていないのはとってももったいないこと。ほかにもご飯を炊いたり、煮込み料理を作ったりと、様々な料理で活躍することをご存知でしたか?
土鍋を使う最大のメリットは、保温性の高さ。その名の通り土でできていますから、ステンレス性の鍋よりも熱が失われにくいのです。そのため、冬の寒い時期での鍋料理で重宝されるんですね。
さらに、熱が逃げにくい分、食材に熱が伝わるスピードもゆっくり。煮込み料理も、土鍋を使うことでじっくりと火が通り、肉や野菜の旨味を閉じ込めながら柔らかく仕上げてくれるのです。土鍋で炊くご飯がふっくらと美味しく仕上がるのはこのため。遠赤外線の効果で、ご飯一粒一粒にじっくり火を通して炊き上げてくれます。
食卓にそのまま乗せても絵になります
土鍋はテーブルの中心を飾るとっておきの食器としても大活躍。焼き物ならではの味わい深い見た目と保温性の高さで、そのまま食卓に乗せても様になります。
日本人の暮らしに合わせて変化してきた土鍋
そもそも土鍋は、日本人にとって馴染み深い調理器具。土を成形し作るため、縄文時代から日本で使われていました。「縄文土器」と呼ばれるものの一つです。そこから姿を変え、雪平鍋、土瓶蒸し鍋など多様な土鍋が登場。今ではご飯を炊くための炊飯用土鍋も販売されています。
用途に合わせて最適な形となった専用土鍋も様々誕生していますが、土鍋の機能はいずれも同じ。つまり、土鍋一つであらゆる料理ができるんです。
【土鍋作り体験】でオリジナル土鍋をゲット
土鍋は毎日使える万能調理器具。使うごとに味わい深い表情になっていくのも魅力です。せっかく日常使いをするなら、自分のお気に入りの土鍋を手に入れたいですよね。そこでおすすめしたいのが、「土鍋を自分で作ってみる」ということ。
今回は、オリジナルの土鍋を手に入れるために、地下鉄日比谷線広尾駅から徒歩約10分、白金に位置する「白金陶芸教室」で土鍋作りを体験してきました。
あらゆる陶芸体験ができる白金陶芸教室
電動ろくろ体験なども実施
白金陶芸教室では、電動ろくろ体験をはじめ、様々な陶芸体験を実施しています。土鍋作り体験はその中の一つ。手びねりで粘土を成形し、自分のオリジナル土鍋を作ります。
まずはサイズ決め。一人用くらいの小さな土鍋から、3〜4人囲むのにぴったりな土鍋まで、幅広いサイズの中から希望のサイズを選びます。
自分が作りたいサイズの型を選ぶ
ちなみに、サイズによって焼成代が異なります。今回は2人用サイズの、少し深めの土鍋を作ることに。
1.粘土を伸ばし鍋型に成形
最初に、土鍋の本体部分を成形していきます。土鍋作りでは直火に当てても壊れないよう、耐熱鍋土という粘土を使用。湯のみや茶碗を作るときに使う粘土よりも土が粗く、ザラついているのが特徴です。
ザラついた重みのある粘土を使用
2kg近くある粘土の塊を、手と延べ棒を使って8mmになるように伸ばしていきます。女性の私にとってはかなりの重労働。体重をかけながら、少しずつ粘土を伸ばします。力が足りない部分はスタッフさんがサポートしてくれるのでご安心を。
体重をかけて粘土を伸ばす
延べ棒もかなりの力を使う
ゴムベラで表面の傷を取って滑らかにしたら、伸ばした粘土を素焼きの鍋の型に乗せ、綺麗に型取っていきます。ポイントは薄くするのではなく、押さえつけるように型に合わせて形作っていくこと。力はほとんど要りません。
縁部分を切り取って、ゴムベラや濡れたスポンジで表面を拭き滑らかにしたら鍋部分の本体の完成です。意外と簡単!
ゴムベラで表面の傷をなめらかに整えたら…
型に乗せ要らない部分をカット
ひび割れしないよう底部分もなめらかに
2.鍋に模様をつける
手びねりで作る陶芸作品の醍醐味の一つが、オリジナリティ溢れるデザインにできること。土鍋にも、お気に入りの文様をつけていきます。
花や魚、トナカイ、東京タワーなど様々な文様のスタンプから好きなものを自由に選び、鍋の側面に模様を描きます。鍋の底にも文字を書いたりできるそうですが、今回は側面のみスタンプで彩ってみました。
様々な種類のスタンプから好きなものを選ぶ
一定の力をかけながらスタンプを押していく
スタンプの形やサイズの種類が豊富で、どれを使うか選ぶだけでもワクワクします。
3.鍋の蓋を成形する
次は鍋の蓋部分を作っていきます。こちらも同様に、大きな粘土の塊を少しずつ薄く伸ばしていき、鍋本体と同じ8mmの薄さに仕上げていきます。粘土を伸ばす作業も2回目になると手馴れてきて、最初よりもスムーズに出来上がりました。
蓋も同じように成形していく
今回の土鍋の蓋は丸みを帯びた可愛らしいフォルム。こちらも型に粘土を乗せ、周囲の余計な部分を少しカットします。
4.蓋の取っ手を作りデザインを施す
蓋の取っ手部分を粘土で作っていきます。シンプルな取っ手型にする人もいれば、動物のオブジェを粘土で作りそれを取っ手にする人など、取っ手の形も自由。文鳥好きの私は文鳥をイメージした小鳥の取っ手を作ることに。
好きな形に粘土をこねていく
粘土を適量取り、好きなように成形していきます。使える粘土の量に決まりはないので、自分の作りたいものを自由に作れるのがうれしいですね。
出来上がった小鳥の取っ手を蓋の中央に乗せていきます。取れないように、粘土を水で溶き柔らかくした「どべ」を取っ手と蓋の間に接着剤としてつけていきます。さらに取っ手と蓋の接着部分を粘土で補強して、取っ手の完成。
接着剤の役割を担う「ドベ」
粘土で取っ手と蓋を繋ぎ合わせる
さらに蓋にも鍋と同様のスタンプを押し、オリジナリティを出していきます。今回はレースで小鳥を囲んで、少しメルヘンチックに仕上げてみました。
5.鍋に持ち手をつける
鍋の持ち手も忘れてはいけません。少し乾燥させて固まってきた土鍋本体の両サイドに、こちらも好きなように持ち手をつけていきます。
鍋本体へ同じように持ち手を接着
ポイントは、鍋のサイズに対して持ち手が小さくなりすぎないようにすること。直火から鍋をあげた時にうっかり持ち手が取れてしまっては大変です。ある程度の重量には耐えられるように、取っ手のサイズも考えながら成形していきます。
6.蓋を鍋に合うようにカットして出来上がり
鍋本体の縁に合うように、蓋のサイズをカットしていきます。素人の私がやっていびつな形になったら土鍋が使えなくなってしまうため、最後の仕上げはスタッフさんにお任せです。スムーズで美しいカットにより、鍋の蓋も完成。
これで全工程が終了です。所要時間は約1時間半。模様や取っ手のデザインに迷っても、2時間ほどで終了します。
鍋の蓋のサイズを的確にカット
土鍋の色は透明(白)か黒から選べます。黒の釉薬を使うとせっかくのスタンプ柄が埋もれてしまう可能性があるということで、白色でお願いすることに。
白もしくは黒から色を選ぶ
今回は白または黒の2色でしたが、いろんな色を使いたい!という人は、色付けも行える2日間コースがおすすめ。1日目で成形を行い、2日目に乾燥させた土鍋に色付けを行うコースです。
焼き上がりは4週間後。自分で取りに来るもしくは、2,500円で重たい土鍋が割れないよう丁寧に梱包して配送してもらえます。約1カ月後に自分のオリジナル土鍋に会えるのが楽しみです。
オリジナル土鍋の完成
焼きあがった土鍋をもらう引換券
初めての土鍋作り体験。粘土を手びねりして成形していくことで、電動ろくろなどでは味わえない「オリジナルの焼き物作り」の面白さを実感しました。大きな焼き物のため作るのが大変かなと思っていましたが、想像よりもずっと楽しく、簡単。それでいて、手びねりで粘土をこねる楽しさもしっかりと体験できました。
電動ろくろで気軽に小さな器を作るのも素敵ですが、粘土を自分の手でこねて大きな土鍋を作るのも、普段では味わえない貴重な体験ですね。
食卓をもっと楽しく。土鍋の使い方
マイ土鍋で美味しい料理を作ろう
さて、オリジナルの土鍋が完成したら、ぜひとも日常使いをしたいところ。自分で作った土鍋でぜひ作りたい料理をご紹介します。
土鍋でご飯を炊いてみよう
日本食の基本であるご飯。土鍋で炊けば、甘みのあるふっくらとしたご飯が出来上がります。しかも、炊飯器で普通炊きをするよりもずっと早く炊き上がるのですから試してみない理由はありません。
水の量は1合に対し200ml
米を研いで水を切り、土鍋に入れて浸水させます。水の量は、お米1合に対し200ml。2合なら400ml、3合なら600mlと増やしていけばOKです。浸水は20分程度で十分。軽く水拭きして汚れを取った乾燥昆布などをお米の上に乗せておけば、ほんのり昆布出汁の優しい香りを纏ったご飯が炊けますよ。
炊く時間は20分ほど。土鍋に蓋をして、まずは中火で5分程度火を通します。ふつふつと蓋が動く、もしくは蒸気が上がってきたら、弱火にして12〜3分放置。おこげをつけたいなら、もう2分ほど弱火の時間を延長してみて。
最後は火を消し、蓋をしたまま10分間放置します。ポイントは、火を通してから蒸らし終わるまで、蓋を開けないこと。美味しく炊けているか、焦げていないかどうかチェックしたくなる気持ちを抑えて、30分間土鍋にお任せしましょう。
こうして10分蒸らしたら、炊きたてご飯の出来上がり。蓋を開けるとご飯の甘い香りが鼻孔をくすぐります。
土鍋でご飯がふっくらと炊き上がる
ちなみに、土鍋で炊いたご飯が残った場合は、そのまま土鍋ごと冷蔵庫に入れて保存しておけるんです。翌日そのまま火にかけて温めることもできますし、土鍋のまま雑炊を作るのもいいですね。
洋風料理も美味しく仕上がります
ホーロー鍋やタジン鍋で作るイメージがある洋風料理ですが、もちろん土鍋でも美味しく作れます。前述したように、土鍋は食材にじっくりと火を通してくれるので、煮込み料理に最適。シチューやポトフ、ブイヤベース、アクアパッツァなども、食材の旨味を閉じ込めてホロホロに煮込んでくれます。
和食以外も土鍋で作れる
土鍋は今回体験で作ったような、浅すぎず、深すぎずのサイズが使い勝手も抜群でおすすめ。
土鍋を長持ちさせるお手入れ方法
最後に、せっかく手に入れたとっておきの土鍋をずっと使えるよう、長持ちさせるお手入れ方法を紹介します。
目止め
土鍋が手元に届いたら、まずは「目止め」を行います。目止めとは、土鍋の土そのものの臭いを取り除くほか、汚れが土鍋の隙間に入らないようにする最初のお手入れ。
米のとぎ汁を鍋の8分目まで入れ、弱火で10分ほど火にかけたら、とぎ汁が冷めるまで放置します。これで完了。とぎ汁に含まれる米の糊成分であるデンプン質が土鍋の隙間に入り、汚れの付着を防いでくれるんです。
土鍋は乾かしてから使う
土鍋は土でできているため、急な温度変化に弱いもの。鍋底に水がついたまま火にかけてしまうと、急な温度変化でヒビが入る原因になってしまいます。土鍋を使うときは直火にかける部分の水分をしっかり拭き取り、乾いた状態で使うようにしましょう。急に強火にかけるのも厳禁。弱火から中火、強火と少しずつ火力を上げていくのがポイントです。
テーブルに置くときは鍋敷きを
土鍋をそのまま食卓にあげるときは、必ず鍋敷きを下に敷くようにしましょう。保温性が高いため、土鍋自体も冷めるのが遅く、テーブルにそのまま乗せるとテーブルに焦げ目がついてしまうだけでなく、材質によっては土鍋に溶けたテーブルの素材が付着してしまう場合も。
使い終わった土鍋はすぐに洗う
土が原材料の土鍋は、吸水性が高く水や洗剤が染み込みやすいので要注意。調理や食事が終わったら、煮込み料理や鍋料理の場合は手で土鍋が持てるくらいまで冷めてからお湯でさっと洗うのがベストです。汚れが気になるようなら中性洗剤を使いましょう。
ヒビが入ったらデンプンで修理
長い間使ってもしヒビが入ってしまった場合は、土鍋にたっぷりの水を張り、ひとつかみのお米を入れて弱火よりさらに弱いとろ火(鍋底に火が触れない程度の火加減)で煮込みます。沸騰したら火を止め、冷めるまで放置。目止めと同じように、お米に含まれるデンプン質がヒビを塞ぐ役割を担ってくれます。
臭いやカビが気になるようなら
もし土鍋に臭いが付着してしまい気になるようであれば、お茶を土鍋で煮てみましょう。鍋の7分目まで水を張り、お茶っ葉ひとさじを投入。蓋をし弱火で10分程度煮込むだけで、お茶の殺菌成分が臭いの元となる汚れを取ってくれます。
土鍋を放置してうっかりカビが生えてしまった…そんな時は、お酢が役立ちます。鍋の8分目まで水を張り、お酢を大さじ3杯ほど入れ、蓋をし弱火で10分煮ます。土鍋の中に染み込んでしまったカビを殺菌してくれますよ。
大事に手入れすれば土鍋はずっと使えるものに
白金陶芸教室で土鍋作り体験をすると、土鍋の使い方について詳細を教えてもらえます。そのほかに気になることがあれば、土を知り尽くしたスタッフさんにぜひ訊ねてみて。
一生使えるオリジナル土鍋を手に入れよう
土鍋は丁寧にお手入れをすれば、一生使えるとっておきのアイテムになるはず。さらにオリジナルの土鍋なら、日常使いするのも楽しくなりますよね。冬の鍋料理だけでなく、いつもの食卓にもぴったりな自分だけの土鍋を手に入れて、様々な料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。