四季折々の自然に恵まれ、あちこちにフォトジェニックな風景が広がる鹿児島県。なかでも薩摩半島南端に位置する指宿市は、12月半ばから「日本で最も早い菜の花畑」を楽しめることで有名です。
今回は鮮やかな菜の花畑の風景を中心に、指宿と菜の花の深いつながり、菜の花の2大絶景スポット、菜の花の時期が過ぎても楽しめる指宿の見どころ情報についてご紹介します。
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日本一早く「菜の花」が咲く指宿
指宿を彩る菜の花
菜の花と聞いて、ほとんどの人は「春」をイメージするのではないでしょうか。観賞用や食用として出荷される菜の花は1〜3月ごろに最盛期を迎えますし、俳句の世界で「菜の花」といえば、晩春(5月ごろ)の季語です。
ところが鹿児島県の南にある指宿(いぶすき)市では、日本で一番早い12月の中旬から菜の花が咲き誇ります。最盛期となる1月には1000万本を超える菜の花が街中を彩り、菜の花をモチーフにしたマラソン大会も開催されるなど、イベントも盛ん。もちろんSNS映えする写真スポットも満載です。
指宿ってどんなところ?
指宿は地熱が豊富な温泉地帯
指宿市があるのは、鹿児島県本土(離島を除く部分)の南端です。暖かい海流(黒潮)がぶつかることと、鹿児島屈指の温泉地帯として豊富な地熱に恵まれていることから、一年を通して気候は温暖。なんと年間平均気温は約19℃(東京は約15℃)もあり、「東洋のハワイ」とも呼ばれています。
ちなみに毎年4月には市長が「アロハ宣言」をして、市役所や銀行、ホテルなどの制服が半年間「アロハシャツ」になるだとか。
指宿では、菜の花にちなんださまざまなイベントも開催されています。特に高い知名度を誇るのが、2022年で第41回目となる「いぶすき菜の花マラソン」。開催日は毎年1月の第2日曜日で、日本陸連の公認大会としては日本で一番早いマラソン大会なんだそうです。
もっとゆっくり菜の花を楽しみたいなら、1月の終わりごろに開催される「いぶすき菜の花マーチ」というウォーキングイベントもおすすめです。
マラソンコースにも菜の花
そもそも「菜の花」って?
鮮やかな黄色い花が特徴の「菜の花」ですが、実は菜の花呼ばれる植物にはいくつかの種類があります。
一般的によく見かけるのは「アブラナ」。特に明治時代にヨーロッパから導入された「セイヨウアブラナ」は、主に油を絞ったり、肥料にするために広く栽培されました。養蜂家からは蜂蜜の原料として重宝されるほか、「春の味覚」として食用にもなっています(三重県のブランド野菜「三重なばな」もセイヨウアブラナです)。
鮮やかな黄色の菜の花(セイヨウアブラナ)
一方、河川敷などでよく見かける「カラシナ」も菜の花の一種です。こちらも弥生時代から各地に自生しているカラシナのほかに、明治時代以降に入ってきた「セイヨウカラシナ」があります。アブラナと比べてクセ(辛味)があるとされるカラシナですが、品種によっては油炒めやお浸し、漬物などにすると美味しくいただけるそうですよ。
指宿と菜の花の深い関係
現在の指宿が「菜の花の名所」となったことには、実は歴史的な背景があります。
今から約190年前の江戸時代、鹿児島(薩摩)では菜の花が「食用」「菜種油用」として栽培されていました。出荷先は「天下の台所」と呼ばれた大阪。しかし薩摩の菜の花は品質が良くなく、粗悪品として扱われていたそうです。
江戸時代から盛んに栽培されていた
この状況をなんとかしようと立ち上がったのが、薩摩藩の財政改革を担当していた調所広郷(ずしょひろさと)という人物。
1832年に骨粉飼料の配布や袋詰方法の改良といった「菜種改革」を実行します。結果として菜の花の品質は向上、薩摩の特産品として高い評価を受けるようになりました。
当時指宿を治めていた島津忠剛(しまずただたけ / 篤姫の父親)も、調所の関係者からアドバイスを受けて菜の花の栽培を奨励。結果、今日に至るまで菜の花は指宿の春の風物詩となったのです。
菜の花の2大絶景スポット
ここからは、菜の花の絶景を楽しめるおすすめスポットを紹介していきます。ちなみに指宿は、鹿児島県内でも有数の観光地。中でも特に有名なスポットが「池田湖」と「開聞岳」です。もちろん今回ピックアップする菜の花の絶景スポットも、この2カ所と関係があります。
神秘的な「池田湖畔」に咲く菜の花
池田湖は上から見るとほぼ円形のカルデラ湖。約6400年前の火山活動によって誕生したと言われています。直径は約3.5km、池の周囲は15kmほどの長さがあり、九州最大の湖としても知られています。
九州最大の湖「池田湖」
池田湖の特徴はそれだけではありません。たとえば池田湖は日本最大のウナギ「オオウナギ」の群棲地です。これまでに見つかった中で最大のものは、なんと体長1.8m、体重は20kgもあったそう。
ほか、池田湖には「龍神伝説」が伝わっています。湖の中に「人間の頭に龍の体を持つ龍神」が住んでいるといわれ、仲間を傷つけた人間を呪い殺したのだとか。村人が龍神の怒りを鎮めるために建てた社は、今も「池王明神」として残っています。
知る人ぞ知る「イッシー」も池田湖の名物です。
イッシーとは正体不明の巨大生物で、体長約20mで、背中にコブがあって全身が黒色という「首長竜」のような生き物だといわれています。どこかで聞いたような…?と思われるかもしれませんが、その通り。世界的に有名な「ネス湖のネッシー」と同じようなものです(池田湖なのでイッシー)。実際に存在するかどうかはともかく、イッシーは指宿の「観光の目玉」のひとつにもなっています。
この池田湖の湖畔こそ、最初の「菜の花の絶景スポット」です。特に見どころは北西にある駐車場付近。早速車を停めて、湖沿いの遊歩道を歩いてみましょう。
畔沿いに遊歩道が続く
やがて見えてくるのが、遊歩道沿いの菜の花畑。幅広い緑地帯が一面の菜の花に覆われて、目が覚めるような鮮やかさです!
一面の菜の花畑
菜の花と池田湖の向こうには、指宿のもうひとつの目玉「開聞岳」の姿も見えます。
ここは「菜の花」と「池田湖」と「開聞岳」をいっぺんに楽しめる場所なんです。冬の時期に指宿を訪れるなら、この場所は外せませんね。
3つの風景を同時に楽しめる
雄大な「開聞岳」を背景に咲く菜の花
美しい「開聞岳」と菜の花
開聞岳は別名「薩摩富士」とも呼ばれる美しい山です。標高は924mで、日本百名山や九州百名山のひとつにも数えられています。開聞岳も火山活動によって誕生した山。このあたり一帯では4000年以上前から火山活動が活発で、特に9世紀後半に発生した2度の大噴火によって、現在の山の形になったといわれています。
ゆるやかに広がる開聞岳の麓には多くの畑がありますが、なかでも絶景スポットとしておすすめなのが「JR 西大山駅」の周辺です。
ちなみに西大山駅は「JR日本最南端の駅」として、鉄道ファンの間ではとても有名な駅です。
JR日本最南端の駅
駅自体は、ホームが一本あるだけの無人駅。駅舎はもちろん改札口もなく、降りるときに切符をポストのような箱に入れる仕組みです。
ホームが一本延びるだけの無人駅
ホームの先端には開聞岳をバックに「JR日本最南端の駅」と書かれた柱が立ち、観光客の撮影スポットにもなっています。
ホームの先端にある記念撮影スポット
西大山駅では、菜の花を連想させる「黄色いポスト」も大人気。こちらも記念写真を撮るカップルや、女子旅グループの姿が絶えません!菜の花の時期はもちろん、一年を通しておすすめしたいスポットです。
駅前に立つ黄色いポスト
菜の花だけじゃない指宿の魅力
鮮やかな黄色が印象的な菜の花。広々とした湖や雄大な山を背景に絶景を楽しめるのは「指宿ならでは」の魅力です。ですが、指宿の魅力はほかにもあります。最後に菜の花の時期以外にも楽しめる、指宿の観光スポットを紹介します。
冬もおすすめの「砂むし温泉」
指宿は鹿児島を代表する温泉地としても有名。なかでも指宿ならではの名物が「砂むし温泉(砂風呂)」です。およそ300年前から地元の人や湯治客に愛されている砂蒸し温泉は、血液の循環促進や老廃物の排出に効果バツグン。波の音を聞きながら寝そべっていると、心の中までポカポカと温まります。
指宿ならではの「砂むし温泉」
このユニークな温泉の秘密は「地熱」。特に海水の染み込んだ砂浜では地熱で暖められた水蒸気が豊富に吹き出していて、砂蒸し温泉以外にも活用されています。ちなみに温泉の蒸気でホクホクに蒸された「サツマイモ」は絶品ですよ!
豊富な地熱は蒸し料理にも利用される
菜の花の時期が過ぎたら「知林ヶ島」へ
指宿市の沖合に浮かぶ無人島「知林ヶ島(ちりんがしま)」は、ちょっと変わった観光スポット。なんと「季節限定・日時限定」で、歩いて島に渡れるんです。
知林ヶ島に渡れるのは、菜の花のピークが過ぎた3月ごろから10月にかけての時期。大潮の日か中潮の日の干潮時間帯という非常に限られた時間に、長さ約800mの砂の道が出現します。
限られた時間だけ「砂の道」が出現する知林ヶ島
島の中には遊歩道や展望台があり、海から開聞岳や指宿市街地を一望できます。ただし、のんびりしていると「道が消えて帰れなくなる」ので気をつけて。
指宿に菜の花を見に行こう!
日本で一番早く菜の花を楽しめる指宿。今回紹介したスポットの他にも、市内にはたくさんの菜の花畑があります。冬も暖かい指宿をドライブしながら、ぜひお気に入りの絶景スポットを見つけてみてください。