「黒湯」の特徴は?
蒲田に行ったら必須!こだわりが光る銭湯
改正湯
はすぬま温泉
黒湯だけじゃない!「銭湯」を満喫しに蒲田へ

都内の温泉として知られている「黒湯」は、大田区「蒲田」エリアで多く湧出していることでも有名です。大田区は、都内で一番銭湯の多い区であり、黒湯温泉が楽しめる銭湯も多数存在しています。

今回は、そんな中でも魅力的な2つの銭湯を紹介。どちらも2010年以降にリニューアルオープンし、個性的な魅力たっぷりに生まれ変わった銭湯です。蒲田に温泉を楽しみに行く際は、ぜひチェックしてみてください。

「黒湯」の特徴は?

大田区を代表する天然温泉「黒湯」。改正湯をはじめ多数の銭湯で入浴できる黒湯ですが、適応症はどんなものが挙げられるでしょうか?最後に、東京が誇る温泉である黒湯について、その特徴を紹介します。

お湯が黒くなるのは「フミン酸」が豊富に含まれているから

黒湯の最大の特徴は、もちろん「お湯が黒い」こと。これは、黒湯が海洋性の温泉であることに由来します。海洋性の温泉とは、海の底に沈む地層から湧出している温泉のこと。ちなみに、温泉は大きく「火山性」と「非火山性」に二分でき、海洋性温泉は「非火山性」の温泉に分類されます。

そして、海の底の地層には、沈んで溜まっていった海藻、木の葉といった植物性物質や、火山灰などが沈殿して固まっています。この地層が何億年もの年月をかけて分解され湧出したのが、黒湯。その中には植物性物質を起源とする有機物「フミン酸」が含まれており、それが源泉に溶けて褐色に濁るのです。

多くの黒湯源泉は25℃未満

一般的な火山性温泉は、火山マグマの熱によって温められて湧出するため温度は高め。例えば草津温泉や箱根温泉も、この火山性温泉に分類されます。

対して、海洋性温泉である黒湯は、源泉温度が25℃を下回る「冷鉱泉」が大半なんです。ただし、深さ1,500m近くからくみあげると、地熱によって40℃近くに加温された黒湯の源泉を確保できるそうです。

黒湯は美肌効果が期待できる?

有機物のフミン酸が溶け込んだ黒湯であれば、海洋性のミネラルがたっぷり含まれているとされています。見た目や入浴感覚も湧出する黒湯によってさまざまですが、蒲田で湧出する黒湯は、見た目よりもさらりとした肌感が特徴。入浴後の肌はさっぱりとしています。ミネラル成分をたっぷり含んでいるため、保温や保湿効果が期待できる温泉としても知られています。

ほか、黒湯の適応症は神経痛や筋肉痛、慢性皮膚炎、五十肩…などさまざま。それぞれの銭湯で、ぜひ泉質についてもチェックしてみてくださいね。

蒲田に行ったら必須!こだわりが光る銭湯

今回紹介する東京都の蒲田エリアは、都内でもっとも銭湯の数が多い大田区に位置しています。ここ一帯で湧出するお湯は、真っ黒な「黒湯」が基本。多くの銭湯で、濃度は異なれど、黒湯を楽しむことができるのです。

蒲田駅の標識

蒲田駅の標識

そんな大田区の中でも、とくに都内有数の銭湯スポットとして知名度が高いのが蒲田エリア。黒湯が楽しめる銭湯だけでなく、中には露天風呂があったり、定期的にイベントを開催したり、建物がモダンでおしゃれだったり、アメニティに加えて個性的なグッズを販売していたり…。

魅力あふれる銭湯が充実した蒲田エリアで、今回は2つの銭湯をピックアップ。いずれも、2010年以降にリニューアルをした銭湯ですが、地域の人々だけでなく、区外から訪れた人たちにも愛される理由はどこにあるのでしょうか?それぞれの魅力を探ってきました。

改正湯

改正湯外観看板

ビル内に店舗を構える改正湯

蒲田駅の西口から徒歩約7分。住宅街の一角に佇む「改正湯」が、今回紹介する銭湯のひとつです。

昭和4年に創業してから、蒲田の地で愛されてきた改正湯は、「魚のいるお風呂屋さん」としても親しまれている銭湯。その理由は、浴室の壁に水槽がはめこまれており、その中で鯉と金魚が優雅に泳いでいる姿を眺めることができるから。

改正湯浴場の鯉が泳ぐ水槽

改正湯のシンボルでもある水槽

かつて銭湯の外に配されていた池を、昭和46年の改築の際に埋めることとなり、浴室に水槽を設けて池で泳いでいた鯉たちを泳がせたのがきっかけでした。それ以来浴室の鯉たちの姿は改正湯のシンボルとなり、子どもから大人まで年代を問わず、多くの人たちに愛されることに。

2011年(平成23年)にリニューアルをした改正湯のロゴマークにも、金魚と鯉が泳ぐ姿が採用されています。

改正湯のロゴマーク

浴室にも改正湯のロゴマークが

浴室のモザイクタイルの富士山

モザイクタイルで描かれた富士山の姿も見られる

3つの「黒湯」を楽しむ

改正湯で楽しめるのは、トップクラスの濃さを誇る黒湯。もちろん天然温泉を使用しており、試しに手ですくってみると、その濃さがよく分かります。

改正湯の黒湯浴槽

濃い褐色の黒湯

そんな天然温泉の黒湯を、改正湯では3つの浴槽で楽しめます。

通常の黒湯と、黒湯の水風呂、そして、炭酸を溶け込ませた「黒湯炭酸泉」の3つ。「黒湯炭酸泉」は、美肌効果が期待できる黒湯に、さらに血行促進の効果がある炭酸泉をプラスした、これまでにない黒湯のお風呂。リニューアルとともに誕生した新しい黒湯の浴槽です。黒湯と炭酸泉の相乗効果でさらに美肌が期待できる!と、女性を中心に多くのお客さんに喜ばれているそうです。

改正湯の真っ黒な黒湯

すくうと手のひらが見えないくらいに濃い黒湯の源泉

イベントなどを通して人々の交流の場に

改正湯が人々に愛される理由のひとつには、不定期にさまざまなイベントを実施していることも挙げられます。

リニューアルに伴い、店内の空間をフレキシブルに使える設計にしたことにより、ある時は改正湯でヨガ・体操教室を開催したり、ある時はセミナー会場として利用してもらったり。さまざまな施設活用方法で、入浴目的で訪れるお客さん以外にも認知を広めていったのです。

改正湯の休憩スペース

休憩スペース。奥の壁を取り払って広い空間として活用できる

今ではほとんどの家庭にお風呂がある時代。毎日の入浴のために銭湯を訪れるお客さんは常連さんを除くとほとんどおらず、銭湯に訪れることは人々にとって「日常」ではなく「イベント」になっています。改正湯の4代目を担う小林さんは、「銭湯の1店舗としてだけではなく、大田区として他の区と一緒に何か面白いことをやったり、行政と協力してさまざまなプロジェクトをやっていきたいなと考えています」と話します。

そんなプロジェクトのひとつとして誕生したのが、大田区唯一のブルワリーが造りあげた地ビール「黒湯ビール」。濃い褐色のビンに詰められたビールは、もちろん黒湯をイメージした黒ビールです。

黒湯ビールとSENTO BEER

大田区のブルワリーが造った「黒湯ビール(1本 660円)」

お風呂上がりに飲むのに最適な、清涼感ある飲み心地が特徴。改正湯でも販売しているので、そのすっきりとした喉越しをお風呂上がりに確かめてみてください。

【改正湯 基本情報】
住所:〒144-0051 東京都大田区西蒲田5-10-5
電話:03-3731-7078
営業時間:15:00〜24:30
定休日:金曜
料金:大人(12歳以上)470円 / 中人(小学生)180円 / 小人(未就学児)80円
ホームページ:改正湯
※ロッカーの開閉に100円玉が必要(100円は使用後に戻ってくる)
アメニティ販売:手ぶらでセット(シャンプー、リンス、石けん、歯ブラシ、タオル) 220円 ほか
アクセス:蒲田駅より徒歩約7分

はすぬま温泉

蓮沼駅から徒歩約2分、続いて紹介するのは2017年にリニューアルオープンした「はすぬま温泉」です。

休憩スペースの様子

2017年にリニューアル。休憩スペースには丸山清人絵師の富士山ペンキ絵が飾られている

こちらはなんと、蒲田エリアに位置していながら黒湯ではなく、琥珀色のナトリウム-塩化物-炭酸水素冷鉱泉のお風呂が楽しめる銭湯。ほんのり色づいた天然温泉は、弱アルカリ性で、肌を整えてくれる効果が期待できます。

はすぬま温泉のお湯

3つの浴槽を用意。手前から水風呂、炭酸温泉、天然温泉

さらにはすぬま温泉では、女性に人気の「炭酸温泉」も用意。こちらは炭酸ガスを溶け込ませたお湯で、血流促進効果が期待でき、体をポカポカとあたためてくれます。お湯に浸かると気泡がシュワシュワと肌に纏い、なめらかな肌心地です。

テーマは「大正ロマン」。日本の文化・技術を感じる銭湯にリニューアル

2017年のリニューアルを経て、はすぬま温泉は大正ロマンをテーマにした銭湯へと生まれ変わりました。こだわったのは、「日本の文化や技術を大切にした」内観。

格天井や、壁の素材に漆喰を用いたほか、木材をふんだんに使った内装へとリニューアルしました。脱衣所や浴場、休憩スペースにはめ込まれたステンドグラスからは鮮やかな陽光が差し込み、レトロ感のある癒しの空間を作り出しています。

はすぬま温泉の脱衣所

大正ロマンを感じさせる脱衣所の天井

はすぬま温泉の休憩スペース

休憩スペースにもステンドグラスを配した

番台のある休憩スペースの床には、デジタルサイネージ技術による映像で演出された小さな池を配すというユニークな仕掛けも。この丸い穴から、鯉が池の中を悠々と泳ぐ姿を見ることができるんです。

デジタルサイネージ技術で作られた池

本当に床下に池があるかのよう

季節に合わせて映像が変わるようで、取材に訪れた2月の時季には、鯉に紛れて人魚が現れる姿が見られました。

かつて多くの銭湯が鯉の泳ぐ池を持っていたこともあり、銭湯ならではの伝統の姿を、はすぬま温泉では最新技術で再現。春夏秋冬で異なる池の姿を、ぜひ楽しんでみてください。

さらに、「耳を澄ますと、鳥のさえずりも聴こえるんですよ」とおかみさんが話す通り、休憩スペースには水音の中に鳥のさえずりが響く、心地よいBGMが流れています。目でも耳でも日本の四季を感じられる、まったく新しい銭湯の姿がそこにはありました。

「昔ながら」を残したはすぬま温泉の変わらない良さ

リニューアルによって大正ロマンを感じさせる内装へと生まれ変わったはすぬま温泉ですが、創業時代から愛されてきた景色はあえて残しています。

例えば、浴場を飾るオリジナルのタイル絵。関東圏では富士山をモチーフとした壁画が多く見られますが、はすぬま温泉は2つの滝がタイル絵で描かれています。ご主人とおかみさんが「はすぬま温泉の宝」と話すこのタイル絵は、創業時におふたりそれぞれが選んだ2カ所の異なる滝の写真をつなげ合わせ、まるで一つの景観のように描き上げたオリジナルの作品。

男湯の滝絵

こちらは男湯に描かれた滝のタイル絵

女湯の滝絵

こちらは女湯。中央でちょうど繋がり1つの景観に仕上げている

「私と主人で違う滝の写真を選んで、岐阜県のタイル屋さんに1枚の絵になるよう、つくってもらったんです」とおかみさん。オープン当初から常連さんをはじめたくさんの人々の目を癒してきたタイル絵は、リニューアル後も変わらずに、はすぬま温泉のシンボルとして在り続けています。

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ほかにも、経年変化を遂げた太い柱や、新しくはなったものの籐のカゴを使い続けるなど、はすぬま温泉が築いてきた歴史の一部はそのままに。蒲田に誕生した、新旧を大切にする銭湯「はすぬま温泉」に、ぜひ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

籐で作られたカゴ

銭湯らしさを感じさせる籐のカゴ

【はすぬま温泉 基本情報】
住所:〒144-0051 東京都大田区西蒲田6-16-11
電話:03-3734-0081
営業時間:15:00〜25:00
定休日:火曜
料金:大人 470円 / 中学生 300円 / 小学生 180円 / 未就学児80円(ただし、保護者1名につき2名まで無料)
アメニティ販売:タオル(白)100円、(カラー)230円 / 石けん(小)20円、(大)100円・140円
※浴室にボディソープとリンスインシャンプー備え付けあり。女性脱衣所にはメイク落としの備え付けあり
アクセス:蓮沼駅より徒歩約2分

黒湯だけじゃない!「銭湯」を満喫しに蒲田へ

都内屈指の温泉地として知られている蒲田ですが、その魅力は黒湯だけではありません。銭湯が多いエリアということは、それだけ銭湯が地域住民をはじめ、人々に愛されているから。その理由は黒湯という源泉だけに留まらず、訪れる人々を楽しませたい、銭湯の魅力を発信していきたいという、各銭湯の想いにありました。

自分が惚れ込む銭湯を探しに、蒲田へと足を運んでみてはいかがでしょうか。