- ハロウィンの歴史①:起源と名前の由来
- もともとは古代ケルト民族の儀式
- サフィン祭がキリスト教文化と融合
- 「ハロウィン」という名前の由来
- ハロウィンの歴史②:アイルランドからアメリカへ
- アメリカで現在の様式が確立
- 子どもたちが仮装してお菓子をもらう行事に
- ハロウィンの豆知識
- 仮装する理由は何?
- トリック・オア・トリートに込められた意味
- トリック・オア・トリートの返事はこれ!
- 悪魔とジャックの伝説
- 海外ではハロウィンをどう過ごす?
- [アイルランド]学校は1週間休み!
- [アメリカ]大人の仮装通勤も
- [メキシコ]日本の盆に似ている
- [ルーマニア]ドラキュラのイベントあり
- 日本のハロウィンは?
- いつから流行り出した?
- テーマパークでもイベント化
- コスプレ文化と結びついた日本のハロウィン
- おわりに
すっかり秋の風物詩として定着したハロウィン。日本では仮装やコスプレを楽しむのが定番ですよね。ハロウィンはアメリカ由来、というイメージのある方も大勢いると思いますが、実は古代ケルトの儀式が起源。
この記事では、ハロウィンの起源や人に話したくなるジャックオーランタンの物語、アイルランド・北米南米のハロウィン事情をご紹介します。
※この記事は2020年10月時点の情報をもとに作成されました
※2024年10月、一部情報を更新しました
ハロウィンの歴史①:起源と名前の由来
もともとは古代ケルト民族の儀式
ハロウィンの起源は、古代ケルト民族が行っていた「サフィン祭(サウィン祭)」であると言われています。
古代ケルト民族とは、2000年以上前、現在のアイルランドやスコットランドのあたりを中心に暮らしていた民族のこと。そして「サフィン祭」とは、古代ケルト民族の宗教儀式のひとつで、1年の終わり=夏の終わりである10月31日頃に秋の収穫を祝い、作物を神様に捧げるというものです。
この時期には、日本で言う「お盆」のように、死者の霊が家族に会いに来ると信じられていました。しかし、同時に霊界から「悪魔」「悪い妖精」がやってくる時期でもあります。
そのため、サフィン祭の期間は収穫を祝うとともに、悪い霊から身を守るための儀式や風習もいろいろとあったようです。
サフィン祭がキリスト教文化と融合
やがて歴史の中で古代ケルトの文化はキリスト教文化に吸収され、サフィン祭も変化。ハロウィンが誕生しました。
ハロウィンは11月1日のキリスト教の祝日「万聖節(ばんせいせつ)」の前夜祭として行われました。
万聖節は「諸聖人の祝日」とも言われ、キリスト教すべての聖人を崇めて敬う日です。その前夜祭のハロウィンは故人をしのぶ行事として広まっていきました。
「ハロウィン」という名前の由来
万聖節である11月1日は英語で「All Saints' Day」または「All Hallows」と表記されます。そのため前夜祭である10月31日は「Hallows eve」となります。この「Hallows eve」が訛って「Halloween(ハロウィーン)」と呼ばれるようになったと言われています。
ハロウィンのかぼちゃ
ハロウィンの歴史②:アイルランドからアメリカへ
アメリカで現在の様式が確立
サフィン祭とキリスト教文化と融合して生まれたハロウィンはやがて、アイルランド人移民によってアメリカにもたらされ定着します。19世紀にジャガイモの疫病が流行し、深刻な食料不足となったアイルランドの人々が大勢アメリカへ渡ったからです。
ハロウィンはアメリカ以外にも多くの国に伝わりましたが、現在もっとも一般的となっているハロウィンの様式は、アメリカで確立されたと言われています。
ちなみに、アメリカ以外の国に渡ったハロウィンの風習は、各国の文化と融合し、それぞれ独自の発展を遂げました。
子どもたちが仮装してお菓子をもらう行事に
ハロウィンはアメリカで定着した後、時代と共にキリスト教的な意味が薄れていき、宗教行事から大人も子どもも楽しめるイベントへと変化していきました。
子どもたちが仮装をしてお菓子をもらったり、家族でホームパーティーやホラー映画を楽しんだりします。現在のキリスト教各派では、起源がキリスト教では無いことから、ハロウィンは宗教上関係の無い俗世のイベントと位置づけています。
ハロウィンの仮装をする子どもたち
ハロウィンの豆知識
仮装する理由は何?
古代ケルトではハロウィンの時期は先祖の霊と一緒に悪霊たちもこの世にやってくると信じられていました。
仮装は、作物に悪さをしたり、子どもたちをさらったり、人間に悪運をもたらす悪霊から身を守るために始まったといわれています。
魔女やドラキュラ、ゾンビなど、恐ろしい怪物やお化けに仮装することで、悪霊と同化して災いを避けたり、逆に怖がらせて追い払う「魔除け」の意味があるのです。
ハロウィンの仮装
トリック・オア・トリートに込められた意味
ハロウィンの合言葉として定番なのが「Trick or Treat(トリック・オア・トリート)」。日本語では「お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!」と訳されます。
「お菓子をくれないといたずらをする」。このユニークなやりとりは、「souling(ソウリング)」というヨーロッパの風習が影響していると言われています。西暦1000年頃、カトリック教会は11月2日を死者の日、または万霊節(All Soul’s Day)として救われない死者の霊を鎮める儀式を行っていました。
この日は、仮面を被り仮装をした子どもたちが、「さまよう霊魂たちのために、歌いながらソウルケーキ(レーズン入りの四角いパン)」を乞い家々をたずね歩きます。このとき何も差し出されないと、霊たちがいたずらをすると信じられています。
子どもたちが集めるお菓子は、さまよう霊魂のためのものだったのですね。
その後、1952年のディズニーアニメで「Trick or Treat」というセリフが登場したことから、世界中で認知され、ハロウィンの決まり文句として定着したのです。
お菓子をもらいに走る子どもたち
トリック・オア・トリートの返事はこれ!
トリック・オア・トリート
「Trick or Treat」への〝定番の返事〟が存在することをご存知ですか?
アメリカをはじめ一般的なのは、「Happy Haloween!(ハッピーハロウィン!)」または「Treat!(トリート!)」。断ると子どもたちにいたずらをされてしまうので、キャンディやチョコレートをたくさん用意して歓迎してあげましょう。
悪魔とジャックの伝説
ハロウィンのシンボルとしてよく目にするのが、目と口と鼻をくり抜いて中にキャンドルを灯したかぼちゃのランタン。「Jack-O'-Lantern(ジャック・オー・ランタン)」という名前で呼ばれますが、これも仮装と同様、悪霊から実を守るための「魔除け」として飾られます。また、亡くなった家族など大切な人たちの魂が迷わないようにするための「道しるべ」の役割もあったようです。
では、なぜジャックという名前がついたのか。それにはこんなお話があります。
ジャック・オー・ランタン
悪魔を騙したジャック
その昔、ケチで乱暴者で人を騙してばかりいたジャックという男がいました。ジャックはあるハロウィンの夜、魂を取りに来た悪魔と遭遇します。しかし、ずる賢いジャックは、悪魔を騙して魂を取らないことを約束させます。
その後、寿命で死んだジャックですが、生前に悪いことばかりしていたせいで天国に行くことができず、地獄の門へと向かいます。しかし、門に立っていたのはハロウィンの夜に遭遇した悪魔。悪魔はジャックの魂を取らないと約束してしまったため、ジャックは天国にも地獄にも行けなくなってしまいました。
地獄に行けないジャックは……
元の場所に戻るように言われたジャックは仕方なく来た道を引き返すも、道は真っ暗で風もひどく吹いていました。そこで悪魔に明かりが欲しいと頼み、情けで地獄の火をひとつもらいます。
しかしジャックはランタンを持っていませんでした。そこで転がっていたカブをくりぬいてランタンの代わりにしました。そしてジャックはそのランタンを手に、永遠にこの世とあの世を彷徨い続けることになりました。
この話は、アイルランドの昔話が元になっていると言われています。ジャックの持つランタンは死者の魂のシンボルとなり、「Jack-O'-Lantern(ジャック・オー・ランタン)」と呼ばれようように。そして魔除けの道具として戸口に飾られるようになったのです。
最初はかぼちゃではなくカブだった
ジャックの物語でお気付きの方もいると思いますが、かぼちゃのランタンは、はじめはカブで作られていました。
ハロウィンの文化がアメリカに渡ると、豊富に採れて加工もしやすかったかぼちゃが使われるようになり、現在ではかぼちゃのランタンが一般的になりました。
ちなみに、ハロウィン発祥の地であるアイルランドやスコットランドでは、いまだにカブを使う地域もあるそうですよ。
アメリカでカブからかぼちゃのランタンへ
海外ではハロウィンをどう過ごす?
[アイルランド]学校は1週間休み!
ハロウィン発祥の地といわれるアイルランドでは、10月の最終月曜日から1週間学校などはお休みになります。秋の収穫を祝い、悪霊を払う伝統行事として、今でも受けつがれています。
街全体はハロウィンのお祭りムードでいっぱいになります。水にりんごを浮かべて口を使って取る「アップルボビング」というゲームや仮装を楽しんだり、「バームブラック」というドライフルーツのケーキを食べたりと、家族の時間を楽しみます。
バームブラックの中には指輪や硬貨、ボタン、布切れが仕込まれており、それによって運勢を占うんだとか。
アイルランドのフルーツケーキ
[アメリカ]大人の仮装通勤も
ハロウィン文化を確立したアメリカは、やはり気合の入れ方が段違い。1カ月も前からハロウィンの準備が始まります。
家をホラー風に装飾したり、衣装やたくさんの子どもに配るお菓子を準備したりと大忙し。幼稚園や小学校では仮装パーティーが行われ、子どもたちは「Trick or Treat(トリック・オア・トリート)」の合言葉とともにお菓子をもらって回ります。
さらに中高生はもちろん、大人たちまで仮装をして学校や職場に行くことも普通なんだとか。友達や家族と集まってハロウィンパーティーで大騒ぎしたり、ホラー映画を楽しんだりと大盛り上がりの1日です。
ハロウィンパーティー
[メキシコ]日本の盆に似ている
メキシコのハロウィンは、ラテンアメリカの祝日の1つ。毎年10月31日〜11月2日の3日間を「死者の日」として祝います。メキシコの伝統行事として、2003年にユネスコ無形文化遺産にも登録もされました。
この時期は、亡くなった人の霊が家族や友人の元に戻ってくると信じられ、故人の好きだった食べ物や、生前の写真などを飾って霊を出迎えます。
日本のお盆と似ていますが、陽気で賑やかにお祝いするのがメキシコ流。街はカラフルな旗、陽気なガイコツ人形、オレンジのマリーゴールドの花で装飾され、大規模なパレードが行われます。
人々はガイコツのようなメイクをして、死者がこの世に戻ってくることをお祝いします。メキシコの「死者の日」のイメージは、ディズニー映画『リメンバー・ミー』(2017年)で広く知られるようになりましたよね。
死者の日にちなんだメキシコのお土産
[ルーマニア]ドラキュラのイベントあり
ルーマニアには元々ハロウィンの習慣はなかったようですが、有名な「ドラキュラ伯爵」の誕生の地であることから、ドラキュラとハロウィンにちなんだイベントが開催されるようになりました。
「ドラキュラが生まれた城」として有名なブラン城は、ハロウィンになると世界中からたくさんの観光客が訪れ、城の中ではハロウィンパーティーが行われます。
ルーマニアのブラン城
日本のハロウィンは?
いつから流行り出した?
企業レベルで日本で最初にハロウィンをイベント化し、ハロウィン文化を広めようと活動したのは、子ども向け玩具を製造・販売していたキデイランドです。
1970年代にキデイランド原宿店がハロウィン関連の商品の販売を始め、これらの販売促進のため、1983年に原宿表参道で、日本初のハロウィンパレードを行いました。
約100人の参加者が仮装をしてパレードをしましたが、その多くは外国人で、まだまだハロウィンの認知度は低かったことが分かります。しかし、徐々に参加者は増え、今でもこのイベントは続いています。
2024年も10月27日(日)に原宿表参道ハローハロウィーンパンプキンパレードを開催予定です。
ハロウィンイベントは原宿以外の地域でも行われるように
テーマパークでもイベント化
その後、ハロウィンの知名度を全国的に広げたのが、1997年に東京ディズニーランドで行われたハロウィンイベント。最初はパレードもなくシンプルだったものが、規模を拡大してゲストの仮装を認めることにより、特別なイベントとして知られるようになりました。
2002年にはユニバーサルスタジオジャパンでもハロウィンイベントが開催され、その後秋のイベントとして定着しました。また、2015年には、きゃりーぱみゅぱみゅさんがハロウィンをモチーフにした楽曲『Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲』をリリースし、ハロウィン文化はより日本に浸透しました。
近々では徐々に解消されてきていますが、コロナ禍以前はハロウィンになると渋谷や六本木がコスプレをした人々でごった返しでした
コスプレ文化と結びついた日本のハロウィン
近年では渋谷や六本木などの繁華街だけでなく、町おこしの一環として地方都市でも開催されるハロウィンイベント。日本では仮装(コスプレ)のイメージが強いですが、ハロウィンがこのような形で定着したのには、日本人の性格や文化が影響していると言われます。
アニメなどのサブカルチャーが人気の日本には、もともとキャラクターになりきるコスプレのカルチャーがありました。コスプレは以前なら限られた一部の人々の趣味、というイメージを持たれていました。しかし海外での人気もあり、2010年代頃から徐々に様々な人が楽しむもの、と認識されるようになっていきます。
そんな時流のときハロウィンの仮装文化と、日本のコスプレ文化がマッチ。仮装(コスプレ)の完成度や意外性を競いたいというマインド、お祭り騒ぎをしたいというマインドなどが入り混じって、日本のハロウィンが盛り上がりを加速させていきました。
日本人の「集団の心理に従いやすい」という特徴も、ハロウィンと結びつきました。大勢で行動することに安心感を感じるので、一人では恥ずかしいという人も、「みんなでなら仮装してもいいか……」という心理になります。こうして仮装をして同じ時にひとつの場所に集まるという独特なハロウィン文化が作られていったと考えられます。
コスプレは今や日本の一大カルチャー
おわりに
アイルランド、スコットランドで宗教行事として生まれたハロウィンは、アメリカに伝わり大人も子どもも楽しめるイベントに生まれ変わりました。そして現在では世界中に広まり、各国の文化と結びついて、独自のイベントとして人々に楽しまれています。
カブでランタンを作ってみたり、レーズン入りの「ソウルケーキ」を作ったり、家族パーティーでお菓子を交換したり。ハロウィンの歴史や各国の楽しみ方を知れば、きっと色々な楽しみ方が見つかるはずです。今年はいつもとちょっと違うハロウィンを、家族や友人と過ごしてみてはいかがでしょうか。
Text:編集部 Edit:Erika Nagumo