おせち料理の種類とそれぞれの意味
重箱の何段目に何を詰める?
おせち料理の歴史
おわりに

日本には季節ごとに食べる伝統的な料理や食べ物がたくさんありますよね。「行事食」と呼ばれるそれらは、ひとつひとつに意味や込められた願いがあります。

ここでは、1年の始めあるお正月の行事食「おせち料理」の具材の種類と、それらの意味を解説したいと思います。

おせち料理の種類とそれぞれの意味

おせち料理の種類

地域や家庭によっておせち料理はさまざま

「おせち料理」とは、ひとつの料理の名前ではなく、複数の料理を合わせた名前です。

地域によって品数は異なりますが、すべてを揃えると20〜30種類にも及ぶというから驚きです。

そしてお正月という大きな節目に食べる料理なので、一つ一つにおめでたい意味があります。次から順に紹介していきましょう。

黒豆

おせち料理の黒豆

黒豆

おせち料理の人気食材である黒豆の「まめ」は、「まめに働く」「まめに暮らす」と言うように、元気、丈夫、健康という意味があります。

他には黒豆のように黒く日焼けするほどまめに、勤勉に働けるようにという願いも込められています。

数の子

おせち料理の数の子

数の子

おせち料理の食材の中でも大人の好物的立ち位置の「数の子」。数の子はニシンの卵で、ニシンは漢字で「二親」と当てることができ、非常に多くの卵を持つことから「たくさんの子に恵まれますように」という、子孫繁栄の願いが込められています。

縁起物であるということだけでなく、程よい塩気がお酒のツマミに合うということでとても人気のあるおせち料理ですね。

田作り

おせち料理の田作り

田作り

片口イワシの稚魚を干し飴炊きにした「田作り」。田を作ると書く通り、かつて稲田の肥料として使われていました。このことから「豊年豊作」や「五穀豊穣」という願いが込められています。

また田作りは別名「ゴマメ」とも呼ばれていますが、豊作への願いから「五万米」と書かれることも。

たたきごぼう

おせち料理のたたきごぼう

たたきごぼう

「たたきごぼう」は名前の通り、たたいて身を開いて開運を導こうという願いが込められています。

またごぼうのように強く深く根を張り、家や家業が長く続くようにとも言われているのだそう。

かまぼこ

おせち料理のかまぼこ

かまぼこ

初日の出の形を連想させることから、おめでたい象徴とされている「かまぼこ」。紅白や松竹梅の柄でおめでたさを表し、赤は「魔除け」、白は「清浄」の意味を持ちます。

かまぼこは保存の効かない生魚の代わりに古くから重宝されてきました。一番美味しく食べられる厚さは「12mm」なのだとか。

伊達巻き

おせち料理の伊達巻き

伊達巻き

ほんのりと感じる甘さが特徴で、子どもたちが大好きなおせち料理の一つ「伊達巻き」。主な材料としては、卵とはんぺんが使われています。

見た目が書物のような巻物に似ていることから、「知識が増えるように」という願いが込められました。また鮮やかな色合いから派手な卵焼きという意味で、「派手」を意味する「伊達」が使われたのだそう。

栗きんとん

おせち料理の栗きんとん

栗きんとん

栗の食感と風味、程よい甘さと濃厚な味わいが人気の「栗きんとん」。きんとんは「金団」と書き、「金の団子」もしくは「金の布団」という意味があります。

黄金色の見た目から金運上昇の願いが込められ、おせち料理に必ず入れる一品となりました。

紅白なます

おせち料理の紅白なます

紅白なます

細く切ったニンジンと大根で紅白の水引(みずひき)をイメージした「紅白なます」。一家の平和や安全を願う縁起物とされています。

なますとはかつて古代中国で、生肉や生魚を細かくしてそこに調味料を加えた料理のことを指す言葉でした。昔の日本では生魚と野菜を味付けしたものを「なます」と呼び、やがて野菜だけになったのだそう。

鯛の姿焼き

おせち料理の鯛の姿焼き

鯛の姿焼き

「めでたい」の語呂合わせから縁起物とされる「鯛の姿焼き」。意味はこれだけではなく、実は七福神の一人である「恵比寿神」が持っている魚が鯛なのです。

恵比寿神といえば、商売繁盛・金運招福など幅広く幸福を呼び寄せる神様。その神様が持っている魚ということも、縁起物とされる理由です。

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ぶりの照り焼き

おせち料理 鰤の照り焼き

ぶりの照り焼き

出世魚である「鰤(ぶり)」は出世を願うという意味が込められていて、おせち料理の定番となりました。またそれだけではなく、ぶりは冬が旬でとても脂が乗っていて美味しいことも、おせち料理に使われる理由と言われています。

車えびの艶煮(つやに)

おせち料理の車海老艶煮

おせち料理の車海老艶煮

鮮やかな赤色に、プリッとした食感の車えびを、だしと醤油、砂糖で煮た「車えびの艶煮」。

えびは茹でると身が丸まり、腰が曲がった老人のような姿になること、そして長いひげが生えていることから「海の老人」として「海老(えび)」という字が当てられたと言われています。

おせち料理の「車えびの艶煮」も、腰が曲がるまで長生きできるように、という長寿の願いが込められています。

煮はまぐり

おせち料理の煮はまぐり

おせち料理の煮はまぐり

左右の貝がピッタリと合わさることから、夫婦円満の願いを込められた「はまぐり」。2組の貝がしっかりと合うのは1組しかなく、まさに一生を添い遂げる夫婦を象徴する縁起物とされています。

ちなみにはまぐりの名前の由来は、貝殻の形が栗に似ていることから「浜の栗」と呼ばれ、転じてはまぐりとなったそうです。

昆布巻き

おせち料理の昆布巻き

おせち料理の昆布巻き

「よろこぶ」の語呂合わせで、昔から正月の縁起物としておせち料理に用いられてきた「昆布巻き」。また漢字で「養老昆布(よろこぶ)」とも書けることから、お祝い事だけでなく長寿の願いも込められています。

他には「子生(こぶ)」と書いて子孫繁栄を願う意味も。

筑前煮

おせち料理の筑前煮

おせち料理の筑前煮

九州北部地方の代表的な郷土料理である「筑前煮」。使われている食材(だいこん、れんこん、こんにゃく、にんじん)に「ん」が付くことから、「運」が付く縁起の良いおせち料理としてお正月に食べられるようになりました。

他にも穴にちなんで将来の見通しがきくとされる「蓮根(れんこん)」や、子芋がたくさん付くことから子孫繁栄を願う「里芋」など、筑前煮は多くの意味を持ちます。

重箱の何段目に何を詰める?

おせちの重箱

おせち料理を詰める重箱

おせち料理は「めでたさを重ねる」という意味で料理を重箱に詰めるのが一般的。重箱の段数によって、中にどの料理を詰めるのかもおおよそ決まっています(地域等により違いあり)。

ここでは重箱ごとに詰める料理の一例を紹介します。

一の重

おせちの一の重

一の重

一の重は一番上の段ということで、子孫繁栄や長寿の願いを込め縁起が良いとされる料理を中心に詰めます。その中でも欠かせないのが「祝い肴(いわいざかな)」。

祝い肴は「3種の祝い肴」と言い、関東ではと関西で異なります。そして3種が揃えばおせち料理の形が整うと言われています。

《関東》
・数の子
・田作り
・黒豆

《関西》
・数の子
・田作り
・ごぼうや酢ごぼう

二の重

おせちの二の重

二の重

二段目、二の重は口取り(くちとり)や酢の物を中心に詰めます。口取りとは「八寸(はっすん)」と呼ばれるもので、懐石料理の最初に出される料理のこと。名前の通り、八寸(約24cm)四方の木盆に、海や山の幸を少しずつ数種類盛った贅沢なお皿です。

おせち料理では次のような料理を詰めます。
・紅白かまぼこ
・栗きんとん
・昆布巻き

三の重

おせちの三の重

三の重と鯛の姿焼き、お雑煮など

三の重はお刺身や焼き魚など、海の幸を中心に詰めます。

・ぶりの照り焼き
・車えびの艶煮
・鯛の姿焼き
などが代表的な料理です。

与の重

おせちの与の重

与の重

四段目は「四の重」ではなく「与の重」と言います。四が忌み言葉として、「死」を連想し縁起悪いことから「与」という字を使うようになったそうです。

一般的には煮物や筑前煮などの山の幸を入れますが、近年のおせちはそれぞれの家庭での好みや流行を取り入れられるように。洋風おせちや中華おせちなど多様です。

おせち料理の歴史

「今では当たり前に食べているけど、そもそもおせちっていつからあるの?」と疑問に思った人もいるかもしれません。

おせち料理の起源は平安時代に遡れます。当時宮中で行われていた、元旦や五節供(ごせっく)などの日に宴を開く、「お節供(おせちく/おせっく)」という行事の際に出されていた食べ物が「おせち」です。

その後江戸時代後期、一般大衆にもこの行事が伝わり生活に取り入れられるようになりました。それがやがて節目のうちで元日が最も重要な日であることから、正月にはおせちを食べるという伝統が受け継がれるようになったそうです。

おわりに:おせちの意味を知って良い年を迎えよう

今回はおせち料理の中身とその意味を紹介してきました。伝統としてただ食べるだけにはもったいないほど、おせちは縁起の良い様々な意味を持ちます。

それらは先人の考えや知恵からきたもの。考え抜かれたおせちの意味は日本人なら絶対に知っておきたいものです。おせちを食べる際にはぜひこちらを参考にしてみてください!

Text:編集部 Photo:PIXTA