1. 恵比寿様なんでもQ&A
Q. ご利益は?
Q. どんな見た目?
Q. どんな神様?
Q. 恵比寿様が祀られている神社はどこ?
Q. なぜ商売繁盛の神?
2. 恵比寿様の由来と別名をもつ理由
恵比寿様の始まりは民間信仰
恵比寿様の別名:「水蛭子神」「事代主神」と呼ばれることも
恵比寿様の別名①:水蛭子神|海に流された子どもが漁業の神様
恵比寿様の別名②:事代主神|国譲り神話の立役者
3. 恵比寿様にお参りしてご利益をあずかる
【兵庫県西宮市】西宮神社
【兵庫県神戸市】和田神社
【島根県松江市】美保神社
【静岡県三島市】三嶋大社
【栃木県真岡市】大前神社・大前恵比寿神社
4. 恵比寿様にまつわるお祭り《恵比寿様の日》
えびす講とは
二十日えびす
十日えびす
まとめ

日本で福の神と聞けば、恵比寿様を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。縁起物として描かれることも多く、愛嬌のある外見も手伝って親しみのある神様です。「商売繁盛」のほかに「大漁豊漁」「海上安全」といったご利益をもつ恵比寿様は、どのように誕生した神様なのでしょうか。生い立ちやご利益について、詳しく紹介します。

1. 恵比寿様なんでもQ&A

恵比寿様とはどのような神様なのか、まずは基本をQ&A形式で紹介します。

Q. ご利益は?

A. おもなご利益は「大漁豊漁」「海上安全」「商売繁盛」です。

漁業の神様として信仰されていましたが、信仰が都市部に広がった際に商売繁盛のご利益もあるとされるようになりました。漁業の神様なので、海上安全のご利益があるという説もあります。神社によっては「金運招福」「歌舞音曲」「学問」などにもご利益があるとされます。非常に幅広く福を運んでくださる神様ですね。

大漁イメージ

Q. どんな見た目?

A. 釣り竿と鯛を抱えた、ふくよかな体格の神様です。

釣り竿と鯛を持っているのは海に関わる神様だから、とされています。一方、恵比寿様と同一視される神様にルーツがある、とする説も。また、「えびす顔」という言葉にもなるほど、にこにことした笑顔が特徴的な神様でもあります。加えて烏帽子をかぶり、狩衣・指貫をまとったふくよかな姿で表現されるケースの多い神様です。

恵比寿イメージ

恵比寿様イメージ

Q. どんな神様?

A. 七福神で唯一の日本の神様です。

七福神の構成や由来には諸説ありますが、七柱の神様のうち、純粋に日本の神様と呼べるのは恵比寿様だけです。そのほかの神様はインドや中国にルーツがあるとされています。恵比寿様と一緒に描かれることもあり、一見日本になじみが深そうな大黒天様も、もとはインドに由来のある神様。日本神話に登場する神様と習合し、大黒天様と呼ばれるようになりました。

七福神

七福神ご一行。左から時計回りに布袋、寿老人、毘沙門天、福禄寿、大黒天、恵比寿、弁財天

Q. 恵比寿様が祀られている神社はどこ?

A. 有名なのは西宮神社、和田神社、美保神社などです。

恵比寿様を祀る神社は全国に3300社以上あるとされます。中でも特に有名なのが西宮神社と美保神社です。神社のなかには、御祭神に恵比寿様ではなく「蛭子大神」「蛭子水神」「事代主神」と記されている可能性があります。後ほど詳しく解説しますが、恵比寿様はいくつも別名をもつ神様なのです。

このほか、恵比寿様をはじめとした七福神のご利益をいただく「七福神めぐり」ができる霊場は、日本各地にあります。有名な七福神めぐりコースで恵比寿様を祀っているのは、東京の三囲神社、大阪の今宮戎神社、京都の京都ゑびす神社です。

兵庫県西宮市・西宮神社の拝殿(斜め)

兵庫県西宮市・西宮神社の拝殿

Q. なぜ商売繁盛の神?

A. もともとは「海から福を運んできてくれる神様」として祀られ、商いを通じて「商売繁盛」のご利益があると考えられました。

かつて漁師たちは、海辺に流れ着いたものが大漁をもたらしてくれると考えていました。恵比寿様も「海から福を運んできてくれる」福の神と考えられており、市場での商いを通じて「商売繁盛」のご利益もあると考えられるようになった、とされています。

船に乗った恵比寿様

船に乗った恵比寿様のイメージ。恵比寿様と同一視される蛭子神(ひるこのかみ)は船に乗って海岸に漂着したといわれています

2. 恵比寿様の由来と別名をもつ理由

日本人には何かとなじみのある神様ですが、どのような由来をもつのか知らない方も多いのではないでしょうか。実は恵比寿様は謎が多く、由来についても諸説あります。調べれば調べるほど謎が深まる、神秘的な存在ともいえるでしょう。

恵比寿様の始まりは民間信仰

恵比寿様の名前は『古事記』『日本書紀』といった書物には記されていません。というのも、恵比寿様を信仰する「えびす信仰」は漁師の間で始まりました。そのため記録に残りにくかったと考えられています。

書物の中に「えびす」という名前が現れるのは平安時代末期といわれますが、名前を表す漢字は書物によって異なります。時代や土地による違いもあれば、文字が意味する内容もさまざま。同じ存在を表わしているのかどうかも定かではない、とされています。

恵比寿様の別名:「水蛭子神」「事代主神」と呼ばれることも

恵比寿様への信仰を「えびす信仰」と呼びますが、様々な神様が習合されているためとても複雑です。現在では御祭神に恵比寿様を祀る神社がありますが、『古事記』『日本書紀』にも登場する古来の神様として祀られている神社も。それが「水蛭子神(ひるこのかみ)」と「事代主神(ことしろぬしのかみ)」です。

なぜこの二柱の神様と恵比寿様が同一視されるのか、由来を紹介します。

恵比寿様の別名①:水蛭子神|海に流された子どもが漁業の神様

水蛭子神は「ひるこのかみ」と読みます。日本を作ったとされる伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の第一子として誕生しました。しかし、3歳になっても立つことができなかったため、葦で作った船に乗せられて海に流されたとされています。その後水蛭子神がどうなったのかは、神話の中では語られていません。その後水蛭子神が登場するのは、民間伝承の中です。

伊邪那美命と伊邪那岐命

水蛭子神の両親は伊邪那岐命と伊邪那美命

西宮神社では、水蛭子神を恵比寿様と同一の神様として祀っています。葦の船で流された水蛭子神が、西宮神社近くの海岸に漂着。地元の漁師に助けられたことがきっかけで、土地の人々から神様として称えられるようになったと伝わっています。ちなみに西宮神社は「えびす信仰」の総本社として知られています。

恵比寿様の別名②:事代主神|国譲り神話の立役者

事代主神は「ことしろぬしのかみ」と読みます。大国主神(おおくにぬしのかみ・おおくにぬしのみこと)の子どもで「神の代弁者」「託宣を伝える者」といった意味をもちます。

事代主神・大国主・神屋楯比売命の関係図

大国主神と神屋楯比売命(かむやたてひめのみこと)の子どもが事代主神

『古事記』では、国譲りを迫られた大国主神が、決断を事代主神に託したとしています。事代主神は(大国主神が作った)地上を天津神に捧げると決断し、自身は海に身を隠すことで地上の統治に関わらないと行動で示しました。

美保神社などでは、事代主神と恵比寿様は同一の神様としています。理由は国譲り神話で事代主神が釣りをしていたから、とされています。釣りの神様から漁業の神様として祀られるようになり、恵比寿様と結びついていったのでしょう。

ちなみに、恵比寿様と同じく七福神の一柱である大黒様は、もともとはインドの神様です。しかし、日本に伝わってからは大国主神と同一視されるように(どちらも「だいこく」と読める)。つまり、恵比寿様と大黒様は親子であると考えることもできます。

ご利益が近しいことから、二柱一緒に祀られる機会が多い恵比寿様と大黒様。親子関係にある点も、一緒に祀られる理由のひとつといえるかもしれません。

東京都調布市・深大寺の大黒天と恵比寿尊

東京都調布市・深大寺に祀られている大黒天と恵比寿尊

3. 恵比寿様にお参りしてご利益をあずかる

商業、漁業と、幅広いご利益をもたらす恵比寿様。数多くの神社で祀られていますが、その中から有名な神社を紹介します。

【兵庫県西宮市】西宮神社

「えびす信仰」の総本社である西宮神社。はじまりは漁業の神様として祀っていましたが、西宮が宿場町として栄え、市が立つようになると、市の神様、商売繁盛の神様としても祀られるようになりました。西宮神社で行われる「十日えびす」は全国的にも有名で、テレビやSNSで取り上げられることも多く100万人を超える参拝者が足を運びます。「福男選び」は、テレビなどで目にした方も多いでしょう。「えびす信仰」にまつわる資料も多く所蔵しています。

●住所:兵庫県西宮市社家町1-17
●公式ホームページ:えびす宮総本社 西宮神社


【兵庫県神戸市】和田神社

和田神社は古くから「蛭子の森」と呼ばれています。かつて、淡路島にはたくさんの蛭子大神が祀られていたんだとか。和田岬に住む人々が、自分たちが暮らす地にも蛭子大神をお迎えしたいと願ったのだと伝わっています。蛭子大神が和田岬に着いた最初の土地が「蛭子の森」と呼ばれるようになり、和田神社が西摂で最初に祀った神社になったのだそうです。

●住所:兵庫県神戸市兵庫区和田宮通3-2-45
●公式サイト:和田神社


【島根県松江市】美保神社

「恵比寿様の総本宮」として古くから信仰を集めているのが美保神社です。事代主神を御祭神として祀り、国譲り神話を儀礼化した神事「青柴垣神事」「諸手船神事」も執り行っています。どちらも数日に渡って行われる大切な儀式です。また、毎月7日には「七日えびす祭」と呼ばれる御祭が行われ、体数限定の「金色の鯛守」や「金字の御朱印」が授与されます。この日だけ公開される宝物もあり、内容が毎月変わるので何度も足を運びたくなりますね。

●住所:島根県松江市美保関町美保関608
●公式サイト:ゑびす様の総本宮 美保神社


【静岡県三島市】三嶋大社

三嶋大社の御祭神は「大山祇命」「積羽八重事代主神」。この二柱を総じて三嶋大明神と呼びます。三島大明神は東海随一の神格と考えられており、奈良時代には三嶋大社が創建されていたそう。中世以降は武士からの崇敬が暑く、特に源頼朝は源氏再興を祈願したのだとか。頼朝公の旗揚げが成功したことで、武将から三嶋大社への崇敬がさらに厚くなったのだそうです。

●住所:静岡県三島市大宮町2-1-5
●公式サイト:三嶋大社


【栃木県真岡市】大前神社・大前恵比寿神社

大黒様と恵比寿様を御祭神とし、平将門が勝利祈願をしたという歴史が残る神社です。大前神社で奉納される神楽は二十六座の神々の舞で、「だいこくえびすの舞」と呼ばれるものも。開運招福や五穀豊穣、子孫繁栄等を祈るもので、江戸時代中期に伊勢神宮から伝わったといわれています。また、1989年には大前神社の若宮社として大前恵比寿神社が完成。御神像は地元の有志の方が奉納したもので、20mもある「日本一のえびす様」です。ロトや宝くじの当選報告が後を絶たず、テレビでも取り上げられています。

●住所:
(大前神社)栃木県真岡市東郷937
(大前恵比寿神社)栃木県真岡市東郷943
●公式サイト:
大前神社
大前恵比寿神社


4. 恵比寿様にまつわるお祭り《恵比寿様の日》

恵比寿様を祀る行事に「えびす講」があります。地域の伝統行事として根付いている場所もあれば、初めて聞く方もいらっしゃるでしょう。全国的に有名なお祭りを紹介するので、今年は足を運んでみてはいかがでしょうか。

えびす講とは

楊洲周延 筆「江戸風俗十二ヶ月の内 十月豪商恵比壽講祝の図」

楊洲周延 筆「江戸風俗十二ヶ月の内 十月豪商恵比壽講祝の図」,横山良八,1889. 国立国会図書館デジタルコレクション江戸風俗十二ヶ月の内 十月豪商恵比壽講祝の図(参照 2023-09-30)

えびす講は恵比寿様をお祀りし、全国的に1月10日か11月20日(旧暦10月)、もしくは12月20日に行われるのが一般的です。地域によって開催される時期が異なるため、お住まいの地域ではいつ行われるのか、調べてみるのも面白いでしょう。

「講」とは「信者の集まり」を表わすほか、経済的・職業的な集まりを意味することも。室町時代には、商人ごとに恵比寿講を結成し、恵比寿様にお供え物をしていたと記録が残っています。

えびす講の始まりには諸説あります。そのうちのひとつが、神無月(旧暦10月)に留守番をする恵比寿様への感謝やいたわりのために始まった、というもの。神無月は全国の神様が出雲に集まるとされる月ですが、その間人々を守ってくれるのが恵比寿様だとされています。

二十日えびす

えびす講は地域によって行われる時期が異なるため、1月20日や11月20日など、20日に行われるえびす講を「二十日えびす」と呼ぶことがあります。

一方で、恵比寿様を祀る神社の中には年中行事として「二十日えびす」を執り行うところも。京都ゑびす神社では、10月20日に商売繁盛を祈る「二十日ゑびす大祭(ゑびす講)」を行います。ゑびす神社で行われる「二十日えびす」は1月10日前後に行われる「十日ゑびす大祭(初ゑびす)」と対になっているとのことで、どちらも恵比寿様をお祀りする大切な行事です。

十日えびす

1月10日に行われるえびす講を「十日えびす」と呼ぶこともありますが、有名なのは西宮神社(兵庫県)で行われる「十日えびす」でしょう。1月9日から11日までの3日間で、9日の「宵えびす」、10日の「本えびす」、11日の「残り福」とさまざまな行事が行われます。ほかにも、今宮戎神社(大阪府)、佐良気神社(奈良県)などでも「十日えびす」が行われ、参拝客で賑わいます。

福男選びのイラスト

福男選びイメージ。西宮神社(兵庫県)では1月10日の「本えびす」の日、朝6時の開門と同時に行われる「福男選び」が恒例行事となっています

ちなみに、長野県にも恵比寿様をお祀りする西宮神社があり、11月18日から20日にかけてえびす講が行われます。えびす講と合わせて行われる「長野えびす講煙火大会」は質の高さで有名で、花火師の間では大会への出場の困難さから「出世煙火」とも呼ばれているそうです。

長野えびす講煙火大会

長野えびす講煙火大会

まとめ

現代まで残っているえびす講は、地域の方が大切に盛り上げ続けているため、屋台なども出て大変賑やか。今年は恵比寿様への参拝もかねて覗いてみてはいかがでしょうか。恵比寿様をあしらった福笹や熊手といった縁起物も並ぶので、ご自宅に飾ってもいいですね。
恵比寿様を祀る神社には、恵比寿様をあしらった特別な御朱印を授与する日もあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。


Text:小林あきこ Edit:Erika Nagumo
Photo・イラスト(特記ないもの):PIXTA/いらすとや

参考資料:
平藤喜久子『神話でたどる日本の神々』(ちくまプリマー新書/2021年)
渋谷申博『参拝したくなる!日本の神様と神社の教科書』(ナツメ社/2023年)
平藤喜久子『日本の神様解剖図鑑』(エクスナレッジ/2020年)
米澤貴紀『神社の解剖図鑑』(エクスナレッジ/2016年)
福田アジオ・菊池健策・山崎裕子・常光徹・福原敏男『知っておきたい 日本の年中行事事典』(吉川弘文館/2012年)
後藤泰弘『図解 身近にあふれる「神様と神社」が3時間でわかる本』(明日香出版社/2022年)
美保神社西宮神社和田神社
三嶋大社大前恵比寿神社大前神社
京都ゑびす神社今宮戎神社西宮神社(長野県)
浅草神社 三社様NARA Travelers Guide長野えびす講 煙火大会
Web版 新纂 浄土宗大辞典ワゴコロDiscover Japan
しきたりゆほびかWebLIFULL HOME'S PRESS
AERA dot家族葬のファミーユ伊場仙
瓢斗ジャパンナレッジコトバンク
tenki.jpgoo辞書