年末が近づくと増える「来年の干支(えと)は何だっけ?」。2025年の干支は「巳(み=へび)」ですが、より正確に言うなら「乙巳(きのとみ)」です。
「ね、うし、とら、う、たつ、み……」だけじゃない60通りの干支のことと、干支と関わりの深い「十二支(じゅうにし)」「十干」のことについてまとめてみました。
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1. 十二支の物語・由来・意味
十二支の動物たち一覧
「十二支」とは
子(ね)……ネズミ Mouse
丑(うし)……ウシ Cow
寅(とら)……トラ Tiger
卯(う)……ウサギ Rabbit
辰(たつ)……タツ、リュウ Dragon
巳(み)……ヘビ Snake
午(うま)……ウマ Horse
未(ひつじ)……ヒツジ Sheep
申(さる)……サル Monkey
酉(とり)……トリ、ニワトリ Bird、Chicken
戌(いぬ)……イヌ Dog
亥(い)……イノシシ Boar
十二支とは、上述の12種類の動物たちのこと。時刻や方角を表すものでもあります。
例えば、1日は24時間ですが、それぞれの時間に十二支が当てはめられています。深夜1時〜3時頃のことは「丑の刻(うしのこく)」と言うことがありますよね。
東西南北にも十二支が当てはめられています。北には子(ね)が、南には午(うま)が当てはめられています。地球の北と南を繋ぐ経線のことを、「子午線(しごせん)」と呼ぶのはこのためです。また、太陽が真南の方角にある時間は、「正午(しょうご)」と呼びますよね。
十二支と方角・時刻の関係
十二支にまつわる昔話
日本では十二支というと、「十二支のはじまり」にまつわる昔話が有名です。
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ある時神様が「1月1日の朝、自分の元に来た動物を1番から12番までの順に、1年ずつ交代で動物の大将にする」という手紙を書きます。それを受け取った動物たちは1番になろうと出発。
でもネコだけはうっかり、いつ神様のもとへ行けばいいのかを忘れてしまいました。ネズミに尋ねると「1月2日の朝に行けばいい」と教えられました。
昔話の中ではネズミに騙されたネコ
そして新年。太陽が昇った時、最初に現れたのはウシ。前日の夕方から出発したので早く着きました。ところがウシの背中にはネズミが乗っていました。ネズミはウシの背中から飛び下りると、1番に神様のもとへ辿り着きます。こうしてネズミは十二支で最初の動物になりました。
その後次々と動物たちが到着。12番目のイノシシが到着し、神様と十二支による宴が始まりました。
そこへものすごい剣幕で現れたのがネコ。騙されたネズミを追いかけ回します。さらに、途中まで仲良く並んで走っていたイヌとサルは、必死になるあまり大喧嘩を開始。宴の間も喧嘩が続いていました。これがきっかけとなり、今でもネコがネズミを追いかけ、イヌとサルは「犬猿の仲」と言われてます。
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十二支の由来:古代中国の年の数え方
「十二支」が生まれたのは、古代の中国です。
古代中国ではもともと、「年」を数えるのに木星の動きが使われていました。木星が太陽の周りをぐるりと回る「公転」に要する期間はおよそ12年。古代中国の人々は、毎年、木星がどこにいるのか分かるように、天を12等分しました。
この時、12等分した各方角に割り当てられたのが、【子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥】の12の漢字です。これらの漢字は、中国でもともと〝順序〟〝数〟を表すものだったそうです。
この十二支を浸透させようと、王充(おういつ)という人物が動物の名前に変更。つまり、動物の意味は後から付け足されたものです。日本に伝来した頃には、時間や月にも当てはめられるようになっていたとか。
12種類の動物は何を表している?
十二支の動物たち
子(ね):ネズミ
ネズミは十二支の中で1番目の動物です。ネズミは繁殖力が高いことから、子宝の象徴とされている動物。子孫繁栄の意味を込めて、ネズミが当てはめられました。
丑(うし):ウシ
昔はウシといえば生活のパートナー。重い荷物を運んだり畑を耕したりと、生活に欠かせない動物でした。ウシは力強さの象徴。粘り強さや誠実さを表すことから、丑という字にウシを当てはめました。
寅(とら):トラ
トラは勇猛果敢な動物。その勇ましさから、トラが当てはめられました。また、決断力の高さや才覚のある様子も表されています。
卯(う):ウサギ
おとなしくて穏やかなイメージがあるウサギ。安全の象徴という意味が込められています。また、ウサギの特徴といえば跳躍力。飛躍や向上という意味も込められているそうです。
辰(たつ):タツ・リュウ・ドラゴン
十二支の中で唯一空想上の生き物ですが、東洋において龍は生活に密接しているモチーフでした。中国では古代から龍といえば権力の象徴。日本もその影響を受け、辰は権力の意味合いを持っています。
巳(み):ヘビ
巳が表すのはヘビ。脱皮を繰り返して成長するため、永遠や生命、再生の象徴とされています。
午(うま):ウマ
ウマもウシと同様に生活に欠かせない存在。粘り強さを表すウシとは異なり、ウマは健康や豊作を象徴する動物として十二支の1つになっています。
未(ひつじ):ヒツジ
ヒツジは群れでの生活を好む動物。その特徴から、家内安全の象徴とされています。
申(さる):サル
知能が高く、神の使いであると信じられてきたサル。賢者を象徴する動物として、十二支に選ばれています。
酉(とり):トリ・ニワトリ
酉という字はトリ、特にニワトリを表すもの。「酉の市」という言葉があるように、商売繁盛の象徴として扱われています。
戌(いぬ):イヌ
イヌもウシやウマと並び、古くから生活をともにしてきた動物。特に主人に忠実であることから、忠義の象徴という意味があります。
亥(い):イノシシ
昔からイノシシの肉は万病に効くと考えられており、イノシシは無病息災の象徴。また猪突猛進という言葉から、一途で情熱的なイメージも含まれています。
2.十干の漢字と読み方・由来
十干一覧
「十干」とは
甲(コウ・きのえ)……「木」の陽(兄)
乙(オツ・きのと)……「木」の陰(弟)
丙(ヘイ・ひのえ)……「火」の陽(兄)
丁(テイ・ひのと)……「火」の陰(弟)
戊(ボ・つちのえ)……「土」の陽(兄)
己(キ・つちのと)……「土」の陰(弟)
庚(コウ・かのえ)……「金」の陽(兄)
辛(シン・かのと)……「金」の陰(弟)
壬(ジン・みずのえ)……「水」の陽(兄)
癸(キ・みずのと)……「水」の陰(弟)
※カッコ内カタカナ表記は音読み、ひらがな表記は訓読み
十干とは、上述の10の要素のこと。古代中国で生まれたもので、「日」を10日ごとに数えるためのに用いられてきました。この10日のひとまとまりを、「旬」と呼ぶことができます。
また、十干は太陽の名前とも言われています。古代中国では、10個の太陽が順番に昇ると考えられており、それぞれにつけられた名前が十干であったとか。
なお「きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと」という読み方は、日本独自のものです。
十干と陰陽五行説
「きのえ」「きのと」など十干の訓読みは、「陰陽五行説」という、やはり古代中国の理論が元になっています。陰陽五行説の基本的な考え方は次の2つです。
①「闇と光」「夜と昼」など、全ての事象は陰(いん)と陽(よう)に分けられる(=陰陽論)
②全てのものは「木・火・土・金・水」の5つの元素から成り立つ(=五行説)
陰陽五行説とは、上述の通り、「陰陽論」と「五行説」を組み合わせた理論。全てのものごとを説明できると言われています。陰陽五行説では「木・火・土・金・水」にもそれぞれ「陰と陽」があると考えます。
・木の陽
・木の陰
・火の陽
・火の陰
・土の陽
・土の陰
・金の陽
・金の陰
・水の陽
・水の陰
というわけで、10通りできました。
これに十干を当てはめます。そして「陽」は兄(え)、「陰」は弟(と)として、次のように読むようになりました。
・木の陽=【木(き)の兄(え)】=きのえ
・木の陰=【木(き)の弟(と)】=きのと
3.干支の由来・漢字と読み方
「干支」とは
干支とは、ここまで紹介してきた「十二支」と「十干」の組み合わせです。「えと」とも「かんし」とも読むことができます。「十二支」と「十干」の組み合わせとは、すなわち次のような具合です。
・十干の[甲]+十二支の[子]
=甲子(きのえね)
・十干の[乙]+十二支の[丑]
=乙丑(きのとうし)
・十干の[丙]+十二支の[寅]
=丙寅(ひのえとら)
・十干の[丁]+十二支の[卯]
=丁卯(ひのとう)
干支は「日」や「月」、「年」などを数えるための暦(こよみ)のひとつです。
全部で60通りの組み合わせ
干支の組み合わせについて、ひとつ注意点があります。「甲子(きのえね)」は存在するけれど、「乙子(きのとね)」は存在しないということです。
十干と十二支すべてが組み合わさるわけではなく、「子」「寅」「辰」「午」「申」「戌」は陽グループの「甲」「丙」「戊」「庚」「壬」としか組み合わさらないようになっています。
表(下図参照)にすると、2文字の左側はあくまで「甲→乙→丙→丁→戊→己……」という順番で続くのに対し、右側も「子→丑→寅→卯→辰→巳……」という順番で続くようになっているのが分かります。
このようなルールがありますので、干支の組み合わせは120通りではなく60通りになります。ですので、干支は「六十干支(ろくじっかんし)」と呼ばれることもあります。
また60歳になった時を「還暦」として祝いますが、これは60通りある干支を一巡したことを記念しています。
干支の一例
4. 十干や十二支が使われている出来事や名称
甲子園球場
甲子園という名前は十干と十二支によって決まった
全国の高校球児が夢見る舞台「甲子園球場」。兵庫県西宮市にある球場で、正式名称は「阪神甲子園球場」です。甲子園が完成したのは1924年。この年は十干が甲で十二支が子であり、甲子(きのえね)の年でした。甲子は十干十二支の中で最初の組み合わせ。縁起の良い年とされているため、甲子園という名前が付きました。
契約書の甲乙表記
契約書にも十干が使われている
物を購入する際や情報を登録する際に使用する「契約書」。実は契約書には十干が用いられています。それは契約当事者を表す「甲」と「乙」。会社の正式名称や個人名を省略するために使用されています。
契約書の表記では、契約される側(会社など)が「甲」で契約する側(お客さんなど)が「乙」で表されるのが一般的。十干を用いるのは日本独特の文化で、契約書の作成が楽になることや読み慣れた人には理解しやすいという理由で十干が用いられています。
恵方
恵方にも十干と十二支が影響している
毎年節分が近づくと話題に上る「恵方」。その年の恵方を向いて恵方巻きに無言でかぶりつくことで願いが叶うと言われ、ニュースや新聞でも恵方が発表されます。そんな恵方ですが、実は十干によって決まっているのをご存知でしょうか。
昔の中国では、真北を子として十二支によって方角を分割。その上で北東、北西、南西、南東の4つを除いた方角に十干が当てはめられました。五行思想における土は中央を表すため、戊と己は中央に当てはまります。
恵方を決めるルールは全部で3つ。1つ目は、その年が兄(え)の年であれば十干が指す方角が恵方になるというものです。一方で弟(と)の年は、5年前と同じ恵方になるというのが2つ目のルール。この2つのルールだけでは戊の方角がなくなってしまうので、戊の年は5年前の恵方と同じになるという第3のルールが追加されました。
つまり恵方は4種類しか存在せず、その方角を決定するのが十干なのです。
戊辰(ぼしん)戦争
戊辰戦争の舞台となった鶴ヶ城
1868年、大政奉還後に不満を持つ旧幕府軍と新政府軍が衝突した「戊辰戦争」。「鳥羽・伏見の戦い」を皮切りに、約1年半に及んだ戦争です。この名前を決めたのも十干と十二支。1868年が戊辰(つちのえたつ)の年だったことで、戊辰戦争という名前になりました。
他にも、十干と十二支が名前の由来となっている歴史上の出来事は数多く存在。甲午農民戦争や壬申の乱、辛亥革命も当てはまります。
5. 海外の十二支
日本では多くの人が知っている十二支。世界の十二支には、日本に含まれていない動物も存在します。
ウサギではなく……ネコ
タイやチベット、ベラルーシといった国では、ウサギの代わりにネコが十二支のひとつ。これらの国では、縁起物としてネコの干支グッズが飾られることもあるそうです。
イノシシではなく……ブタ
日本では亥といえばイノシシですが、中国や韓国では亥といえばブタ。韓国で豚は縁起の良い動物とされ、特に己亥(つちのとい)の年は「黄金の豚年」とも言われています。
ウシといえば……水牛!
ベトナムの十二支に登場するのは「水牛」。日本のウシは特に種類が決まっていないように思われすが、ベトナムでは明確に「水牛」と決まっています。
「人生の三大行事は、水牛を買うこと、結婚すること、家を買うこと」という言葉があるベトナム。身近な存在であるがゆえに、水牛が十二支に含まれているそうです。
他にもワニやクジラが十二支に含まれているという国もあるそう。世界の十二支を調べてみることで、国ごとの独自性を感じられるかもしれません。
ベトナムでは水牛は身近な存在
おわりに
「十二支」と「十干」、「干支」について紹介してきました。日本人なら当たり前に聞いたことがあるけれど、具体的には説明できない……そんな存在です。
十二支も十干も干支も、年月や日を表す暦の一種であるという点においては共通。また、古代中国の考え方が元になっていることも共通です。
干支は「十二支と十干の組み合わせ」と把握してしまえば意外に単純に感じるのではないでしょうか。自分の生まれ年の〝正確な干支〟を調べてみるのも面白そうですね。
Text:編集部
Photo(特記ないもの):PIXTA
参考:
井上象英『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)
暦Wiki|国立天文台
日本の暦|国立国会図書館
コトバンク
Wikipedia
ほか